異世界契約 ― ROCKERS ―

一水けんせい

文字の大きさ
65 / 65
タウマス遺跡の章

第64話 再調査へ

しおりを挟む
俺達は、日の出と共に『タウマス遺跡』へと出発した。俺はロバの荷台に揺られながら昨夜カーティスから受け取った刀に魔力を込める練習をしていた。すると、横にいたテレジアが小声で聞いてきた。

「どう?上手くいきそう?」
少し心配そうな顔をしてるので返事をする。

「まだ無理かな まぁ焦らず身につけるさ」
「うん そうよね ケイゴはまだ魔法インストールをして間もないんだし」
テレジアは軽くフォローを入れニッコリした。

出発から2時間も経った頃だった

「ケイゴくん、テレジアさん 見えてきましたよ遺跡です!」

テレジアの脇に座っていたカインが荷ロバの先に見えた遺跡を指さして声を上げた。

俺とテレジアは、一瞬お互いの顔を見合わせてカインの指し示す方に目を向けた。遺跡は山を登りきった場所に位置し周りは切り崩され整地されている。遺跡の周りには数本の石柱が地面に突き刺さっている。俺は思わず声にした。

「これが遺跡か……すげーな」

ふと、隣に目を向けると頬をほんのりと赤らめ荷台にしがみ付き、遺跡を凝視するテレジアの姿があった。俺は声をかけようとしたがテレジアの想いを考えると、この瞬間を邪魔したくないと思い、そっとしておく事にした。

俺達を乗せたロバが遺跡入り口に着くとカインがオットーに指示を出す。

「オットー君 ロバは兵舎の脇に付けて下さい」
「わかりました」
「手続きがあるのでケイゴくんとテレジアさんは私について来てください 兵舎で身分証の確認です」
「了解」
「わかったわ!」

俺とテレジアは荷台から降りるとカインの後をついて兵舎に行く事にした。

兵舎は切り崩れた石を積み重ねて作られ高さ3メートル程の建物だった。その横には調査や観光に訪れた人達が宿泊できる立派な施設が準備されていた。度々、政府の人間が宿泊するためか丸太を使ったログハウス風になっていて兵舎に比べて断然豪華な作りになっていた。もちろん政府関係者は宿泊費が無料。しかし、観光目的の一般人からは小額だが宿泊料を徴収しているが滅多に来ないらしい。

コンコン
「入るよ カインです」

カインは木製扉を叩くと勝手に兵舎へ入っていく。すると備え付けのテーブルの奥の椅子に座る兵士2名が気付き立ちあがりるとカインに駆け寄った。

「せっ 先生! 心配しましたよ! 帰りにマジックボアに襲われて怪我をしたとか 大丈夫なんですか!?」

どうやらカインは事の成り行きをアインティークの冒険者組合から早馬を使い伝えたようだ。兵士の1人が心配そうに言っていた。

「ああ、心配かけましたね 怪我はこの通り大丈夫です」

カインは、その場でピョンピョンと跳ねてみせた。

「ああ よかった… 」

そう言った兵士はホッと胸を撫で下ろすと調査の件を聞いてきた。

「ところで先生 今日から再調査と聞いてるんですが今からすぐに?」
「うん とても気になっていたので、すぐにでも取り掛かりたいですね」
「わかりました 手続きしちゃいますか! 先生?今回はそちらの2人が同行者ですか?」
「そうです マジックボアから助けてくれ怪我の治療までしてくれた2人 ケイゴくんとテレジアさんです」
「そうだったんですか! 先生を助けて頂きありがとうございました わたしは此処『タウマス遺跡』の警護をしているジャンと申します そしてわたしの横にいるのが今年から兵士になったニコラと申します」

「ニコラです よろしくお願いします」

2人に挨拶された俺も軽く会釈してから自己紹介をした。
「ども ケイゴです」

続けてテレジアが何時もの調子で挨拶をする
「あたしはテレジア ジャンさん ニコラさんよろしくね!」

俺達の自己紹介が済むとカインがジャンを指さし俺達に向かって言った。

「彼 ジャンは元教え子なんですよ ハハッ 」
「えっ!?カインさんの教え子だったのか?だから先生 先生って言ってたのか」
「そうなんですよ ハハッ もう新兵じゃないから遺跡警護なんてしなくていいのにジャンは自ら志願して遺跡警護の任をしている変わり者です」

カインの話では兵士になると最低一年間の過疎地勤務が通例となっていて遺跡警護もその1つだと言う。勤務地はある程度の勤務地希望が叶うので新兵達もなんとか厳しい環境で任務を全うし次の勤務地に移動するのだという。

「変わり者って… 酷くないです?先生」
「ハハッ まあ私と似たもの同士ですね」
「でも何となくわかるわ!遺跡勤務素敵~」

テレジアも2人の話しに掌を合わせ、うっとり顔で同調した。

「……」
(遺跡馬鹿しかいないのかよ…まぁちょっとくらいはわかるけど)

「ところでディーノさんが見えませんが」
「あっ 隊長は給金を受け取りに首都に戻っています 戻りの予定は5日後です」
「調査前に挨拶しときたかったんですが まあ今回は仕方ないですね」

カインがディーノと呼び、ジャンが隊長と呼ぶ人物はタウマス遺跡の警備責任者だ。俺達はジャンから手渡された書類に必要事項を書き込むと食事と調査の準備をするため宿泊施設へ向かった。

5段ばかりの階段を昇るとログハウス風の宿泊施設の玄関ドアがある。ここでカインが俺達に言った。

「実はもう1人元教え子が、この中にいるんです」

そう言うとカインはドアを引っ張り中に入りながら声を出す。

「レッグ レッグいるかい?私だ カインだ」

俺達も、ゾロゾロとカインの後を追い宿泊施設に足を踏み入れた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」  悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!? 「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」  やかましぃやぁ。  ※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん
ファンタジー
いつも現代人を異世界に連れていく女神さまはついに現代の道具を直接異世界に投じて文明の発展を試みるが… 勘違いから生まれる異世界物語を毎日更新ですので隙間時間にどうぞ

陸上自衛隊 異世界作戦団

EPIC
ファンタジー
 その世界は、日本は。  とある新技術の研究中の暴走から、異世界に接続してしまった。  その異世界は魔法魔力が存在し、そして様々な異種族が住まい栄える幻想的な世界。しかし同時に動乱渦巻く不安定な世界であった。  日本はそれに嫌が応にも巻き込まれ、ついには予防防衛及び人道支援の観点から自衛隊の派遣を決断。  此度は、そのために編成された〝外域作戦団〟の。  そしてその内の一隊を押しつけられることとなった、自衛官兼研究者の。    その戦いを描く――  自衛隊もの、異世界ミリタリーもの……――の皮を被った、超常テクノロジーVS最強異世界魔法種族のトンデモ決戦。  ぶっ飛びまくりの話です。真面目な戦争戦闘話を期待してはいけない。  最初は自衛隊VS異世界軍隊でコンクエストをする想定だったけど、悪癖が多分に漏れた。  自衛隊名称ですが半分IF組織。  オグラ博士……これはもはや神話だ……!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...