天才な妹と最強な元勇者

くらげさん

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緊急要請

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『魔物の群れが押し寄せてきます』

 ギルドに行くと昨日の受付にいたお姉さんが慌てた様子でトウマに報告していた。

「え~と、どのくらいの数?」

「クソガキさんはそこら辺で草むしりでもしていてください、今回は命を落とす危険がありますから」

 俺の事をクソガキと呼ぶお姉さんも俺を心配しているようだ。

「どのくらいの数だ?」

「報告によれば二十から三十は居るそうです」

 トウマが聞くと素直に教えてくれるお姉さん。

 強い魔物がうようよしていた時代を知っている俺からしたら三桁は違うな。

「どれも中級でなかには上級も確認されています、このままでは学園の優等生を呼ばなくてはなりません」

「えっ? 上級? 神級の魔物はいないの?」

「おいクソガキ、神級の魔物が来たらこの国が滅ぶだろうが! 間違っても絶対口にするなよ! 本当に来たら大変じゃすまないんだよ!」

「す、すいません」

 こわっ! お姉さんこわ!

 俺は昔ミリアード王国から出て数分後に神級の魔物と戦った事がある。

「キュイ!」

 あれもアリアスのせいだが。




『あれはなんですか?』

 大きなドラゴンが昼寝をしていた時の事だ。

『アリアス近づくな!』

 召喚されてこの世界の常識に疎い俺でも分かった。

 近づいてはならない絶対の王者。

『あの貴方はここで昼寝しているのですか?』

 アリアスはドラゴンの顔をツンツンと指でつく。

 ドラゴンの目がぱちりと開く。

『我の眠りを妨げる愚か者など灰になるがいい!』

 ドラゴンは口に炎を貯めると一気に吐き出す。





 初めて魔力を纏う攻撃を斬ったのがあの時だったな~。

 懐かしい。

 いやぁあれはマジで死ぬかと思った、アリアスを守ろうと無我夢中で剣を振ったからな。

 俺が懐かしんでいる間に話が進んでいた。

 武器を持っていなかった俺達にギルドから剣を支給された。

 俺にも支給されたからお姉さんは本当に心配しているのだろう。

「それでは私は学園に緊急要請をするのでこれで、トウマ様はどうにか食い止めておいて下さい」

 お姉さんはトウマに言い残して去っていった。





 俺達はフィーリオンの門の前に移動しながら俺はトウマから説明を聞いていた。

「報酬は倒した魔物一匹につき中級十ゴールド、上級は一プラチナらしいぞ」

 百万円だと!

「え~と、ヤバイな!」

 もう金額が金額なので驚くことしかできなかった。

「討伐できなくても食い止めておくだけで一プラチナだな。それに依頼完了でさらに一プラチナ」


「中級と上級の魔物だけでそんなに貰えるのか!」

「それだけ魔物が攻めてくるということが危険なんだろうな」

「常識が違うのか?」

 嫌まさか……。

「アリアス……アレクは俺にタダ働きをさせていたのか? 魔物の千匹とか頻繁に来てたよな」

 俺が肩に乗っているアリアスに声をかけるとプイッと視線を反らす。

 アリアスも共犯か! まぁ金があっても別に何も出来なかったが……。




 話ながら俺達は国の門の前に着いていた。

「来たぞ」

 魔物の群れが押し寄せて来た。

「あれ? 初級の魔物ばっかりじゃん」

「昔と今じゃ違うということだろ。剣の勇者のいた時代は神級の魔物もうようよいたようだが、今は新しい魔物も出てきて昔の魔物の位が上がってるんだよ。昔の神級なんかと戦うには辺境の地まで行かないと会うことも出来ないと思うぞ」

「トウマは詳しいな」

 トウマの説明に俺はうんうんと頷く。

「俺は700年以上もこの世界に居るからな、少しだけ違う異世界だけど」

 押し寄せて来ている魔物は獣系の魔物が大半だ。

「よし、トウマに俺の技術を教えてやろう」

「師匠お願いします」

 師匠、いい響きだ。

「ふむ、手加減しないと一瞬で倒せるだろうから手加減しながら……」

 俺は門から離れた場所に一本の線を引く。

「この線から魔物を通すな」

「倒さずにですか!」

「そうだ! 倒していいと言うまで倒すなよ!」

 これは相手を観察しながら、手加減しながらと、剣術や状況判断が一気に鍛えられる。

 トウマが魔物達を相手にしている状況を見ながら俺とアリアスは安全な所で見学をすることにした。

 


 何時間経っただろうか、初級の魔物……中級だったな。

 中級の魔物は一瞬で倒せる相手だが、倒さないように、線を越えないように立ち回るトウマに疲労が見え始めた。

 そろそろいいかな?

「トウマ! 倒し……」

「大丈夫ですか!」

 俺の声を遮りトウマを庇うように人影が現れた。

「リリア・フィールド」

 トウマが呟く。

「はい、私達が来たらからには安心してください」

 リリアは自信満々にトウマに告げると。

「アクア君、フレイル君、一気に倒します」

「はい、リリアさん」

 金髪の美少年がリリアの右に。

「リリアは人使い荒いな! 中級の魔物だぞ」

 赤髪の美少年がリリアの左に付き添うように現れる。

「ふふ、成績が良い方が私とデートするって張り切っていたじゃないですか」

「アクアには負けねぇ!」

「フレイルには負けない!」

 リリアの声と共に二人は魔物の群れに突っ込む。

『デートだと! 俺が許すはずないだろ!』

 俺は見学から戦闘体勢に切り替える。



『リミテッド・アビリティー』



 俺は何もない空間から……。

「クレス君? 僕は怒ってるよ」

 俺の肩を引っ張る人物が居たせいで剣を召喚出来なかった。

「キュイ!」

「ユ、ユウカ……人違いじゃないですか?」

 アリアスが乗ってない右肩をユウカが引っ張る。

「オキタユウ君? しらばっくれるのかい?」

「はぁ、何を怒ってるんだ?」

「この現状さ」

 ユウカはリリアを指さしながら話す。

「俺もあの魔法を使われた後にリリア達の記憶操作を知ったからな」

「むっ!」

「チートでわかるんだろ?」

「クレス君をずっと探そうと思ってたんだけど世界を救った英雄にされて学園から全然出られなかったんだよ!」

 クレスには豪勢なパーティーの光景が浮かんだ。

「羨ましい……」

「何が羨ましいのかな?」

「俺達は昨日から何も食べてないんだよ!」

「それは大変だね、そうだ! 僕が学園を辞めて一緒に暮らせばいいんだよ! そしたらお金には困らないよ!」

「飛躍しすぎだろ!」

 魔物の群れに目を向けるとアクアと赤髪が苦戦をしている。

 俺は魔物の群れに足を踏み出す。

「どこに行くんだい?」

「決まってるだろ? 妹様に」

 俺は支給された剣を鞘から引き抜く。



『俺の力を見せつけに行くんだよ!』



 ユウカはやれやれと首をふる。

 カッコいいお兄ちゃんを見せつけてやろうじゃねぇか!


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