転生錬金術師・葉菜花の魔石ごはん~食いしん坊王子様のお気に入り~

豆狸

文字の大きさ
21 / 64
冒険者始めました編

20・今夜の〆はチョコフォンデュ

 ダンジョンアントの魔石で作れるのが前世で百円以内くらいのもの、という推理はたぶん当たっていると思うのだけど、わたし次第で改良はできるようだ。

 実はわたしのコップに入ったラーメンには煮卵とチャーシューが入っている。
 その分麺が少な目で、煮卵は八分の一、チャーシューは薄いのが一枚だけだけど。
 まとめて作ったシオン君とベルちゃんのお鍋ラーメンには、半分に切った煮卵が数個と厚めのチャーシューが何枚か。あとネギも山盛り。

 同じものなら原料の魔石を増やすことで、ある程度までなら大きくできるってことなのかな。
 わたしすごい。
 あ、でも付与効果の威力は変わらないんだけどね。

 自惚れたところで、もっと本格的なラーメンも作れるのではないかと思いついた。
 なんか呪文みたいな追加設定を唱えて注文するヤツです。
 ボリュームがあって味も濃い目で、シオン君達が好きそう。

 食べたことはないんだけど、

「葉菜花は想像力が強いのだろうな。それに知識量がすごい。異世界にあるというテレビやネット、漫画やゲームなどというものが貴様に知識を与え想像力を支えているのだろう。大したものだ」

 とシオン君が褒めてくれたし。

 想像力が強いと錬金術や魔術の効果が上がるそうです。
 うーん。いつか魔術も使ってみたいなあ。
 今はとにかく大盛りラーメンに挑戦してみよう。

 画像で見たり人の話を聞いて想像したものを自分の経験から来る知識で補えば、きっとできる!

 深皿にダンジョンアントの魔石を数個入れて、わたしは叫んだ。

「出でよ、大盛りラーメン!」

 シオン君が怪訝そうな顔になる。

「貴様、これまで魔石ごはんを変成するときにそんな風に叫んだことなかっただろう。いきなりどうした?」
「……なんとなく……」

 真面目に尋ねられて、ちょっと恥ずかしい。
 シオン君に褒められて調子に乗っちゃっただけです。

 無意味に叫んだせいか大盛りラーメンは作れなかった。
 普通に何度試してみてもできない。ダンジョンアントの魔石を増やしてもダメだった。

「なにか特別なものを変成するつもりなら、魔石のランクを上げてみてはどうだ?」

 大盛りラーメンは諦めようかと思ったとき、シオン君が言った。

「混沌属性のダンジョンアントの魔石を使ってさまざまな魔石ごはんを作り上げる貴様の力量は大したものだが、ダンジョンアントのF級魔石に含まれる魔力は少ない。ランクの高い魔石を使ったほうが作りやすいものもあるのではないか?」
「ランクの高い魔石かー」
「……私、持ってる」

 ベルちゃんの黄金の腕輪ドラウプニルが輝いて、干からびた黒い木片のようなものがテーブルに現れた。羽のような形をしている。

「これも魔石なの?」

 化石っぽく見えるから、石といえば石なのだろう。
 わたしの質問を聞いて、ベルちゃんが頷いた。

「……これはデスクロウを倒して得たD級魔石」
「デスクロウは群れで現れるし飛翔して上空から襲ってくる。貴様のような物理攻撃派には戦い難い相手だったのではないか?」
「……私のミスリルハンマーは良いハンマー。地面に叩きつけられないのなら、ダンジョンの天井に叩きつければいいだけのこと」
「ふん。戦闘能力だけは大したものだな」

 デスクロウ……クロウってカラスのことだよね?
 そっか、ダンジョンってカラスが群れで飛べるほど天井が高いんだ。
 確かに神獣ダンジョンの通路も大きかったよねー。

「……『アイテムボックス』の隅に落ちてたから、冒険者ギルドに魔石を売りに行ったとき出すのを忘れていたの。良かったら、葉菜花が使って?」

 『アイテムボックス』の隅ってなに?
 わたしはラケルが管理してくれてて良かったなあ。

「うん、ありがとう。成功したら食べてね。……シオン君の分も作っていいよね?」
「……ええ」

 ベルちゃんは憮然とした表情でOKを出した。

 ……大盛りラーメン!
 心の中で叫ぶ。

「ん? どうした葉菜花、今度は叫ばないのか?」
「さ、叫ばないよ?……あ、できた」

 デスクロウのD級魔石を使ったら、簡単に大盛りラーメンができました。
 よく考えたらスライムのE級魔石みたいに属性で作れるものが違っていたかもしれないんだよね。
 ちゃんと作れて良かった。

 それにしてもすごいなー、ラーメンタワーだよ。
 うん、そう。確かこんな感じだったと思う。

 山盛りのモヤシにチャーシューの塊、ニンニク……あれ? チャーシュー以外にもお肉のようなものが……アブラ? あれ脂身だよ!
 脂身大きいなあ。あんなに食べてもいいのかなあ?
 自分で作っておいて、なにが入ってるのかよくわかってなかったよー。

 デスクロウは闇属性のモンスターだというけれど、このラーメンは美味しさを追求するあまり食の闇へと足を踏み入れているのかもしれない。
 どんなものでも食べ過ぎはダメだよね。

「……葉菜花」
「な、なぁに?」

 ニンニクの匂いもキツイし、女の子のベルちゃんの好みじゃなかったかな?
 なんて思ってたら食い気味に来られた。

「食べていい?」
「うん、そのために作ったから……」
「俺の分も頼むぞ」
「……うん」

 ニンニクの匂いは、ふたりが帰るときに『浄化』魔術を使えばいいよね。
 魔石製だから、普通の食べ物みたいな問題は起こらないはずだし。……だよね?
 このふたりが食べ過ぎで体調を崩すところも想像できないし。

 シオン君の分も作ったら、彼はわたしとラケルに少しずつ分けてくれた。
 確かに自分達用に作るにはボリュームが多過ぎる。
 分けてもらった大盛りラーメンは……美味しかった。

 ラケルはぶ厚い脂身が気に入ったみたい。
 わたしはスープに溶けてるほうがいいかな。
 さすがにD級魔石製なだけあって、HP自然回復率上昇の効果はダンジョンアントのF級魔石製ラーメンの二倍、発動時間も二時間になっているとの話です。

 デスクロウのD級魔石がなくなるまで大盛りラーメンを作ってから、ほかにも上書きされない組み合わせがないか、いろいろ試してみた。

 シオン君の『鑑定』で見ても食べるまではわからない。
 無作為に組み合わせていくのは無謀が過ぎるので、まずは発見済の部活帰りのDKセットのパターン違いがないか試していく。

 その結果──

 ラーメン+肉まん(防御力上昇)+シューマイ(攻撃力上昇)
 ラーメン+ちまき(精神力上昇)+蒸しギョーザ(素早さ上昇)

 の組み合わせが見つかった。

 HP自然回復率を上昇させるラーメンの味は、どれでもかまわない。
 大盛りラーメンに変更しても大丈夫かどうかも確認しておけば良かったかも。
 部活帰りのDKセットA(チャーハン+焼きギョーザ)、B(肉まん+シューマイ)、C(ちまき+茹でギョーザ)ってところかな。

 あんまんやカレーまんも作ったけど、これはセットにはできなかった。
 でもあんまんはベルちゃんに、カレーまんはシオン君に好評でしたとさ。

「忘れていた。葉菜花、これも土産だ」

 シオン君が懐から、丸めて紐でくくった羊皮紙を取り出す。
 RPGに出てくるスクロール、巻き物だ。
 それから万年筆みたいなペンも渡してくれる。

「少しずつでいいから、貴様の魔石ごはんの付与効果を記入していくといい」
「……大丈夫? 落として知らない人間に拾われたりしたら?」
「大丈夫に決まってるだろう。葉菜花の世界の文字は、俺達には読めない」
「……そうだった」

 昨日、冒険者ギルドに登録するには名前くらい書けたほうがいいんじゃないかという話になったんだよね。
 でも書いてもらった文字が日本語にしか見えないから真似できなかった。
 そのときわたしが書いた日本語をふたりに見せたっけ。

 ……ということは、この巻き物ってメモ代わりなんだ。

 『火弾』の魔術を発動して羊皮紙に文字を焼きつける魔道具のペンでメモを取る。
 消しゴムはないけれど、文字が光ってる段階で魔道具を止めると焼きつけられる前の文字は消えちゃうよ!
 昨日は聖神殿が用意してくれてたタオルとかに、シオン君の魔道具ペンで書いては消し書いては消ししながら、わたしの『異世界言語理解』というスキルがどんな風に発動しているのかを確認していったんだよね。

 ……その間もベルちゃんとシオン君は常になにかを食べていたっけ。

「部活帰りのDKセットは書いたな? うん、俺には全然読めないな。このAとかBとかいうのは、こちらの文字に似ている気もするが」

 中世ヨーロッパ風の世界だから、アルファベットみたいな文字を使ってるのかも。
 わたしには見えないので確認しようがなかった。
 アルファベットを全部書いて見てもらったらいいかな。

 今日のところはこれまで作った魔石ごはんと、その付与効果を書いていこう。
 シオン君が持って来てくれた羊皮紙は、あっという間に文字でいっぱいになった。

「結構作っていたんだな」

 ……そうだね。たった二日とは思えないほど作っていたよ。わたしも驚いたよ。
 いろんなサンドイッチとおにぎり、思いついたお菓子とドリンク。
 ラーメンも作ったし、サンドイッチやおにぎりの具材を単品で作ったりもしたもんね。

 文字を焼きつける方式は紙への負担が大きいため、裏には書けません。
 慣れてない紙に慣れてないペンで書いたから、文字の大きさを揃えられなかったのも紙が埋まっちゃった原因だと思う。

「法則を見つければ、魔力属性を調整することで狙った付与効果を得られそうだ。味や食感が属性で変わるのは間違いなさそうだしな」
「……水属性魔力が多いと甘くなる気がする」
「闇属性も甘くなると思っていたんだが、大盛りラーメンは違ったぞ」
「……闇属性は濃厚さに影響がある気がする」

 などとふたりが話している間に、わたしはチョコフォンデュを作った。
 うーん。やっぱり果物だけっていうのは作れませんでした、残念。
 ドライフルーツなら作れたんだけどなあ。

 チョコフォンデュは具材に関係なく、MP自然回復率が上昇する付与効果付きです。
 具材だけだとドライフルーツ(支援効果上昇)、クッキー(防御力上昇)、マシュマロ(素早さ上昇)でした。
 セットにならなかったのは、チョコソースが作れなくて溶かした板チョコを砂糖なしのカフェオレで伸ばしたものを代わりにしたからかもしれません。

あなたにおすすめの小説

【完結】カノン・クライスラーはリンカネーション・ハイである。~回数制限付きでこの世界にある魔法なら何でも使えるという転生特典を貰いました

Debby
ファンタジー
【最終話まで予約投稿済み】 カノン・クライスラーは、辺境に近い領地を持つ子爵家の令嬢である。 頑張ってはいるけれど、家庭教師が泣いて謝るくらいには勉強は苦手で、運動はそれ以上に苦手だ。大半の貴族子女が16才になれば『発現』するという魔法も使えない。 そんなカノンは、王立学園の入学試験を受けるために王都へ向かっている途中で、乗っていた馬車が盗賊に襲われ大けがを負ってしまう。危うく天に召されるかと思ったその時、こういう物語ではお約束──前世の記憶?と転生特典の魔法が使えることを思い出したのだ! 例えそれがこの世界の常識から逸脱していても、魔法が使えるのであれば色々試してみたいと思うのが転生者の常。 リンカネーション(転生者)・ハイとなった、カノンの冒険がはじまった! ★ 覗いてくださりありがとうございます(*´▽`人) このお話は「異世界転生の特典として回数制限付きの魔法をもらいました」を(反省点を踏まえ)かなり設定を変えて加筆修正したものになります。

転生小説家の華麗なる円満離婚計画

鈴木かなえ
ファンタジー
キルステン伯爵家の令嬢として生を受けたクラリッサには、日本人だった前世の記憶がある。 両親と弟には疎まれているクラリッサだが、異母妹マリアンネとその兄エルヴィンと三人で仲良く育ち、前世の記憶を利用して小説家として密かに活躍していた。 ある時、夜会に連れ出されたクラリッサは、弟にハメられて見知らぬ男に襲われそうになる。 その男を返り討ちにして、逃げ出そうとしたところで美貌の貴公子ヘンリックと出会った。 逞しく想像力豊かなクラリッサと、その家族三人の物語です。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす

遊鷹太
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~

翡翠蓮
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……

伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊
ファンタジー
気が付くとまん丸と太った少女だった?! 痩せたいのに食事を制限しても運動をしても太っていってしまう。 一体私が何をしたというのよーっ! 驚愕の異世界転生、始まり始まり。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった