天才な妹と最強な元勇者

くらげさん

文字の大きさ
68 / 201

決意

しおりを挟む




 獣族の村。

「少しの間、俺は帰らないといけない」

「なぜですか?」

 シェリルは疑問を口にする。

「これを見てくれ」

 鞘からグランゼルを引き抜く。

「ボロボロですね」

 争いの中でグランゼルがボロボロになっていたのだ。

「これを直しにちょっと出かけてくる」

「はい、それでは村の皆んなにも伝えときます」

「あとな、コレを渡しておく」

 俺は赤い宝石が入ったペンダント型の魔道具をシェリルに渡す。

「これはなんですか?」

「もし助けが必要な時はそのペンダントを壊してくれ、そしたら俺が持っているもう一つのペンダントが壊れる」

 俺は青いペンダント型の魔道具を見せながら答える。

「……はい」

 シェリルはペンダントを大事そうに両手で抱え込む。

「行ってくる」

「お待ちしておりますよ、獣王様」

「おう!」




 ユウはクロに道案内を頼みながらミリアードに帰った。

 ここはアレクの寝室。

「お~いアレク~」

 眠っていたアレクを起こした黒猫耳の人物にアレクは戸惑う。

「誰だ貴様!」

「俺だよ俺!」

「獣族か?」

「なるほど、この姿だからか」

『クロ』

『はい、ユウ様』

 紫の光が黒猫耳の人物を覆い尽くし、すぐに消えると剣の勇者ユウ・オキタが現れた。

「お前か! ビックリさせるんじゃない!」

「頼みがあるんだ、直してくれ」

 ユウはアレクにグランゼルを渡す。

「お前があの獣王か?」

「なぜ分かった!」

「これほど情報が揃っていたら誰でも分かるわ!」

 黒猫耳の獣族、グランゼルの消耗度、そして獣王という化物。

「またやりやがったな! 勇者がした責任は全部召喚した国が持つんだぞ!」

「バレないようにするつもりだ」

「ならいいがな、直すのに数日かかる待っていろ」

 それだけ言うとアレクはユウを寝室から追い出した。




 ユウがミリアードに帰ってグランゼルの修理が終わる頃に獣族の村は争いに巻き込まれようとしていた。

「人族と魔族が攻めて来ました!」



 獣族達はその知らせを聞き、すぐさま村の獣族達を広場に集めた。

 獣族達は皆、人族と魔族の脅威から震えている。

 年老いた老人の獣族が台座に立つ。

「今、獣王様はいないが心配するな! シェリルはいるか?」

「……はい」

 シェリルは広場に集まった獣族を掻き分けながら老人の前に現れる。

「シェリルは獣王様から危険が迫ればペンダントを壊し危険を知らせよと言われている」

 それを聞いて獣族達は安心したのか獣族達の震えがなくなる。
 
「これは壊してはダメです!」

 シェリルが右手を胸に当て、ペンダントはここにあると主張する。

「なぜだ!」

 老人も獣族達の命の危機に戸惑いの声を漏らす。

「皆んな聞いて! 獣王様は私達の英雄です」

 獣族達はうんうんと頷く。

「そして幾度となく私達の命を救ってくれました、剣をボロボロにしてまで、時には傷つきながら」

 獣族達はシェリルの声を静かに聞いている。

「獣族は恩には恩を伝えなくてはいけないキマリがあります、今では獣王様には一生返せない程の恩を貰っています!」

 シェリルは必死で声を出す。

「なのに! 危険が迫れば獣王様を呼ぶなんて、それで獣王様にもしもの事があれば……私達は恩を仇で返す事になるのですよ!」

 獣族達はシェリルの言葉に今さらながらに気付かされた。

『恩には恩を伝える』

 獣族の誓い。

「私達は獣王様に甘えていただけです、今こそ獣王様に頼らずとも生きていけると、私達はもう大丈夫だよと、伝える事が獣王様への私達にできるせめてもの恩返しではないでしょうか!」

 シェリルの鬼気迫る言葉達に何も言うものは居なかった。

 そして老人が口を開く。

「女子供と老人や戦闘が出来ないものはシェリルの案内でこの村から出なさい」

 老人の言葉の意味が分かったのか獣族の男達はすぐさま家に帰って武器を持ってくる。

 老人は台座から降りシェリルに近づくと。

「シェリルや、お前は儂達に大事な物を気づかせてくれたようだの」

「村長はどうするのですか?」

 村長はニコリと笑う。

「儂も戦うぞ、まだまだ若い者には負けん! これでも若い頃はな、それはそれ……」

「村長早く移動しないと!」

 シェリルは村長の手を取る。

「儂を年老り扱いするな!」

 村長は手を取り払うと懐から虹色の石を取り出す。

「これを」

「これはなんですか?」

 シェリルは宝石のように輝くカラフルな石を貰う。

「それはな、虹の石じゃ」

「虹の石?」

「遥か昔に女神様が獣族に託された物、村の宝じゃな、これをばあさんに渡しといてくれ」

「はい」

 シェリルは虹の石を受け取り、老人や子供達、女の獣族達を連れて村を出る。




「お婆様これを」

 シェリルは獣族の隠れ洞窟についたところで婆さんを見つけ、虹の石を渡す。

「これは! あのじいさんも覚悟を決めたか」

 婆さんは虹の石を受け取ると懐にしまう。

「シェリルや、あんたのおかげでみな目が覚めたようじゃな、ありがとう」

「私は何もしていませんよ、それでは逃げ切れた事を皆んなにも知らせに戻ります」

「危なくなったらすぐに逃げるんだよ?」

「わかってます」

 シェリルは洞窟を出て、村に戻るのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...