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チート攻撃
しおりを挟むミリアさんと訪れたのはシンプルでいて落ち着きのあるカフェ。
リアルでもこんな所には来ないと思いながらソワソワとキョロキョロと周りを見る。
「コレとコレ」
店員さんにメニューを差し出されミリアさんはパッパッと注文を終えた。
直ぐに俺の前にミルクティーが運ばれてくる。
ストローで吸い上げると美味だった。
「手土産って要はプレゼントよね?」
ミルクティーに舌鼓を打っているとミリアさんが声をかけてくる。
はいそうですと嘘偽りなく答えるとうーんとうねる。
「シン君とその人の接点を聞こうか?」
シン君とプレイヤーネームを急に言われてビクッとしてしまう。
女性経験がない俺はこういう所でもドキドキとする程ピュアなのです。
三年前の事をミリアさんに話した。
「運営クランのアリサならまぁやりそうだけど」
ミリアさんはアリサさんを知ってるようだ。
「プレゼント選びは任せて。それより今の話で気になったのはシン君程のプレイヤーが前の国では中級クランに居た理由を私は知りたいな」
この国に来て初めて防具の恩恵を知った。
初心者装備を愛用していた俺も悪いが明らかにこの国と能力が違いすぎた。
「この国での高級装備は前の国では安値で買い叩かれる代物でした」
ミリアさんは最上位クラン、だからこそ分かることもある。
「シン君の前居た国はラクリガルドね」
俺は首を縦に振る。
何故かは分からないが国の違いでここまで決定的な差があるとは思わなかった。
前の国では初心者装備とチート装備の違いが分からなかった。
職人の腕に価値があったラクリガルドは初心者でも千円ぐらいのお金を払えばミースティアの最強装備が一式簡単に手に入ったのだ。
RPGの始まりの街で皆んなが強い装備を手に入れていたらそれが初期装備だと思うのが普通だろう。
だからこそ防具のありがたみが俺には薄かった。
「チート装備で固められた戦場において俺の行動は全てクランにとって意味をなさなかった」
絶対の攻撃による攻防戦。俺はそんな中一人だけうろちょろと小手先の技で勝負してたら邪魔でしかないだろう。
戦闘スタイルから違っていたのだ。
「そう」
ミリアさんの短い言葉。
「もしさシン君がラクリガルドVSソロプレイで挑んだらどっちが勝つ?」
負けるだろう。
わかりきってる事だ。
俺が憧れたクランの名前を出してミリアさんは無邪気に笑う。
味方(邪魔)が入らないソロプレイで最上位クランと戦えるとしたら。
『俺が勝つに決まってますよ』
『さすがシン君。ありがと』
最上位プレイヤーのミリアさんに勝っている俺が負けますなんて言葉は重すぎて吐けなかった。
「うーん、さて」
カフェを出て軽い伸びをしながら隣を歩いているミリアさん。
「アリサならぬいぐるみを集める趣味があるから、どんなぬいぐるみでも喜ぶと思うよ」
ほらアレと指さしてぬいぐるみが並べられた店の所へ小走りで向かっていった。
可愛い人と一緒に買い物……カフェに行ったりと……。
もしかしてデートじゃね? と今更ながらに思うが無関心を気取りミリアさんの後を追う。
猫のぬいぐるみを指さして。
「これがいいと思う」
目をキラキラに輝かせて絶対にコレと念を押される。
店員さんに言うと白と黒の猫のぬいぐるみを購入した。
手土産も用意してもうこのデートも終わりかと思えると残念な気持ちにならないでもないが。
「じゃあ私は用済みだね」
そう言うとミリアさんは俺に手を振る。
「待ってください!」
ミリアさんを引き止めて店員さんに包んでもらった袋から白のぬいぐるみを取り出し差し出した。
えっ、と目を真ん丸にしたミリアさんはいいの? と小首を傾ける。
さらにぬいぐるみをミリアさんに押し付けて両手で抱えたのを確認して手を離す。
「付き合ってもらったお礼です」
ペコリと頭を下げて感謝を伝えると俺は別れを告げてミリアさんを背に歩き出した。
『今日のデート、楽しかったよ!』
『ふぇ?』
背中越しに思っても口には出さなかった事をミリアさんは大声で宣言する。
変な声が出てしまい後ろを振り向けばミリアさんはいなかった。
やっぱりデートだったのかと思えば顔が熱くなってくるのを感じる。
プレイヤースキルは磨いてきたがこの攻撃はチートだと思わずにはいられなかった。
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