198 / 201
礼装
しおりを挟む『これだからチート持ちは嫌いなんだよ』
ユリアが精霊神に認められて良かった。
こんな不様な姿は見せれないからな。
最強を言い張るのは本当に疲れる。
ヒカリを見ると頭上の星から膨大な魔力を吸っている。
……そんなんありかよ。
カチャリと音がした。
まぁ、サクッと超えるか。
『星天レグルスバースト』
心が痛い、身体が痛い。痛みの中で暖かな声が聞こえる。
『立ちなさいユリア、失う前に』
目を開けると銃を弾くカチャリとした音が耳に響く。
ティアの額に突き付けられた銃。
間に合わないと手を伸ばす。
『儀式召喚』
その瞬間に目の前が赤く広がる。
赤く燃えるように。
『私が授けましょう、守りの奇跡を』
一瞬でティアに手が届く。
驚く間もなく私は守るようにティアを強く抱きしめ目を閉じる。
いつまで経っても弾の衝撃が襲ってこない。
『貴方は誰?』
目を開けるとティアが疑問顔で私を見上げていた。
ティアから感じる違和感と身体を包む真っ黒な濃密な魔力に目が止まる。
「ティア、この力は」
私が託したから……逃げた選択の答えがこれなんだ。
「ティアごめん」
貴方はどれだけの代償を払ったの?
ティアを立たせて後ろに居るはずのヒカリを見る。
驚きと共に固まったように動かなくなっていた。
「何をした」
動きを取り戻したヒカリは私に向かって声を出す。
何をした?
私はやっと異変に気づく。
「何これ!?」
何時の間にか赤が彩る着物を着ていた。
「あれだけの星の力を授けた星天魔法を消し去るなんて……どうやったんだよ!」
あぁ、そういう事か。
リリアママが言ってた精霊神達の奇跡を纏う力。
守りの奇跡。妖精の鎧。
『精霊神様、ティアを助ける事は出来ますか?』
私は心の中に感じる精霊神に問いかける。
『大丈夫です。愛の奇跡を授けましょう』
目の前が白金の世界に変わる。
『妖精の慈愛』
着物が赤の色を落とし、白金の装飾が施される。
『この力はユリアの想いと等価で対象の傷を癒します。失った物を取り戻すにはそれなりのっと、言うまでもありませんね』
私はティアの手に触れながら思い想う。
白金の光がティアを包む。
ティアの笑顔は私の希望で、言葉はいつも背中を押してくれる。
支えて貰ってばっかりだけど私にはティアが居ないとダメなの。
私達って今更言えないけど。
好き、好き。
ティアがもしお姉ちゃん嫌いって言ったら私は……これは考えるのやめようかな。
ティアの事を考えるだけでこんな状況なのに幸せに満たされる。
私はティアが大好き。
真っ暗な魔力がスっと消えるとティアの瞳に色が戻る。
『お、ねぇちゃん、また間違えてる。私達は、だよ』
「ティア」
ティアのブレスレットがパリンと音を立てて砕け散る。
「私は試練不合格になったみたい」
シュンとなるティアの頭を撫でてヒカリに向かい合う。
「ティア、私達二人で超えるよ」
「私は最初からそのつもりだったよ」
やっと私はティアと肩を並べられる、いや。
「今は私の方が強いよね」
ムッと頬を膨らますティアは本当に可愛い。
『いい加減にしろよ。俺を除け者にすんじゃねぇ』
ヒカリの真上の星が粒子になって消えると全ての魔法がヒカリの中に入っていく。
『ゾディアックコール』
ヒカリの漏れでる魔力が一切無くなるが濃密な魔力が核のように存在することがわかる。
「いつも私はお姉ちゃんの背中を追いかけてるんだよ」
「え?」
ティアの身体から黒の魔力が溢れ出る。
『最凶転化』
白と黒が彩るドレスを魔力で創り出すティア。
「お姉ちゃんの真似」
あの力を真似というだけで私に笑顔を見せながら使いこなすティアに戦慄する。
『これで一緒に戦えるよね』
ヒカリは私達に両手の銃を向ける。
私は何も無い空間に手を入れて黄金のオーラを纏う黒剣を取り出す。
『血統解放リミテッド・アビリティー』
私が精霊神の力を使いこなすには癇に障るけど今はこの人の力を少し借りるしかない。
少し口が悪くなるのが嫌だけど。
『お前ら全員なんなんだよ! 俺の方が強いに決まってる! 今すぐ消えろ!』
カチャリと銃の引き金を弾いた。
空間が弾け飛ぶような膨大な魔力の篭った弾。
『その魔力……貰いますよ』
僕は自分の剣にヒカリの魔力を乗せ加速させる。
『精霊化』
ヒカリの驚く顔はこれで何度目か。
「粘ったかいがありますね。やっと貴方の全部の力を把握出来ました」
僕はアクア様に視線を飛ばすと遠くに居たヒカリが瞬時にアクア様と入れ替わる。
ここは僕の能力の範囲内。
『魔力空間』
ドームのような膜が僕を中心に広がる。
ヒカリが空間の中へ入ると今までの力が全て消え失せた事に困惑を隠しきれないようだ。
『これで貴方も魔力無しの仲間入りですね』
ヒカリは僕の声に反応して大声を出す。
『『なんなんだよ!』』
もう限界なんですが。
三十人も相手に戦ってたら普通そうなるよな!
うん、俺は頑張った方だ。
なに? ゾディアックコールって、魔力量自体も規格外なんだが。
俺の心に直接誰かが語りかけてくる。
『あら、諦めるのですか? いつものユウ様じゃありませんね』
「クロか……お前ユリアの所に浮気したんじゃなかったのか?」
『ジャンケンという物で今日は私がユウ様の隣を独占する権利を貰っているので他の精霊に譲る気はないですね』
そうかよ。
『私の能力は戦闘向きでは無いので他の精霊が良かったですか? それなら変わって貰いに行きますが』
明らかに声が暗くなるクロ。
「俺の本当の力を使いたい。少し付き合ってくれ」
『はい、ユウ様』
白銀のオーラが俺を包む。
『限定精霊化』
仮面を外すと俺の姿が変わる。
瞳は黒く、銀髪の髪は黒色に染まる。
そして限定精霊化をしてるのに一切の魔力も感じない身体。
『ユウ様の邪魔にならないように魔力は与えません』
流石クロだ、分かってるな。
「お前は誰だ!」
三十人ものヒカリの声が重なる。
いきなり目の前の奴が魔力纏って姿が変われば驚きもするだろ。
懐かしく馴染む身体だ。
『俺か? 俺は剣の勇者ユウ・オキタ』
これは最強の名を欲しいままにした時代の姿。
あぁ、負ける気がしねぇな。
黄金に輝くオーラを纏う黒剣をヒカリに向け呟く。
「この状況で僕が貴方に言う言葉は決まってますね」
「貴方が私達より強い? 冗談でしょ」
剣をヒカリに向け、呟く。
『『『手加減してやるからかかってこいよ』』』
0
あなたにおすすめの小説
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる