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剣の勇者と闇の勇者
しおりを挟む気だるそうな男。
『おいミライ……アイツは誰だ?』
俺はモニターに映る男に指を向ける。
『ミライちゃんでしょ! マッタク』
やれやれと首を振るとミライは素直に応えてくれるようだ。
『仮面の男の人は無知ですね。あの人はリベル・トレファスさんで優勝候補の一人です』
一人で優勝? リリアが出てる時点で優勝は明白な気がするが。
『因みにリリアさんだけは相手の国の人に物理的な魔法を放つ事は禁止されています』
『なん、だと!? リリアだけ?』
『人類でトップに入る人に制限かけないと無双で終わりますからね』
確かに。
リリアは精霊達とも仲が良く、リリアの頼みで何度も『限定精霊化』もしてるって言ってた。
本気出したら一瞬で終わるだろうな。
それにしてもリベル・トレファス。
異様な奴だ……動きから分かるが優勝候補とはとても思えない。
周りを囲まれているにも関わらず警戒する様子も見えない、剣の持ち方さえも様になっていない。
あんな奴が優勝候補?
俺の違和感はいったいどれだけの人が気づいているのか……。
欠伸をしながら敵を見る。
『さっさとかかって来なよ、こっちから行くのが面倒なんだよね』
キンッ! っと何かを弾く音がした。
既に俺の身体は動いている。
やっぱり固有スキルは便利すぎる。
強そうな人が俺の視界に映るとその人の瞳は赤いオーラの霧がかっていた。
なんだっけ? 『精霊化』か。
一人で納得するとワールドクエストで習得してた事を思い出し、使ってみることにする。
この仕様ゲームには無かったんだよな。
『精霊化・オン』
目の前が一気に明るい紫色のモヤが掛かると同時に身体が異様に軽くなる。
「いやぁ、これ凄いね」
目の前の強そうな人が一歩後退する。
「じゃ、面白そうだからこの力を試す為に一気に行くね」
目の前のメニュー欄からスキルを選択。
スキル欄からお目当てのスキルをタッチ。
『オペレーョン・ソード』
俺自身、何をやってるかなんて分からないが手には何かを斬ったという手応えと激しく鳴り響く音だけが伝わってくる。
視界が止まる。
全て終わったという事だろう。
ホッと息を吐くと何か手に違和感がある。
「げぇ! 刺したままじゃんか」
剣の先にぐったりとしてる男が刺さっていた。
その男は薄らと目を開けると。
『バケモノ』
一言呟いて光の粒子になり転移していった。
俺は男の居た所を剣で再度斬る。
『お前らが雑魚なだけじゃん』
ゲームが現実になって、楽しかったんだけどな。
『デフォルト設定以外、オールオフ』
紫のモヤが晴れると少しの気だるさが残る。
能力とか使うのはやっぱり楽しい。
何年も同じ事やってれば流石に飽きて来るからな。
魔力が生まれた時から固定されるモブキャラ達、俺はレベルを上げるだけでその魔力が上がっていく。
ワールドクエストをクリアする度に貰える資格や称号、能力の恩恵もチートじみている。
欲しい物は全て手に入るヌルゲー。
物思いにふけっているとピコンとマップが目の前に表示される。
【高魔力反応アリ】
詳細をタッチするとマップ上に見惚れるほどの綺麗なお姉さんが映る。
誰これ!?
俺はすぐさま名前を表示する。
【リリア・フィールド】
家名がフィールド……って事は俺の婚約者達と関係があるのか? 姉妹とか?
リリアさんかぁ。
ワールドクエストを開いて報酬リリア・フィールドで検索する。
【レベルエラー】
おっ、かかった! 条件は……。
【Lv0クレス・フィールドの討伐】
いや、またコイツかよ!
リリアさん、ユリアちゃん、ティアちゃん。
欲しい物は人でも物でも力でもワールドクエストの報酬で手に入る。
俺の婚約者達が集まってるし、結婚する前に性格でも確認しに行くか!
俺はスキップしながらで三人のもとを目指す。
『おぉっと、トレファスの剣技はまさに目にも止まらぬ! という感じですね、あの状況を剣一本で片付けましたよ。謎仮面さんはどう思いますか?』
『まさに気持ち悪いという感じだな』
『気持ち悪いとは?』
『アイツが精霊化を発動した後の動きが機械のように正確で、焦りや殺気……そういう感情が乗ってもいなければ自分が斬る相手を見てもいないように感じる』
『先程とは違いマトモな感想に私は少し困惑してますが! 解説に戻ります、もうそろそろ乱入者決定戦が開催されます。模擬戦争に乗り込んで世に名声を轟かせるのは誰だぁぁぁぁ!』
今まであんな奴見たことない。
何かに操られてるような感じさえする。
モニターのスミに追いやられたリデルの様子は操られてるような感じはなくスキップまでして戦っていた姿とは別人のようだ。
「ミライ、乱入者ってなんだ?」
「それも知らないんですか?」
ミライは闘技場の入場口を指す。
ゾロゾロと人や檻に入れられた魔物達が入って来た。
「今から開催されるのは模擬戦争に乱入する権利を獲得する為の催しです。二人組で参加するのですが……まぁ、各国から集められた精鋭達に適うわけがないのに参加する人達は後を絶ちません」
無駄な事ですよねと苦笑いするミライ。
『さぁ、勇猛果敢なる乱入者達に大きな拍手を!』
ミライの実況が合図なのか【10】の数字が現れカウントを始める。
会場中が拍手に包まれる中、串焼きを一本取り出して串焼きが入ってる袋をミライに預ける。
「えっ? なんですか、これ?」
困惑してるミライを他所に俺は解説席から身を乗り出し勢いよく手すりを蹴る。
カウントはゼロになり、見渡す奴ら全員が臨戦態勢を整えている。
無事に中央に着地すると周りのヤツら全員の注目を集めたのか殺気が降り注ぐ。
俺と同じように会場内から飛んで来る奴は居たらしく俺の隣にも一人飛び降りて来た。
そいつはフードを被り、俺と同じように仮面を付けていた。
その仮面には見覚えがある。
『やぁ、クレスくん。これ二人組で参加だよね? 僕もいいかな?』
『あぁ、ランカーまでの肩慣らしだからな! 闇の勇者と剣の勇者……最強じゃないか!』
「ふふ、そうだね」
実況中のミライの声がする。
『謎の仮面が二人、バトルドームの中央に降り立ちました……いや、待ってください……あの仮面……謎仮面さんの隣にいるのは闇の勇者だぁぁぁ!』
仮面を付けたユウカが闇の勇者と即バレして周りのヤツらの緊張感が増していくのを感じる。
熱を帯びる会場で俺は串焼きを頬張ると串を構える。
さっさと終わらせるか。
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