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感謝
しおりを挟む『さぁ、やって来た最終局面! 模擬戦争で一時期話題になっていた仮面の男が今、黒と奇跡を纏う姉妹の前に現れたァァァ!』
盛り上がるコロシアムの会場。
モニターに映るのは仮面の男と姉妹。
『それを実況するのはぁ~ミライちゃんだよぉぉ!』
ミライの横に転移の光が降り立つ。
「うぉっと! あれ? ヒカリ君だ。ボコボコにされてたね」
ミライはニコニコと笑いながらヒカリにいつも通りに接していく。
もう無くなってしまっていた筈のいつも通り。
「見ない間にカッコよくなって……って、なに泣いてんの!?」
「なんでもねぇよ!」
「やっといつも通りだ。ヒカリくんさっきまでカッコつけてたから」
「……ただ俺はお前の事をずっと」
「あっ、そう言えばヒカリ君が来たら伝えてってお姉ちゃんに言われてたんだ。『後でお仕置き』だって」
「ゲッ! ここユウカさんも居んのかよ! ホントに」
ヒカリはミライから目を逸らし下を見る。
気を張りつめた物が溶けて涙が溢れ出る。
『ホントに良かった』
黒を纏う剣と奇跡を宿す剣、その二つが剣の勇者に詰める。
奇跡が降りる。
『模擬戦の時とは違う!』
最凶が降りる。
『私達は二人で』
二つが重なる。
『『最強になる』』
剣の勇者が振る剣は無音。
全てを置き去りにして、全てを食らう。
『おいおい、それは寝言か?』
黒剣で弾き返して余裕を見せる剣の勇者。
剣の勇者を奇跡の炎が囲む、その中で転移を繰り返し縦横無尽にユリアは剣を振る。
奇跡の風が力を貸し、奇跡の水が襲う。
奇跡の地が相手を支配し、奇跡の光が全てを癒す。
「あと少し」
奇跡を縫うユリアとは対照的にティアは最凶は力を振るう。
剣の勇者を飲み込む程の魔力を吐き出して全てを剣に込める。
瞬きする頃には全てが終わるかのような剣の撃ち合い。
「あと少し」
その全てを弾き返してなお研ぎ澄まされる黒剣。
段々と威圧感も少なくなって、そこに居るのかも怪しくなっていく。
目を離せば消えてしまいそうな。
そんな中、姉妹の耳元に同じ声が響いた。
『気は抜くなよ。何時の間にか死んでるぞ』
ゾワっとした瞬間に剣を止めて姉妹は後ろに下がる。
姉妹の目の前にただ立っている剣の勇者が一人。
その周りの自分達が先程まで立っていた空間。
地面は抉れ、その空間がブレている事に驚愕する。
剣の勇者を見失えば、その瞬間に死が待ち受ける。
その事実を噛み締めて姉妹は剣を握り直す。
『『あと少し』』
姉妹には勝つ事しか……勝てる事しか頭を過ぎらない。
負けること自体がありえない。
奇跡と最凶が混じり合う。
姉妹の魔力が一定に引き上げられ、さらに上がっていく。
空を撫でるように剣を構える。
動きもズレもないかのようにシンクロしていく。
『『もう超えるよ』』
一直線に姉妹は剣の勇者と距離を縮める。
荒々しくも絶対の力が籠る剣。
全ての魔力を込めた二撃。
剣の勇者は理不尽を切り裂く黒剣を持つ。
次元を切り裂く黒剣はその二撃を迎え撃つ。
『『パパ大好きありがとう』』
剣の勇者たらしめる剣。
『そんなん反則だろ』
黒剣は金のエフェクトを残してパリンと弾け飛ぶ。
仮面が衝撃で割れて落ちる。
その瞬間に精霊神のクロは闇を晴らしクレスは転移した。
「お姉ちゃんはパパってなんで分かったの?」
「だってティアが言ったんだよ」
首を傾げるティア。
「私もティアみたいに素直になろうって思ったの」
「素直に?」
『だって私達のパパは剣の勇者なんでしょ?』
『うん』
ティアは嬉しそうに頷いた。
「あぁ負けた!」
会場が盛り上がる中で俺は負けた事実を噛み締めた。
ユウカとリリアがスっと俺が転移したコロシアムの席に現れた。
「クレス君負けた感想はどうかな?」
「お兄ちゃん負けちゃったね」
なんでお前らそんなに嬉しそうなんだよ。
でもそうだな、戦いで負けたってのに。
『清々しい気持ちだ』
めちゃくちゃ嬉しそうなリリア達を置いて俺はメイド喫茶探しに行こうと思った。
俺の最大の楽しみだ。
俺の特殊スキルを発動する時が来たようだ。
俺はセンサーに従って走る。
『いらっしゃいませ~』
俺は肩で息をしながらメイド喫茶に入る。
あれから何時間掛けただろうか、ずっと迷っていた。
ティアとユリアの姿も見える。
可愛い娘達にご飯を運んで貰えるなんて、ここは天国ですか?
家でもお手伝いしてるが、まぁメイド服の娘達は可愛い!
『ティアとユリア指名で! オススメをくれ!』
戦闘の後なのに疲れも感じさせずキビキビと働いている娘達。
「パパ、このお店そんな指名なんてないよ」
「はい、パパが好きなコーヒー牛乳」
可愛いメイド服を着た服を恥じらうようにどう? と見せてくる娘達。
「可愛いな!」
「「ありがとう、それじゃ少し待ってて」」
シンクロの名残か声が揃う二人。
ワクワクしながら娘達の仕事ぶりをユリアが持ってきてくれたコーヒー牛乳を飲みながら待つ。
定番のオムライスをティアが持ってきてくれた。
「はい、あ~ん」
「そんなサービスまで!」
「違うよ、パパだけだよ」
俺はティアからあーんして貰いメイド喫茶を満喫する。
「ユリアは!」
近くに来ていたユリアに目線を飛ばす。
「しょうがないわね。はい」
パクッとユリアが差し出したオムライスを食べる。
美味い!
一息ついた所でティアとユリアは仕事に戻ってしまった。
負けたのに俺はこんなに幸せでいいんだろうか。
『リミテッド・アビリティー』
俺は何も無い空間から金のオーラを纏っていない折れた黒剣を取り出す。
『本当に使えねぇ能力だな』
これで俺の物語はやっと終わりを迎えた。
『ありがとう』
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