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15章
15章①
しおりを挟む「かんぱーい」
それぞれ好みの銘柄の缶ビールを持ち上げ、軽く合わせる。
桜の花も見頃を迎え、花見で有名なこの公園も夜桜見物の人々で溢れかえっている。
智弥たちも周りと同じく大きなビニールシートの上に持ち寄った弁当やツマミを広げ、花見と称した宴会を始めた。
智弥の隣には所在なげな光希が缶を両手で持ったまま固まっている。
杏奈から「アナスタシスのスタッフでお花見やるから来ない?」と誘われ、何故か「光ちゃんも連れておいでね」とわざわざつけ加えられた。どうも杏奈は光希のことがいたく気にいったらしい。まさか柊吾を差し置いて、と思わず余計な勘繰りまでしてしまったが、さすがにそれは考えすぎだと自分を戒めた。
光希が絡むと、いつもの自分でいられなくなる。
智弥は、振り仰いで大きなため息をついた。頭上では枝を花びらで浅紅色に染め上げた桜の木が、今が盛りと咲き誇っている。
……一応、来たってことは、避けられてるわけではないのだろうか。
アナスタシスの路地裏で暴漢から助けた夜から、光希の態度がなんとなくぎこちない気がする。
まず目を合わそうとしない。話しかければちゃんと会話するが、踏み込まれるのを嫌がるように、すぐに切り上げられる。
もしかして、あのとき光希に抱いた劣情を見透かされたのだろうか。
――まさか、だよな。
考えても答えの出ない問いを何度も繰り返してしまう。
「あれえ、智弥」
「シュウさん」
久しぶり、と堀秀平が智弥に気づき、缶ビール片手に近寄ってくる。秀平とは光希が怪我をしたライブ以来なので約ニヶ月ぶりだ。長い髪を無造作に束ねた箇所に何故か大きなリボンをつけている。尋ねると「これ? 女の子につけられた」と照れくさそうに笑った。
「偶然。何、お前らも花見?」
「そっす」
「俺らはあっち」
親指で奥の方を指差す。
「あ、じゃあちょっと顔だします」
「いーよいーよそんな気ィ使わなくて。お、勇者くんも元気そうじゃん」
と、光希を見つけ、手をあげる。光希もそれに応えてぺこりと会釈した。
「よかったなあ、傷残んなくて。可愛い顔が台無しになるところだったもんな。智弥のせいで」
「シュウさんっ、やめてください」
「はいはいっと。んじゃまたな~」
ニヤリと笑いながら、ひらひらと手を振って秀平は奥の方へ去って行った。
一瞬、光希と目が合う。だがすぐにふいっと逸らされてしまった。そのまま光希は向こう隣に座ったバーテンダーの男と話し始めた。
――カウンターでよくこいつと喋ってるよな。
最近入店したばかりだというこの男は智弥にはあまり馴染みがない。訊けば年齢も光希と同じだか一個上だとか。終始穏やかな笑みを浮かべ、人当たりもよさそうだ。
男の話に相槌を打ちながら頬を緩める光希の横顔を見ていると、腹の底が煮えたぎるような思いが立ち上ってきた。
――ああ、くそっ。
収まらない焦燥感にも似た何かを抱えたまま、智弥は立ち上がった。特にあてもなく、桜舞う公園の中を彷徨い歩く。
どうせ俺は年も下だし。定職にもつかずフラフラしてるし。
ずっと、早く大人になりたいと思っていた。親があてにならない分、早く独り立ちして、誰にも頼らず生きて行こうと思っていた。だが、実際は。
「あー……」
髪をくしゃくしゃと搔き乱す。
――そりゃ頼りないよな。こんなんじゃ。
「――智弥」
名を呼ばれて顔を上げて、思わず頬が引きつった。今、あまり会いたくない相手だ。
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漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
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