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敵を作るのは簡単
しおりを挟むリリアに連れられて入学式が行われる武道館についた。
遅れてやって来た俺は特待生の椅子に座り、瞼を閉じる。
『それでは……リリア様を倒して最優秀な成績で試験をクリアした方がいます』
会場中がリリアを倒した事でざわざわと騒がしくなる。
豪華な特待生専用の椅子にもたれかかり、うとうとしていた所でお呼びがかかる。
『クレス君、壇上に上がってください』
まったく聞いてないんだが!
俺はめんどくさいというオーラを全身から発しながら壇上に上がる。
「何をしたらいいの?」
俺はまったくわからないので男の先生に聞く。
「最優秀な生徒には学園に入った経緯や目標などを話してもらいます」
ふむ。
演説しろって事なのか?
俺はマイクが置いてある中央に向かう。
ざわざわとする会場内。
マイクに手をかけて。
俺が喋ろうとした瞬間に誰かが叫ぶ。
『こんなの可笑しい!』
なんだ?
俺はマイクを通して語りかける。
「何が可笑しい?」
女が立ち上がり俺を指さす。
「私の方が絶対に優秀よ!」
「じゃあ変わろう」
「えっ!」
驚いた声が返ってきた。
「いやだってお前の方が優秀なんだろ?」
「もういいわよ!」
なんなんだアイツ。
結局俺が喋るのかよ。
「え~と、学園に入った経緯はなんとなくです、その場の思い付きで入学を決意しました」
本当のことだよな。
「ソファーでずっとゴロゴロしてた二年間。何にもしない平穏な毎日を怠惰に過ごす至福の時を捨ててまで学園に入る」
愛しのソファーが脳裏に浮かぶ。
「決死の覚悟で俺は学園に入学しました! 今でも愛しいソファーが俺の瞼の裏を埋めつくし、いつも背中を包んでくれた温もりを思い出します」
『ちょっ! ちょっと待ちなさいよ!』
またさっきの女が突っかかってきた。
「なんだよ黙ったと思えば急に出てきやがって」
「いやだって! ソファーで毎日ダラダラして、思い付きで学園に入って最優秀をかっさらうなんて出来るはずないじゃない!」
「じゃあお前はなんのために学園に入ったんだ? そして経緯を教えろ」
どうせみんな俺みたいにダラダラしてたんだろ。
「私が学園に行きたいと言ったとき母は言ったわ『貴女の実力では無理』だと、私はそうとうに努力したと自負してる」
フランも言われてたな。
「でもそれでも足りないって、だから私はこの学園に入るために死にものぐるいで努力した。二年間もダラダラと毎日をのんびり過ごしていた貴方とは違うのよ!」
ここってそんなハードル高いのか。
「私は……いえ、ここにいる生徒達は皆少なからずそういう必死な想いで掴みとった席なの。貴方はそれを全部背負って壇上に立つのが礼儀じゃないの!」
いやいや、ついさっき聞いていきなりそんな想いとか言われても……。
叫んでた奴に皆んな拍手を送っている。
「経緯は聞いてやったんだ、お前の目標は何なんだ?」
「私の目標は剣聖リリア様の隣で支えられる存在になることよ」
良い夢だな。
だが!
「リリアの隣は俺のだ、残念だったな」
「はっ? リリア様が貴方のような人は断るわよ」
「お前、強制権って知ってるか?」
「何を言ってるの? ま、まさか!」
「そうだ、俺がリリアから制限時間まで逃げ切り、強制権を使ってリリアの恋人になったクレスだ!」
会場中がざわめく。
「リリアを狙ってた奴は残念だったな~、お前らがどう足掻こうと、もうリリアは俺の物だ」
俺の笑い声が会場にこだまする。
「貴方はして良いことと悪いことがあるのを知らないの? そんなので人の気持ちを従わせて貴方はそれでいいの?」
ソイツの声に皆んな賛同しているのか会場が俺の批判で埋め尽くされていく。
なんで俺が悪いみたいになってるの?
「おい、別にお前に、お前達に、許可が必要じゃないだろ。リリアが嫌なら断るはずだよな~、それなら嫌じゃなかったって事なんだよ、リリアは俺が好きで好きでたまらないんだよ!」
心の中でクロが語りかけてくる。
『いえ、ユウ様……リリアは断ってましたよ、それを強迫で……』
『クロ、どうせコイツらはその事を知らないんだよ』
『……そうですね』
女は俺の正論を聞いても退かない。
「貴方は絶対に許さない、リリア様の弱味を握って強制的に従わせてるに決まってるわ!」
会場にいる奴等全員から殺気を当てられる。
「長くなりそうだし、俺の目標を言ってやるよ」
俺は話を終わらせる為に目標を言うことにする。
『俺の目標はリリアと学園でイチャラブすることだ』
俺は静まり返った会場で壇上を降りる。
自分の席にもたれかかると周りがさっきよりも濃密な殺気を放っている。
今にも俺をぐさりと刺しそうだ。
うとうとと眠りに入りながら俺は思う。
『俺の楽しい学園ライフが今始まる』
俺の心の中で再度クロが語りかけてくる。
『周りが楽しい学園とは程遠い殺気に包まれていますが……』
『目の前に敵を作ればフランがイジメられることもないだろ』
『忘れてなかったんですね!』
『いや、当たり前だろ!』
『悪役のユウ様が自然だったのでつい』
『眠るから終わったら起こしてくれ』
『はいユウ様。おやすみなさい』
俺は入学式が終わるまで眠りにつくのだった。
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