悪の組織のバイトが活躍したらダメですか？

くらげさん

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絶対の悪

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◇◇◇◇

「ここは陽葵の出番でしょ」

　陽葵はカバンから青色のストップウォッチを取り出す。親指でストップウォッチのスイッチを押して、時間が刻み出すと、陽葵の目の前に光る道が出現する。

　その道は無数の瓦礫に向かって伸びていた。

「ゲートオープン！」

　光の道に無数のゲートが現れ、ストップウォッチの画面には『Ready』と浮き出てくる。

　陽葵はストップウォッチをゲートに投げ入れた。すると光り輝く光のゲートは虹色のゲートに色を変える。

「GO！」

　掛け声を出して光の道を疾走する。

　ゲートに触れた瞬間に、ゲートはパリンと崩れ、その崩れた粒子が陽葵の身体を覆っていく。陽葵が虹色の身体になると、走りはさらに加速する。

　瞬時に瓦礫に追い付き、すでに振りかぶっていた拳を瓦礫に打ち付けた。

　腕を打ち付けた余波で腕の虹色の粒子が飛散する。瓦礫はいとも簡単に砕け散ると、陽葵は次の瓦礫を目掛けて、疾走する。

　人々に降り注いだ瓦礫を一瞬して無に返し、陽葵は空からダルマジロンの前に着地した。

　着地した余波で残っていた全ての虹色の粒子は、無数の羽ばたく蝶に姿を変え消滅していく。

　陽葵はスっと立ち上がってダルマジロンと相対す。

　左手で空を指さし。

「太陽の魔法少女キラ！　キラッと参上！」

　空に向けた手。その手をピースで左目の前に持ってくる。オレンジの髪をなびかせ、ダルマジロンに向けて、口上を述べた。

　黄色のミニのワンピースから覗く、スパッツ姿。

　太陽の魔法少女キラが姿を現した。

「名前を教えられたんなら言うのが筋ってもんやな。オラは悪い子の集いっていうとこの怪人。ダルマジロンや」

「ダルマジロン？」

「よろしゅうな」

「どこかで聞いたような名前」

「おっ、会ったことのない魔法少女にまでオラは知られてるんか？　有名なったもんやな」

　すでに戦う姿勢のキラはダルマジロンの後ろに視線を向ける。

　そこには潰されて肉塊になった死体。たちがあった。

「ダルマジロンさん、キラは貴方を許せなくなったよ」

「さん付けか、そんなん付けんでもええよ。怪人を平等に扱う良い子なんやな。お前みたいな奴がぎょうさんおったら何もかもが違ったんかな」

　ダルマジロンは「でも」と、続ける。

「でもな正義のヒーロー。これはお前らが始めたことなんやで」

「何を始めたの？」

「戦いを、や」

「え？　今始めたのはダルマジロンさんだよね。なんでそんな顔をするの？」

　キラはダルマジロンが何を言っているのか分からなかった。だが、悔しそうにうつむくその姿に理由を探してしまう。

「そういう目と鼻の先のことを言うてるんじゃないんやがな。なぁ、お前さんは……ッ！？」

「なにが目と鼻の先だ！」

　ダルマジロンとキラの間に入ってきた人物がいた。

「瞬さん！？」

　キラが名前を出したが、瞬はダルマジロンに言葉を続ける。

「その目と鼻の先。その目と鼻の先の人たちが君に何をやった！　君たちに何をやったんだ！　今日君が殺した人はノーカンか？　その人にも愛する人がいて、悲しむ人はもちろんいると言うのに、なんで君たちにはそれが分からないんだ！！！」

　瞬の脳裏には仲間の姿がチラつく。

「悪の怪人は絶対の悪だ」

　瞬がダルマジロンを睨みながら、言葉を吐き捨てる。

「瞬さん？」

「陽葵ちゃん、怪人の戯言なんかに耳を傾けちゃいけない。あっ、今はキラって呼んだ方がいいのかな」

「逃げてって言ったのに」

「なんで僕が逃げるんだい」

　瞬は左手を顔の前まで持ってくる。

「変身」

　手を頭上から顎の下までスライドさせた。その瞬間にキンっ！　と何処からか音が鳴ると、瞬は戦隊ヒーローのマスクをいつの間にか被っていた。

「さっさとこの怪人を片ずけるよ」

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