転生悪役召喚士見習いのΩくんと4人の最強の番

寿団子

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特級ランク

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地下から出ると、ロフトにあるベッドに寝かされた。

腕や足を動かして「痛いところない?」と聞いてきたから大丈夫だと言った。
無理矢理されたけど、傷は付かなかったから腹に違和感があるだけだ。

痛みはないし、身体の自由もロキさんが魔力で解放してくれた。

壊された首輪も、首に触れて新しい首輪を作ってくれた。
首筋を噛まれたけど、ロキさんのように傷口はなかった。

俺に痛みがないと分かると、次はあの魔物を魔界に帰す魔法陣の術式を机に向かって描いていた。

俺の不注意であんな事になって、ロキさんの役に立ちたいと思っていたのに迷惑を掛けてしまった。

俺はまだ魔法陣が描けないし、描き方も分からない。
今は頼るしかない。

「あの魔物…やっぱり特級ランクの魔物だよな…なんでアルトくんが召喚出来たんだろう」

「特級ランクってなんですか?」

「魔物には力によってランク付けされているんだよ、Fランクは少し話したよね」

ロキさんの机の上で歩いているひよこが見えた。
Fランクは人間でも召喚出来るほど弱い魔物なんだよな。

F~Sランクの魔物がいて、召喚士の力によって変わる。
それとは別に特級ランクという一番魔力が強い魔物がいる。

召喚士は誰もが特級ランクの魔物を従わせるのが目標だが、実際に使役している召喚士は片手で数えるほどしかいない。

召喚出来ても、名前を呼ぶ意味を知っているから呼ばれる前に殺される。
偶然力が満たない召喚士が召喚する事はある。

ロキさんは俺のような人間は例外だと不思議そうにしていた。

俺も不思議だ、なんで俺は彼を召喚出来たんだろう。

「ロキさん、俺もなにか手伝う事出来ますか?」

「え……でも相手は無理矢理襲った男なんだから、無理しないで」

「えっと…俺は大丈夫です、無理もしてません」

襲われた時は怖くて好き勝手される悔しさでいっぱいだった。
でも今は、傷付いているとかそう言う気持ちはなかった。

何故だろう、もしかしたら知らない顔ではないからなのかもしれない。

ラルフ…俺がとっさに名付けた名前だけど、本当は違う名前だ。

ゲームの世界でリアーナが初めて召喚した召喚獣だ。
強い魔物だとは思っていたが、特級ランクの話はなかった。

あの時リアーナは怪しい商人からもらった薬を魔法陣に振りかけて召喚していた。
リアーナに忠誠を誓い、前線で戦っていた。

俺が召喚したら、リアーナが召喚出来ないかもしれない。
ロキさんがいなくて召喚出来るか分からないが、なにがあるか分からない。
リアーナはこの世界の主役なんだから、彼を今すぐにでも帰さないと…

「魔物を魔界に戻すのも召喚した召喚士にしか出来ないけど、絶対にアイツに近付いちゃだめだよ…ずる賢く取引をしてくるかもしれないけど、絶対にダメだから」

ロキさんに散々念を押されて、何度も頷いた。
地下にある魔法陣に術式を書き込む必要があり、俺がやるべき事。

心配だから後ろからロキさんも見守ってくれる事になり、地下に戻ってきた。

地下には鎖で全身を拘束されたラルフが、壁に寄りかかって座っていた。
俺とロキさんが来た扉の音で、ラルフは顔を上げた。

俺達を睨みつけていて、足を止めると優しくロキさんが背中を押してくれた。
こんなところで怯むわけにはいかない。
ロキさんが描いてくれた魔法陣の紙を見つめる。

ロキさんはいっぱいの水の上に何枚か葉が浮かんでいるバケツを地面に置いた。
地面に座り、濡らした葉で紙の通りに魔法陣を描く。
葉の汁ではっきりと描いたものが浮かびま上がり、不思議だなと思った。

魔法陣は大きくで、今日中に終わればいいと思った。
力を込めた文字を間違えたらまた一からになってしまう。
丁寧に描いていて、ロキさんにチェックしてもらう。

「お前…」

「………」

「無視かよ」

「…何?」

「アルトくん、相手しなくていいから」

「うるせぇな、テメェに話しかけてねぇだろ!」

ラルフは気が立っているのか、暴れると鎖の音が響く。
ロキさんとラルフはお互い睨み合っていた。

ゲームでこの二人って仲が悪かっただろうか。
召喚獣は主であるリアーナ以外には冷たい態度だった。
こんなに言葉で喧嘩したりするシーンはなかった。

ゲーム外の裏事情なら、プレイヤーが知るわけがない。

ロキさんに大丈夫だと言って、ラルフの方を見た。
俺がこちらを向いたからか、満足そうな顔をしていた。

「お前、名前は?」

「…アルト」

「ふーん、アルトねぇ…知らねぇな」

ラルフは一瞬だけ考えて、鼻で笑っていた。
そりゃあ自己紹介してないから知らないだろうな。

名前を付けて魔界に帰すと、次の召喚士の召喚に影響はないものなのかな。
ロキさんに聞くと、魔界に帰ると鎖が外れて魔物は名前を忘れるそうだ。
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