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別れの日
しおりを挟むアクアを奴隷のように扱って、はや二年。
俺はソファーに寝転がりながら声を出す。
「喉乾いた~」
俺のソファーの前にテーブルを置き、その上に果汁が入ったジュースを持ってくるアクア。
「はい、クレスさん」
フランの歳は九歳だ。
俺の歳は十四歳。
リリアは二十四歳か。
リリアはどんな美女に成長してるのかな~。
妹のはずなのに俺より十歳も年上になっちゃったよ。
ユウカとフランは庭で剣を交えている。
打ち合いをしてるみたいだ。
フランは物覚えがいい! 天才な人種だな。
二年で勇者と打ち合える程に強くなるなんてな。
俺はアクアが持ってきたジュースを飲みながらそんな事を思っていた。
「もうそろそろか」
俺が呟くとソファーの隣で立っているアクアが反応する。
「そうですね」
アクアもフランと一緒に色んな事を学んだんだから寂しいだろう。
フランがこの家を出ていくのは……。
そろそろフィーリオンの入学試験が行われる。
フィーリオン剣士学園のパンフレットを見たところ魔力なしで入れるのは今回かららしい。
ユウカはすでに魔力無い人も入れる試験が行われていると思っていたみたいだ。
俺は庭に視線を向ける。
勝負がつきそうだな。
フランの銀髪が揺れる。
仕掛けたのはユウカ。
虚をついたようにユウカは剣を水平に振るう。
それをフランはギリギリでしゃがみながら回避しユウカの懐に飛び込む。
そしてユウカの首に剣を突きつける。
「強くなっ……あっ! フランちゃんごめんね」
フランの勝利で幕を降ろしたが……。
フランの長い銀髪がヒラヒラと地面に落ちる。
「短くなってしまいました~」
しゃがんで回避した時に切れたみたいだな。
「男の子みたいですね」
「ごめんね」
ユウカの謝罪にフランは気にしてないという素振りを見せる。
フランとユウカは風呂場に行き汗を流して来た。
フランはユウカに短くなった髪を可笑しくないように切り揃えてもらっていた。
「オッケーだよ、フランちゃん」
「おっけー? はい、ありがとうございます!」
髪を整えて、時計を見たフランは慌てて準備に取りかかる。
「準備しなくちゃ!」
フィーリオン行きの馬車に乗らないと行けないからだ。
もうリュックには色んな物が詰め込まれている。
寂しい!
「俺もついていこうか?」
「いいです! お兄様が居なくても私はもう頑張れます!」
「そうか……何かあった時の為にソーダを連れていけ、フランを守ってくれる筈だ」
「アリア……ソーダちゃんが居てくれたら心強いですね」
アリアスは家族以外の人物が居るときはソーダという事にしている。
今はアクアが居るからソーダだ。
そんなに理由はないが、家庭内ルールという奴だな。
因みにアリアスが人化するところをフランは見たことがないから、フランにはこのチビドラゴンが最強の魔術師だったなんて信じられないだろう。
「きゅい!」
フランが思ってるのは寂しくならないようにアリアスを連れていかせるって感じか。
アリアスがリュックの中に飛び込むと、フランはリュックを背負う。
扉の前で礼をするフラン。
「それではお兄様、行ってきますね」
「あぁ」
「またね、フランちゃん」
「またお会いしましょう、フランさん」
俺に続いてユウカ、アクアもフランに言葉をかける。
『立派になって帰ってきます』
扉が閉まる音と共に静けさが訪れる。
寂しくなるな……。
「ユウカ行くか!」
「そうだね」
ユウカは玄関から出ていき。
俺は前もって準備していたリュックを部屋から持って来て背負う。
そんな俺達を見てアクアが声をかけてきた。
「クレスさん、どこに行くんですか?」
「決まってるだろ、俺もついていくんだよ」
「本気ですか?」
「はっ? 妹の友達管理は兄の仕事だろうが!」
いじめられたらどうすんだ!
「お前は王子で剣聖なんだからココから離れられないだろ。フランが卒業したら帰ってくるからな」
「そうですか……」
「お前はここ二年ずっとリリアを見ていたからな、好きなら話すぐらいなら認めてやる」
俺は玄関を開けながらアクアに伝える。
「いいんですか?」
「近寄ることは許さないけどな」
「……はい」
「後この家の管理はよろしくな」
「もちろんです」
扉を閉めるとユウカが馬車に乗ってきた。
「早いな!」
「準備はしてたんだよ、クレス君の行動は読みやすいからね」
馬車に乗り込む。
「じゃあ行くよ!」
ユウカの掛け声と共にダリアードを出発。
のんびりと進む馬車に揺られる俺。
ユウカと野宿したり、飯食ったりしながらもう二周間が過ぎようとしていた。
ユウカが遠くを見ながら呟く。
「もうすぐだね」
「そうなのか?」
全然わからん。
そんなほのぼのとした時間にユウカは大声を上げる。
「止まれ!」
馬車が緊急停止する。
俺も遠くの気配に気づいた。
「何か居るな」
「そうだね、魔力を垂れ流して挑発してる人が居るみたいだね」
「すぐ片付けるから待っててくれ」
「うん」
俺は馬車から降りるとユウカを置いて挑発している奴の所へ走る。
近寄ると。
リリアが居た! 綺麗に可愛くなって……お兄ちゃんは嬉しいぞ。
俺がリリアに見惚れて居ると邪魔者が入ってくる。
「なんだ! 貴様は!」
お前が誰だよ。
『俺か? 俺はな……剣の勇者だ』
「嘘をつくな」
信じて貰えないようだ。
「じゃあ証拠を見せてやるよ」
何もない所から金色のオーラを放つ黒剣を引き抜く。
『リミテッド・アビリティー』
目の前の魔族は驚いている。
「それは!」
俺が現れても声すらかけてくれないリリア……怒ってるのか?
リリアの方を見るとリリアは魔族の前で倒れた。
『おい! リリアから離れろ』
あの魔族がやったんだろう。
俺は殺気を爆発させる。
俺の殺気をモロに浴びて後ずさる魔族……。
『俺の妹に手を出して生きて帰れると思うなよ』
死刑決定。
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