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私はダンジョン完成を知らせようと思っていたその時、ダンジョンから一報が入った。
『ウォール様、勇者達が洞窟にやってきました!』
『リザードマン、今、どういう状況かしら?』
『勇者達は洞窟の敵を倒しながら聖女が浄化をして回っています。瘴気が著しく低下していて種を蒔く事が出来ないでいます』
『……そう。分かったわ。今から向かうわ』
『わかりました!』
ダンジョンを浄化するって馬鹿じゃないのかしら?
死にたいの??
馬鹿なのかしら?
やっぱり馬鹿よね。
種達からは勇者の動向が報告されていく。彼らはまだ入り口にいるらしい。奥まで浄化されると厄介ね。
「ドラゴニート、カーバンクル、洞窟へ向かうわ。付いてきてちょうだい」
「もちろんです!」
「キュイ!」
私はドラゴニート達を連れて洞窟ダンジョンへと転移する。
はぁ……。
ダンジョンを守るためとはいえ面倒ね。
これが地上ならどれだけ魔獣を狩ろうと浄化しようと構わない。だけど、ダンジョン内でされるのは困るわ。ある程度瘴気で自動修復機能が備わっているけれど、瘴気がなければ修復出来ない。最悪、ダンジョンが崩れるわ。
時間を掛けて作ったダンジョンを壊されるのは腹立たしい。一言注意しておかなければ。
ダンジョン内の私の部屋に転移するとそこにはリザードマンを始めとした洞窟の魔族を纏める数名が立っていた。
「リザードマン、状況は?」
「ウォール様、現在勇者達は入り口から三百メートルほど進んだ場所にいます。浄化をしながら歩いているので進みは遅いです」
「そう、分かったわ。ドラゴニート、結界を張って」
「分かりました」
「ちょっと行ってくるわ」
「ハッ!」
私は一旦地上へ出て入り口から勇者達がいるという区画まで歩いていく。浄化された状況を見たいからね。
ドラゴニート達と歩いて入っていく。
ところどころに草が残っている。
どうやら浄化はかなりムラがあるみたい。
まだ聖女の浄化は君練度が低いみたいね。
いくら私が弱いとはいえ、このレベルの勇者達には負けることはないわね。
倒されている魔獣を見ていてもドラゴニート一人でも充分対処出来そうだ。
そうして確認しながら歩いていると、勇者達を見つけることが出来た。まだ若い人間のようだ。私達に気づいていない様子。
「ねぇ、貴方達、このまま進んでも死ぬだけよ?」
「!!! お前は誰だ! 敵か!?」
背後から現れた私達に気づいて戦闘態勢に入る勇者達。
「待ちなさい。私は戦いに来たわけじゃないわ。注意を促しにきたのよ?」
剣士らしき男は喧嘩っ早いのかドラゴニートに斬りかかろうとしてドランに弾かれた。魔法使いや聖女はジッと状況を確認している分、知能はあるようね。
「話を聞けと言ってもわからないのかしら? 私はこのまま貴方達を殺しても何の問題ないわ」
そう言った後、私の中の瘴気を一気に放出する。
ドラゴニートもカーバンクルも少し苦しそうだが堪えてくれている。人間たちは言わずもがな。すぐに倒れ、息も絶え絶えの様子。
放出した瘴気を一気にしまい込んだ。
人間たちはしばらくケホケホと咳をしながらも立ち上がる。
「……は、話とは、何だ?」
「私は全てのダンジョンを司る者。このダンジョンで魔獣を倒し、植物を採るのは構わないわ。けれど、ここで浄化を掛けることは許さない。理解したかしら?」
「ダンジョンを司る者……?」
「それと、私を攻撃すれば即ダンジョンはすぐさま崩壊する。それがどういうことか無い頭でも理解しているかしら?」
それでも弱弱しいながらも勇者は剣をこちらに向けているが、それを魔法使いが止めに入る。
「お前達がこのダンジョンに何しにきたのかは知らないし、興味もない。けれどダンジョンを崩壊させるというのならお前達をこの場で殺すわ」
私の言葉を聞いたドラゴニートとカーバンクルの目が光り、私を庇うように一歩前に出た。私の言葉一つで勇者達に攻撃するだろう。
すると聖女が立ち上がり、前に出て頭を下げた。
「ダンジョンを司る者。どうぞ怒りをお鎮め下さい。私達はダンジョンを壊すために来たのではありません。このダンジョンに生えている『奇跡の葉』が欲しいのです。どうか見逃してくれませんでしょうか」
奇跡の葉?
何かしら?
ダンジョンの奥に生えている魔植物の葉のことかしら?
「では尚更。その奇跡の葉という物は瘴気を好み、このダンジョンに生えている。聖女の浄化を掛けずに進みなさい」
「!! ありがとうございます!」
「お前達に忠告しておくわ。むやみな殺生を行うことは許されない、そのことを肝に銘じておきなさい」
「……分かりました」
これ以上ここに居ても意味はないのでそのまま転移して部屋に戻った。
「あれはまだまだやらかしそうね」
「殺しておかなくて良かったのですか?」
「興味はないし、放置でいいんじゃないかしら? どうせ魔族を殺したところで瘴気が溢れるだけだもの」
「分かりました。ウォール様がそう言うのなら」
ドラゴニートとカーバンクルが少し悔しそうにしていたが気にしない。
勇者達に釘を刺したし、とりあえずはいいかしら。私は部屋で勇者がダンジョンを出るまで様子をみることにした。
一匹のスライムを洞窟のあちこちに忍ばせて。スライムから入ってくる情報で彼らの動きは分かった。洞窟の最深部に生えている魔草を採って喜んでいるようだ。
そして私達が何者だったんだ? と倒れたことを悔しがっている様子も見えた。
……馬鹿よね。
まぁ、〆たおかげで浄化を使わずにダンジョンを出ていった勇者一行。面倒な輩だったわね。
そう思いながら私達は初心者ダンジョンに戻った。
『ウォール様、勇者達が洞窟にやってきました!』
『リザードマン、今、どういう状況かしら?』
『勇者達は洞窟の敵を倒しながら聖女が浄化をして回っています。瘴気が著しく低下していて種を蒔く事が出来ないでいます』
『……そう。分かったわ。今から向かうわ』
『わかりました!』
ダンジョンを浄化するって馬鹿じゃないのかしら?
死にたいの??
馬鹿なのかしら?
やっぱり馬鹿よね。
種達からは勇者の動向が報告されていく。彼らはまだ入り口にいるらしい。奥まで浄化されると厄介ね。
「ドラゴニート、カーバンクル、洞窟へ向かうわ。付いてきてちょうだい」
「もちろんです!」
「キュイ!」
私はドラゴニート達を連れて洞窟ダンジョンへと転移する。
はぁ……。
ダンジョンを守るためとはいえ面倒ね。
これが地上ならどれだけ魔獣を狩ろうと浄化しようと構わない。だけど、ダンジョン内でされるのは困るわ。ある程度瘴気で自動修復機能が備わっているけれど、瘴気がなければ修復出来ない。最悪、ダンジョンが崩れるわ。
時間を掛けて作ったダンジョンを壊されるのは腹立たしい。一言注意しておかなければ。
ダンジョン内の私の部屋に転移するとそこにはリザードマンを始めとした洞窟の魔族を纏める数名が立っていた。
「リザードマン、状況は?」
「ウォール様、現在勇者達は入り口から三百メートルほど進んだ場所にいます。浄化をしながら歩いているので進みは遅いです」
「そう、分かったわ。ドラゴニート、結界を張って」
「分かりました」
「ちょっと行ってくるわ」
「ハッ!」
私は一旦地上へ出て入り口から勇者達がいるという区画まで歩いていく。浄化された状況を見たいからね。
ドラゴニート達と歩いて入っていく。
ところどころに草が残っている。
どうやら浄化はかなりムラがあるみたい。
まだ聖女の浄化は君練度が低いみたいね。
いくら私が弱いとはいえ、このレベルの勇者達には負けることはないわね。
倒されている魔獣を見ていてもドラゴニート一人でも充分対処出来そうだ。
そうして確認しながら歩いていると、勇者達を見つけることが出来た。まだ若い人間のようだ。私達に気づいていない様子。
「ねぇ、貴方達、このまま進んでも死ぬだけよ?」
「!!! お前は誰だ! 敵か!?」
背後から現れた私達に気づいて戦闘態勢に入る勇者達。
「待ちなさい。私は戦いに来たわけじゃないわ。注意を促しにきたのよ?」
剣士らしき男は喧嘩っ早いのかドラゴニートに斬りかかろうとしてドランに弾かれた。魔法使いや聖女はジッと状況を確認している分、知能はあるようね。
「話を聞けと言ってもわからないのかしら? 私はこのまま貴方達を殺しても何の問題ないわ」
そう言った後、私の中の瘴気を一気に放出する。
ドラゴニートもカーバンクルも少し苦しそうだが堪えてくれている。人間たちは言わずもがな。すぐに倒れ、息も絶え絶えの様子。
放出した瘴気を一気にしまい込んだ。
人間たちはしばらくケホケホと咳をしながらも立ち上がる。
「……は、話とは、何だ?」
「私は全てのダンジョンを司る者。このダンジョンで魔獣を倒し、植物を採るのは構わないわ。けれど、ここで浄化を掛けることは許さない。理解したかしら?」
「ダンジョンを司る者……?」
「それと、私を攻撃すれば即ダンジョンはすぐさま崩壊する。それがどういうことか無い頭でも理解しているかしら?」
それでも弱弱しいながらも勇者は剣をこちらに向けているが、それを魔法使いが止めに入る。
「お前達がこのダンジョンに何しにきたのかは知らないし、興味もない。けれどダンジョンを崩壊させるというのならお前達をこの場で殺すわ」
私の言葉を聞いたドラゴニートとカーバンクルの目が光り、私を庇うように一歩前に出た。私の言葉一つで勇者達に攻撃するだろう。
すると聖女が立ち上がり、前に出て頭を下げた。
「ダンジョンを司る者。どうぞ怒りをお鎮め下さい。私達はダンジョンを壊すために来たのではありません。このダンジョンに生えている『奇跡の葉』が欲しいのです。どうか見逃してくれませんでしょうか」
奇跡の葉?
何かしら?
ダンジョンの奥に生えている魔植物の葉のことかしら?
「では尚更。その奇跡の葉という物は瘴気を好み、このダンジョンに生えている。聖女の浄化を掛けずに進みなさい」
「!! ありがとうございます!」
「お前達に忠告しておくわ。むやみな殺生を行うことは許されない、そのことを肝に銘じておきなさい」
「……分かりました」
これ以上ここに居ても意味はないのでそのまま転移して部屋に戻った。
「あれはまだまだやらかしそうね」
「殺しておかなくて良かったのですか?」
「興味はないし、放置でいいんじゃないかしら? どうせ魔族を殺したところで瘴気が溢れるだけだもの」
「分かりました。ウォール様がそう言うのなら」
ドラゴニートとカーバンクルが少し悔しそうにしていたが気にしない。
勇者達に釘を刺したし、とりあえずはいいかしら。私は部屋で勇者がダンジョンを出るまで様子をみることにした。
一匹のスライムを洞窟のあちこちに忍ばせて。スライムから入ってくる情報で彼らの動きは分かった。洞窟の最深部に生えている魔草を採って喜んでいるようだ。
そして私達が何者だったんだ? と倒れたことを悔しがっている様子も見えた。
……馬鹿よね。
まぁ、〆たおかげで浄化を使わずにダンジョンを出ていった勇者一行。面倒な輩だったわね。
そう思いながら私達は初心者ダンジョンに戻った。
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