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プロローグ
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黒褐色の薔薇が一輪暗闇の中で咲いている。そこに黒髪に銀色が混ざった変わった色の髪をした青年が泣き崩れていた。
その青年を見つめる栗色の髪の少年。怖くなり、耳を塞いで、暗闇の中を走り出した。
それに気がついた青年は、伸びた前髪の隙間から走り去った少年を睨みつけた。紫色の瞳は憎悪に満ちている。
「全部、全部、全部、お前のせいだっ」
ふらふらと立ち上がると、両拳を強く握りしめた。
「どうして、お前なんだよっ」
青年の怒号と同時に、体から溢れ出た薔薇の蔓。その蔓は少年の後を追う。
「逃げるなぁぁぁ」
薔薇の蔓が走っている少年の両足首を捉えた。少年はバランスを崩して、前に転んだ。蔓には棘がついており、それが足首に刺さる。
少年は痛いと発したはずが、声が出なかった。すると、ずるずると後ろに引っ張られ始める。このままでは、青年のところまで引きずり戻されると思った少年は、爪を立てて抵抗をする。
「無駄なんだよ」
その一言と共に青年のところまで引きずり戻された。
青年は戻ってきた、少年に馬乗りになり、首を絞める。
「お前さえいなければ、俺は幸せになれた、なれたんだっ、何もかも」
ボロボロと涙を少年の顔に溢していく。
「――さよならっ」
――――
ガバッと上半身を起こして、自分の首を触る栗色の髪の少年。呼吸が荒く、顔や背中に汗が大量に出ていた。
今にでも心臓が口から出てきそうなくらい、音が忙しなく鳴る。
「ここは、どこだ……俺は確か――」
遠くから咆哮が聞こえた。あまりの音の大きさに耳を塞ぐ少年。
「……思い出した。確か戦闘訓練中にセマンスが表れて、吹っ飛ばされて……気を失っていたのか」
少年は急に体中に痛みが走り、立とうとしても力が入らなかった。
段々と近づいてくる足音。「グルルル……」という低い声が木々の間から聞こえてきた。ごくりと唾を飲み込む少年。暗闇から現れた、大きな狼のような化け物。体中から荊が生えている。
この化け物が―― セマンス――。荊が生えているのが特徴的。セマンスは魔力を持った人間を食らい、生きている。この世界の人間は体内に魔力を宿していた。そして、人間とセマンスは古代からずっと闘っている。どこから来たのか謎の生命体であった。
「……どうしよう」
吹っ飛ばされたせいで丸腰の状態の少年。大きな狼のセマンスは、涎をぼたぼたとこぼしながら、近づいてくる。
少年は死を覚悟して、ぎゅぅっと強く目を瞑った。
「どこまで行くねん、この野郎!」
独特の訛りで喋る、赤茶色の髪をした青年が、セマンスの背後から現れた。
「飛鳥さん、あそこに少年がいます!」
「んじゃぁ、保護頼むわ」
飛鳥と呼ばれた青年は、銀色に輝く剣を強く握りしめるとセマンスに向かって行った。
数名の黒い隊服を着た人たちが少年を保護しに来た。
「もう大丈夫だよ、キミ名前は言えるかな?」
「……雨砂 優雅です」
さし伸ばされた手を掴みゆっくり立ち上がる、少年―― 優雅。
「ケガをしているみたいだね、ほら、早く背中に乗って」
一人の隊員の背中におんぶされる優雅。そこから、安全な場所へ移動を開始する。
「……あの人、一人で大丈夫ですか?」
「あー、飛鳥さん? 大丈夫大丈夫。 あの人、真紅の弾丸の隊員の中で一番強いから」
「飛鳥さん、マジで強いっすから!」
「そーだぞ、そーだぞ!」
隊員たちが次々にそう言っていると大きな足音が近づいてくる。
優雅を含め、後ろを振り向くとさっきのセマンスがこちらに向かってくる。
「え、なんで? 飛鳥さんは?!」
慌てて全速力で走る隊員たち。背負われている優雅は、揺れで酔いそうになっていた。
「だーー、もうっ、なんやねんコイツ!」
セマンスの背後には、飛鳥が追ってきていたが、ものすごく苛立っている様子。
というのも、優雅たちがあの場から離れた数分後、セマンスと飛鳥は闘っていたが、急に優雅たちの後を追いだしたのだ。
優雅たちと段々と距離が縮んでいく。
「もう無理無理無理!」
優雅を背負っていた隊員が涙目になりながら叫ぶ。
「大人しく、しとれってこの野郎!」
飛鳥は舌打ちをして、剣に魔力を込め、セマンスに一撃を食らわした。
耳を塞ぎたくなるような悲痛の声が森中を響き渡る。そして、セマンスの体内から大量の荊が出てきて、セマンスに覆い、天へと伸びていった。そして、青い薔薇を咲かせて、朽ち果てる。
キラキラと降り注ぐそれは、まるで雪のように儚く綺麗だった。
「し、死ぬかと思った……」
優雅を背負っていた隊員は、へなへなを地面に座り込む。優雅もその隊員から降りた。
「今日のセマンス、なんや、変やったなぁ……」
飛鳥は剣を鞘に収めると優雅をちらりと見た。しかし、首を左右に振って「気のせいか……」と呟いた。
「んじゃぁ、あと頼んだで。キミ……優雅くんやっけ?戦闘訓練の途中やったやろ、先生とか他の子らが待っていると思うし」
ひらひらと手を振って、その場から離れた飛鳥だった。
優雅はぺこりとお辞儀をし、飛鳥の背中を見つめる。流石、セマンスを最前線で闘う組織、真紅の弾丸の一員。
強さは伊達じゃないと。優雅はそう思い、空を仰いだ。いつのまにか空は夕暮れ時だった。
―― 止まっていた歯車が静かに動き始めた ――
その青年を見つめる栗色の髪の少年。怖くなり、耳を塞いで、暗闇の中を走り出した。
それに気がついた青年は、伸びた前髪の隙間から走り去った少年を睨みつけた。紫色の瞳は憎悪に満ちている。
「全部、全部、全部、お前のせいだっ」
ふらふらと立ち上がると、両拳を強く握りしめた。
「どうして、お前なんだよっ」
青年の怒号と同時に、体から溢れ出た薔薇の蔓。その蔓は少年の後を追う。
「逃げるなぁぁぁ」
薔薇の蔓が走っている少年の両足首を捉えた。少年はバランスを崩して、前に転んだ。蔓には棘がついており、それが足首に刺さる。
少年は痛いと発したはずが、声が出なかった。すると、ずるずると後ろに引っ張られ始める。このままでは、青年のところまで引きずり戻されると思った少年は、爪を立てて抵抗をする。
「無駄なんだよ」
その一言と共に青年のところまで引きずり戻された。
青年は戻ってきた、少年に馬乗りになり、首を絞める。
「お前さえいなければ、俺は幸せになれた、なれたんだっ、何もかも」
ボロボロと涙を少年の顔に溢していく。
「――さよならっ」
――――
ガバッと上半身を起こして、自分の首を触る栗色の髪の少年。呼吸が荒く、顔や背中に汗が大量に出ていた。
今にでも心臓が口から出てきそうなくらい、音が忙しなく鳴る。
「ここは、どこだ……俺は確か――」
遠くから咆哮が聞こえた。あまりの音の大きさに耳を塞ぐ少年。
「……思い出した。確か戦闘訓練中にセマンスが表れて、吹っ飛ばされて……気を失っていたのか」
少年は急に体中に痛みが走り、立とうとしても力が入らなかった。
段々と近づいてくる足音。「グルルル……」という低い声が木々の間から聞こえてきた。ごくりと唾を飲み込む少年。暗闇から現れた、大きな狼のような化け物。体中から荊が生えている。
この化け物が―― セマンス――。荊が生えているのが特徴的。セマンスは魔力を持った人間を食らい、生きている。この世界の人間は体内に魔力を宿していた。そして、人間とセマンスは古代からずっと闘っている。どこから来たのか謎の生命体であった。
「……どうしよう」
吹っ飛ばされたせいで丸腰の状態の少年。大きな狼のセマンスは、涎をぼたぼたとこぼしながら、近づいてくる。
少年は死を覚悟して、ぎゅぅっと強く目を瞑った。
「どこまで行くねん、この野郎!」
独特の訛りで喋る、赤茶色の髪をした青年が、セマンスの背後から現れた。
「飛鳥さん、あそこに少年がいます!」
「んじゃぁ、保護頼むわ」
飛鳥と呼ばれた青年は、銀色に輝く剣を強く握りしめるとセマンスに向かって行った。
数名の黒い隊服を着た人たちが少年を保護しに来た。
「もう大丈夫だよ、キミ名前は言えるかな?」
「……雨砂 優雅です」
さし伸ばされた手を掴みゆっくり立ち上がる、少年―― 優雅。
「ケガをしているみたいだね、ほら、早く背中に乗って」
一人の隊員の背中におんぶされる優雅。そこから、安全な場所へ移動を開始する。
「……あの人、一人で大丈夫ですか?」
「あー、飛鳥さん? 大丈夫大丈夫。 あの人、真紅の弾丸の隊員の中で一番強いから」
「飛鳥さん、マジで強いっすから!」
「そーだぞ、そーだぞ!」
隊員たちが次々にそう言っていると大きな足音が近づいてくる。
優雅を含め、後ろを振り向くとさっきのセマンスがこちらに向かってくる。
「え、なんで? 飛鳥さんは?!」
慌てて全速力で走る隊員たち。背負われている優雅は、揺れで酔いそうになっていた。
「だーー、もうっ、なんやねんコイツ!」
セマンスの背後には、飛鳥が追ってきていたが、ものすごく苛立っている様子。
というのも、優雅たちがあの場から離れた数分後、セマンスと飛鳥は闘っていたが、急に優雅たちの後を追いだしたのだ。
優雅たちと段々と距離が縮んでいく。
「もう無理無理無理!」
優雅を背負っていた隊員が涙目になりながら叫ぶ。
「大人しく、しとれってこの野郎!」
飛鳥は舌打ちをして、剣に魔力を込め、セマンスに一撃を食らわした。
耳を塞ぎたくなるような悲痛の声が森中を響き渡る。そして、セマンスの体内から大量の荊が出てきて、セマンスに覆い、天へと伸びていった。そして、青い薔薇を咲かせて、朽ち果てる。
キラキラと降り注ぐそれは、まるで雪のように儚く綺麗だった。
「し、死ぬかと思った……」
優雅を背負っていた隊員は、へなへなを地面に座り込む。優雅もその隊員から降りた。
「今日のセマンス、なんや、変やったなぁ……」
飛鳥は剣を鞘に収めると優雅をちらりと見た。しかし、首を左右に振って「気のせいか……」と呟いた。
「んじゃぁ、あと頼んだで。キミ……優雅くんやっけ?戦闘訓練の途中やったやろ、先生とか他の子らが待っていると思うし」
ひらひらと手を振って、その場から離れた飛鳥だった。
優雅はぺこりとお辞儀をし、飛鳥の背中を見つめる。流石、セマンスを最前線で闘う組織、真紅の弾丸の一員。
強さは伊達じゃないと。優雅はそう思い、空を仰いだ。いつのまにか空は夕暮れ時だった。
―― 止まっていた歯車が静かに動き始めた ――
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