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トヨスティークの章
第36話 サポーターとポーター
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次の日 テレジアが店を最後にする日……
昨夜は『フェスタ』で最後まで残りママの話を聞いて宿に戻った。ママは他店の『ショータイム』は、いずれ町中で始まるのだからあまり気にしないで自分達の歌や踊りに磨きをかけろと言っていた。
俺とテレジアは、今晩までの宿泊で明日には町を出るという事を、宿に伝えると俺に差額を返してくれた。俺はテレジアと飯に出かけた。惣菜屋で、お茶と蒸かし芋等を買い中央広場のベンチで食べる。テレジアが食べながら俺に言った。
「結局 何も出来なかったわ あたし」
「何が?」
「ママにジャニーの事 頼まれていたじゃない? 何もしてあげられなかったなあって」
「気にするな そんな事より『アーミー』の女の子達に言わなくていいのか?」
「……今回はいいわ だって『アインティーク』で何も無かったら ここに戻る訳でしょ? 『さよなら またいつか』とか言って すぐこの辺ウロウロしてたら笑われるわよ」
「そうだな ハハハ 俺も狩った『魔獣』が居なくなるなんて知らなかったからこんな事になっちまったけど 何も無かったらここに戻ってこよう」
「うん!」
テレジアと、そんな話をして飯を食った。俺達はそのまま乗り合い馬車まで行き予約は出来るのか、聞いてみる事にした。外門の厩舎に行くと、先日話した男が馬にブラシをかけていた。
「こんにちは」
「やあ こんにちは」
「乗り合いの予約って出来る?」
「ああ 出来るけど 前金で預かる事になるけど 乗るかい?」
「じゃあ 予約しちゃうか 二人分 今払うよ」
「毎度! じゃあ小屋に行こう 領収書渡すよ」
俺とテレジアは、前払いで明日の朝便を予約した。
「はいこれ 領収書と番号ね 一号車の一番と二番だよ」
「オッケー 俺達しか予約いないんだな?」
「あまり予約する人はいないからね ハハ 兄さん達は『アインティーク』に何しに行くんだい?」
「仕事だよ 仕事」
「あそこは日が落ちると『魔獣』が外門付近まで来るから気をつけてな」
「へぇ 外門付近まで来るのか」
「まあ 『魔獣』と言っても たまにBランクがいるくらいで ほとんどがCランクだよ」
「そっか ありがとう 気をつけるよ」
俺とテレジアは領収書を受け取り町に戻った。一応、明日で『トヨスティーク』を離れるので町の中を二人でブラブラする事にした。
「聞いたかテレジア?」
「ええ 『まれにBランク』と言ってたわね」
「ああ あまり気にする必要は無さそうだな 魔法を使うまでもなさそうだ」
「そうねえ Cランク程度 ケイゴなら素手でイケちゃうかもね フフ」
「テレジア 『アインティーク』は行ったんだろ?」
「うん まさに『武具』の都市よ この町に比べると情報量は少なかったけど」
「武器か どんなのがあるか少し楽しみなんだよ俺」
「あたしはあんまり好きじゃないわ」
「そういや テレジアはどんなの持っているんだ? 武器」
「あたし? あたしは…… ナイフくらいかしら」
「ナイフ? 役に立たないだろ」
「いいのよ! 危なくなったら魔法でなんとかするんだから 武器より防具が欲しいわ」
「防具? 鎧か?」
「ちょっと! あたしは鎧なんか着ないわよ そりゃ着てる女の人もいるけどこれからケイゴと一緒だと 危険な事が多そうだし……」
「防具ねえ…… それより魔法の強弱って出来るのか?」
「強弱? 出来るわよ 全てイメージよ 風 光 爆発 炎 雷などイメージする事で大きくしたり小さくしたり そればっかりは練習しないとね」
「そっか」
「ケイゴの場合は 山奥で修行するしかないわね 人に見られるとまずいし」
「やめてくれよ 山で修行とか」
「フフ そうだ! 昨夜のステージ衣装どうだった? かわいいでしょ?」
「ああ 浴衣ミニな いいんじゃないか?」
――
「魔法レベル2のサポーターです! 何かありませんか?」
「ロバ持ちですー 何かありませんかー レベル2ですー 」
そんな話をしているうちに、『冒険者組合』の近くに来ていた。表には数十名の『サポーター』が仕事を探して声を出していた。『サポーター』とは冒険者の荷物を、代わりに持ったり場合によっては『魔獣』との戦闘で補助的な手助けをする。
そこに、一人の冒険者が組合から出てきて声をあげた。
「おーい 馬かロバ持ちいないか? 出来れば荷台付きで頼む!」
「レベル2の馬持ちです! よろしくー! あっ 話を聞かせて下さい」
「俺も話聞かせて下さい! ロバ荷台付きです」
冒険者と『サポーター』の二人は『冒険者組合』の中へ入っていった。
「なるほどね こりゃ馬やロバ持ってる方が分がいいな」
「そうね 戦力の増強なら ソロ冒険者や二~三人の冒険者と組めばいいんだけど 冒険者同士だと報酬の均等割りになるから『サポーター』を使う人が多いのよ」
冒険者や『サポーター』が密集している中心から、少し外れた場所に何人かが集まっていた。少し見た目が幼い感じはしたが荷台付きのロバを持っている。俺はテレジアに聞いた。
「あっちも『サポーター』か?」
「ん? ああ あの子達は『ポーター』ね まだ体が出来ていないから山中や崖なんかを荷物を持ってついていけないから ロバが移動できるところまでの荷物運びね 当然 戦闘の補助もしないわ」
「まだ十五~十七歳くらいだもんな なるほどねえ」
「日当が『サポーター』の半額で雇えるから それなりに需要はあるのよ まあ体が成長するまでの 修行期間といったところなのかな」
(俺的にはどちらでもいいんだけど、稼げないやつに稼がせてやりたいな……)
―― 夜、『フェスタ』営業終了間際……
俺は、カウンターで酒を飲みながら店が終わるのを待っていた。最後の客も勘定をするとローズウッドが表の看板の『フラッシュ』を店の中に入れた。すると『アーミー』のマスターと女の子達が最後の客と入れ替わりで『フェスタ』に来たのだ。
「ママ お疲れ様です 終わらせてきました」
「お疲れ様ですー」
「お疲れ様です!」
どういうことだろう? 早上がりしたという事なのか……反省会か?
「ああ お疲れ様 今日はみんなに報告があるんだよ テレジアが今日で店を辞めて『トヨスティーク』から出て行く事になった」
「えっ! 一ケ月くらいいるんじゃなかったの? テレジア」
「急ですね テレジアさん……」
カーメラとアメリーも驚いた様子でテレジアに尋ねる。テレジアは少し寂しげに話し出した。
「……急に辞める事になっちゃって ごめんね」
「……寂しくなるわ」
「寂しくなっちゃいますね」
カーメラ達は別れを惜しんでいた。
「……グスッ グッ グズッ…」
洗い物をしながら、俺の前でローズウッドが泣いている。
(……なんか、雲行きが怪しいんだが…)
「テレジアはそこのカウンターで酒かっ喰らっている ケイゴについて町を出て行くんだよ」
(ちょっ! 糞ババア そんな事言うと 俺が悪者になるだろうが!)
一斉に、みんなの視線が突き刺さるのを感じた俺は、知らん顔して酒を飲む。
「ケイゴ! この間言った事 忘れるんじゃないよ!」
「……ああ 分かっている」
テレジアは何の事か分からない顔をしていた。ジャニーとカーメラ、アメリーが俺のところに来てテレジアを頼むと言ってきた。俺は黙って頷いた。
「テレジア 短かったけど今日までの分だよ」
「ありがとう ママ」
今日までの給金を貰いテレジアはママに頭を下げた。
「すぐ戻ってくるから その時は みんなまたよろしくね!」
「そうね 二度と会えなくなる訳じゃないし それまでのさよならね」
「そうです すぐ会えますよ」
別れも尽きない… 俺は立ち上がり店の表で待つことにした。
「あ ローズウッド」
「グズッ ヒッ グズッ はい ヒィック……」
「ここんとこ すっかり見なかったが いつもカウンターで飲んでた人はどうしたんだ?」
「グスッ……タガーさんですね ヒッグ 嫁さんが帰ってきたって 昨日…ケイゴさんが グズッ 『アバンギャルド』に言ってる時 店に報告にきました」
「……へえ 嫁さん帰ってきたんだ」
俺は、そう言いながら店を出た。テレジアはすぐに表に来て言った。
「ケイゴ ご飯行こう」
「ああ 串か?」
「んー なんでもいいよ!」
「……そっか」
俺とテレジアは、初めて入る飯屋で食事し宿に帰った。
昨夜は『フェスタ』で最後まで残りママの話を聞いて宿に戻った。ママは他店の『ショータイム』は、いずれ町中で始まるのだからあまり気にしないで自分達の歌や踊りに磨きをかけろと言っていた。
俺とテレジアは、今晩までの宿泊で明日には町を出るという事を、宿に伝えると俺に差額を返してくれた。俺はテレジアと飯に出かけた。惣菜屋で、お茶と蒸かし芋等を買い中央広場のベンチで食べる。テレジアが食べながら俺に言った。
「結局 何も出来なかったわ あたし」
「何が?」
「ママにジャニーの事 頼まれていたじゃない? 何もしてあげられなかったなあって」
「気にするな そんな事より『アーミー』の女の子達に言わなくていいのか?」
「……今回はいいわ だって『アインティーク』で何も無かったら ここに戻る訳でしょ? 『さよなら またいつか』とか言って すぐこの辺ウロウロしてたら笑われるわよ」
「そうだな ハハハ 俺も狩った『魔獣』が居なくなるなんて知らなかったからこんな事になっちまったけど 何も無かったらここに戻ってこよう」
「うん!」
テレジアと、そんな話をして飯を食った。俺達はそのまま乗り合い馬車まで行き予約は出来るのか、聞いてみる事にした。外門の厩舎に行くと、先日話した男が馬にブラシをかけていた。
「こんにちは」
「やあ こんにちは」
「乗り合いの予約って出来る?」
「ああ 出来るけど 前金で預かる事になるけど 乗るかい?」
「じゃあ 予約しちゃうか 二人分 今払うよ」
「毎度! じゃあ小屋に行こう 領収書渡すよ」
俺とテレジアは、前払いで明日の朝便を予約した。
「はいこれ 領収書と番号ね 一号車の一番と二番だよ」
「オッケー 俺達しか予約いないんだな?」
「あまり予約する人はいないからね ハハ 兄さん達は『アインティーク』に何しに行くんだい?」
「仕事だよ 仕事」
「あそこは日が落ちると『魔獣』が外門付近まで来るから気をつけてな」
「へぇ 外門付近まで来るのか」
「まあ 『魔獣』と言っても たまにBランクがいるくらいで ほとんどがCランクだよ」
「そっか ありがとう 気をつけるよ」
俺とテレジアは領収書を受け取り町に戻った。一応、明日で『トヨスティーク』を離れるので町の中を二人でブラブラする事にした。
「聞いたかテレジア?」
「ええ 『まれにBランク』と言ってたわね」
「ああ あまり気にする必要は無さそうだな 魔法を使うまでもなさそうだ」
「そうねえ Cランク程度 ケイゴなら素手でイケちゃうかもね フフ」
「テレジア 『アインティーク』は行ったんだろ?」
「うん まさに『武具』の都市よ この町に比べると情報量は少なかったけど」
「武器か どんなのがあるか少し楽しみなんだよ俺」
「あたしはあんまり好きじゃないわ」
「そういや テレジアはどんなの持っているんだ? 武器」
「あたし? あたしは…… ナイフくらいかしら」
「ナイフ? 役に立たないだろ」
「いいのよ! 危なくなったら魔法でなんとかするんだから 武器より防具が欲しいわ」
「防具? 鎧か?」
「ちょっと! あたしは鎧なんか着ないわよ そりゃ着てる女の人もいるけどこれからケイゴと一緒だと 危険な事が多そうだし……」
「防具ねえ…… それより魔法の強弱って出来るのか?」
「強弱? 出来るわよ 全てイメージよ 風 光 爆発 炎 雷などイメージする事で大きくしたり小さくしたり そればっかりは練習しないとね」
「そっか」
「ケイゴの場合は 山奥で修行するしかないわね 人に見られるとまずいし」
「やめてくれよ 山で修行とか」
「フフ そうだ! 昨夜のステージ衣装どうだった? かわいいでしょ?」
「ああ 浴衣ミニな いいんじゃないか?」
――
「魔法レベル2のサポーターです! 何かありませんか?」
「ロバ持ちですー 何かありませんかー レベル2ですー 」
そんな話をしているうちに、『冒険者組合』の近くに来ていた。表には数十名の『サポーター』が仕事を探して声を出していた。『サポーター』とは冒険者の荷物を、代わりに持ったり場合によっては『魔獣』との戦闘で補助的な手助けをする。
そこに、一人の冒険者が組合から出てきて声をあげた。
「おーい 馬かロバ持ちいないか? 出来れば荷台付きで頼む!」
「レベル2の馬持ちです! よろしくー! あっ 話を聞かせて下さい」
「俺も話聞かせて下さい! ロバ荷台付きです」
冒険者と『サポーター』の二人は『冒険者組合』の中へ入っていった。
「なるほどね こりゃ馬やロバ持ってる方が分がいいな」
「そうね 戦力の増強なら ソロ冒険者や二~三人の冒険者と組めばいいんだけど 冒険者同士だと報酬の均等割りになるから『サポーター』を使う人が多いのよ」
冒険者や『サポーター』が密集している中心から、少し外れた場所に何人かが集まっていた。少し見た目が幼い感じはしたが荷台付きのロバを持っている。俺はテレジアに聞いた。
「あっちも『サポーター』か?」
「ん? ああ あの子達は『ポーター』ね まだ体が出来ていないから山中や崖なんかを荷物を持ってついていけないから ロバが移動できるところまでの荷物運びね 当然 戦闘の補助もしないわ」
「まだ十五~十七歳くらいだもんな なるほどねえ」
「日当が『サポーター』の半額で雇えるから それなりに需要はあるのよ まあ体が成長するまでの 修行期間といったところなのかな」
(俺的にはどちらでもいいんだけど、稼げないやつに稼がせてやりたいな……)
―― 夜、『フェスタ』営業終了間際……
俺は、カウンターで酒を飲みながら店が終わるのを待っていた。最後の客も勘定をするとローズウッドが表の看板の『フラッシュ』を店の中に入れた。すると『アーミー』のマスターと女の子達が最後の客と入れ替わりで『フェスタ』に来たのだ。
「ママ お疲れ様です 終わらせてきました」
「お疲れ様ですー」
「お疲れ様です!」
どういうことだろう? 早上がりしたという事なのか……反省会か?
「ああ お疲れ様 今日はみんなに報告があるんだよ テレジアが今日で店を辞めて『トヨスティーク』から出て行く事になった」
「えっ! 一ケ月くらいいるんじゃなかったの? テレジア」
「急ですね テレジアさん……」
カーメラとアメリーも驚いた様子でテレジアに尋ねる。テレジアは少し寂しげに話し出した。
「……急に辞める事になっちゃって ごめんね」
「……寂しくなるわ」
「寂しくなっちゃいますね」
カーメラ達は別れを惜しんでいた。
「……グスッ グッ グズッ…」
洗い物をしながら、俺の前でローズウッドが泣いている。
(……なんか、雲行きが怪しいんだが…)
「テレジアはそこのカウンターで酒かっ喰らっている ケイゴについて町を出て行くんだよ」
(ちょっ! 糞ババア そんな事言うと 俺が悪者になるだろうが!)
一斉に、みんなの視線が突き刺さるのを感じた俺は、知らん顔して酒を飲む。
「ケイゴ! この間言った事 忘れるんじゃないよ!」
「……ああ 分かっている」
テレジアは何の事か分からない顔をしていた。ジャニーとカーメラ、アメリーが俺のところに来てテレジアを頼むと言ってきた。俺は黙って頷いた。
「テレジア 短かったけど今日までの分だよ」
「ありがとう ママ」
今日までの給金を貰いテレジアはママに頭を下げた。
「すぐ戻ってくるから その時は みんなまたよろしくね!」
「そうね 二度と会えなくなる訳じゃないし それまでのさよならね」
「そうです すぐ会えますよ」
別れも尽きない… 俺は立ち上がり店の表で待つことにした。
「あ ローズウッド」
「グズッ ヒッ グズッ はい ヒィック……」
「ここんとこ すっかり見なかったが いつもカウンターで飲んでた人はどうしたんだ?」
「グスッ……タガーさんですね ヒッグ 嫁さんが帰ってきたって 昨日…ケイゴさんが グズッ 『アバンギャルド』に言ってる時 店に報告にきました」
「……へえ 嫁さん帰ってきたんだ」
俺は、そう言いながら店を出た。テレジアはすぐに表に来て言った。
「ケイゴ ご飯行こう」
「ああ 串か?」
「んー なんでもいいよ!」
「……そっか」
俺とテレジアは、初めて入る飯屋で食事し宿に帰った。
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