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冒険者始めました編
11・冒険者ギルドへ行こう!
『黄金のケルベロス亭』は朝食付きだったので、翌朝はロビーで食べました。
ほかのお客さんが食べている料理の量があまりに多かったので、あれは大盛りですか? と宿の人に聞いたら、通常の半分です、と言われて驚いた。
そのお客さんはラトニー王国の人じゃなかったみたい。
結局半分の半分にしてもらい、さらにラケルと半分こした。
シオン君が話を通してくれていたようで、ラケルの分のお皿も用意してくれていたから助かったな。
宿の朝食は、パンと野菜スープとぶ厚いステーキっぽいの。
素朴な味わいで普通に美味しかった。
パンはやっぱり黒くて酸味のある硬いパンでした。
大食らいの国だからか無闇に量は多かったけど、味付けの好みとかは前世、日本に似てるんじゃないかと思う。
というか、そうじゃなきゃわたしの魔石ごはんを美味しいとは思わないよね。
──泊まっている部屋の深皿は買い取りました。
実は、買い取ったと言いつつ、わたしはお金を出していない。
ベルちゃん経由で聖神殿に当座の生活費としてもらった(神獣様のお客はモンスターだったってことにするはずなのに良かったのかな?)金貨二枚、銀貨七枚、銅貨三百枚の前世で三十万円くらいになるお金があったのだけれど、宿賃も食器の買い取り代金も全部シオン君が出してくれている。
魔石ごはんを作ったお礼だって言われても、釣り合いが取れているのかどうか。
「俺のお皿! 持ってくぞ!」
朝食のあとで部屋に戻って出かける準備を始めると、ラケルがとっても上機嫌で深皿を影に入れた。
わたしの魂を運ぶために首輪とリードを食べちゃってたから、新しく自分のものができたのが嬉しくてたまらないようだ。
なにかで『異世界料理再現錬金術』を使うことになったとき、お皿があるほうがいいとシオン君が言うので、ほかにも何種類かのお皿とフォークなどのカトラリーも買い取ってもらっていた。
布袋に残ったダンジョンアントの魔石もラケルの影に入れて、部屋を出て鍵を閉める。
前世の家にはいつもだれかがいたから、戸締りなんて初めてで緊張する。
高校生になったら合い鍵を作ってもらう予定だったんだよね。
「……」
「ごしゅじん、どうかしたのか?」
「なんでもないよ、ラケル」
……気持ちを切り替えて冒険者ギルドへ行こう!
鍵は受付に預けて行きます。
いない間に部屋の掃除をしてもらうのです。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
冒険者ギルドは、冒険者通りを挟んで『黄金のケルベロス亭』の向かいにある。
……近い。
一泊金貨一枚(十万円くらい)で『黄金のケルベロス亭』を利用するようなお金持ちが依頼に行きやすいようになのかもしれない。
あ、でもお金持ちは馬車で移動したり代理人に頼んだりするのかな。
なんて考えている間に徒歩で到着。ドキドキしながら扉を開く。
半分が受付で半分が……喫茶スペース? テーブルと椅子が並んでいる。
飲み物や食事を出しているわけではないみたい。
喫茶スペースに面した壁には依頼を記した紙が貼られていた。銀色の紙?
受付にいる三人の職員さん以外の姿はない。来るのが早過ぎたのかな?
あ、でも慣れてないから、混んでるよりは空いてるほうが良かったよね。
とりあえず冒険者として登録しなくちゃ。
深呼吸をして、一番若そうな受付のお姉さんのところへ向かった。
だって、なんか、知らない大人って怖いし。
「いらっしゃい。冒険者登録ですか?」
明るい茶色の髪をポニーテールにした美人のお姉さんだ。
「わふ!」
「あら可愛い。子犬?」
ラケルはわふわふ言いながら首を横に振る。
「可愛いだけじゃなくて賢いのね。もしかしてモンスターかしら。あなた魔物使いなの?」
「はい。この子は使い魔ですが、登録は錬金術師でお願いします」
昨夜のシオン君との話し合いで、そういうことになった。
まあ話し合いというより、一方的に決められたって感じだけど。
この世界のことまだ全然わからないし、シオン君達もすべては教えられないだろうし、仕方ないよね。
モンスターと聞いてもお姉さんが怯えないのは、もう王都の中に入っているからだろう。
城壁に『結界』魔術がかけられているので、使い魔契約を交わしてないモンスターは入ることができないのだ。
……まあ、ラケルは聖神殿の馬車で入ったからフリーパスだったんだけどね。
野生のモンスターだったら、馬車の中にいても『結界』が反応するのかな。
「錬金術師なの?」
お姉さんが不思議そうな顔をする。
それもそのはず。錬金術師はかなり安定した職業なのだ。
シオン君達に教えてもらった。
錬金術師に属するスキルは大きくふたつの系統、『変成』と『刻印』に別れる。
まず『変成』。これは物質を『変える』力。
魔石をミスリル銀などの希少金属や消耗品の燃料魔石に変えることができる。
何カ月、何年もかかる作業だけれど、だからこそ人数も必要でさまざまな工房が人材を奪い合う。引き抜きも多いそうだ。
わたしの『異世界料理再現錬金術』も『変成』系になります。
次に『刻印』。これは魔術を『刻む』力。
魔道具は、魔術式を刻んだミスリル銀を核にしてできている。
こちらはそんなに時間がかからないので、人数よりも能力で評価されるという。
美しい術式を素早く正確に刻める錬金術師が求められるのだ。
『刻印』錬金術師には、ほかの活躍の場もある。
この世界では、あまり紙が流通していない。
日常の記録は羊皮紙にペンや魔道具で書くのだが、公式な文書は薄く伸ばしたミスリル銀に専属の錬金術師が刻印する。
最終的に魔石を埋め込むことで改竄が不可能になるのだ。
むしろこちらのほうが『刻印』錬金術師の花形かもしれない。
そんなわけで、冒険者になる錬金術師はまずいないと聞いている。
「えっと、わたしの錬金術スキルは少し特殊なんです。……ラケル、中くらいの平皿をお願い」
「わふ!」
ラケルが影からお皿を出してくれる。
もちろんお皿を口でくわえて出したりはしない。
風の魔術で、わたしが取りやすいように浮かせてくれるのだ。
わたしはお皿を手に取って、ローブのポケットから小さな財布を取り出した。
聖神殿が用意してくれていた荷物のひとつだ。
入れてくれていたお金は出して、今はダンジョンアントの魔石を入れてある。
ケルベロス様の息子のラケルは、風属性と火属性と神聖属性の魔力を持っていた。
ダークウルフのお母さんから闇属性も受け継いでいるので、合計四属性の魔術を使える。
お父さんのケルベロス様のように複数の属性の魔術を同時に使えるようになるのが夢だという。
……あれ? もしかしてラケルってチートわんこ?
ケルベロス様にもらった杖は影に入れたままです。
珍しいアダマンタイト鉱製だなんて、持ち歩くの怖い。
「あ、そうだ」
『浄化』の魔道具(『黄金のケルベロス亭』のを買い取りました)も出してもらって、お姉さんの前でお皿を洗う。
お皿の上に魔石を──受付にいる三人と奥の執務室にいるであろうギルドマスターの分を足して、合計四つ置く。
それから……えっと、シオン君に言われたことを思い出しながら話す。
「見ていただかないと信じてもらえないと思うので、ここで実践します」
あ! あああああ……お皿出す前に言っておけば良かった。
お姉さんは特になにも言わず、わたしの行動を待ってくれている。
優しい人で良かったー。
「この魔石は数日かけて変成したものです」
シオン君に、こう説明するよう教えられた。
大して時間もかけず、いくつでも変成できると知られたら無茶させられちゃうからって。
「それでは最後の変成をします」
この世界は大体どこも月の女神様と太陽神様を信仰していて、食の禁忌はあまりないそうだから……なにを作ろうかな。
なにを作ったとしても元が魔石だから、禁忌なんて気にする必要はない気もする。
四つの魔石に魔力を注ぎ込む。
昨夜、王子様と聖女様のために変成しまくったので、わたしの技術は上がっている。
……一番わたしを酷使しているのって、あのふたりだよね?
その分助けてくれてるから感謝はしてるんだけど。
「わあ! なぁに、これ。ケーキ? ケーキなのね?」
そもそもが食いしん坊だし、魔道具で保冷もできるのでクリームを使ったお菓子も結構豊富なラトニー王国だけど、行き渡っているのは上流階級に限られる。
照明と『浄化』以外の魔道具は高価なのだ。
基本的に、魔道具の威力と効果の及ぶ範囲が大きければ大きいほど作るのが難しく、値段も高価になっていく。
そのせいか、交通関係の魔道具はほとんどない。
海の向こうの大陸には古代文明の遺物のゴーレム技術があって、馬の代わりをさせている地域もあるらしい。
ゴーレムは魔道具の一種だそうです。
転移陣は神獣ダンジョン限定で、今のところどんなに優秀な魔道士でも『転移』の魔術を使えるものはいないとのこと。
「良かったら食べてみてください。えっと……『解析』をお持ちなら、毒じゃないって確認できますよね?」
「ええ、もちろん。あ、でも『解析』を使わなくても大丈夫ってわかるわよ? だってこんなに美味しそうなんだもの!」
……ベルちゃんみたいなこと言ってる。
ラトニーのほとんどの人はシオン君の『鑑定』の下位互換スキル『解析』を持っていて、食べ物に毒があるかどうか、痛んでいるかどうか、自分ならお腹を壊さないかどうか、が判断できるそうです。……最後。
本来は自分や相手のHP量とか弱点属性とかを確認するためのスキルで、詳しいステータスまではわからないから付与効果には気づかれないはず。
「この黄色いのがモンブラン、栗を使ったケーキです」
木の実を使った料理には、周囲への支援効果がつくことが多い。これにもついている。
「この黒いのはガトーショコラ。チョコという素材を使っています」
チョコは魔力に影響を与えることが多く、これは魔力攻撃が上昇する。
「この白いのはチーズケーキです」
「チーズなの?」
「はい。甘いチーズです」
乳製品は身体に影響を与えることが多く、これは物理防御が上昇する。
「この赤いのは苺のムースです」
「苺? こんなに大きいの?」
現代日本の苺は大きいよね。食いしん坊だし食への情熱も激しいラトニーの人達だけど、作物の改良はそれほど発展していない。
料理だけでなく食材も変成できたなら、種を採ってこちらで育ててみたいって、シオン君が言っていたっけ。
……まあ、料理しか変成できないんだけどね。
苺、というか赤い料理は攻撃力や火属性に関係するんだけど、これはムースのやわらかさが優勢なのかMP自然回復率上昇です。
四つのケーキは昨日、兄上への土産が欲しい、というシオン君のために作ったもの。
ダンジョンアントの魔石で作ったので、ケーキバイキングで並べられているような少し小さめのサイズ。
変なもの作って相手に悪影響があったら怖いので、外ではシオン君に『鑑定』してもらったものしか作る気のないわたしなのでした。
ほかのお客さんが食べている料理の量があまりに多かったので、あれは大盛りですか? と宿の人に聞いたら、通常の半分です、と言われて驚いた。
そのお客さんはラトニー王国の人じゃなかったみたい。
結局半分の半分にしてもらい、さらにラケルと半分こした。
シオン君が話を通してくれていたようで、ラケルの分のお皿も用意してくれていたから助かったな。
宿の朝食は、パンと野菜スープとぶ厚いステーキっぽいの。
素朴な味わいで普通に美味しかった。
パンはやっぱり黒くて酸味のある硬いパンでした。
大食らいの国だからか無闇に量は多かったけど、味付けの好みとかは前世、日本に似てるんじゃないかと思う。
というか、そうじゃなきゃわたしの魔石ごはんを美味しいとは思わないよね。
──泊まっている部屋の深皿は買い取りました。
実は、買い取ったと言いつつ、わたしはお金を出していない。
ベルちゃん経由で聖神殿に当座の生活費としてもらった(神獣様のお客はモンスターだったってことにするはずなのに良かったのかな?)金貨二枚、銀貨七枚、銅貨三百枚の前世で三十万円くらいになるお金があったのだけれど、宿賃も食器の買い取り代金も全部シオン君が出してくれている。
魔石ごはんを作ったお礼だって言われても、釣り合いが取れているのかどうか。
「俺のお皿! 持ってくぞ!」
朝食のあとで部屋に戻って出かける準備を始めると、ラケルがとっても上機嫌で深皿を影に入れた。
わたしの魂を運ぶために首輪とリードを食べちゃってたから、新しく自分のものができたのが嬉しくてたまらないようだ。
なにかで『異世界料理再現錬金術』を使うことになったとき、お皿があるほうがいいとシオン君が言うので、ほかにも何種類かのお皿とフォークなどのカトラリーも買い取ってもらっていた。
布袋に残ったダンジョンアントの魔石もラケルの影に入れて、部屋を出て鍵を閉める。
前世の家にはいつもだれかがいたから、戸締りなんて初めてで緊張する。
高校生になったら合い鍵を作ってもらう予定だったんだよね。
「……」
「ごしゅじん、どうかしたのか?」
「なんでもないよ、ラケル」
……気持ちを切り替えて冒険者ギルドへ行こう!
鍵は受付に預けて行きます。
いない間に部屋の掃除をしてもらうのです。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
冒険者ギルドは、冒険者通りを挟んで『黄金のケルベロス亭』の向かいにある。
……近い。
一泊金貨一枚(十万円くらい)で『黄金のケルベロス亭』を利用するようなお金持ちが依頼に行きやすいようになのかもしれない。
あ、でもお金持ちは馬車で移動したり代理人に頼んだりするのかな。
なんて考えている間に徒歩で到着。ドキドキしながら扉を開く。
半分が受付で半分が……喫茶スペース? テーブルと椅子が並んでいる。
飲み物や食事を出しているわけではないみたい。
喫茶スペースに面した壁には依頼を記した紙が貼られていた。銀色の紙?
受付にいる三人の職員さん以外の姿はない。来るのが早過ぎたのかな?
あ、でも慣れてないから、混んでるよりは空いてるほうが良かったよね。
とりあえず冒険者として登録しなくちゃ。
深呼吸をして、一番若そうな受付のお姉さんのところへ向かった。
だって、なんか、知らない大人って怖いし。
「いらっしゃい。冒険者登録ですか?」
明るい茶色の髪をポニーテールにした美人のお姉さんだ。
「わふ!」
「あら可愛い。子犬?」
ラケルはわふわふ言いながら首を横に振る。
「可愛いだけじゃなくて賢いのね。もしかしてモンスターかしら。あなた魔物使いなの?」
「はい。この子は使い魔ですが、登録は錬金術師でお願いします」
昨夜のシオン君との話し合いで、そういうことになった。
まあ話し合いというより、一方的に決められたって感じだけど。
この世界のことまだ全然わからないし、シオン君達もすべては教えられないだろうし、仕方ないよね。
モンスターと聞いてもお姉さんが怯えないのは、もう王都の中に入っているからだろう。
城壁に『結界』魔術がかけられているので、使い魔契約を交わしてないモンスターは入ることができないのだ。
……まあ、ラケルは聖神殿の馬車で入ったからフリーパスだったんだけどね。
野生のモンスターだったら、馬車の中にいても『結界』が反応するのかな。
「錬金術師なの?」
お姉さんが不思議そうな顔をする。
それもそのはず。錬金術師はかなり安定した職業なのだ。
シオン君達に教えてもらった。
錬金術師に属するスキルは大きくふたつの系統、『変成』と『刻印』に別れる。
まず『変成』。これは物質を『変える』力。
魔石をミスリル銀などの希少金属や消耗品の燃料魔石に変えることができる。
何カ月、何年もかかる作業だけれど、だからこそ人数も必要でさまざまな工房が人材を奪い合う。引き抜きも多いそうだ。
わたしの『異世界料理再現錬金術』も『変成』系になります。
次に『刻印』。これは魔術を『刻む』力。
魔道具は、魔術式を刻んだミスリル銀を核にしてできている。
こちらはそんなに時間がかからないので、人数よりも能力で評価されるという。
美しい術式を素早く正確に刻める錬金術師が求められるのだ。
『刻印』錬金術師には、ほかの活躍の場もある。
この世界では、あまり紙が流通していない。
日常の記録は羊皮紙にペンや魔道具で書くのだが、公式な文書は薄く伸ばしたミスリル銀に専属の錬金術師が刻印する。
最終的に魔石を埋め込むことで改竄が不可能になるのだ。
むしろこちらのほうが『刻印』錬金術師の花形かもしれない。
そんなわけで、冒険者になる錬金術師はまずいないと聞いている。
「えっと、わたしの錬金術スキルは少し特殊なんです。……ラケル、中くらいの平皿をお願い」
「わふ!」
ラケルが影からお皿を出してくれる。
もちろんお皿を口でくわえて出したりはしない。
風の魔術で、わたしが取りやすいように浮かせてくれるのだ。
わたしはお皿を手に取って、ローブのポケットから小さな財布を取り出した。
聖神殿が用意してくれていた荷物のひとつだ。
入れてくれていたお金は出して、今はダンジョンアントの魔石を入れてある。
ケルベロス様の息子のラケルは、風属性と火属性と神聖属性の魔力を持っていた。
ダークウルフのお母さんから闇属性も受け継いでいるので、合計四属性の魔術を使える。
お父さんのケルベロス様のように複数の属性の魔術を同時に使えるようになるのが夢だという。
……あれ? もしかしてラケルってチートわんこ?
ケルベロス様にもらった杖は影に入れたままです。
珍しいアダマンタイト鉱製だなんて、持ち歩くの怖い。
「あ、そうだ」
『浄化』の魔道具(『黄金のケルベロス亭』のを買い取りました)も出してもらって、お姉さんの前でお皿を洗う。
お皿の上に魔石を──受付にいる三人と奥の執務室にいるであろうギルドマスターの分を足して、合計四つ置く。
それから……えっと、シオン君に言われたことを思い出しながら話す。
「見ていただかないと信じてもらえないと思うので、ここで実践します」
あ! あああああ……お皿出す前に言っておけば良かった。
お姉さんは特になにも言わず、わたしの行動を待ってくれている。
優しい人で良かったー。
「この魔石は数日かけて変成したものです」
シオン君に、こう説明するよう教えられた。
大して時間もかけず、いくつでも変成できると知られたら無茶させられちゃうからって。
「それでは最後の変成をします」
この世界は大体どこも月の女神様と太陽神様を信仰していて、食の禁忌はあまりないそうだから……なにを作ろうかな。
なにを作ったとしても元が魔石だから、禁忌なんて気にする必要はない気もする。
四つの魔石に魔力を注ぎ込む。
昨夜、王子様と聖女様のために変成しまくったので、わたしの技術は上がっている。
……一番わたしを酷使しているのって、あのふたりだよね?
その分助けてくれてるから感謝はしてるんだけど。
「わあ! なぁに、これ。ケーキ? ケーキなのね?」
そもそもが食いしん坊だし、魔道具で保冷もできるのでクリームを使ったお菓子も結構豊富なラトニー王国だけど、行き渡っているのは上流階級に限られる。
照明と『浄化』以外の魔道具は高価なのだ。
基本的に、魔道具の威力と効果の及ぶ範囲が大きければ大きいほど作るのが難しく、値段も高価になっていく。
そのせいか、交通関係の魔道具はほとんどない。
海の向こうの大陸には古代文明の遺物のゴーレム技術があって、馬の代わりをさせている地域もあるらしい。
ゴーレムは魔道具の一種だそうです。
転移陣は神獣ダンジョン限定で、今のところどんなに優秀な魔道士でも『転移』の魔術を使えるものはいないとのこと。
「良かったら食べてみてください。えっと……『解析』をお持ちなら、毒じゃないって確認できますよね?」
「ええ、もちろん。あ、でも『解析』を使わなくても大丈夫ってわかるわよ? だってこんなに美味しそうなんだもの!」
……ベルちゃんみたいなこと言ってる。
ラトニーのほとんどの人はシオン君の『鑑定』の下位互換スキル『解析』を持っていて、食べ物に毒があるかどうか、痛んでいるかどうか、自分ならお腹を壊さないかどうか、が判断できるそうです。……最後。
本来は自分や相手のHP量とか弱点属性とかを確認するためのスキルで、詳しいステータスまではわからないから付与効果には気づかれないはず。
「この黄色いのがモンブラン、栗を使ったケーキです」
木の実を使った料理には、周囲への支援効果がつくことが多い。これにもついている。
「この黒いのはガトーショコラ。チョコという素材を使っています」
チョコは魔力に影響を与えることが多く、これは魔力攻撃が上昇する。
「この白いのはチーズケーキです」
「チーズなの?」
「はい。甘いチーズです」
乳製品は身体に影響を与えることが多く、これは物理防御が上昇する。
「この赤いのは苺のムースです」
「苺? こんなに大きいの?」
現代日本の苺は大きいよね。食いしん坊だし食への情熱も激しいラトニーの人達だけど、作物の改良はそれほど発展していない。
料理だけでなく食材も変成できたなら、種を採ってこちらで育ててみたいって、シオン君が言っていたっけ。
……まあ、料理しか変成できないんだけどね。
苺、というか赤い料理は攻撃力や火属性に関係するんだけど、これはムースのやわらかさが優勢なのかMP自然回復率上昇です。
四つのケーキは昨日、兄上への土産が欲しい、というシオン君のために作ったもの。
ダンジョンアントの魔石で作ったので、ケーキバイキングで並べられているような少し小さめのサイズ。
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