天才な妹と最強な元勇者

くらげさん

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未来を守る現代魔法

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 俺は今、異世界に繋がるはずのゲートの前に立っている。

 最後のクエストはなんだったか?

【邪悪に染まりし剣の勇者を討伐しろ】

 高校の帰り道にミライが嬉嬉として話していた【リアルタイム】のエンドコンテンツ。

 それが俺とミライの最後の別れだった。


 苦々しく残る記憶。

 リアルタイムを運営してたはずの会社も存在が消えたのかのように無くなっていた。

 そして周りの奴らも……俺のように魔法の影響を受けなかった魔法使いとは違う。

 一般人は最初からミライが存在してなかったように振舞っていた。

 今でも思い出す、ミライの笑顔は眩しくて。


『この世界ではね、魔法や現実ではありえない動きが出来るんだよ! ねぇ、ヒカリ君もやろうよ』


 それを奪った奴等からミライをこの世界に連れ戻す。

 やっと迎えに行ける準備が整った。


 この世界に異常が発生したと神からのお告げ、異世界からの魔力干渉を受けたと。

 社会の闇でひっそりと生きてたはずの現代魔法使い全てにそのお告げは感知された。

 リアルで魔法を使っていた俺はリアルタイムというゲームで魔法を使う気も起きず、ミライの誘いを断っていた事をこれほど後悔したことはない。

 俺がその場に居ればこんな事にはならなかったんじゃないか。


 異世界で俺の家系に伝わる星天魔法がどれ程の力を持つかわからない。

 今集められているのは世界各地から集められた上位等級の魔法使い。

 全員が大切な者を奪われた者達だろう。

 いつもは殺し合いをしてるはずの敵同士の魔法使いが異世界に向けて殺気を送っている。

『異世界の奴らをぶっ殺すぞ』

 俺は先頭に立ち、ゲートに足を進めた。




 
 扉が開くと目の前に集団がいた。

 十人か?

 そいつらは仮面をしている俺を視界に収めると。

『おい、俺達の世界から取ったものに覚えがあるよな! 返してもらいに来た』

 一人の黒髪の男がその集団を代表して声を上げる。

 コイツ……何の話をしてるんだ?

 何の話か理解は出来ないが魔王として雰囲気は大切だと思った。

『取ったものなどいちいち覚えてるはずが無かろう雑魚共! 俺を誰だと思ってるんだ? 魔王の前だぞ、地に頭を付けて許しを乞うのが先ではないか?』

「チッ、コイツは話にならないな」

 その男は舌打ちをすると左手をズボンのポケットに入れる。

 銀色のコインを一枚取り出した。


『俺は一等星の魔法使い天童光てんどうひかりだ。異世界の奴らに捉えられた人々を助けに来た』


 コインを前に出すとピンと親指で弾く、するとコインの形は前の世界で見覚えがある形に変形されていく。

「銃か」

 そいつは銀の銃を空中で掴み、銃口を俺に向けていた。

「お前、コレが何か分かるのか?」

 あっ、やべ。

「知っていた所で些細な事だろ?」

「いや、充分だ。情報は多い方がいい……俺達はこの世界に来たばかりだしな。お前を殺して情報を取ることにする」

 他の世界から来た? また誰かが召喚したのか?

 コイツらは使えるな。

「今は試練中だ、ルールに従え」

「ルール?」



 俺はそいつらに試練の詳細を教えた。

 水の試練の詳細も。

「それは俺達にどんなメリットがある。お前を今から殺して情報を奪えば済むことだ」

「お前らは寝る事が死に繋がる日を何年続けた事があるんだ?」

「何を言ってるんだ?」

 元の世界に魔法使いが居たなんて信じられないが、ある程度の予測は付けられる。

 大召喚で他の世界の奴等が流れ込んできたのを俺は知っている。

 確か……ユウカの妹がそれの巻き添えを食らったとユウカが話して居たな。

 その世界の奴らなのかもしれない。

 どちらにしろこの世界よりは随分ぬるい世界には違いはない。

「元の世界で決められた時間に殺し合いを始めるような奴らに俺が殺される訳ないだろ」

 コイツらの中にも死線を潜ってきてる奴は居るだろうが、俺とは場数が違う。

「もう一つ、お前ら用にルールを追加してやる。全ての試練をクリアしたら俺がお前らに協力してやってもいい」

「そんな美味い話を信じろと?」

「あぁ、クリア出来たらの話だがな」

 今更コイツらがどこの世界から来ようが俺には関係ない。

『試練スタートだ』

 俺の隣に居たアオイが俺の時とは難易度を格段に下げた雨を降らせる。




 仮面の男のスタートの合図で雨のカーテンが目の前に出来上がった。

『どうするんだヒカリ?』

 トパーズが俺に話しかける。

 魔法使いは素性がバレることを恐れて宝石の名前で呼びあったりするが俺は魔法使いでは珍しく本名を使っている。

 ゴツイ男がトパーズとか名乗るのはどうなんだ? と毎回思う。

「あの偉そうな安い仮面の奴よりも隣にいた白い仮面と水の精霊神? の方が厄介そうだ」

「あぁ、俺達も魔力が全然感じない奴がめちゃくちゃ偉そうだったから躊躇っちまった。倒すならまずはアイツと思ったんだがな」

 トパーズの言い分も分かる。

「まず話に乗ってみないか? この世界の事を全く知らない俺達よりも仮面の男は色々と知ってそうだ」

 他の奴らもトパーズと同様に頷いて賛成を示す。

 雨に一滴も触れずにか、難易度が高すぎるとは思うが。

「この試練は俺が行く」

 俺は左手の銃に魔法式が込められたカートリッジを装填する。

 雨に向けて引き金を引く。

 現代魔法はその工程で魔法が発動する。

『ブーストトリガー』

 身体が軽くなる。


 引き金を引く度にブーストが重なり合う。

 ゆっくりと進む世界で雨の中に踏み込む。

『シールドトリガー』

 頭上に魔法障壁を展開。

 無数の雨がその障壁をいとも容易く貫通してくる。

 マジかよ!


 雨をギリギリで避けながらシールドを何度も展開する。

 息をつく暇もなく降り注ぐ雨を駆け抜ける。

 視界を遮る雨は自分が今どこに居るかもわからなくなる。

『ゲートトリガー』

 視界に線が浮かび上がると最適な出口を導き出す魔法。

 トリガーの消費が半端ないな。


 シールドとブーストのトリガーを何度も使いながら進む。

 まだか、まだか。

 結構進んでるはずなのに出口が見えない。

 もう弾が切れそうだ。

 自分にかかっている魔法もカートリッジに弾が無くなればその制約で全て途切れる。


 一か八かの賭けに出るしかないな。

 最後のトリガーを振り絞る。

 真上に銃口を向けてファイナルトリガーを引く。

 銀色の銃が熱を持ち赤い魔力を放つ。

『星天レグルストリガー』

 光を越える獅子の咆哮は怒号と共に雨を吹き飛ばす。



 仮面の男は空中に漂う椅子に乗り俺を見下ろしていた。

 俺はゴールに付いていたのかギリギリの所でカーテンが降りる。

『試練はクリアです』

 鈴の音のような綺麗な声が俺に試練の終わりを告げる。

「あんたは何かやらないのか」

 白い仮面の女は笑い声を零すと。

「私は魔人ですけど悪魔ではないですよ。別の世界の人ですか……試練頑張ってくださいね」

 悪魔と魔人ってどう違うんだ? と思ったが今のままじゃ多分コイツらに勝てないと自覚した。



 後ろの雨が止むと何時間も掛けて通ったと感じた道が帰る頃にはやたらと短く感じた。

 異世界にはこんな化物共がいるのかよ……強くならねぇとミライを取り戻す前に終わっちまうな。

『待ってろよ……ミライ』

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