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第四話 恋の終わり
獣王国の国王陛下に離縁の申し出をして、私は聖王であるホアン様に視線を送りました。
エスコートしてくださったのはホアン様ですが、私の背後に侍女達が控えているように、猊下の後ろにも神官達が控えていました。
ひとりの女性神官が離縁状を手に進み出ます。
「王太子妃殿下の魔力による白い結婚の証明は、僭越ながら私が確認させていただきました。書類もすでに整えてございます。後は聖王猊下の御前で国王陛下が許可を出し、王太子殿下の署名をいただければ完了です」
「しかし、しかし、それは……」
顔面蒼白になった国王陛下とは違い、大広間の人々は私の離縁を歓迎する気配です。
結ばれた番は必ず幸せになり、周囲にも福をもたらすというおとぎ話を信じているのでしょう。
ヘレミアス様も顔色を失っていらっしゃいました。
「国王陛下、今さらです」
ホアン様が口を開きます。
白銀の髪と白銀の瞳は国王陛下と同じですが、顔立ちはまるで違います。ホアン様の顔立ちは亡くなられた前の王妃殿下にそっくりなのだと、私の母が言っていました。
ヘレミアス様は黄金の髪と黄金の瞳は新しい王妃殿下、顔立ちは国王陛下に似ていらっしゃいます。
白銀の瞳で側妃ペサディリャ様を射て、ホアン様は言葉を続けます。
彼女は私と同じ黒い髪です。
もっともそれはなんの意味もないことです。彼女は黒髪でなくても彼に選ばれたでしょうし、私が黒髪でなかったとしても彼には選ばれなかったのでしょうから。
「他国の姫君と縁談を結びながら、番だからと言ってほかの女性を迎え入れた時点で不義理をしているのです。カロリーナ姫はこの国の民ではない。番だと言われてすべてを許せるわけがない。……母とは違うのです。戦にならず、共同事業の橋が完成するまで待っていただけただけでも感謝しても感謝し足りないくらいでしょう?」
「ホアン……」
救いを求めるかのように息子の名前を呼んだ国王陛下に、神官達が鋭い眼光を向けます。
神官達はホアン様が第一王子だから聖王に選んだのではありません。ホアン様自身を認めたから選んだのです。
自分達の選んだ指導者に対して尊敬の念を求めるのは当然のことでしょう。
「あ、ああ……聖王、猊下……その通りだ」
国王陛下がヘレミアス様を見つめました。
ヘレミアス様は、黄金の瞳に私を映します。
ええ、隣にいる側妃ペサディリャ様の視線に気づくまでのことでしたが。
三年目の結婚記念日を祝う夜会で、私とヘレミアス様は離縁いたしました。手続きをしてくださったのは、結婚式のときと同じで聖王のホアン様です。
最後に私は、番避けの首飾りを外して元夫に返しました。
黄金の髪、黄金の瞳の嘘つきな王子様が受け取ります。
「カロリーナ姫、これまですまなかった。これからは幸せになってくれ」
「……ええ、もちろんですわ。王太子殿下のご多幸をお祈りしております」
本当は期待していたのです。
獣人族もヒト族も、十五歳ではまだまだ未熟です。
だからヘレミアス様は私が番だと気づかなかったのではないかと。側妃ペサディリャ様はニセモノの番で、なにかの誤魔化しで本物だと見せかけているだけなのではないかと。
だから、だから……結婚した後で番避けさえ外せば、私が本当の番だと気づいてくださるのだと信じていました。
そう信じずにはいられなかったのです。
だって十二歳のあの日、番避けをくださったヘレミアス様に、『番殺し』を飲むと言ってくださったヘレミアス様に、私は恋をしたのですもの。十五歳のときに番でないといわれても、十八歳で嫁いで初夜に捨て置かれても、恋をしたままだったのですもの!
三年間の白い結婚生活で涙も恋心も枯れ果てたつもりでいたのですけれど、それでも心の奥底で期待していたのです。
番避けさえ外せば、番避けを外した状態で会いさえすれば、私がヘレミアス様の番だと判明するのではないかと、夢見ていたのです。
ええ、私は大莫迦なのですわ!
すべての希望が潰えた私は、国王陛下ご夫妻と王太子殿下と側妃様に別れの挨拶をして、大広間から出て行きました。
ホアン様は最後まで私をエスコートしてくださいました。
二代続けての番の結びつきに歓喜する人々の中には何名か、二代続けて政略結婚を破壊したことが引き起こすであろう問題を感じ始めたものもいるようでした。
エスコートしてくださったのはホアン様ですが、私の背後に侍女達が控えているように、猊下の後ろにも神官達が控えていました。
ひとりの女性神官が離縁状を手に進み出ます。
「王太子妃殿下の魔力による白い結婚の証明は、僭越ながら私が確認させていただきました。書類もすでに整えてございます。後は聖王猊下の御前で国王陛下が許可を出し、王太子殿下の署名をいただければ完了です」
「しかし、しかし、それは……」
顔面蒼白になった国王陛下とは違い、大広間の人々は私の離縁を歓迎する気配です。
結ばれた番は必ず幸せになり、周囲にも福をもたらすというおとぎ話を信じているのでしょう。
ヘレミアス様も顔色を失っていらっしゃいました。
「国王陛下、今さらです」
ホアン様が口を開きます。
白銀の髪と白銀の瞳は国王陛下と同じですが、顔立ちはまるで違います。ホアン様の顔立ちは亡くなられた前の王妃殿下にそっくりなのだと、私の母が言っていました。
ヘレミアス様は黄金の髪と黄金の瞳は新しい王妃殿下、顔立ちは国王陛下に似ていらっしゃいます。
白銀の瞳で側妃ペサディリャ様を射て、ホアン様は言葉を続けます。
彼女は私と同じ黒い髪です。
もっともそれはなんの意味もないことです。彼女は黒髪でなくても彼に選ばれたでしょうし、私が黒髪でなかったとしても彼には選ばれなかったのでしょうから。
「他国の姫君と縁談を結びながら、番だからと言ってほかの女性を迎え入れた時点で不義理をしているのです。カロリーナ姫はこの国の民ではない。番だと言われてすべてを許せるわけがない。……母とは違うのです。戦にならず、共同事業の橋が完成するまで待っていただけただけでも感謝しても感謝し足りないくらいでしょう?」
「ホアン……」
救いを求めるかのように息子の名前を呼んだ国王陛下に、神官達が鋭い眼光を向けます。
神官達はホアン様が第一王子だから聖王に選んだのではありません。ホアン様自身を認めたから選んだのです。
自分達の選んだ指導者に対して尊敬の念を求めるのは当然のことでしょう。
「あ、ああ……聖王、猊下……その通りだ」
国王陛下がヘレミアス様を見つめました。
ヘレミアス様は、黄金の瞳に私を映します。
ええ、隣にいる側妃ペサディリャ様の視線に気づくまでのことでしたが。
三年目の結婚記念日を祝う夜会で、私とヘレミアス様は離縁いたしました。手続きをしてくださったのは、結婚式のときと同じで聖王のホアン様です。
最後に私は、番避けの首飾りを外して元夫に返しました。
黄金の髪、黄金の瞳の嘘つきな王子様が受け取ります。
「カロリーナ姫、これまですまなかった。これからは幸せになってくれ」
「……ええ、もちろんですわ。王太子殿下のご多幸をお祈りしております」
本当は期待していたのです。
獣人族もヒト族も、十五歳ではまだまだ未熟です。
だからヘレミアス様は私が番だと気づかなかったのではないかと。側妃ペサディリャ様はニセモノの番で、なにかの誤魔化しで本物だと見せかけているだけなのではないかと。
だから、だから……結婚した後で番避けさえ外せば、私が本当の番だと気づいてくださるのだと信じていました。
そう信じずにはいられなかったのです。
だって十二歳のあの日、番避けをくださったヘレミアス様に、『番殺し』を飲むと言ってくださったヘレミアス様に、私は恋をしたのですもの。十五歳のときに番でないといわれても、十八歳で嫁いで初夜に捨て置かれても、恋をしたままだったのですもの!
三年間の白い結婚生活で涙も恋心も枯れ果てたつもりでいたのですけれど、それでも心の奥底で期待していたのです。
番避けさえ外せば、番避けを外した状態で会いさえすれば、私がヘレミアス様の番だと判明するのではないかと、夢見ていたのです。
ええ、私は大莫迦なのですわ!
すべての希望が潰えた私は、国王陛下ご夫妻と王太子殿下と側妃様に別れの挨拶をして、大広間から出て行きました。
ホアン様は最後まで私をエスコートしてくださいました。
二代続けての番の結びつきに歓喜する人々の中には何名か、二代続けて政略結婚を破壊したことが引き起こすであろう問題を感じ始めたものもいるようでした。
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