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魔物討伐隊 立入制限区域レベル6にて
ゆけむり 1
しおりを挟む――まるで黒い霧だ
ノエルは、小型のローバーの後ろに乗りながら、通り抜けていく景色を眺めていた。奥に進めば進むほど、黒い点が集まっている場所がいくつもあった。
病魔ストレスを黒い点として視ることができるノエルの目には、黒い点の集合体が辺り一面に広がる霧のように映っていた。もちろん、ノエル以外の者には黒い点は一切見えていない。
病魔ウィルス濃度が高い場所だと、病魔ストレスが集まりやすい。この辺りに生息している植物や生き物の病魔ストレスだろうか…そこら中に黒い点の集りがあった。
ノエルは前に座ってローバーを運転しているイスタの背中にしがみつく。そして、イスタにそっと治療魔術を流した。
「ノエルさん…?治療魔術流してくれてます?ありがとうございます。でも大丈夫ですよ、メイ隊長のところまであともう少しです」
イスタは、ローバーのハンドル近くに固定させた、立体に浮かびながら光る地図を確認して運転していた。間もなくメイ達が留まっている場所に辿り着く。
ノエルは、そこら中に広がっている黒い点に不吉な予感を感じながら、無意識に自身の深緑色のマントにつけた琥珀石のピンを握りしめた。
「ノエルさん、テントが見えてきました!着きましたよ」
イスタは先にローバーから降りて、手を差し出す。ノエルは「ありがとう」とお礼を言って、イスタの手を取り、足を付けて降り立った。
きょろっと辺りを見回し、振り返った先にメイを見つけた。
「――メイ隊長!」
メイは、ノエルが現れたのを見て、眉根を寄せて顔を顰める。そんな表情をしていても、メイの端麗な顔立ちは変わらない。
しかし、ノエルはそんなメイの表情よりも、メイの身体全体に纏わりついている黒い紐状になった点の集りに目を奪われた。
「くっ黒いし、太い……!!」
「なんだ…?何言って…」
ノエルはメイに近づき、腕をがしっと掴んだ。
「メイ隊長っ、今すぐに…治療させてください!」
ノエルは必死な顔をして、腕を掴みながら下からメイを見上げる。
「おいっ…急にどうしたんだ!?」
メイは、急にノエルに詰め寄られて珍しく動揺した態度を見せる。
「ノエルさん!?治療って…今着いたばかりですよ?」
イスタも、突然ノエルがメイを治療するなどと言い出すので、驚いてノエルに声をかける。
メイは腕にしがみつくノエルの頭の上にポンっと手を乗せると、周りの隊員達に向けて指示を飛ばす。
「顔見て早々、何を言い出すかと思えば…俺は大丈夫だ。そんなことより、この先に聖樹が数十本見つかった。成熟した樹も多いから、聖樹の葉の採取も見込めそうだ。これからランドとリッツに連絡をいれる。明日は、後続の戦闘部隊がこちらに来れるように道の整備から始めるから、今日は各自テントで休むように」
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