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冒険者始めました編
16・今日の儲けはいくらかな?
「……百九十八、百九十九……二百! すごいわ、葉菜花さん。頑張って山ほど薬草を摘んでくる新人冒険者は多いけど、これだけの量を傷めずに運んできたのは、あなたが初めてよ」
受付の机の上に出した薬草を数えて、スサナさんが褒めてくれた。
えへへ。顔がにやけちゃう。
「……えっと、ラケルが『影運び』を使ってくれたからなので、わたしの手柄じゃありません」
「謙虚なのはいいけど、自分の使い魔を完全に制御できているのは自慢できることよ?」
「ありがとうございます」
「それじゃ換金するわね」
朝、壁から剥がして渡した依頼書を取り出して、スサナさんが薬草の本数を記入する。
引き取り本数に制限がないそうなので、二百本全部換金してもらうことにした。
一本銅貨一枚だから銅貨二百枚で──
「使い魔に運んでもらえば大丈夫だと思うけど、銅貨二百枚は重いわよ? 半分だけ銀貨にしましょうか?」
「あ、両方銀貨にしてください」
「そう? ああ、そうだったわね。葉菜花さんは魔石ごはんが作れるから宿代や装備購入資金みたいな大きなお金しか使わないのね」
「ええ、まあ……」
魔石ごはんは下ごしらえ変成に時間がかかるという設定だから、ちょっとマズかったかな?
それに銀貨にしてもらったのは、硬貨でもらうよりお札でもらうほうが嬉しい、程度の気持ちだったんだけど。
「はい、銀貨二枚。ちゃんと確かめてね」
スサナさんから銀貨を受け取る。
当たり前だけど銀色で、キラキラしていて綺麗だな。
あ、もしかしてこの刻んである横顔ってシオン君? 昨夜ベルちゃんにもらったときは、あまりの大金に緊張して、こんなにじっくりとは眺めなかったんだよね。
なにを確かめるのかわからなかったので、とりあえずラケルに見せてみた。
ラケルはふんふんと匂いを嗅ぐ。
ゲームだったら、ここでチュートリアル完了って感じかな。
「そうそう。お皿返しておくわね。わたし以外にも好評だったわよ。どこかのお店に雇われるのは能力的に難しそうだけど、自分でお店を開くつもりはないの?」
昨日ベルちゃんにも言われたんだけど、シオン君に一刀両断された。
お皿をラケルの影に入れてもらいながら、彼の言葉を伝える。
「お金がないし……友達が、わたしには人を使う器量がないって反対するので」
「ああ、まだ若いものね」
「それにお店をするには、もっと錬金術のレベルを上げないと」
うんうん、とスサナさんが頷いて納得してくれる。
「そうよねー。お客さんの注文に合わせないといけないから、変成する時間を減らして、変成できる量を増やさないと。今は数日変成準備をしてからじゃないと完成しないのよね?」
「……そうなんです」
ごめんなさい、ウソです。数秒で何十個も変成できます。
おまけに付与効果もあるんです。
「葉菜花さんがお店を開いたら絶対常連になるのになー。うふふ」
「えへへ、ありがとうございます」
なんて話していたら、受付の奥にある扉が開いた。
あそこは冒険者ギルドマスターの執務室のはずだ。
執務室から出てきたのは大柄で筋肉質の男性だった。
無精ヒゲを生やしていて、なんだか熊っぽい。
お約束だと元凄腕冒険者だったりするんだよね。
お父さんと同じくらいか年上……老けてるだけかも?
「……スサナ」
「はい、マスター」
「せっかくいい状態で採取してくれた薬草ほっぽって、くっちゃべってんじゃねぇよ」
「す、すいません! 葉菜花さんもごめんなさいね」
スサナさんは慌てて立ち上がり、机の上の薬草を運び始めた。
「ごめんなさい。スサナさんは新人のわたしに気を遣ってくれて、あ、初めまして、今日から冒険者になった葉菜花です!」
胸の水晶が淡く白く光る。
「おぉ、俺はこの冒険者ギルドのギルドマスターのホセだ。ケーキありがとな。……でもな? お前が薬草採取に行ったおかげで俺ぁ書類仕事をサボれなかったんだ。どう責任とってくれんだ? あぁ?」
「えっ? えっ?……ご、ごめんなさい?」
「ぐるる……」
わたしを睨みつけていた男性の顔が、ふっと和らぐ。
「こりゃあシオン卿が心配して当然だ。いいか、葉菜花。冒険者は簡単に謝っちゃいけねぇ。特に今回はお前に非はねぇだろうが?」
「そ、そうですよね?」
「そうですよ、葉菜花さん。薬草採取は大事なお仕事です! いくらマスターが書類仕事を嫌いでも、葉菜花さんが薬草採取したことは怒るんじゃなくて称賛すべきことです」
スサナさんが、薬草を運びながら援護射撃をしてくれる。
「だよな? 地味だが大切な薬草採取の依頼を受けてくれてありがとうよ」
「いえ、あの……冒険者ですから!」
「その意気だ。……で、話あるから執務室に来い」
「わふ?」
ラケルが案じるようにわたしを見つめる。
ちょっとドキドキするけれど、シオン君の名前が出たからシオン君のことなんだろうな。
シオン君はお忍びのとき、田舎貴族のシオン卿と名乗っているのだという。
……貧乏旗本の三男坊とかあったっけ。
わたしはラケルを抱き上げてマスターと一緒に執務室に入った。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
──執務室には足の踏み場もないほどの布袋が積み上げられていた。
「もしかして、これ……」
「ああ、ダンジョンアントの魔石入りだ」
……やっぱりアリだー!
加工前の魔石を埋めたり放置したりするのは禁じられている。
魔石と化したモンスターがダンジョン外で復活することはないのだけれど、野獣に食べられてしまうことがあるのだ。
強い魔力を持つモンスターと違って、野獣はわずかな魔力による味の違いを感知できないらしく、不味いダンジョンアントの魔石でも平気で食べる。
ダンジョンアントの魔石に含まれる微少な魔力をいくら食べても、ダンジョンコアに触れたときのようにモンスター化はしない。
しかし人間やモンスターのように魔力を制御できない野獣は、体内に溜まった魔力で魔力酔いになり狂暴化してしまう。
魔力酔いは、初めて魔術を使ったり強大な魔術を発動させたりした人間にも起こる症状だ。
「うちの魔石倉庫に入らなくなってな。あっちには業者も入るから売れる魔石を優先的に入れてんだ。……まあ、ここはまだマシなんだぜ? 田舎のダンジョン貴族の中には、冒険者ギルドにダンジョンアントの魔石購入を強制しながらも買い取りの援助はしねぇって輩もいるからな。うちは王家から補助金もらってる」
領地にあるダンジョンで潤っている貴族は、ダンジョン貴族と呼ばれているそうだ。
「そんで……あー、新人のお前にこんなこと言うなぁ申し訳ねぇが、この魔石引き取ってくんねぇか? お前なら活用できるだろ? シオン卿も利用方法を考えてくれてるが、もう置き場所がねぇんだ。もちろん金はいらねぇ。てか払わせてくれ。一袋に付き銀貨一枚でいいか? 安いってんならもっと……」
わたしはラケルを見た。
「わふう!」
影に入れても問題なさそうなので、マスターに答える。
「一袋銀貨一枚でいいですよ」
適正価格かどうかはよくわからないけど。
「そうか、助かる!……元から俺が書類仕事を嫌いなのは事実だが、この状態で仕事ができると思うか?」
執務室にはちょっとした応接コーナーがあったのだが、そこのテーブルとソファーも布袋で埋まっていた。
だからわたし達は立って話をしている。
この状態でギルドマスターの机や椅子が無事なわけはなかった。
「……袋の中で魔石が擦れる音が、ギチッギチってダンジョンアントが顎を噛み合わせる音に聞こえるんだよな。ウソかホントか知らねぇけど、どっかの支部じゃ『浄化』が不完全だった魔石がダンジョンアントに戻ったとかいう噂も流れてる。魔石試しみてぇな特別な状況でもない限り、ダンジョン以外で復活するはずねぇのによ」
俯いてブツブツと呟くギルドマスターの顔色は青ざめていた。
……大変だったんだなあ。
ラケルが執務室にあった布袋を全部影に入れてくれたので、
「マスター、終わりました」
わたしはギルドマスターに声をかけた。
「へ?」
顔を上げたマスターがすっきりした部屋を見て、ぽかんと口を開ける。
「ああ、そうか。『影運び』……すげぇな。ワリティア元首の『アイテムボックス』くれぇ入るんじゃねぇの? まさか全部引き取ってもらえるとは思ってなかったぜ」
『アイテムボックス』スキルには収納制限がある。
ベルちゃんの黄金の腕輪に宿った『アイテムボックス』スキルは中で、ドワーフの国家元首は特大だという話だ。特大は家が一軒、大が馬車一台、小は武器が二十振りくらい入って、中は小以上大以下らしい。
ラケルの『影運び』はどれくらい入るんだろう?
「ちゃんと引き取ってもらった料金払わねぇとな。何袋あった?……はは、あまりにも多くなったんで途中から数えてなかったんだ。普通のはちゃんと管理してんだぜ?」
「ひゃ……わふう……」
ラケルは困った顔でわたしを見る。
ギルドマスターはわたしの耳元に顔を寄せて、小声で囁いた。
「……魔石ごはんに付与効果があることも、その使い魔が人間の言葉をしゃべれることもシオン卿に聞いて知ってるぜ。……なんでしゃべれるのかまでは怖くて聞いてねぇけどよ」
「ラケル、いいよ」
「百五十三袋あったぞ!」
「んじゃ銀貨百五十三枚だな。んー金貨十五枚と銀貨三枚にするか?」
「それで……あ! 金貨十枚はミスリル銀貨にしてください」
ラケルのおかげで何枚あっても邪魔にならないんだけど、数えて確認するのが面倒でした。……あれ? 今日の儲けってもしかして、ミスリル銀貨一枚金貨五枚銀貨五枚(薬草採取二百本代含む)になっちゃうの?
えっと……百五十五万円? うわあ、お金持ちだ!
聖神殿にもらったお金(約三十万円)も足したら百八十五万円だよ。
ギルドマスターはすっきりした机でサラサラと書類を書いて、ミスリル銀貨一枚と金貨五枚に銀貨三枚を支払ってくれた。前世の領収書みたいに、支払関係ならなんにでも使えるように作られてるのかな。
ミスリル銀貨にはケルベロス様の姿が刻まれていて、ラケルが嬉しそうだった。
金貨に刻まれた男性は、シオン君のお兄さんの国王陛下なのかもしれない。
受付の机の上に出した薬草を数えて、スサナさんが褒めてくれた。
えへへ。顔がにやけちゃう。
「……えっと、ラケルが『影運び』を使ってくれたからなので、わたしの手柄じゃありません」
「謙虚なのはいいけど、自分の使い魔を完全に制御できているのは自慢できることよ?」
「ありがとうございます」
「それじゃ換金するわね」
朝、壁から剥がして渡した依頼書を取り出して、スサナさんが薬草の本数を記入する。
引き取り本数に制限がないそうなので、二百本全部換金してもらうことにした。
一本銅貨一枚だから銅貨二百枚で──
「使い魔に運んでもらえば大丈夫だと思うけど、銅貨二百枚は重いわよ? 半分だけ銀貨にしましょうか?」
「あ、両方銀貨にしてください」
「そう? ああ、そうだったわね。葉菜花さんは魔石ごはんが作れるから宿代や装備購入資金みたいな大きなお金しか使わないのね」
「ええ、まあ……」
魔石ごはんは下ごしらえ変成に時間がかかるという設定だから、ちょっとマズかったかな?
それに銀貨にしてもらったのは、硬貨でもらうよりお札でもらうほうが嬉しい、程度の気持ちだったんだけど。
「はい、銀貨二枚。ちゃんと確かめてね」
スサナさんから銀貨を受け取る。
当たり前だけど銀色で、キラキラしていて綺麗だな。
あ、もしかしてこの刻んである横顔ってシオン君? 昨夜ベルちゃんにもらったときは、あまりの大金に緊張して、こんなにじっくりとは眺めなかったんだよね。
なにを確かめるのかわからなかったので、とりあえずラケルに見せてみた。
ラケルはふんふんと匂いを嗅ぐ。
ゲームだったら、ここでチュートリアル完了って感じかな。
「そうそう。お皿返しておくわね。わたし以外にも好評だったわよ。どこかのお店に雇われるのは能力的に難しそうだけど、自分でお店を開くつもりはないの?」
昨日ベルちゃんにも言われたんだけど、シオン君に一刀両断された。
お皿をラケルの影に入れてもらいながら、彼の言葉を伝える。
「お金がないし……友達が、わたしには人を使う器量がないって反対するので」
「ああ、まだ若いものね」
「それにお店をするには、もっと錬金術のレベルを上げないと」
うんうん、とスサナさんが頷いて納得してくれる。
「そうよねー。お客さんの注文に合わせないといけないから、変成する時間を減らして、変成できる量を増やさないと。今は数日変成準備をしてからじゃないと完成しないのよね?」
「……そうなんです」
ごめんなさい、ウソです。数秒で何十個も変成できます。
おまけに付与効果もあるんです。
「葉菜花さんがお店を開いたら絶対常連になるのになー。うふふ」
「えへへ、ありがとうございます」
なんて話していたら、受付の奥にある扉が開いた。
あそこは冒険者ギルドマスターの執務室のはずだ。
執務室から出てきたのは大柄で筋肉質の男性だった。
無精ヒゲを生やしていて、なんだか熊っぽい。
お約束だと元凄腕冒険者だったりするんだよね。
お父さんと同じくらいか年上……老けてるだけかも?
「……スサナ」
「はい、マスター」
「せっかくいい状態で採取してくれた薬草ほっぽって、くっちゃべってんじゃねぇよ」
「す、すいません! 葉菜花さんもごめんなさいね」
スサナさんは慌てて立ち上がり、机の上の薬草を運び始めた。
「ごめんなさい。スサナさんは新人のわたしに気を遣ってくれて、あ、初めまして、今日から冒険者になった葉菜花です!」
胸の水晶が淡く白く光る。
「おぉ、俺はこの冒険者ギルドのギルドマスターのホセだ。ケーキありがとな。……でもな? お前が薬草採取に行ったおかげで俺ぁ書類仕事をサボれなかったんだ。どう責任とってくれんだ? あぁ?」
「えっ? えっ?……ご、ごめんなさい?」
「ぐるる……」
わたしを睨みつけていた男性の顔が、ふっと和らぐ。
「こりゃあシオン卿が心配して当然だ。いいか、葉菜花。冒険者は簡単に謝っちゃいけねぇ。特に今回はお前に非はねぇだろうが?」
「そ、そうですよね?」
「そうですよ、葉菜花さん。薬草採取は大事なお仕事です! いくらマスターが書類仕事を嫌いでも、葉菜花さんが薬草採取したことは怒るんじゃなくて称賛すべきことです」
スサナさんが、薬草を運びながら援護射撃をしてくれる。
「だよな? 地味だが大切な薬草採取の依頼を受けてくれてありがとうよ」
「いえ、あの……冒険者ですから!」
「その意気だ。……で、話あるから執務室に来い」
「わふ?」
ラケルが案じるようにわたしを見つめる。
ちょっとドキドキするけれど、シオン君の名前が出たからシオン君のことなんだろうな。
シオン君はお忍びのとき、田舎貴族のシオン卿と名乗っているのだという。
……貧乏旗本の三男坊とかあったっけ。
わたしはラケルを抱き上げてマスターと一緒に執務室に入った。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
──執務室には足の踏み場もないほどの布袋が積み上げられていた。
「もしかして、これ……」
「ああ、ダンジョンアントの魔石入りだ」
……やっぱりアリだー!
加工前の魔石を埋めたり放置したりするのは禁じられている。
魔石と化したモンスターがダンジョン外で復活することはないのだけれど、野獣に食べられてしまうことがあるのだ。
強い魔力を持つモンスターと違って、野獣はわずかな魔力による味の違いを感知できないらしく、不味いダンジョンアントの魔石でも平気で食べる。
ダンジョンアントの魔石に含まれる微少な魔力をいくら食べても、ダンジョンコアに触れたときのようにモンスター化はしない。
しかし人間やモンスターのように魔力を制御できない野獣は、体内に溜まった魔力で魔力酔いになり狂暴化してしまう。
魔力酔いは、初めて魔術を使ったり強大な魔術を発動させたりした人間にも起こる症状だ。
「うちの魔石倉庫に入らなくなってな。あっちには業者も入るから売れる魔石を優先的に入れてんだ。……まあ、ここはまだマシなんだぜ? 田舎のダンジョン貴族の中には、冒険者ギルドにダンジョンアントの魔石購入を強制しながらも買い取りの援助はしねぇって輩もいるからな。うちは王家から補助金もらってる」
領地にあるダンジョンで潤っている貴族は、ダンジョン貴族と呼ばれているそうだ。
「そんで……あー、新人のお前にこんなこと言うなぁ申し訳ねぇが、この魔石引き取ってくんねぇか? お前なら活用できるだろ? シオン卿も利用方法を考えてくれてるが、もう置き場所がねぇんだ。もちろん金はいらねぇ。てか払わせてくれ。一袋に付き銀貨一枚でいいか? 安いってんならもっと……」
わたしはラケルを見た。
「わふう!」
影に入れても問題なさそうなので、マスターに答える。
「一袋銀貨一枚でいいですよ」
適正価格かどうかはよくわからないけど。
「そうか、助かる!……元から俺が書類仕事を嫌いなのは事実だが、この状態で仕事ができると思うか?」
執務室にはちょっとした応接コーナーがあったのだが、そこのテーブルとソファーも布袋で埋まっていた。
だからわたし達は立って話をしている。
この状態でギルドマスターの机や椅子が無事なわけはなかった。
「……袋の中で魔石が擦れる音が、ギチッギチってダンジョンアントが顎を噛み合わせる音に聞こえるんだよな。ウソかホントか知らねぇけど、どっかの支部じゃ『浄化』が不完全だった魔石がダンジョンアントに戻ったとかいう噂も流れてる。魔石試しみてぇな特別な状況でもない限り、ダンジョン以外で復活するはずねぇのによ」
俯いてブツブツと呟くギルドマスターの顔色は青ざめていた。
……大変だったんだなあ。
ラケルが執務室にあった布袋を全部影に入れてくれたので、
「マスター、終わりました」
わたしはギルドマスターに声をかけた。
「へ?」
顔を上げたマスターがすっきりした部屋を見て、ぽかんと口を開ける。
「ああ、そうか。『影運び』……すげぇな。ワリティア元首の『アイテムボックス』くれぇ入るんじゃねぇの? まさか全部引き取ってもらえるとは思ってなかったぜ」
『アイテムボックス』スキルには収納制限がある。
ベルちゃんの黄金の腕輪に宿った『アイテムボックス』スキルは中で、ドワーフの国家元首は特大だという話だ。特大は家が一軒、大が馬車一台、小は武器が二十振りくらい入って、中は小以上大以下らしい。
ラケルの『影運び』はどれくらい入るんだろう?
「ちゃんと引き取ってもらった料金払わねぇとな。何袋あった?……はは、あまりにも多くなったんで途中から数えてなかったんだ。普通のはちゃんと管理してんだぜ?」
「ひゃ……わふう……」
ラケルは困った顔でわたしを見る。
ギルドマスターはわたしの耳元に顔を寄せて、小声で囁いた。
「……魔石ごはんに付与効果があることも、その使い魔が人間の言葉をしゃべれることもシオン卿に聞いて知ってるぜ。……なんでしゃべれるのかまでは怖くて聞いてねぇけどよ」
「ラケル、いいよ」
「百五十三袋あったぞ!」
「んじゃ銀貨百五十三枚だな。んー金貨十五枚と銀貨三枚にするか?」
「それで……あ! 金貨十枚はミスリル銀貨にしてください」
ラケルのおかげで何枚あっても邪魔にならないんだけど、数えて確認するのが面倒でした。……あれ? 今日の儲けってもしかして、ミスリル銀貨一枚金貨五枚銀貨五枚(薬草採取二百本代含む)になっちゃうの?
えっと……百五十五万円? うわあ、お金持ちだ!
聖神殿にもらったお金(約三十万円)も足したら百八十五万円だよ。
ギルドマスターはすっきりした机でサラサラと書類を書いて、ミスリル銀貨一枚と金貨五枚に銀貨三枚を支払ってくれた。前世の領収書みたいに、支払関係ならなんにでも使えるように作られてるのかな。
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