異世界契約 ― ROCKERS ―

一水けんせい

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トヨスティークの章

第21話 アーミー

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俺はテレジアが知っているという酒場に行くことになった。『異世界』の酒はまだ飲んだことが無かったので少しだけ期待した。テレジアは繁華街から少し裏路地へ入り店の前で止まった。看板には『アーミー』と書かれていた。『アーミー』というママがやってるのか?どっちにしろ『安く』て『美味い』ならそんな事どうでもいい。

「さあついた ここよ! 久し振りだわ……入りましょ!」
俺は後からついて行く。少々、中は暗めだが…うんうん、酒のいい匂いがする。
俺とテレジアはカウンターに座った。ボックスは、ほとんど埋まっていた。

(結構繁盛してるみたいだな……)

「久し振りね! マスター」
「あれ? テレジアさん! 何時帰ったんですか? お久し振りです!」
「今日ついたの! あっこっちはケイゴ あたしのパートナーよ!」
「おい……いつ俺が お前のパートナーになったんだ?…」
「お前じゃないでしょ!テレジアよ! パートナーは なる予定で紹介したのよ」
「いやあ それにしても驚きましたよ! お元気そうで」
「マスターも元気そうで安心したわ …お店結構入ってるわね?」
「おかげさまで 何にします? テレジアさんは水割りですよね?」
「うん あたしは水割り ケイゴは何にするの? 同じものでいい?」
「ああ とりあえず一緒でいいよ」

(いよいよ飲めるぞ!)

「どうぞ 水割りです」
「ありがとう マスター! ケイゴ とりあえず乾杯しましょ!」
「何に乾杯するんだ?……」
「あたしとケイゴのこれからに! 乾杯!」

(まあ……いいか!)

「乾杯!」

俺は一口だけ口に含み、味と匂いを確かめながらゴクリと喉に酒を通した。美味いかも……もう一口 ゴクリ…… あれ?美味いわこれ!俺は一気に飲み干した。

「テレジア…」
「何? どうしたの?」
「美味いじゃないか! ここの酒!」
「えっ? そんなに美味しかった? ならよかった」

テレジアはニッコリした。俺はおかわりをした。

「マスター ロックで頂戴」
「はい ただいま」
「ちょっと……飲むの早くない? 大丈夫?」
「は? なに言ってん……」
(まずい……記憶喪失だった…俺)

「ああ ゆっくり飲むよ……うん」
(ほんとはガバガバいきたいところだが我慢だ……)

「そうよ ゆっくり飲んでね ところでマスター 話があるんだけど」
「なんですか?」
「ここに一ケ月くらい滞在する予定なんだけど 良かったらまた使ってくれない?」
「えっ?本当ですか? テレジアさんなら大歓迎ですよ! 是非!」
「へ? テレジアがホステス? 冗談だろ! ハハハハ」

俺は声を出して笑った。するとマスターが
「何を言ってるんです テレジアさんはここの 元ナンバーワンですよ!」
俺はショックで一瞬固まった。そして、この店に通う『トヨスティーク』の住人の感性を本気で疑った。

「冗談だろ?」
「いえいえ!大マジです! ……ここだけの話 テレジアさん化けますから…」
マスターは俺に耳打ちをした。

「何コソコソ話てるの? マスター余計な事言わないでね!」
「いいませんよ 余計な事なんて…あっ カーメラさんとアメリーさんが来ましたよ」
「久し振りね! カーメラ! アメリー! 元気してた?」
「テレジア! いつ帰ったの? ああああ!うれしい!」
「テレジアさん! 久し振りです また会えてうれしいです!」

マスターの話が本当なら、この二人はテレジアの元同僚?いや、そんなことより滅茶苦茶かわいいんだが、もっと驚いたのは店の制服?『軍服にミニスカート』?

(これは……考えたやつ天才だわ!セクシーさと、かわいさがタマラン…って事はテレジアも同じ格好してたのか?)

俺はテレジアを食い入るように見てみた……

(駄目だ……想像できん……)

俺がそんなつまらない想像してる間にテレジアと元同僚の二人は話で盛り上がっていた。楽しそうに話をしてる。

「ところでテレジア まだ冒険者登録してないの?」
「……うん まだしてないんだ… 中々パートナーに巡り合えなくてね…」
「…かわいそうなテレジア……」
「でもね ついに現れたの! 最高のパートナーが!」
「本当? よかったテレジアおめでとう!」
「テレジアさん! おめでとうございます!」

一瞬、テレジアは俺の方をチラッと見るとニヤリとした……

(こっ こいつ! 俺を嵌める為に連れてきたんじゃないだろうな?危険だ!)

「でもね まだちゃんと返事もらってないのよ」
「なんで? あたしなら即オッケーなのに」
「あたしもです!そのパートナーさんは少し お馬鹿さんなんですか?」

酷い言われようだ……

「マスターおかわり…」
「はい ただいま」
「ここはママはいないの?」
俺はマスターに尋ねた。
「いえ ママはそろそろ出勤ですね はい どうぞ」
「ふーん そうなんだ…」

俺は何時もの癖で、コップに入った氷をクルクル回してた。すると、まさにその時、ママが出勤してきた。

「カーメラ アメリー 仕事仕事 お客さんについて」
「ママ おはようございます それよりママ テレジアよ!」
「テレジア テレジアじゃないか! どうしたんだい?」
「あ ママ! 久し振り さっき着いたばかりよ また一ケ月よろしく!」
「働くのかい? そりゃあんたならかまわないけど…冒険者の方は?」
「うん まあ…まだ登録なんかはしてないんだけどね 時期にね…」
「……ふぅー そっちは上手くいってないようだね…そっちの彼は連れかい?」
「そう! ケイゴっていうの ケイゴ この店のママ」
「どうも……」
「…テレジアを頼むよ」
「……」

(いきなり何を言ってるか理解不能なんだが……)

「ところでテレジア あんたはここじゃない店に行って欲しいんだけど」
「えっ? どこに?」
「新店舗さ 先月オープンしたばかりでね あっちには ジャニーをまとめ役で行かせているんだけど 思ったほど伸びなくてね… 明日夕方にはここに来ておくんだよ」
「わかった そうかあ ジャニー頑張ってるんだあ」
「テレジア 別の店か?」
「うん なんかそうみたいね」
「…あんた残念だったね……テレジアの制服姿見れなくて……」

(この糞ババァ! 別に見たくねえっつーの!)

「えっ? ケイゴ あたしの制服姿見たいの? ねえ!」
「別に見たくねーよ」
「本当? 凄いんだからあたし! フフン! 見たら惚れちゃうわよ?」

(惚れちゃうのは別にして…黙っていれば、すでにかわいいのだから…)

「…そろそろ帰るけど テレジアは残って飲んでるのか?」
「ううん あたしも一緒に帰るわ」
「別に俺に気つかわないで 飲んでてもいいんだぞ?」
「あたしも一日馬車で疲れただけよ ごちそうさま いくら?」
「今日はいいよ」
「いいわよ ママ! お金ならちゃんとあるから」
「今回はいいよ 明日から『馬車馬』のように働いてもらうから」
「…『馬車馬』って 今日は馬づくしね… ありがとうママ! 明日ね」
「どうも…ごちさまです」

俺達はママに頭を下げ店を出て 宿屋に向かった。後ろからテレジアが鼻歌まじりでついてくる。

(少しの酒飲んで、久し振りに友達とあったんだからそりゃ嬉しいわな……でも、テレジアの『軍服とミニスカート』みたかったなあ……残念だわ)

『異世界』に来てはじめての旅 初日は色んな事がありすぎた大変な一日だった。
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