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限界
しおりを挟むもう何度目かのステージ変更が行われたか俺は覚えていない。
ユリアとの打ち合いの最中に問いかける。
待ち望んでいた時間にもうなっていてもおかしくないからだ!
「なぁ、今どれぐらい時間経ってるんだ?」
「四時間と言ったところでしょうかね」
コロコロと変わるステージ、フラッグの周りだけは変わっていないが。
ぱっと景色が変わると俺達の足元には水が張られていて、周りは障害物がない場所になった。
遠くには魔法を使っているだろう、ぶつかり合う光が見える程だ。
動く度にパシャパシャと水が跳ねる。
……俺達がここに来たのが八時ぐらいだとすると。
俺の腹がぐ~っと鳴る。
「昼だ!」
ピタッと俺の剣が止まったのをユリアは見逃さなかった。
無音の域まで達してる黒剣は俺の首元に吸い込まれるように綺麗な軌道を描きながら入っていく。
アナウンスが流れる。
『戦闘を中断してください』
黒剣は俺の首元に触れるギリギリのところで止まっていた。
「いいのか? 俺を倒す絶好の機会だったぞ」
「戦闘中にお昼ぐらいで気を抜く貴方には言われたくありません」
「お昼ぐらい? 俺がラグナロクに参加したのはリリアの特製弁当を食べるためだけだ!」
ユリアは呆れたように黒剣を下ろし手放すと黒剣は消滅していった。
「貴方といると力が抜けますね」
フラッグの周りだけは芝の丘で地形が変わらない。
俺はさっそくフラッグの元に行き、弁当を広げる。
色とりどりの具材、卵焼きや唐揚げなんかが入っている。
おにぎり、名前は知らないが野菜巻きの様な物、野菜炒め。
俺は質素な料理が好きだからあまり豪華と言う訳ではない。
いつも作ってくれる料理のオードブルという感じだ。
ユリアを見るとスカートのポケットから取り出した一つのスティック状の袋を空け始めた。
栄養補助食品の様な物だ、俺が勇者やってた時にも食ったが不味かった記憶がある。今は味が向上してるかも知れないがリリアの飯の方が美味いに決まっている。
広げた弁当の匂いにつられて、羨ましそうな目をしたユリアに俺は手招きする。
「お前も来いよ」
「……いいのですか?」
遠慮しているユリア。
「いいよ、多めに作ってもらってたしな」
ユリアは俺と対面するように腰を下ろすと一緒に食べ始める。
「初めて見た食べ物ばかりなのに美味しい……懐かしいような味がします」
俺がリリアに教えたらすぐに再現して作ってくれた料理だ、日本でも食べたことがないぐらい美味しい。
満足気な表情を浮かべるユリアに俺も満足する。
「美味しいだろ!」
「はい」
和食は味に深みがあるからな、懐かしいという気持ちもわかる。
「私の能力にここまで対応出来たのは貴方が初めてです。そして今気づきましたが……弁当があの戦闘の中で残っていることもおかしな話ですよね」
「リリアの弁当だからな、守りながら戦うに決まってんだろ」
「あの戦闘中に守りながらですか……リリアさんの弁当というのはリリア・フィールドさんの弁当という事でしょうか?」
「そうだが?」
「仲がよろしいのですか?」
俺はまた悪い顔をしてるのだろうか。
「恋人だ」
ユリアは箸を落とす程にビックリしている。
空中で俺は箸を華麗にキャッチ。
世界で最強と呼ばれる一人に数えられるリリアと恋人なんて言ったら驚くのが普通だよな。
箸をユリアに渡すと少し睨まれてしまった。
「やはり貴方は只者ではないようですね」
「言っただろ、俺は最強だって」
「面白いですね」
弁当を食べ終わり、片付けを二人でやった後にユリアは立ち上がると黒剣を召喚する。
「さぁ、続きをやりましょう」
俺はクロに剣を作ってもらいながらユリアに問いかける。
「さっきまで手加減してたんだろ?」
「なぜ?」
「バレてないとでも思ったのか?」
「いいのですか? 全力を出しても……」
「何を躊躇ってんだ? 最強になりたいやつが聞いて呆れるな」
他人の能力をコピーして、さらに本人の力も上乗せ出来る能力、本当にチートだ。
正直に言うとこれ以上があったら困るからカマかけました。
本当にこの世界は理不尽だ。
こんなハイスペックな奴を産んだ親を見てみたい。
『スタイル【固定】魔力【リリア・フィールド】能力【ユウカ・サクラギ】』
これだからチートは。
雰囲気が混ざり合う、俺の剣術にリリアのバケモノじみた魔力、ユウカのチートスキル。
それに自身の力も上乗せか。
ユリアは口を開く。
「人を見る目が化物を見る目に変わる姿を貴方は見たことがありますか? 私は何度もこの力を使って見てきました」
この力を習得するのにどれだけの努力をしたんだろうか、器が小さければ壊れる程の力だ。
俺も昔は強かったって言われるんだろうか。
昔は最強、今は凡人。
インフレが強くてちょっと俺はついていけないです。
ユリアは何故か嬉しそうに微笑む。
「ですが、貴方は違うようですね、私を真っ直ぐに見てくれています」
ユリアが横の方向にスッと黒剣を縦に振るうと魔力の斬撃が水を切り裂きながら進み遠くの方で爆発を生む、その衝撃がこっちまで届いてくる程の威力。
「これは負けを認めて欲しくて使ったのですけど」
最初この世界に来た時、俺は最弱だった。
「初めてですね、この力を使ってもまだ……」
確実に死ぬと言われても挑まなければならない戦いなんて……もう数え切れない。
『勝つ気でいる人なんて』
ここら辺でまた限界超えとくか!
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