転生悪役召喚士見習いのΩくんと4人の最強の番

寿団子

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乙女ゲーム

きっかけは一つのゲームだった。

大学受験の参考書を買いに行った俺は、リフレッシュのために本を探していた。
頭を休める短編の漫画でいいからなにかないのかと思い、探していたらいつの間にかゲームコーナーに立っていた。

流石にゲームをするのは時間が掛かるから、勉強する時間がなくなる。

本のコーナーに戻ろうと思っていたら、とあるゲームを見つけた。
店員のオススメゲームコーナーと書かれた煌びやかなPOPの棚にあったゲーム。

POPに負けないほどの煌びやかな男達が表紙のゲームだ。
何となくそれを手に取り、ジッと眺めていた。

「ありがとうございました!」

ゲームは買う予定がなかったのに、買ってしまった。
妹がゲーム好きだから、ゲーム機は多分家にある。

安い買い物ではない、新作と書かれていたから定価だろう。

やらないのは金をドブに捨てる事と同じだ。

どんなゲームか分からないが、ちょっとだけやろうかな。
キリのいいところで止めて、続きは勉強のご褒美にしよう。

ご褒美があれば勉強も捗るような気がした。

家に帰り、誰もいないけど癖で「ただいまー」と言った。

2階に上がる階段を上り、自分の部屋に帰ってきた。
上着をクローゼットに入れて、ショルダーバッグとゲームが入った袋をベッドに置く。

ゲーム機は妹の部屋にあるから、兄妹とはいえ勝手に部屋に入って使うわけにはいかない。
ショルダーバッグからスマホを手に取り、妹にメッセージを送る。
今日は友達と遊んでいるみたいだから返信は遅いかもしれない。

その前に喉が渇いたから台所で飲み物を取ってこようと部屋を出た。

冷たい緑茶が入ったコップを手に部屋に戻ってきたら、スマホのメッセージが届いた通知が来ていた。

緑茶を飲みながら、片手でスマホを操作すると妹からのメッセージだった。

俺がゲームを買ったのか珍しかったのか、驚いていた。
確かにゲームは中学生以来していなかった。

高校は部活が忙しかったからな、そのおかげでバスケ部のレギュラーになったから報われた。

ゲーム機を貸す代わりに面白かったら貸してと言われて「分かった」と返事した。

許可ももらったから、コップを机に置いてさっそくゲーム機を借りに行った。

妹の部屋は何度か入った事はあるが、ファンシーな部屋でまとめられている。
壁もベッドも桃色で、ぬいぐるみも沢山置かれている。

机の横のカラーボックスの中にゲーム類が収納されている。
様々なカタチのパッケージとゲーム機があり、携帯ゲーム機の一つを手にした。

確かこのゲーム機だよな、名前は分からないけど…
パッケージの後ろに載っていたものと同じだ。

妹の部屋から自分の部屋に戻ってきて、ベッドの上に置いた袋からゲームのパッケージを出した。
見た目はRPGみたいだけど、後ろを見ると男女の恋愛イラストが書かれていた。

恋愛ゲームなのかアクションゲームなのか分からないまま早速ゲームを起動した。

オープニングが始まり、4人の男と1人の少女の物語が始まった。

少女は小さな国のお姫様でとある手紙が届くところから始まった。

それは一年に一度行われる大帝国の神の加護を受ける女王を決める祭典。
各国のお姫様が集まり、お姫様に従う騎士達と共に戦う。

少女は双子の姉で、女王の資格があるのは妹の方。
女王になりたくても、いつも比較されて生きてきた。
落ちこぼれのレッテルを貼られ、迫害されてきた。

そんなある日召喚士の男により、女王の祭典に参加出来る力を与えられた。

自分が強くてもダメだ、強い仲間を従わせて戦わなくてはいけない。

少女に力を与えた災厄と呼ばれている指名手配中の召喚士。
召喚士の使い魔で助手の禁忌術から召喚された魔獣。

大帝国を束ねる神の加護を受けた絶対的な冷酷王。
1人で難攻不落の敵国を打ち砕いて国を勝利に導いた英雄の騎士団長。

4人の最強クラスの仲間達と共に悪の姫と呼ばれた少女は最高位の女王となる物語。

「へぇ、お兄ちゃんがこういうゲーム買うとは思わなかった」

「俺も」

「面白そうだね、終わったら貸して!」

家に帰ってきた妹は俺が買ったゲームが気になったのか真っ先に俺の部屋に飛んできた。
とりあえずチュートリアルだけ終わらせて、机に向かって勉強を始めた俺の後ろでゲームのパッケージを眺めていた。

いつクリアするか分からないから、先にやっていいと言うと喜んでゲームを持って部屋から出て行った。

セーブはいくつもあったから、俺のデータが消される事はないはずだ。

久々にリラックス出来て、頭が冴えていて赤本を手にした。

この時の俺はまさかあんな事になるとは思わなかった。

大学受験が終わり、無事に希望大学に入る事が出来た。
ゲームもちょっとずつ進めていて、受験からの解放で一気にゲームを進めた。
妹も見事にハマっていて、俺が受験中に何周もしていた。

俺もエンディングを迎えて、達成感と喪失感を一気に味わった。
大学に入ればバイトとの両立で忙しいかもしれないし、遊ぶなら今しかない。

友人達はまだ受験のストレスで遊ぶ余裕はない。

妹のようにもう一度ゲームをクリアしようと思った。

大学生になったら一人暮らしをするから、妹にゲーム機を返さないといけない。
ゲーム機を買う余裕は俺にはない、これが最後だ。

もう一度主人公を女王にして、エンディングを迎えた。

大学生活は明るく、新しい友達も出来て充実していた。
これで彼女が出来たらいいなと思いながら、借りている大学近くのマンションに向かって歩いていた。

手にはコンビニで買ったお弁当が入った袋をぶら下げていた。
自炊しないと節約にならないと思いつつ、ついコンビニ弁当を買ってしまう。

カフェのバイトの帰りで、すっかり外は暗くなっていた。

車の通りは少なくて、人通りもあまりない。
静かな道を歩いて、家の前にある信号機の前で足を止めた。

車の通りがなくても、赤信号を渡る気にはならない。
当然と言えば当然だけど、早く変わらないかなと赤く光る信号を見つめていた。

信号機に気を取られていて、気付くのが遅れた。

なにかを薙ぎ倒す大きな音が響き、横を見ると目の前にトラックが迫ってきていた。
逃げる余裕もなく、全身に与えられた衝撃で俺の身体は宙を舞った。

落ちてぐしゃぐしゃになったお弁当の側に身体が横たわった。

意識はプツリと消えて、何も考えられなくなった。
即死だったのか、痛みはぶつかった一瞬だけだった。

これからだったのに、こんなところで努力が水の泡になるとは思わなかった。

俺の魂は天高く飛んでいき、新たな身体に宿る。






「アルト、私の子…」

「う?」

赤ん坊は目の前の状況が理解出来ず、言葉にならない声を出した。
俺は、生まれ変わった……はっきりと前世の記憶を残したまま…
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