十悪の党と たのしい監獄せいかつ!

やまだゆず

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プロローグ

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__最初は何故此処にいるのか。二番目に此処はどこなのか。三番目に先程聞いた話は 本当なのか。 其のときの耳は 正常では無かったのかも しれない、なんて。それでも 足は、普段 暮らしている日々ならば 絶対に 入ることの無い 場所。


____監獄だ。


断じて言える、僕は何もしていない。
齢17、母に反抗期ちょいと、高校の仲間と遊び楽しみ青春を…なんてしていたのに。極々平々凡々な生活を 繰り返し繰り返しだった。宿題する時間や人付き合いなんか忙しくて、犯罪なんてする暇がない。というか、したくもないね。

しかも、この世界は犯罪への取り締まりが厳しく、例え小さな窃盗であろうと 監獄へ入れられてしまうと云う。年齢問わず、犯罪を起こしたものは必ず。つまり、言えば平和な世界と言うことなんだが。

そしてどうやら僕は、その犯罪をした、ということになっているらしい。

僕が何をしたか?それは冤罪が多いと言う、痴漢だ。痴漢をしたのは僕じゃない。絶対に僕じゃあない。電車に乗っていたら、急に 近くの女の人が 手をあげ、「痴漢です!」なんて叫ぶから。僕の方を指すから。 絶対に隣のおじさんだよ。見てないけどね。

すれば、あれよあれよと取り調べさせられ、違うんです!と 机を バンバン叩いて主張した。のに、女の人はこの人です、なんて言うから。彼のいた角度からでした、なんてよく覚えてられるな。いや、覚えてないよ嘘の記憶だけどね其れ。愚痴は止むことなく溢れそうだ。

……嗚呼、プロローグを綴っていたら門を通ってしまったではないか!!!

抵抗しても無駄で、それは逆に火に油を注ぐ事のように思うから、もう受け入れるしか無いんだなって。正直取り調べのときに諦めかけてた。
刑期は五年。このあとの社会復帰が心配……
いやまずいな!?華の高校生活を監獄で過ごすの!?今までの友達はどうするの、厭きられてるよなぁ。うわ、嫌だ。

俺のいる五年の間に 真犯人が自首するか、女の人が なんとか正しい記憶を呼び覚ましますように。願う。いや、マジで本当に頼む!

そう考えながら歩いては 門は遠くへ、厳重なロックの扉を抜けては 、白い壁の 無機質な室内。大量生産された白い靴、よくある白黒ボーダーに番号三桁のプレート。僕はどうやら222らしい。ゾロ目で縁起のいいのかもしれないな、なんて現実逃避してみる。こんなの漫画とかでしか見たことなかったから、コスプレみたいで……いや悠長には言ってられないけれど。

どうやら この監獄は棟があって、そこで30人ほどで生活するとか。そして、その棟へ入る人は 一つだけ、持っていきたいものを持っていっていいらしい。勿論、その物は詳しくチェックするし、携帯とかはダメみたいだし。

だから僕は、少しでも平凡な日常を持っていきたくて、今までの思い出沢山詰め込んだアルバムを持っていった。少し、いや結構分厚いかな。背負った鞄にずっしりと重みを感じる。

「お前の棟は、……嗚呼、」

先導していた職員がパラリ紙をめくり、僕の暮らす棟の場所を見る。どうか、どうか物騒な人達と同じではありませんように!! なんて思うのだけど。

すると職員は顔をあげ、一つ目を反らしてはゆっくり此方へ視線を戻す。そして少し間を置いては口を開いた。

「…… あのな、今どの棟も人数がギリギリでな」

「はい」

「一つだけ、…空いてるのが、あるんだが」

「…はい」

「危険なやつらばっかりで」

 …マジですか。いや、なんとなくそうなのかな、とか思ってましたよ。職員によるとその危険なやつらの棟は10人という人数らしい。

「…何が危険なんですか、やっぱり人殺しばっかりとかそういう…」

「いや、人殺しはその棟には一人しかいない」

「じゃあ何でそんな危険なんですか。」

「……あの棟を担当した職員、教官はどんどん 数日間で辞めていった。実際あの棟は、…各犯罪別の棟で 問題を起こしたやつらの寄せ集めなんだ」

「… 僕 善良なんですけど!?」

    「仕様がないだろう、部屋が足りないんだ。それに、犯罪をしている時点で善良とは言えないだろう。」

本当は違うのに、なんて言葉をのみこんだ。きっと、無駄だからだ。

「まあ、もし本当に死にかけそうになったら その棟の看守に伝えてくれ。検討は一応してみる。…一応。」

「…一応ですか」

平凡な生活から すってんころりん、危なくて底辺な人生へと転がり落ちてしまった。僕がずっと 黙っていれば、それは職員には肯定にとれたようで、くるり 振り返っては また 歩きだした。
不安要素が酷いほどあるが、一応を二回重ねたこと、これは 極力したくないんだな、と思う。寧ろ ほぼ強制だ。

…取り合えず、…行って、見るか。

もう表じゃあ人生が終わったに変わり無い。冤罪だけれど。ならば、此れから地獄を迎えようと 可愛いあの子にも親にも 知らないわけで。はい、…なんてネガティブ思考を巡らせて。

足を止めたら駄目だ、なんて背中から聞こえてきそうな 職員さんを 見つめながら 、その 危ないひと達の棟へ足を 運んだ。

気持ちなんて、ほぼ僕は無に等しかった。


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みんなの感想(2件)

Kira
2019.07.11 Kira

とっても面白かったです!
読んでいて楽しかったです。また、自分には無い文の構成や言い回しにはすごく憧れました!
これからも沢山読ませてください!
頑張ってください!

解除
Kira
2019.07.11 Kira

面白かったです!
私にはやはり無い文の構成や言い回しにはすごく憧れました!
これからも沢山読ませてください!
宜しくお願いします!

解除

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