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後日談② 愛しのジュリエット
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あら、こんなところでどうしたの?
あたしを迎えに来た?
なにを言っているの?
あなたがあの女を選んだときに、あたし達は赤の他人になったんじゃない。
同じ村に住んでいただけの赤の他人よ。まあ、一応幼馴染ではあるかもしれないわね。
リュカ? リュカは仕事で留守よ。だからあなたを家には上げられないわ。
話があるんなら、ここで言って。
帰って来て欲しい?
莫迦を言わないで。
さっきも言ったでしょう?
あたし達は赤の他人よ。昔恋人だったからなんだって言うの?
別れたら、どちらかがほかに好きな相手が出来たら恋人関係は終わるものなんでしょう?
意地悪を言わないでくれ?
あなたがあたしに言ったことでしょう?
村長の息子であることを利用して、ほかのみんなにもあたしを莫迦にさせた。
ああ、ごめんなさい。あれはあなたのせいじゃなかったわね。
村長の息子のあなたと付き合っていたあたしを妬んでいた女と、あの女の機嫌を取りたい男達が自主的にやってたのよね? あなたは助けもせず、汚いものでも見るような目を向けてきただけだったわね。
庇ってくれたのはリュカだけだった。
そのリュカまであの女に近寄って行ったときは心臓が潰れるような気分になったけど……ふふふ、まったくもうリュカってば莫迦なんだから。
リュカはね、あなたからあの女を引き離せばあたしが幸せになれると思って、それであの女に近づいていたんだって。
莫迦よねえ。
あたしみたいな女のために、なんでそんな……申し訳ないと思う反面、嬉しくて仕方がないの。
昔リュカに森へ遊びに行こうと誘われても、村長の息子で危ないことを禁止されていたあなたが泣き喚いたら、あたしは断ってたのに。
ひとりで森へ行ったリュカはいつもお土産を持って帰ってくれたわ。
ドングリに松ぼっくり、あたしが好きな花を彫刻した木の枝──
リュカは木こり仕事の合間に木工をしていたの。
その作品が認められてね、今ではあのアルジャン伯爵様御用達の木工職人なのよ。
今日もアルジャン伯爵様のところへ行っているの。
奥様のお子がもうすぐお生まれになるからね、どんな揺り篭がいいか確認に行ったのよ。
リュカがアルジャン伯爵様御用達になって、うちの家族まで伯爵領に引っ越させてくれて本当に良かったわ。
村にいたままだったら無理矢理あなたの嫁にされてたかもしれないもの。
そういえば隣村から来た嫁候補、逃げ帰ったんだって?
あなたが結婚するはずだったあの女の話をみんなに聞かされて嫌になったみたいね。
そうよねえ、あの女は凄かったものね。
いつでも明るくて元気で、だれに対しても優しくて思いやり深くて。
一生そんな女と比べられるなんて冗談じゃないわよねえ。
リュカはね、あの女が気持ち悪かったって言うの。
リュカのお母さんを騙した町の男みたいだって。
だれのことも愛せるしだれからも愛されるけど、本人の中身はなくて空っぽなんだって。
よくわからないわよねえ。
リュカはときどき難しいことを言うの。
「ジュリエット!」
ああ、リュカが帰って来たわ。
あなたは早く村へ帰ったら?
今度来たら伯爵様に言って村のほうへも注意してもらうわよ。
伯爵様はね、リュカの木工をとっても気に入ってらっしゃるの。奥様もよ。揺り篭が完成したら木馬も作って欲しいって言われてるのよ。
リュカの彫刻って素敵だものね。
ねえ見て。この髪飾りもリュカが作ってくれたのよ。
愛しのジュリエット?
ああ、あの女が来るまではそう呼んでくれてたわね。
あのころのあたしは、あなたにそう呼ばれるの好きだったわ。
でもそう呼ばれるのが好きだった女の子はね、今はもうどこにもいないの。
「お帰りなさい、リュカ!」
今のあたしはね、リュカの妻なの。
だれよりも彼を愛している、幸せな女なの。
殺してでもあなたを独り占めにしようとして、夜の森で泣きながら尖った石を探していた哀れな女じゃないのよ。
あたしが生きてきた中で最高に惨めで悲しかったとき、あなたはあの女と笑い合っていたんじゃない。
でもあなたには感謝しているのよ?
莫迦だけどあなたを精いっぱい愛して、その恋が終わったからこそリュカを大切に思えるんだもの。
もうリュカ以外愛することはないってわかるんだもの。
今なら言えるわ、幸せになってね。……あたしのいないところで。
あたしを迎えに来た?
なにを言っているの?
あなたがあの女を選んだときに、あたし達は赤の他人になったんじゃない。
同じ村に住んでいただけの赤の他人よ。まあ、一応幼馴染ではあるかもしれないわね。
リュカ? リュカは仕事で留守よ。だからあなたを家には上げられないわ。
話があるんなら、ここで言って。
帰って来て欲しい?
莫迦を言わないで。
さっきも言ったでしょう?
あたし達は赤の他人よ。昔恋人だったからなんだって言うの?
別れたら、どちらかがほかに好きな相手が出来たら恋人関係は終わるものなんでしょう?
意地悪を言わないでくれ?
あなたがあたしに言ったことでしょう?
村長の息子であることを利用して、ほかのみんなにもあたしを莫迦にさせた。
ああ、ごめんなさい。あれはあなたのせいじゃなかったわね。
村長の息子のあなたと付き合っていたあたしを妬んでいた女と、あの女の機嫌を取りたい男達が自主的にやってたのよね? あなたは助けもせず、汚いものでも見るような目を向けてきただけだったわね。
庇ってくれたのはリュカだけだった。
そのリュカまであの女に近寄って行ったときは心臓が潰れるような気分になったけど……ふふふ、まったくもうリュカってば莫迦なんだから。
リュカはね、あなたからあの女を引き離せばあたしが幸せになれると思って、それであの女に近づいていたんだって。
莫迦よねえ。
あたしみたいな女のために、なんでそんな……申し訳ないと思う反面、嬉しくて仕方がないの。
昔リュカに森へ遊びに行こうと誘われても、村長の息子で危ないことを禁止されていたあなたが泣き喚いたら、あたしは断ってたのに。
ひとりで森へ行ったリュカはいつもお土産を持って帰ってくれたわ。
ドングリに松ぼっくり、あたしが好きな花を彫刻した木の枝──
リュカは木こり仕事の合間に木工をしていたの。
その作品が認められてね、今ではあのアルジャン伯爵様御用達の木工職人なのよ。
今日もアルジャン伯爵様のところへ行っているの。
奥様のお子がもうすぐお生まれになるからね、どんな揺り篭がいいか確認に行ったのよ。
リュカがアルジャン伯爵様御用達になって、うちの家族まで伯爵領に引っ越させてくれて本当に良かったわ。
村にいたままだったら無理矢理あなたの嫁にされてたかもしれないもの。
そういえば隣村から来た嫁候補、逃げ帰ったんだって?
あなたが結婚するはずだったあの女の話をみんなに聞かされて嫌になったみたいね。
そうよねえ、あの女は凄かったものね。
いつでも明るくて元気で、だれに対しても優しくて思いやり深くて。
一生そんな女と比べられるなんて冗談じゃないわよねえ。
リュカはね、あの女が気持ち悪かったって言うの。
リュカのお母さんを騙した町の男みたいだって。
だれのことも愛せるしだれからも愛されるけど、本人の中身はなくて空っぽなんだって。
よくわからないわよねえ。
リュカはときどき難しいことを言うの。
「ジュリエット!」
ああ、リュカが帰って来たわ。
あなたは早く村へ帰ったら?
今度来たら伯爵様に言って村のほうへも注意してもらうわよ。
伯爵様はね、リュカの木工をとっても気に入ってらっしゃるの。奥様もよ。揺り篭が完成したら木馬も作って欲しいって言われてるのよ。
リュカの彫刻って素敵だものね。
ねえ見て。この髪飾りもリュカが作ってくれたのよ。
愛しのジュリエット?
ああ、あの女が来るまではそう呼んでくれてたわね。
あのころのあたしは、あなたにそう呼ばれるの好きだったわ。
でもそう呼ばれるのが好きだった女の子はね、今はもうどこにもいないの。
「お帰りなさい、リュカ!」
今のあたしはね、リュカの妻なの。
だれよりも彼を愛している、幸せな女なの。
殺してでもあなたを独り占めにしようとして、夜の森で泣きながら尖った石を探していた哀れな女じゃないのよ。
あたしが生きてきた中で最高に惨めで悲しかったとき、あなたはあの女と笑い合っていたんじゃない。
でもあなたには感謝しているのよ?
莫迦だけどあなたを精いっぱい愛して、その恋が終わったからこそリュカを大切に思えるんだもの。
もうリュカ以外愛することはないってわかるんだもの。
今なら言えるわ、幸せになってね。……あたしのいないところで。
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