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67.神託の意味
しおりを挟む「う……」
「殿下」
呻きながら立ち上がったラインハルトに、エスターが駆け寄った。エスターは自分のマントをラインハルトに着せかけた。
「殿下、大丈夫ですか。どこか痛むのですか?」
「……いや、大丈夫……だ」
ふう、と大きく息をつき、ラインハルトは背を伸ばした。
ラインハルトの身長は、エスターとほぼ同じだった。少し細身だが、すらりとした体つきで、ひ弱な感じはしない。
手の平を握ったり開いたり、不思議そうにしていたラインハルトが、こちらを見た。
「ラ、ラインハルト様……」
なんと言えば。
やっぱ呪われてましたね! ……とは、い、言えない……。
「……なるほど」
「えっ?」
ぼそりとつぶやいたラインハルトに、わたしはびくっとした。
「な、なるほどって、なにが?」
「いや……、急に目線が変わったせいか、見え方も変わってくると思ったのだ。ふむ、このような感じなのか」
ラインハルトはわたしを見下ろし、にやりと笑った。
「いつも見上げていたおまえを、こうやって見下ろすのは、なかなか良い気分だ」
「…………」
ラインハルト様……、体は成長しても性格はそのままですね。
相変わらずの言動に、わたしは気が抜けてしまった。
「もー……、心配したのに」
「何をだ」
ふふん、と腰に手を当てふんぞり返るいつものポーズが、めちゃくちゃ決まっている。子どもの姿の時はただただ可愛かったけど、成長すると気品とか威圧感とか、高貴なオーラが半端ない。さすが王族。
「ところでユリ」
「はあ」
ラインハルトが近づき、わたしの手を取ったが、わたしは上の空だった。
ラインハルトが呪われていたということは、呪われた騎士は二人いたということになる。ラインハルトは筆頭魔法騎士、エスターは魔獣討伐隊の騎士なのだから。ということは、神託の指す「騎士」とは、ラインハルトの可能性もあるわけか……。
「私はエスターと同じく、おまえに求婚している」
「はあ」
ラインハルトが何か言っているが、わたしは自分の思考にはまり込んでいた。
神託の「呪われた騎士を救いなさい」とは、何を意味しているんだろう。ラインハルトとエスター、二人の騎士を救えと言っているんだろうか。いや、神託では「騎士たち」とは言っていない。なら、どちらか一人だけ? そもそも救うって、何をすれば……。
「……忘れているようだから、思い出してもらおうか」
「ん?」
ふと気づくと、ラインハルトの顔がものすごく近くにあった。
「え? なに?」
「ユリ」
呆然としていると、さらにラインハルトの顔が近づいてきて……
「殿下!」
エスターに腰を抱かれ、すごい力で後ろに引っ張られた。
「何をなさるおつもりですか!」
エスターがラインハルトに食ってかかっている。何をそんなに怒ってるんだ? と呆気にとられていると、
「何と言われてもな」
ラインハルトは肩をすくめ、悪い笑みを浮かべた。
「おまえたち二人とも忘れているようだが、私はユリの求婚者だ」
……ああ、うん……、そんな設定もありましたね。でもそれは、リオン殿下の側室の話を断るための方便だし、と思っていると、
「この際だから言っておくが、あれは嘘でも方便でもない」
ラインハルトがわたしを射抜くように見て言った。
「ユリ。私は、ここで改めておまえに求婚する」
驚きで固まるわたしに、ラインハルトはニヤリと笑った。
「ユリ、そなたは実に愛らしい。そなたはいつも……、たとえ寝不足であっても、輝くように美しい。私の愛しい魔法使い、大切な宝よ」
どっかで聞いたような口説き文句(しかも微妙にディスってる!)を口にすると、ラインハルトは楽しげに笑いだした。
……これ、どう考えてもからかわれてる……、んだよ、ね?
なんかエスターが険しい顔してるんだけど。いやまさか……、ハハ、ハ……。
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