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決意
しおりを挟む獣族の村。
「少しの間、俺は帰らないといけない」
「なぜですか?」
シェリルは疑問を口にする。
「これを見てくれ」
鞘からグランゼルを引き抜く。
「ボロボロですね」
争いの中でグランゼルがボロボロになっていたのだ。
「これを直しにちょっと出かけてくる」
「はい、それでは村の皆んなにも伝えときます」
「あとな、コレを渡しておく」
俺は赤い宝石が入ったペンダント型の魔道具をシェリルに渡す。
「これはなんですか?」
「もし助けが必要な時はそのペンダントを壊してくれ、そしたら俺が持っているもう一つのペンダントが壊れる」
俺は青いペンダント型の魔道具を見せながら答える。
「……はい」
シェリルはペンダントを大事そうに両手で抱え込む。
「行ってくる」
「お待ちしておりますよ、獣王様」
「おう!」
ユウはクロに道案内を頼みながらミリアードに帰った。
ここはアレクの寝室。
「お~いアレク~」
眠っていたアレクを起こした黒猫耳の人物にアレクは戸惑う。
「誰だ貴様!」
「俺だよ俺!」
「獣族か?」
「なるほど、この姿だからか」
『クロ』
『はい、ユウ様』
紫の光が黒猫耳の人物を覆い尽くし、すぐに消えると剣の勇者ユウ・オキタが現れた。
「お前か! ビックリさせるんじゃない!」
「頼みがあるんだ、直してくれ」
ユウはアレクにグランゼルを渡す。
「お前があの獣王か?」
「なぜ分かった!」
「これほど情報が揃っていたら誰でも分かるわ!」
黒猫耳の獣族、グランゼルの消耗度、そして獣王という化物。
「またやりやがったな! 勇者がした責任は全部召喚した国が持つんだぞ!」
「バレないようにするつもりだ」
「ならいいがな、直すのに数日かかる待っていろ」
それだけ言うとアレクはユウを寝室から追い出した。
ユウがミリアードに帰ってグランゼルの修理が終わる頃に獣族の村は争いに巻き込まれようとしていた。
「人族と魔族が攻めて来ました!」
獣族達はその知らせを聞き、すぐさま村の獣族達を広場に集めた。
獣族達は皆、人族と魔族の脅威から震えている。
年老いた老人の獣族が台座に立つ。
「今、獣王様はいないが心配するな! シェリルはいるか?」
「……はい」
シェリルは広場に集まった獣族を掻き分けながら老人の前に現れる。
「シェリルは獣王様から危険が迫ればペンダントを壊し危険を知らせよと言われている」
それを聞いて獣族達は安心したのか獣族達の震えがなくなる。
「これは壊してはダメです!」
シェリルが右手を胸に当て、ペンダントはここにあると主張する。
「なぜだ!」
老人も獣族達の命の危機に戸惑いの声を漏らす。
「皆んな聞いて! 獣王様は私達の英雄です」
獣族達はうんうんと頷く。
「そして幾度となく私達の命を救ってくれました、剣をボロボロにしてまで、時には傷つきながら」
獣族達はシェリルの声を静かに聞いている。
「獣族は恩には恩を伝えなくてはいけないキマリがあります、今では獣王様には一生返せない程の恩を貰っています!」
シェリルは必死で声を出す。
「なのに! 危険が迫れば獣王様を呼ぶなんて、それで獣王様にもしもの事があれば……私達は恩を仇で返す事になるのですよ!」
獣族達はシェリルの言葉に今さらながらに気付かされた。
『恩には恩を伝える』
獣族の誓い。
「私達は獣王様に甘えていただけです、今こそ獣王様に頼らずとも生きていけると、私達はもう大丈夫だよと、伝える事が獣王様への私達にできるせめてもの恩返しではないでしょうか!」
シェリルの鬼気迫る言葉達に何も言うものは居なかった。
そして老人が口を開く。
「女子供と老人や戦闘が出来ないものはシェリルの案内でこの村から出なさい」
老人の言葉の意味が分かったのか獣族の男達はすぐさま家に帰って武器を持ってくる。
老人は台座から降りシェリルに近づくと。
「シェリルや、お前は儂達に大事な物を気づかせてくれたようだの」
「村長はどうするのですか?」
村長はニコリと笑う。
「儂も戦うぞ、まだまだ若い者には負けん! これでも若い頃はな、それはそれ……」
「村長早く移動しないと!」
シェリルは村長の手を取る。
「儂を年老り扱いするな!」
村長は手を取り払うと懐から虹色の石を取り出す。
「これを」
「これはなんですか?」
シェリルは宝石のように輝くカラフルな石を貰う。
「それはな、虹の石じゃ」
「虹の石?」
「遥か昔に女神様が獣族に託された物、村の宝じゃな、これをばあさんに渡しといてくれ」
「はい」
シェリルは虹の石を受け取り、老人や子供達、女の獣族達を連れて村を出る。
「お婆様これを」
シェリルは獣族の隠れ洞窟についたところで婆さんを見つけ、虹の石を渡す。
「これは! あのじいさんも覚悟を決めたか」
婆さんは虹の石を受け取ると懐にしまう。
「シェリルや、あんたのおかげでみな目が覚めたようじゃな、ありがとう」
「私は何もしていませんよ、それでは逃げ切れた事を皆んなにも知らせに戻ります」
「危なくなったらすぐに逃げるんだよ?」
「わかってます」
シェリルは洞窟を出て、村に戻るのだった。
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