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アインティークの章
第42話 依頼
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俺はテレジアの包帯交換で目を覚ました。
「……ん? おはよう」
「……おはよう」
ブスッとして不機嫌そうなテレジアは俺の包帯を交換し終えると
「シャワー浴びるわ」
「ああ」
俺は部屋を出てカインの部屋を訪ねた。
コンコン
「起きてるか? カインさん」
「起きています どうぞ」
カインは自分のバッグから書類等を出して整理していた。
「具合はどうなんだ?」
「…うーん まだちょっと無理そうですね イテテ」
カインは自力で足を動かそうとしたが、まだ痛むようだ。
「ああ 傷口も塞がってないだろ 動かさないほうがいいぜ」
「ですね ……ハハ」
「まあ あまり動かないで休んでなよ」
「…ありがとう」
俺は、そう言ってカインの部屋を出るとオットーがいる部屋に向かった。
コンコン
「オットー 起きてるか?」
「起きてます ケイゴさんおはようございます!」
「おはようございます」
「おう おはよう」
妹のソフィアも起きていた。二人とも疲れが取れたのかスッキリした顔をしている。
「なあ 昨日どこで芋とか買ったんだ? よかったら案内してくれよ」
「あ はい! 行きましょう」
俺はオットーとソフィアを連れて惣菜屋に向かう事にした。
「ちょっと待ってな テレジアに言ってくる」
俺は自分達の部屋に戻るとシャワー室の前に立ちオットー達と買い物に行くと知らせる。
「テレジア 聞こえるか」
「何?」
「朝飯買ってくるよ オットー達と」
「わかったわ」
シャワー室からは、水の音とテレジアの篭った声が聞こえた。
「鍵持って行くぞ 部屋出たら鍵かけていくよ」
「わかったー」
俺はテーブルの上に置いた鍵を持ち、部屋を出ると鍵をかけた。オットーとソフィアは部屋の前で待っていた。
「お待たせ 行こうか」
俺達は宿を出て歩き出した。惣菜屋に着くまでの道中、俺はオットーに尋ねた。
「オットー いくつだ?」
「僕は十五歳でソフィアは十四歳です」
「へぇ 年子か 二人はこの辺の出身なのか?」
「……いえ 僕らは『コビ村』の出身です」
「ああ 『トヨスティーク』の先にある村か まだそっちには行った事がないな で どんな所なんだ? 山とかあって綺麗か?」
オットーとソフィアは顔を見合わせた。
「…ケイゴさんは『コビ村』を知らないんですか?」
「ああ 知らん」
「……」
「『トヨスティーク』でポーターしてたほうが良かったんじゃないか? 人は多いだろうし仕事もたくさんあるだろ」
「村を出て『トヨスティーク』でポーターをしていたんですが……」
オットーは言葉を一瞬詰まらせ続けた。
「両親は幼い時に死んでしまい 叔母夫婦に預けられたんです とても良くしてもらいました お金が無いのに僕とソフィアを村の学校に通わせてくれました… 大抵の家では学校に行かせず家の手伝いをさせてます 暇になると学校に行かせる程度です」
「おじさんとおばさんは とてもやさしかった……」
口数が少ないソフィアまでが叔母夫婦の優しさを伝えた。どうやら本当の事らしい。
「僕は十五歳になるのを待って村を出ると決めていました ソフィアはそのまま村に残しとくつもりだったんですが 着いてくると言って聞きませんでした」
(なるほどな…… 自ら口減らしの為に叔母夫婦の元を出たという訳か)
「叔母夫婦はそれならと ロバを一頭 餞別にくれたんです……」
「…優しかったんだな 叔母さん達」
「……はい」
話を聞くと、その後オットーとソフィアは『トヨスティーク』のポーターとして仕事をしたと言う。しかし、まだ子供だ……金額を値切られたり未払いをする冒険者に当たる等、生活が逼迫していったと言う……オットーはその頃から日記を付けるようになったとも話した。日記を付ける事で自身の情報を蓄積していったのだろう。『アインティーク』には先月来たらしい、その時はすでにスッカラカンの状態だったという。
「しかし 酷い話だな 金額を値切ったり未払いとか」
「…よく言われました 『今回は勉強代と思って諦めな』って」
「……腐ってやがるな」
オットーの話を聞きながら惣菜屋に着いた俺達は飯を買い宿へ戻った。
「よう 風呂終わったか?」
「ええ みんなで食べましょ!」
俺達はカインの部屋に行き飯にする事にした。
「お腹減ったでしょ? 好きなの取って食べて」
「ありがとう いただきます」
「ほら オットーもソフィアも食べなさい」
「ありがとうございます」
「いただきます」
みんなで、袋に入った芋や惣菜を手に取り朝飯にする。カインが飯を食いながら話し出した。
「ケイゴさん」
「ん? ああ ケイゴでいいよ なんだい?」
「じゃあ ケイゴくん 実は依頼したい事があるんだが……」
「依頼?」
「ええ 私は考古学者なんですよ こう見えて」
「考古学者? 昔のこと勉強したりする感じのか?」
「ええ そんな感じです 私は政府機関に雇われ『タウマス遺跡』の再調査をしていたんですよ 一昨日の調査中に不可解な事があったので道具を取りに町に戻る帰り道だったんです そこをマジックボアに襲われたんです」
「冒険者は雇わなかったのか?」
「再調査でしたが数日かかると思い 行きの警護依頼だけ頼んだんです」
「…あちゃ 失敗だったな」
「ええ失敗でした……ハハ そこで私と一緒に遺跡で再調査をお願いしたいのです」
「依頼って…… 俺達冒険者じゃないんだぜ? いいのかよ?」
「かまいません マジックボアを倒した実力を見込んでお願いしたいのです」
(遺跡か…… 何か手掛かりになるかもしれんしやってみるか 遺跡っていうのも入ってみたいし)
「どうする? テレジア」
「ねえ カインさん それはカインさん個人の依頼なの?」
「いえ 政府の正式な依頼で発注します」
「決まりね! あたしは個人依頼でも受けていたけどね」
「ん? なんかあるのか?」
「はあ!? あの『タウマス遺跡』の調査よ? 政府関係者と同行じゃなきゃ遺跡の最深部なんて見れないのよ?」
「それが見たいのか テレジアは?」
「ちょっ!? 違うわよ! 最深部はついでよ ついで!」
「依頼を受けるにしたって今すぐ行ける状態じゃない事は変わらないな」
「……ええ 動けるようになるまで待ってもらえませんか?」
「それはいいけど なあ?」
「ええ 今は無理しないでね 今動かれたらまた傷口が開いちゃうから」
オットーは話が一区切りつくのを待っていたのか口を開いた。
「あ あのう……」
「おう 食い終わったか どうした?」
「僕達はそろそろ仕事を探しに組合に行きます」
「あ そうか 俺達もしばらく『アインティーク』にいると思うから 何かあったら頼むよ」
「ちょっと待ってよ オットーとソフィアさえ良ければ あたし達に雇われない? この町に来たのも『魔獣』狩りが目的だったし」
「え 本当ですか?」
「まあ いつまで此処にいるかはわかんないけど 『魔獣』狩りの時は来てもらうってのはどう?」
「ありがとうございます 僕らは全然かまいません!」
「そう 良かった じゃあ行く時は組合の前に行くわ」
「はい よろしくお願いします 食事と部屋ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「ああ またな」
「君達 本当にありがとう 動けるようになったら お礼は必ずするよ」
オットーはテーブルに部屋の鍵を置きソフィアと宿を出た。
「ちょっと行ってくる」
二階の部屋の窓から覗いて見ると、テレジアは宿の外にいる二人を引き止め何やら話をしていた。そしてオットーとソフィアに硬貨を渡していた。
パタパタパタ
テレジアが階段を上がってきた。
「……どうした?」
「うん 何かほっとけなくてね」
「……そっか 俺はそろそろ鍛冶屋のところに行くけどテレジアはどうする?」
「あたしも行くわ その前に薬持ってきとくわ カインさん ご飯食べたら二つとも飲んでね」
「ああ わかりました」
「んじゃ 帰ったら依頼の件をもっと詳しく聞かせてよ」
「わかりました 宜しくお願いします」
俺とテレジアは、町の鍛冶屋に捕獲武器の注文をしに出かけた。
「……ん? おはよう」
「……おはよう」
ブスッとして不機嫌そうなテレジアは俺の包帯を交換し終えると
「シャワー浴びるわ」
「ああ」
俺は部屋を出てカインの部屋を訪ねた。
コンコン
「起きてるか? カインさん」
「起きています どうぞ」
カインは自分のバッグから書類等を出して整理していた。
「具合はどうなんだ?」
「…うーん まだちょっと無理そうですね イテテ」
カインは自力で足を動かそうとしたが、まだ痛むようだ。
「ああ 傷口も塞がってないだろ 動かさないほうがいいぜ」
「ですね ……ハハ」
「まあ あまり動かないで休んでなよ」
「…ありがとう」
俺は、そう言ってカインの部屋を出るとオットーがいる部屋に向かった。
コンコン
「オットー 起きてるか?」
「起きてます ケイゴさんおはようございます!」
「おはようございます」
「おう おはよう」
妹のソフィアも起きていた。二人とも疲れが取れたのかスッキリした顔をしている。
「なあ 昨日どこで芋とか買ったんだ? よかったら案内してくれよ」
「あ はい! 行きましょう」
俺はオットーとソフィアを連れて惣菜屋に向かう事にした。
「ちょっと待ってな テレジアに言ってくる」
俺は自分達の部屋に戻るとシャワー室の前に立ちオットー達と買い物に行くと知らせる。
「テレジア 聞こえるか」
「何?」
「朝飯買ってくるよ オットー達と」
「わかったわ」
シャワー室からは、水の音とテレジアの篭った声が聞こえた。
「鍵持って行くぞ 部屋出たら鍵かけていくよ」
「わかったー」
俺はテーブルの上に置いた鍵を持ち、部屋を出ると鍵をかけた。オットーとソフィアは部屋の前で待っていた。
「お待たせ 行こうか」
俺達は宿を出て歩き出した。惣菜屋に着くまでの道中、俺はオットーに尋ねた。
「オットー いくつだ?」
「僕は十五歳でソフィアは十四歳です」
「へぇ 年子か 二人はこの辺の出身なのか?」
「……いえ 僕らは『コビ村』の出身です」
「ああ 『トヨスティーク』の先にある村か まだそっちには行った事がないな で どんな所なんだ? 山とかあって綺麗か?」
オットーとソフィアは顔を見合わせた。
「…ケイゴさんは『コビ村』を知らないんですか?」
「ああ 知らん」
「……」
「『トヨスティーク』でポーターしてたほうが良かったんじゃないか? 人は多いだろうし仕事もたくさんあるだろ」
「村を出て『トヨスティーク』でポーターをしていたんですが……」
オットーは言葉を一瞬詰まらせ続けた。
「両親は幼い時に死んでしまい 叔母夫婦に預けられたんです とても良くしてもらいました お金が無いのに僕とソフィアを村の学校に通わせてくれました… 大抵の家では学校に行かせず家の手伝いをさせてます 暇になると学校に行かせる程度です」
「おじさんとおばさんは とてもやさしかった……」
口数が少ないソフィアまでが叔母夫婦の優しさを伝えた。どうやら本当の事らしい。
「僕は十五歳になるのを待って村を出ると決めていました ソフィアはそのまま村に残しとくつもりだったんですが 着いてくると言って聞きませんでした」
(なるほどな…… 自ら口減らしの為に叔母夫婦の元を出たという訳か)
「叔母夫婦はそれならと ロバを一頭 餞別にくれたんです……」
「…優しかったんだな 叔母さん達」
「……はい」
話を聞くと、その後オットーとソフィアは『トヨスティーク』のポーターとして仕事をしたと言う。しかし、まだ子供だ……金額を値切られたり未払いをする冒険者に当たる等、生活が逼迫していったと言う……オットーはその頃から日記を付けるようになったとも話した。日記を付ける事で自身の情報を蓄積していったのだろう。『アインティーク』には先月来たらしい、その時はすでにスッカラカンの状態だったという。
「しかし 酷い話だな 金額を値切ったり未払いとか」
「…よく言われました 『今回は勉強代と思って諦めな』って」
「……腐ってやがるな」
オットーの話を聞きながら惣菜屋に着いた俺達は飯を買い宿へ戻った。
「よう 風呂終わったか?」
「ええ みんなで食べましょ!」
俺達はカインの部屋に行き飯にする事にした。
「お腹減ったでしょ? 好きなの取って食べて」
「ありがとう いただきます」
「ほら オットーもソフィアも食べなさい」
「ありがとうございます」
「いただきます」
みんなで、袋に入った芋や惣菜を手に取り朝飯にする。カインが飯を食いながら話し出した。
「ケイゴさん」
「ん? ああ ケイゴでいいよ なんだい?」
「じゃあ ケイゴくん 実は依頼したい事があるんだが……」
「依頼?」
「ええ 私は考古学者なんですよ こう見えて」
「考古学者? 昔のこと勉強したりする感じのか?」
「ええ そんな感じです 私は政府機関に雇われ『タウマス遺跡』の再調査をしていたんですよ 一昨日の調査中に不可解な事があったので道具を取りに町に戻る帰り道だったんです そこをマジックボアに襲われたんです」
「冒険者は雇わなかったのか?」
「再調査でしたが数日かかると思い 行きの警護依頼だけ頼んだんです」
「…あちゃ 失敗だったな」
「ええ失敗でした……ハハ そこで私と一緒に遺跡で再調査をお願いしたいのです」
「依頼って…… 俺達冒険者じゃないんだぜ? いいのかよ?」
「かまいません マジックボアを倒した実力を見込んでお願いしたいのです」
(遺跡か…… 何か手掛かりになるかもしれんしやってみるか 遺跡っていうのも入ってみたいし)
「どうする? テレジア」
「ねえ カインさん それはカインさん個人の依頼なの?」
「いえ 政府の正式な依頼で発注します」
「決まりね! あたしは個人依頼でも受けていたけどね」
「ん? なんかあるのか?」
「はあ!? あの『タウマス遺跡』の調査よ? 政府関係者と同行じゃなきゃ遺跡の最深部なんて見れないのよ?」
「それが見たいのか テレジアは?」
「ちょっ!? 違うわよ! 最深部はついでよ ついで!」
「依頼を受けるにしたって今すぐ行ける状態じゃない事は変わらないな」
「……ええ 動けるようになるまで待ってもらえませんか?」
「それはいいけど なあ?」
「ええ 今は無理しないでね 今動かれたらまた傷口が開いちゃうから」
オットーは話が一区切りつくのを待っていたのか口を開いた。
「あ あのう……」
「おう 食い終わったか どうした?」
「僕達はそろそろ仕事を探しに組合に行きます」
「あ そうか 俺達もしばらく『アインティーク』にいると思うから 何かあったら頼むよ」
「ちょっと待ってよ オットーとソフィアさえ良ければ あたし達に雇われない? この町に来たのも『魔獣』狩りが目的だったし」
「え 本当ですか?」
「まあ いつまで此処にいるかはわかんないけど 『魔獣』狩りの時は来てもらうってのはどう?」
「ありがとうございます 僕らは全然かまいません!」
「そう 良かった じゃあ行く時は組合の前に行くわ」
「はい よろしくお願いします 食事と部屋ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「ああ またな」
「君達 本当にありがとう 動けるようになったら お礼は必ずするよ」
オットーはテーブルに部屋の鍵を置きソフィアと宿を出た。
「ちょっと行ってくる」
二階の部屋の窓から覗いて見ると、テレジアは宿の外にいる二人を引き止め何やら話をしていた。そしてオットーとソフィアに硬貨を渡していた。
パタパタパタ
テレジアが階段を上がってきた。
「……どうした?」
「うん 何かほっとけなくてね」
「……そっか 俺はそろそろ鍛冶屋のところに行くけどテレジアはどうする?」
「あたしも行くわ その前に薬持ってきとくわ カインさん ご飯食べたら二つとも飲んでね」
「ああ わかりました」
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