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アインティークの章
第53話 けじめ
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オットーは冒険者集団『アインイーグル』のリーダー、シボレーに事の成り行きを説明した。『アインティーク』に流れ着いて間もなくポーターとして冒険者組合の前で仕事を待っていたところにベンツ一味が声を掛けてきて仕事をしないかと誘われる。一日、足代わりにされ業者の運搬を手伝ったと言う。二人分で一日、金貨一枚の契約だったが『仕事が遅くて約束の納品時間に間に合わなかった』と言われ、去り際に『今回は勉強代だ 諦めな』と契約違反とされたらしい。オットーが聞いた内容は一日、雑務の手伝いをして欲しいと言われただけだったと言う。
オットーは、どうしても納得いかなくて一味に請求したが殴られて、その時は終わったらしい。そして、先日の俺達が遭遇した件の話しになった。シボレーは声を震わせベンツ達を呼びつけた。
「…ベンツ ちょっと来い」
「…あっ そんな餓鬼の言ってる事なんて う 嘘ですよ…」
「クレア アラン どうなんだ……」
「……」
ベンツ一味の女、クレアと軽装備の男アランは沈黙した。すると、我慢を堪えきれなくなったメンバーのリンカーンがシボレーに食って掛かった。
「…よう シボレー もう我慢できないぞ こいつら『アインイーグル』の正式なメンバーでもないのに……だから言ったろ! こんなやつらに目かけるだけ無駄だったんだよ!」
「……すまん リンカーン 俺はもう少し時間をかけてでも自分達で気付いて欲しかっただけなんだ 冒険者は本来 弱い者を助けるのが冒険者だ」
「…よう シボレー 甘いぜ」
リーダー、シボレーに食って掛かったもののリンカーンはそれ以上は何も言わなくなった。続けて、ボウガンの女キャロルがベンツに喝を入れる。
「とにかく この落とし前だけは付けてもらうよ ベンツ!」
「…す すみません! 勘弁して下さい 俺もベンツさんに言ったんです!正式メンバーじゃないのに名前語るのはまずいって…勘弁して下さい」
「アラン… リーダーは名前を語ったのを怒っているんじゃないだろ? 本当にお前ら分かんないのか? リーダーは弱者をいじめるなと言ってるんだ」
鎧を着た大男がベンツ一味のアランに言う。
「…フォ フォードさん すいません…」
「そうよ! フォードくんの言ってる事がわかんないの? バカアラン!」
「よしな! コロナ シボレーに任せるんだよ」
「……はーい」
しばらく沈黙を続けていたシボレーは重たく口を開いた。
「……なあ ベンツ 俺は冒険者もサポーターもポーターも皆仲間だと思っている 持ちつ持たれつの関係でいたいんだ 俺達が困っていれば助けてもらい相手が困っていたら助けてやる 貸し借り無しの関係だ 俺達はそんな関係に希望を込めて『自由、誇り、寛大』を掲げた冒険者集団『アインイーグル』を立ち上げたんだ 分かっているだろう?」
「……」
ベンツ一味は下を向き黙ってしまった。
「けじめはつけろ ベンツ 俺達が言った意味が分かるまで町に戻るな」
「シ シボレーさん! それだけは… 勘弁して下さい」
「この件を含め 他にもお前達から支払いをしてもらえなかったと一部のポーターから聞いてるんだよ……」
「うっ うう……」
キャロルが言い放った。
「やり過ぎたんだよ ベンツ! シボレーの気持ちが分からないのか!?」
(……キャロルが指示系統 まとめ役か ここじゃシボレーの言葉は絶対か それよりベンツ一味が『アインイーグル』のメンバーじゃないって事は……関係無い『アインイーグル』を俺が煽っただけ?何か変な展開なんだが……)
「……わかりました シボレーさん迷惑かけました」
ベンツは頭を下げ、その場を立ち去った。
「クッ ベンツさん! 俺も行くっす! 皆さんご迷惑おかけしました!」
「…あたしも付いて行くわ ごめんなさい」
ベンツに付いて行くクレアとアランだった。自分達だけ町に残ってもシボレー達の目が光っている間は何も出来ないだろうし、都合良くベンツだけに責任を負わせなかっただけ見込みがあるといったとこだろう。
「オットー すまなかったな」
「あっ いいえ」
「許されるなら、これからも『アインティーク』でポーターとして頑張って欲しい」
「…あっ はい」
シボレーはオットーとソフィアに頭を下げ戻ってきた。
「よう 待たせたな えーっと 名前は?」
「俺は ケイゴだ」
「そうか ケイゴか… 話は聞いてたろ?」
「ああ 聞いてたが?」
「……フゥ そうだよな うん」
「……ああ」
シボレーは振り返りキャロルの方に向かい歩き出した。俺も同じくテレジアのところに向かった。
「テレジア ちっと持っててくれ」
俺は腰に巻いたポーチと肩からぶら下げたショルダーポーチをはずしテレジアに渡した。テレジアは察したのか一言だけ言う。
「どうしてもやるの? 誤解は解けたんだし… 仲直りしたら?」
「いや… 喧嘩をはじめちまった以上、けじめつけないとな」
「もう… あまりやりすぎないでね」
「…ああ すぐ終わるよ」
俺は元居た場所まで戻りシボレーが来るのを待った。
一方、シボレーサイドではシボレーが鎧を脱ぎながらキャロル達に何か言ってるように見えた。話しの内容は、ここからでは聞こえなかった。
シボレーは仲間に釘を刺していた。
「これはケイゴと俺の喧嘩だ どっちが勝っても負けてもそこで終わりだ お前達は絶対に手を出すな いいな?」
「……分かったわ みんなも分かったね?」
メンバーは全員頷き承諾した。
「…よう シボレー 俺は一発喰らってんだよ」
「…ああ リンカーンの分は…… うーん 仕返しするのは難しそうだな ハハハ」
「あいつ 相当強いぞ」
「…ああ 分かっているよ」
シボレーも話が終わったようだ。腕を組みながら待つ俺の前に来た。
「話は終わったか?」
「ああ」
「じゃあ さっさと始めるか 来な!」
「うおおおおおお!」
先に仕掛けたのはシボレーだった。渾身の右ストレート、さっきの囮とは違ってスピードが倍近く上がっている。
「おりゃあああああ!」
バゴーン!
俺は腕を組んだままシボレーの右ストレートを、顔面に受けた。
「ケ ケイゴ!」
テレジアが叫んだ。俺は倒れはしなかったが久し振りに喰らったパンチに多少ふらついた。すぐにテレジアの方に手を挙げ心配しないよう顔を見た。
「ケ ケイゴ…」
テレジアはグッと堪えて軽く頷いた。
「おい どういうつもりだ」
「ん? ああ… 今のは俺のけじめだ 気にするな」
「……フッ ハハッ なるほどね…… ハハハッ 気に入ったぜ!」
「気に入ったところ悪いが 一発だ 一発で終わらすぜ」
俺は地面に転がった爪ほど小さな小石を拾い指で上に弾いた。シボレーは一瞬だけ小石に目を奪われた。その瞬間、俺の拳はシボレーの顔面を捉えていた。
「しっ しまった!! ゴフッ!」
ズゴーン! ゴロゴロゴロゴロ
シボレーは螺旋を描き何回転もしながら転げまくって動かなくなった。すでに気絶していた。
「シ!? シボレー!!」
シボレーに駆け集まるメンバーに俺は尋ねる。
「さっきシボレーが何話していたか分からんが どうする? 続けるか?」
「……いや これでお終いだよ あたし達は何もしないよ」
「そうか それなら早く医者に連れて行ってやれ」
「ケイゴ!」
テレジアが走ってきた。
「大丈夫なの?」
「ああ ピンピンしてんだろ ハハハ」
「ハハハ じゃないわよ! なんでパンチ食らってるのよ いつもなら避けれたでしょ?」
「ああ ……あれはな 俺なりのけじめだよ けじめ」
「……もう だったら素直に勘違いしてごめんって 誤ったらいいじゃない!」
「そうか そりゃそうだな ハハハ」
「……わざとシボレーの一発を喰らったのか?」
話を聞いていたリンカーンが話しかけてきた。
「ん? まあ もう済んだ事だ 気にするなよ 気がついたら伝えてくれ久し振りに面白かったってな リベンジする気なら 何時でも受けるってな」
「……お前 何者だ?」
「俺達は 『初心者冒険者』さ! なあ テレジア ハハハ」
「もう… いいから行くわよ 午後のマジックボア狩りに」
「あっ いけねえ! すっかり忘れていた 行くぞオットー!」
「はい!」
「マジックボア狩りだと…… おい! 待て! 待ってくれ!」
ロバの荷台に乗り込んだ俺達にリンカーンが走り寄ってきた。
「…なあ あんたら何人で狩っているんだ? 生け捕りなんだろ?」
「ああ んー 何人て ここにいるメンバーだけだよ」
「狩りだけはケイゴ一人よ? それがどうしたの?」
「あー! もう 急いでるからまたにしてくれ オットー出してくれ!」
「はい!」
「……たった一人で マジックボアを…… 生け捕りだと…」
俺達は急いで生け捕りを完了したがノーラばあさんの元へ卸した時にはすでに日が、とっぷりと落ちていた。
ノーラばあさんにガミガミ言われたのは言うまでも無かった……
オットーは、どうしても納得いかなくて一味に請求したが殴られて、その時は終わったらしい。そして、先日の俺達が遭遇した件の話しになった。シボレーは声を震わせベンツ達を呼びつけた。
「…ベンツ ちょっと来い」
「…あっ そんな餓鬼の言ってる事なんて う 嘘ですよ…」
「クレア アラン どうなんだ……」
「……」
ベンツ一味の女、クレアと軽装備の男アランは沈黙した。すると、我慢を堪えきれなくなったメンバーのリンカーンがシボレーに食って掛かった。
「…よう シボレー もう我慢できないぞ こいつら『アインイーグル』の正式なメンバーでもないのに……だから言ったろ! こんなやつらに目かけるだけ無駄だったんだよ!」
「……すまん リンカーン 俺はもう少し時間をかけてでも自分達で気付いて欲しかっただけなんだ 冒険者は本来 弱い者を助けるのが冒険者だ」
「…よう シボレー 甘いぜ」
リーダー、シボレーに食って掛かったもののリンカーンはそれ以上は何も言わなくなった。続けて、ボウガンの女キャロルがベンツに喝を入れる。
「とにかく この落とし前だけは付けてもらうよ ベンツ!」
「…す すみません! 勘弁して下さい 俺もベンツさんに言ったんです!正式メンバーじゃないのに名前語るのはまずいって…勘弁して下さい」
「アラン… リーダーは名前を語ったのを怒っているんじゃないだろ? 本当にお前ら分かんないのか? リーダーは弱者をいじめるなと言ってるんだ」
鎧を着た大男がベンツ一味のアランに言う。
「…フォ フォードさん すいません…」
「そうよ! フォードくんの言ってる事がわかんないの? バカアラン!」
「よしな! コロナ シボレーに任せるんだよ」
「……はーい」
しばらく沈黙を続けていたシボレーは重たく口を開いた。
「……なあ ベンツ 俺は冒険者もサポーターもポーターも皆仲間だと思っている 持ちつ持たれつの関係でいたいんだ 俺達が困っていれば助けてもらい相手が困っていたら助けてやる 貸し借り無しの関係だ 俺達はそんな関係に希望を込めて『自由、誇り、寛大』を掲げた冒険者集団『アインイーグル』を立ち上げたんだ 分かっているだろう?」
「……」
ベンツ一味は下を向き黙ってしまった。
「けじめはつけろ ベンツ 俺達が言った意味が分かるまで町に戻るな」
「シ シボレーさん! それだけは… 勘弁して下さい」
「この件を含め 他にもお前達から支払いをしてもらえなかったと一部のポーターから聞いてるんだよ……」
「うっ うう……」
キャロルが言い放った。
「やり過ぎたんだよ ベンツ! シボレーの気持ちが分からないのか!?」
(……キャロルが指示系統 まとめ役か ここじゃシボレーの言葉は絶対か それよりベンツ一味が『アインイーグル』のメンバーじゃないって事は……関係無い『アインイーグル』を俺が煽っただけ?何か変な展開なんだが……)
「……わかりました シボレーさん迷惑かけました」
ベンツは頭を下げ、その場を立ち去った。
「クッ ベンツさん! 俺も行くっす! 皆さんご迷惑おかけしました!」
「…あたしも付いて行くわ ごめんなさい」
ベンツに付いて行くクレアとアランだった。自分達だけ町に残ってもシボレー達の目が光っている間は何も出来ないだろうし、都合良くベンツだけに責任を負わせなかっただけ見込みがあるといったとこだろう。
「オットー すまなかったな」
「あっ いいえ」
「許されるなら、これからも『アインティーク』でポーターとして頑張って欲しい」
「…あっ はい」
シボレーはオットーとソフィアに頭を下げ戻ってきた。
「よう 待たせたな えーっと 名前は?」
「俺は ケイゴだ」
「そうか ケイゴか… 話は聞いてたろ?」
「ああ 聞いてたが?」
「……フゥ そうだよな うん」
「……ああ」
シボレーは振り返りキャロルの方に向かい歩き出した。俺も同じくテレジアのところに向かった。
「テレジア ちっと持っててくれ」
俺は腰に巻いたポーチと肩からぶら下げたショルダーポーチをはずしテレジアに渡した。テレジアは察したのか一言だけ言う。
「どうしてもやるの? 誤解は解けたんだし… 仲直りしたら?」
「いや… 喧嘩をはじめちまった以上、けじめつけないとな」
「もう… あまりやりすぎないでね」
「…ああ すぐ終わるよ」
俺は元居た場所まで戻りシボレーが来るのを待った。
一方、シボレーサイドではシボレーが鎧を脱ぎながらキャロル達に何か言ってるように見えた。話しの内容は、ここからでは聞こえなかった。
シボレーは仲間に釘を刺していた。
「これはケイゴと俺の喧嘩だ どっちが勝っても負けてもそこで終わりだ お前達は絶対に手を出すな いいな?」
「……分かったわ みんなも分かったね?」
メンバーは全員頷き承諾した。
「…よう シボレー 俺は一発喰らってんだよ」
「…ああ リンカーンの分は…… うーん 仕返しするのは難しそうだな ハハハ」
「あいつ 相当強いぞ」
「…ああ 分かっているよ」
シボレーも話が終わったようだ。腕を組みながら待つ俺の前に来た。
「話は終わったか?」
「ああ」
「じゃあ さっさと始めるか 来な!」
「うおおおおおお!」
先に仕掛けたのはシボレーだった。渾身の右ストレート、さっきの囮とは違ってスピードが倍近く上がっている。
「おりゃあああああ!」
バゴーン!
俺は腕を組んだままシボレーの右ストレートを、顔面に受けた。
「ケ ケイゴ!」
テレジアが叫んだ。俺は倒れはしなかったが久し振りに喰らったパンチに多少ふらついた。すぐにテレジアの方に手を挙げ心配しないよう顔を見た。
「ケ ケイゴ…」
テレジアはグッと堪えて軽く頷いた。
「おい どういうつもりだ」
「ん? ああ… 今のは俺のけじめだ 気にするな」
「……フッ ハハッ なるほどね…… ハハハッ 気に入ったぜ!」
「気に入ったところ悪いが 一発だ 一発で終わらすぜ」
俺は地面に転がった爪ほど小さな小石を拾い指で上に弾いた。シボレーは一瞬だけ小石に目を奪われた。その瞬間、俺の拳はシボレーの顔面を捉えていた。
「しっ しまった!! ゴフッ!」
ズゴーン! ゴロゴロゴロゴロ
シボレーは螺旋を描き何回転もしながら転げまくって動かなくなった。すでに気絶していた。
「シ!? シボレー!!」
シボレーに駆け集まるメンバーに俺は尋ねる。
「さっきシボレーが何話していたか分からんが どうする? 続けるか?」
「……いや これでお終いだよ あたし達は何もしないよ」
「そうか それなら早く医者に連れて行ってやれ」
「ケイゴ!」
テレジアが走ってきた。
「大丈夫なの?」
「ああ ピンピンしてんだろ ハハハ」
「ハハハ じゃないわよ! なんでパンチ食らってるのよ いつもなら避けれたでしょ?」
「ああ ……あれはな 俺なりのけじめだよ けじめ」
「……もう だったら素直に勘違いしてごめんって 誤ったらいいじゃない!」
「そうか そりゃそうだな ハハハ」
「……わざとシボレーの一発を喰らったのか?」
話を聞いていたリンカーンが話しかけてきた。
「ん? まあ もう済んだ事だ 気にするなよ 気がついたら伝えてくれ久し振りに面白かったってな リベンジする気なら 何時でも受けるってな」
「……お前 何者だ?」
「俺達は 『初心者冒険者』さ! なあ テレジア ハハハ」
「もう… いいから行くわよ 午後のマジックボア狩りに」
「あっ いけねえ! すっかり忘れていた 行くぞオットー!」
「はい!」
「マジックボア狩りだと…… おい! 待て! 待ってくれ!」
ロバの荷台に乗り込んだ俺達にリンカーンが走り寄ってきた。
「…なあ あんたら何人で狩っているんだ? 生け捕りなんだろ?」
「ああ んー 何人て ここにいるメンバーだけだよ」
「狩りだけはケイゴ一人よ? それがどうしたの?」
「あー! もう 急いでるからまたにしてくれ オットー出してくれ!」
「はい!」
「……たった一人で マジックボアを…… 生け捕りだと…」
俺達は急いで生け捕りを完了したがノーラばあさんの元へ卸した時にはすでに日が、とっぷりと落ちていた。
ノーラばあさんにガミガミ言われたのは言うまでも無かった……
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