猫種の私が聖女?〜サイドストーリー〜

まるねこ

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サイドストーリー3

ローニャの帰宅 本編105

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「ローニャ。ローニャのおかげで少女誘拐の犯人が捕まったそうよ」
「本当?良かった!」

「それでね、そろそろ帰ってきなさいとお父様が言っているわ。どうする?」
「そうだね……。そろそろ王宮に戻らないとみんな心配するよね。アイツも居なくなったし、帰るね!」

「分かったわ。なら私が送ってあげるわ。ついでに彼も一緒に連れて行ってくれる?」

 姉はそう言ってカシュール君を連れてきた。

 今、彼は姉から魔法を封印されている。

 前の彼はとても偉そうだったらしい。私が会った時にはそんな片鱗もなかったけどね。

 彼は大魔法使いになることが夢で私たちが使う魔法に興味を示し、一から勉強したいと言っている。

 両親も私がよければ連れて行って欲しいと言われたわ。彼には妹が二人いてまだ二人とも幼い。

 二人とも魔法が使えそうなので大きくなったら魔法使いになるため王宮に訪れる予定だそうだ。

 姉はカシュール君を許しているようで王宮での生活が慣れたら封印を解いてもいいんじゃないかと言っていた。

 これにはエサイアス様も同意していてまだ成人していないし、本人も封印されてからしっかりと反省していて大丈夫だろうと言っていた。

 封印を解いた後は神殿にカシュール君を預けて毎日神殿から通いでくるように父に手紙を送ったようだ。



「おねえちゃん! また何かあったら飛んでくるね!」
「えぇ、無理しないのよ?」
「大丈夫!アイツはもういないんだし!」
「……そうね。ケイルート兄様にもよろしくね」
「うん。もちろん! じゃぁね! カシュール君、さぁ行くよ?」

 今回は姉が地面に描いた魔法円の上に私とカシュール君と罪人の男が立っている。

「またね!」

 そう言って私は王宮の謁見室の間に送ってもらった。



「お帰り、ローニャ。心配したぞ。無事で良かった」

 謁見の間には父と母、宰相、ケイルート兄様、グリークス神官長が立っていた。

「ただいま戻りました」
「ローニャ、お帰り。怖かっただろう」
「他の女の子たちを見捨てて逃げてしまってごめんなさい」

「それは仕方がない。ジョー侯爵の目当てはローニャだったのだから。彼女たちは全員無事だ。ローニャが脱出したおかげで相手は混乱し、その隙を突いて突入することができたんだ」

 ケイルート兄様は笑顔でそう告げた。

 あの場にいた女の子たちに何も無くてよかった。

 兄様の話によると、異変に気づいたマルカスさんがすぐに他の護衛と共に侍女とマダム・レミアを取り押さえた。

 店は神殿に近かったため、グリークス神官長に協力を仰ぎ、すぐに聖騎士が街に出て、王宮にも知らせに行ったようだ。

 聖騎士と王宮の騎士団が王都に出て捜索したが、見つからなかったらしい。

 マルカスさんが捕まえたエリスとマダム・レミアはグルだったようだ。

 エリスを侍女として王宮に送り込んだのがバリン・エイター・ジョー侯爵だった。

 ジョー様と言っていたのは仮名ではなかったようだ。彼は青馬倶楽部の総元締めだった。私と姉を性奴隷にしたいと思っていたようだ。

 そこで彼は二人をどうやって奴隷にしようかと考えていたのかというと、グレイスの父、ハインツ・ヒル・フォード公爵を青馬俱楽部へ引き入れた。

 青馬倶楽部とは表向きは紳士のための乗馬サロンという名目だが、裏では若くて美しい女性を誘拐し、性奴隷として人身売買をしていたようだ。

 ジョー侯爵はフォード公爵の弱みを握り、娘のグレイス王太子妃に『ナーニョとローニャを連れてくるように』と命令していた。

 元々フォード公爵は娘を政治の駒として利用するために王太子妃にさせていたのだ。家族の仲は殺伐としたものだったらしい。

 公爵はすぐにグレイス妃に私たちを連れてこいと命令していたようだ。

 グレイス妃は獣人の姉妹が陛下に気に入られて養女になったのが気に食わなかった。

 それに姉妹の仲がとてもいいことに嫉妬していたようだ。
 だが、二人を公爵邸に連れて行こうにも警護が厳しい。

 王宮から出ることがない二人に苛立ちを感じていたようだ。そうしている間に姉はエサイアスと巡視に王都から出てしまったため、姉には手が出せなかったらしい。

 その後、エリスという侍女が協力者なのだと父から聞かされた。

 そこからはエリスと密に連絡を取り、マダム・レミアの店にローニャを誘いこんだのはグレイス妃の計画だった。

 マダム・レミアは娘を人質にされ、ジョー侯爵に協力者となっていたようだ。

 計画の当日。

 ローニャを上手く店に誘い出し、睡眠薬で眠らせ、そのままドレスを仕舞う箱に押し込んで裏口からジョー侯爵の使いが邸の地下へ運んでいったようだ。

 マダム・レミアはすぐにジョー侯爵に脅されている、人質がいると白状した。

 エリスは主であるジョー侯爵の名を出すことはなかったが、自白剤により知っていることを全て語った。

 侍女の自白により騎士たちは兄の指揮のもとジョー侯爵の邸を取り囲んだ。

 門番と押し問答をしている最中、邸内で何かがあったようで騒がしくなったらしい。

 その隙を突いて騎士団はジョー侯爵の邸に乗り込んだ。

 邸の中は逃げ惑う人々で混乱していたようだ。

 騎士たちは一人一人取り押さえて庭に人々を集めた。逃げようとした中には何人もの貴族がいたようだ。

 捕まえた者たちからの聴取で芋づる式に青馬俱楽部に出入りをしていた貴族たちが捕まった。

 もちろん人身売買に関わった者たちは罰として鉱山での重労働が課された。

 ジョー侯爵は死刑となった。

 グレイス妃の父、ハインツ・ヒル・フォード公爵は弱みを握られていたとはいえ、青馬俱楽部に出入りをしていたし、王女を攫うよう指示をしていたため彼も死刑となった。

 グレイス妃は王女の誘拐に関与したため、離縁した後、神殿への永預かりとなった。

 実行犯であるエリスは平民のため死刑だ。

 マダム・レミアは人質を取られていたことと、捜査に協力したため五年の懲役で済んだが、店は平民に荒らされ、家族も国外へ逃げたため刑期を終えても先は暗い。

 平民たちはどうして店を荒らしたのかといえば、やはり私が狙われたことに怒りを覚えた人が多かったためだ。

 姉と私には貴族の後ろ盾はないけれど、騎士や聖騎士、平民たちの信頼が後ろ盾になっている。

 そしてナーヴァル王太子は妻のグレイス妃の行いの責任を取り、王太子の地位をケイルート兄様に譲った。

 ナーヴァル兄様はただの王子となり、今後は文官としてケイルート兄様を支えることになった。

 元々自分でも王太子の器ではないと言っていたようで、ケイルート兄様が立太子になった時、どこかホッとしているような少し寂しそうな顔をしていた。

 ケイルート兄様が王太子となったことで急いで王太子妃を選定することになったのは言うまでもない。

 ただ、ケイルート兄様はなんだかんだと逃げ回っている。

 私はというと、一連の事件が落ち着いた頃、カシュール君と席を並べ、魔法の勉強をしている。

 グリークス神官長の下で彼の封印を解いた。

 彼はとても喜んでいて『これから魔法使いの見習いとして頑張っていく)と神官長と話をしていたわ。

 ……早くおねえちゃん、帰ってこないかな。
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