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アリの巣殲滅編
エピローグ・葉菜花、十六歳になりました。
パンの配布が終わるころにはすっかり日も落ちて、辺り一面が真っ暗になっていた。
最初から暗く開かれていない森の中だし、ラーメンによる打ち上げがあったので、昨日までより終わる時間が遅かったのである。
「……葉菜花が無事で良かった」
テントの撤去などの後片付けはガルグイユ騎士団のみなさんにまかせて、わたしとベルちゃん、シオン君で帰路に就く。
わたしはラケルを抱っこしてシオン君と一緒にメレナの背中、ベルちゃんは聖神殿の茶色い馬です。
神官のドロレスさん達は危ないので、お土産パンの配布前に騎士団員に護衛されて帰って行きました。
「心配させてごめんね。わたしもあんなことになるとはわからなくて」
腕の中のラケルを見ると、ラケルは首を傾げた。
「俺もよくわからないぞ。父上はあの爪に特殊な力は込めてなかったから、ごしゅじんのスキルが増幅されただけだと思う」
「『異世界料理再現錬金術』か。謎の多いスキルだな。俺の『鑑定』のレベルが上がったら、もっと詳細が読み取れるようになれるかもしれないが」
「葉菜花」
ベルちゃんが真面目な顔で見つめてくる。
セリフに間(ま)もない。
「もうあんな危ない真似はしないでね。あなたが倒れたと聞いて心臓が止まるかと思った」
「うん……」
アダマント鉱製の箒を出すことさえ怖いんだけど、オリハルコン水晶製のローブとドロワーズとブーツはどうしたらいいんだろう。
すごく着心地がいいんだよね。
キャミソールは聖神殿が用意してくれたもので、毎晩お風呂で洗って『浄化』してます。
「そうはいかないな」
「シオン君?」
「……騎士団長」
「危ないからこそ自分の限界と可能なことを確認しておくべきだ。宿舎の訓練場にモンスターを用意するから、葉菜花はあの能力を試してみろ。『鑑定』で異常が認められたら、すぐ止めてやる」
「……そんなにローストビーフが食べたいの?」
ベルちゃんに睨みつけられて、シオン君は溜息をついた。
「そんなわけないだろう。俺はただ葉菜花の生きる可能性を増やしたいだけだ」
「え? わたし命が危ないの?」
「今なにかあるわけではないが、この世界は貴様の住んでいた世界よりも物騒だ。利用できるものは増やしておいたほうがいい。……本当は、これまで俺が押しつけて来たことが正しかったなんてとても言えない。貴様にはもっと良い道があったのではないかとも思う。しかし時間は戻せないからな。今の状況でできることをするしかない」
時間は戻せない、か。
シオン君の言葉は当たり前のことなのに、なぜか妙に心に響いた。
……そうだ。あることを思いついたわたしは、ふたりにそれを告げた。
「ベルちゃん、シオン君、わたし十六歳になるよ」
「葉菜花?」
「……いきなりどうしたの?」
「ごしゅじん?」
「えっとね、前世で死んですぐこっちに転生したとしたら、ちょうど今日が誕生日だったの。前シオン君には来年の初めに十六歳になろうかって言ってたけど、いろいろあったし、これからへの決意も込めて今日から十六歳ってことにしようかなって思って」
「そうか」
「……誕生日? 暦は毎年変わるでしょ。閏年もあるし」
「前世では固定だったの。閏年は四年に一度あったけど」
「ごしゅじんが十六歳になるなら、俺も大人になるぞ!」
腕の中のラケルが、わたしを見上げて言った。
「そうなの?」
「うむ。だって十六歳は結婚できる歳だから大人だろ? 俺はごしゅじんをお嫁にしたいから、ほかの男に取られる前に大人になってごしゅじんと結婚するぞ!」
「……人間とモンスターは結婚できない。……あ、でも神獣は『人化』できる?」
『人化』とは動物の姿の神獣が人間の姿になるスキルのようです。
「そうだぞ! 今はまだ無理だけど早く大人になって『人化』して、ごしゅじんをお嫁にするんだぞ!」
「うーん」
「イヤなのか、ごしゅじん!」
「確かに前世の女の子は十六歳で結婚できたけど、本当にその年で結婚する人は少なかったよ。大人はやっぱり二十歳からだと思う」
だから結婚年齢を引き上げるって話もあったんだよね。
いつからだったかな。……もうべつの世界のことだけど。
「そうだな。そういうことは葉菜花が大人の年齢だと思う二十歳になってから考えればいいだろう。……四年もあればさすがに兄上もご成婚なさるだろうし」
「え?」
「いや、なんでもない。ラケル殿も『人化』できるようになってから、改めて求婚したほうがいいのではないか」
「ごしゅじんがまだ大人じゃないなら、俺も子どもでいいぞ!」
ラケルのふわふわ毛皮をモフモフしてから、わたしはシオン君に言った。
「だからね、十六歳になったのでモンスター相手に『異世界料理再現錬金術』を試してみようと思うの」
「そうか」
「……葉菜花」
「美味しいものが変成できたらベルちゃんも食べてね」
「……葉菜花」
ベルちゃんも納得してくれたようだ。
「そういえば言い忘れていたな。葉菜花、十六歳おめでとう」
「……おめでとう」
「ごしゅじん、おめでとうだぞ!」
「ありがとう」
そんなわけで、わたしは異世界で十六歳になりました。
これからもいろいろなことがあると思うけど、食いしん坊な友達やモフモフわんこと一緒に頑張って行きたいと思います。
最初から暗く開かれていない森の中だし、ラーメンによる打ち上げがあったので、昨日までより終わる時間が遅かったのである。
「……葉菜花が無事で良かった」
テントの撤去などの後片付けはガルグイユ騎士団のみなさんにまかせて、わたしとベルちゃん、シオン君で帰路に就く。
わたしはラケルを抱っこしてシオン君と一緒にメレナの背中、ベルちゃんは聖神殿の茶色い馬です。
神官のドロレスさん達は危ないので、お土産パンの配布前に騎士団員に護衛されて帰って行きました。
「心配させてごめんね。わたしもあんなことになるとはわからなくて」
腕の中のラケルを見ると、ラケルは首を傾げた。
「俺もよくわからないぞ。父上はあの爪に特殊な力は込めてなかったから、ごしゅじんのスキルが増幅されただけだと思う」
「『異世界料理再現錬金術』か。謎の多いスキルだな。俺の『鑑定』のレベルが上がったら、もっと詳細が読み取れるようになれるかもしれないが」
「葉菜花」
ベルちゃんが真面目な顔で見つめてくる。
セリフに間(ま)もない。
「もうあんな危ない真似はしないでね。あなたが倒れたと聞いて心臓が止まるかと思った」
「うん……」
アダマント鉱製の箒を出すことさえ怖いんだけど、オリハルコン水晶製のローブとドロワーズとブーツはどうしたらいいんだろう。
すごく着心地がいいんだよね。
キャミソールは聖神殿が用意してくれたもので、毎晩お風呂で洗って『浄化』してます。
「そうはいかないな」
「シオン君?」
「……騎士団長」
「危ないからこそ自分の限界と可能なことを確認しておくべきだ。宿舎の訓練場にモンスターを用意するから、葉菜花はあの能力を試してみろ。『鑑定』で異常が認められたら、すぐ止めてやる」
「……そんなにローストビーフが食べたいの?」
ベルちゃんに睨みつけられて、シオン君は溜息をついた。
「そんなわけないだろう。俺はただ葉菜花の生きる可能性を増やしたいだけだ」
「え? わたし命が危ないの?」
「今なにかあるわけではないが、この世界は貴様の住んでいた世界よりも物騒だ。利用できるものは増やしておいたほうがいい。……本当は、これまで俺が押しつけて来たことが正しかったなんてとても言えない。貴様にはもっと良い道があったのではないかとも思う。しかし時間は戻せないからな。今の状況でできることをするしかない」
時間は戻せない、か。
シオン君の言葉は当たり前のことなのに、なぜか妙に心に響いた。
……そうだ。あることを思いついたわたしは、ふたりにそれを告げた。
「ベルちゃん、シオン君、わたし十六歳になるよ」
「葉菜花?」
「……いきなりどうしたの?」
「ごしゅじん?」
「えっとね、前世で死んですぐこっちに転生したとしたら、ちょうど今日が誕生日だったの。前シオン君には来年の初めに十六歳になろうかって言ってたけど、いろいろあったし、これからへの決意も込めて今日から十六歳ってことにしようかなって思って」
「そうか」
「……誕生日? 暦は毎年変わるでしょ。閏年もあるし」
「前世では固定だったの。閏年は四年に一度あったけど」
「ごしゅじんが十六歳になるなら、俺も大人になるぞ!」
腕の中のラケルが、わたしを見上げて言った。
「そうなの?」
「うむ。だって十六歳は結婚できる歳だから大人だろ? 俺はごしゅじんをお嫁にしたいから、ほかの男に取られる前に大人になってごしゅじんと結婚するぞ!」
「……人間とモンスターは結婚できない。……あ、でも神獣は『人化』できる?」
『人化』とは動物の姿の神獣が人間の姿になるスキルのようです。
「そうだぞ! 今はまだ無理だけど早く大人になって『人化』して、ごしゅじんをお嫁にするんだぞ!」
「うーん」
「イヤなのか、ごしゅじん!」
「確かに前世の女の子は十六歳で結婚できたけど、本当にその年で結婚する人は少なかったよ。大人はやっぱり二十歳からだと思う」
だから結婚年齢を引き上げるって話もあったんだよね。
いつからだったかな。……もうべつの世界のことだけど。
「そうだな。そういうことは葉菜花が大人の年齢だと思う二十歳になってから考えればいいだろう。……四年もあればさすがに兄上もご成婚なさるだろうし」
「え?」
「いや、なんでもない。ラケル殿も『人化』できるようになってから、改めて求婚したほうがいいのではないか」
「ごしゅじんがまだ大人じゃないなら、俺も子どもでいいぞ!」
ラケルのふわふわ毛皮をモフモフしてから、わたしはシオン君に言った。
「だからね、十六歳になったのでモンスター相手に『異世界料理再現錬金術』を試してみようと思うの」
「そうか」
「……葉菜花」
「美味しいものが変成できたらベルちゃんも食べてね」
「……葉菜花」
ベルちゃんも納得してくれたようだ。
「そういえば言い忘れていたな。葉菜花、十六歳おめでとう」
「……おめでとう」
「ごしゅじん、おめでとうだぞ!」
「ありがとう」
そんなわけで、わたしは異世界で十六歳になりました。
これからもいろいろなことがあると思うけど、食いしん坊な友達やモフモフわんこと一緒に頑張って行きたいと思います。
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