転生悪役召喚士見習いのΩくんと4人の最強の番

寿団子

文字の大きさ
18 / 30

アルトの過去

大図書館から帰ってきて、いろいろ考えながら歩いていた。

ルークさんの言葉、確かにそれだったら納得出来る事もある。

本で見たβは番になれないという文字。
突然変異をしたからヒートを起こす。

俺はずっとΩだと言われていたが、βだったのか?

ロキさんは「僕は医者ではないから検査しないと何とも言えない」と言っていた。

確かにそうだな、今の検査結果が本当の俺になるのか。

でも、一つだけ疑問に思う事がある。

「俺、ロキさんと出会ったあの日が初ヒートだったんですけど、Ωの名残りってあるのかな」

「うーん、丸1日も経たずにうなじを噛んだんだけどそんなすぐに本人も分からない変化をするのかな」

「それにヒートは誘発剤を飲まされてなったから、知らない感覚に名残りなんてあるんでしょうか」

「ヒート誘発剤!?誰にそんな酷い事されたの!?」

つい口を滑らせてしまい、心配掛けないように黙っていたのに知られてしまった。
やはり、びっくりして戸惑っているのが分かった。

ロキさんが大きな声を出していて、周りの人達はびっくりしてこちらを見ていた。

とりあえず家に帰ろうと歩き出した。

家に到着して、机の上に本を置いてソファーに並んで座った。
ロキさんには俺の家の事を伝えた方がいいよな。
なにかしてほしいわけではなく、ただ知ってほしい。

聞いていて気持ちのいい話じゃないけど。

Ωを蔑む家に生まれて、兄達に虐められている事。
口に出すと、だんだんあの日の事を蘇ってくる。

両手で手を握られて、ロキさんの方を見た。

ポロポロと涙を流していてびっくりした。

「ど、どうしたんですか!?」

「守ってあげられなくてごめんね、僕が君の住んでいた国にいたら守ってあげられたのに…」

「俺はあそこから助けられました、ロキさんには感謝してもしたりないです!」

「でも…」

「ありがとうございます」

ロキさんを抱きしめて、もう一度「ありがとうございます」とお礼を言った。

もしルーン国にロキさんがいたら、きっと俺と仲良くなる事はなかった。
国の人達はリッジとエッジを崇拝している人が多い。
2人の遊びに付き合うのは、2人と同じ思考の奴らだけだ。

ロキさんと一目惚れし合う暇なんてあの時はなかった。

あの時出会って、こうして今の俺があるのはロキさんのおかげだ。

しばらくロキさんが涙を流して、俺は背中を撫でていた。

その気持ちだけで俺は救われた。

「情けないところ見せてごめんね」

「そんな事ないですよ、ロキさんの新しい姿もっと見たいです」

「恥ずかしいな…なんかお腹も減ってきた」

「じゃあ俺が作りますね」

ロキさんに料理を作る時がやって来た。

料理本の一つを手に取り、台所に立った。

この家に住んで、食事をした事がある。
プロテインのようなタンパク質の塊を…

ロキさんはいつも料理をする時間がないから、栄養の塊を食べているようだ。
さすがにバランス良く食べているようには見えない。
栄養が偏るのは身体に良くない、俺がロキさんの栄養を守る!

今日はあるもので作ろうと、料理本を眺めた。

「ロキさんは嫌いなものある?」

「ないよ!何でも食べるよ」

嫌いなものがないなら、今日はこれにしよう。

台所に立ち、布袋から野菜を取り出した。
料理をしないから、味付けの調味料がない。

今日はあるもので作ろうと思い、野菜と栄養の固形物を手にした。
味は薄いが栄養の塊を味付けに使おう。

包丁で皮を剥いて、一口サイズに切る。

土鍋があったから、火打ち石でかまどに火を付けて樽から水を出して土鍋の中に入れた。
栄養の塊を溶かして煮て、いい感じになったら野菜を入れた。

なんかコンソメスープのようないい匂いがしてきた。

土鍋の蓋を閉じると、ロキさんの方を見た。
机に向かって、今日借りた本を見ていた。

スプーンで掬って味見をすると、少し薄かったからもう一つ栄養の塊を入れた。

数十分ほど煮込み、野菜スープが完成した。
味はコンソメスープ。

布で持ち手部分を掴んで、気を付けながらロキさんに近付く。
ソファーの横にあるサイドテーブルに土鍋を置いて、ソファーの前までテーブルを運ぶ。

ロキさんは集中してるな、邪魔するのも悪い。
先に食べる気は元々なくて、ロキさんが気付くのを待った。

冷めたら温め直せばいいと思っていたら、すぐにロキさんは後ろを振り返った。

「あっ、ごめんね…今行くから」

「そんなに慌てなくてもいいですよ」

「僕が食べたいんだ、アルトくんも遠慮なく言ってよ…今やってる事すぐに止めて行くから!」

ロキさんはそう言って、俺の横のソファーに座った。

まだ遠慮している事は多いけど、慣れるのも早いかな。
ロキさんは美味しいと言ってくれて、その嬉しそうな顔で俺も嬉しくなる。

野菜スープを分け合いながら食べ終わり、スプーンで飲み干した。

味の感想は可もなく不可もなく、ほとんどが栄養の塊のおかげだ。
もっと自分の力で美味しいと言わせたい。

ロキさんはまた調べるために机に向かった。
最初は食器を洗う手伝いをすると言っていたが、俺のために調べ物をしてくれているから断った。

食器を片付けて、俺はロキさんにお金を借りてバース検診に向かう事になった。
ここの病院は広く大きいから、ルーン国よりも詳しく調べてくれるだろう。

そして後日ロキさんの家に届いた診断書では「間違いなく何の異常もないΩ」と書かれていた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

腐男子♥異世界転生

よしの こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。 目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。 トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、Caitaさん、PIXIVさんでも掲載しています。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました

こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。毎日18時50分公開予定です

【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。

美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)