デブの俺、転生

ゆぃ♫

文字の大きさ
14 / 19

チキン南蛮

しおりを挟む

今日は店の裏の掃除と片付けをすることにした。
ずっと気になってはいたけど、忙しさにかまけて後回しにしてた場所だ。
せっかくだし、ただ片付けるだけじゃなくて――
ちゃんと使える空間にしてしまおう。
まずは木を何本か切る。
その木で、机と椅子を作るつもりだ。
外だけど、ちゃんと“部屋”っぽくしたい。
それから塩工房の配置も見直す。
建物寄りにまとめた方が、動線がいい。
厨房の扉を出てすぐ右の壁に
・蛇口
・火
・作業台
・天日干し場
この並びで設置するイメージだ。
そうすると、少しスペースが空く。
そこに机と椅子を置いて、
さらに奥、木陰になる場所にコッコの家。
……よし、そのためにもう少し木を切ろう。
切った木は無駄にしない。
丸太をそのまま椅子にして、
丸太の上に、半分に割った木を渡した長テーブル。
六人くらいは座れそうだ。
枝で即席の箸も作る。
こういうの、地味だけど嫌いじゃない。
黙々と作業していたら、
不意にお腹が鳴った。
……あ、ダメだ。腹減った。
昨日は唐揚げだったから、今日は――
チキン南蛮だな。
鳥もも肉を、料理酒・すりおろし生姜・塩に漬ける。
味が入るまでの間に、タレ作り。
レモン、砂糖、醤油。
揚げた鳥に絡める、甘酢っぽいやつ。
次はタルタルソース。
玉ねぎをみじん切りにして、空気にさらす。
ゆで卵を作って、白身と黄身を分けて細かく。
マヨネーズと和えるのは、食べる直前だ。
肉に程よく味が入ったら衣。
薄力粉と溶き卵を絡めて、油へ。
ジュワッという音がたまらない。
揚げたてを軽く油切りして、
すぐ甘酢にくぐらせ、
その上からタルタル。
……完成。
「うわ、絶対うまいやつだ」
ご飯と一緒に、いただきます。
――うまっ。
思わず声が出た。
レモンの酸味と甘酢、タルタルのコク。
疲れた体に、ちょうどいい。
「よし、残りの片付けも頑張るか」
切った木の端材は乾燥させて、カバンへ。
薪にもなるし、いざという時用だ。
コッコの家は高床式にした。
一階は外、二階が寝床。
風通しもいいし、見た目もちょっといい感じだ。
昼が過ぎたころ、
裏に出てきた父さんと母さんが――
「……え?」
完全に言葉を失っていた。
口が開いたまま、閉じない。
せっかくだから、出来立ての机にチキン南蛮を出して、
感想を聞きながら調理の説明をする。
この流れがきっかけで、
今では日替わりランチという形で、
俺の教えた料理を出すようになった。
新作ができるたびメニューに増やしてたけど、
「さすがに二人で回すには多すぎる」
と言われて、日替わりを提案したら即採用。
今一番人気は――餃子。
でも角煮が、じわじわ追い上げてきてる。
麻婆豆腐は……
もう少し先かな。
とりあえず、手に入れてある豆を水に浸しておく。
木を切って、料理して、汗もかいた。
よし、川に行こう。
今日は上流じゃなくて、まっすぐ川へ。
コッコと一緒に水浴び。
冷たくて気持ちいい。
その時、ぴょん、と何かが跳ねた。
魚だ。
「コッコ、魚取れる?」
「取れる取れる! たまに食べるよ」
「じゃ、お願いする。俺も釣ってみる」
朝切った枝に、
近くにいる蜘蛛型魔物からもらった糸を結び、
昆虫を餌にして即席の釣り竿。
この蜘蛛型魔物は大人しくて、
目が四つあって、
ぼんやりとだけど意思疎通ができる。
住処や食べ物を提供すれば、
服に使える糸も分けてくれる。
共存できる、ありがたい魔物だ。
ぼーっとしていたら――
ヒット。
「……あれ?」
気づけば五匹。
「何匹いるんだ? もう五匹捕まえたぞ」
「え、早っ!?」
「こっちはまだ一匹だよ! でも十分!」
戻ってすぐ調理。
三枚に下ろして、
身と骨を分ける。
身は片栗粉をまぶして揚げ、
昼の甘酢へ。
骨はカリカリになるまで揚げて、
塩を振る。
――骨チップ完成。
晩ご飯は、
魚の南蛮と骨チップ。
「いただきます!」
レモンの酸味が爽やかで、
骨のカリカリも最高だ。
外でのんびり食べていると、父さんがやって来た。
「ロイさんがな、明日にでも話があるって」
「これ、置いてったけど……使い方わかるか?」
差し出されたのは、見慣れない紙。
「何それ?」
「返事を書いて折って投げると、相手に届く付与紙だ」
なるほど、そんな付与もあるのか。
紙の裏を見ると、
**“ロイに届く”**と付与されている。
俺は納得しつつ、
返事を書くことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

溺愛少女、実はチートでした〜愛されすぎて大忙しです?〜

あいみ
ファンタジー
亡き祖母との約束を守るため、月影優里は誰にでも平等で優しかった。 困っている人がいればすぐに駆け付ける。 人が良すぎると周りからはよく怒られていた。 「人に優しくすれば自分も相手も、優しい気持ちになるでしょ?」 それは口癖。 最初こそ約束を守るためだったが、いつしか誰かのために何かをすることが大好きになっていく。 偽善でいい。他人にどう思われようと、ひ弱で非力な自分が手を差し出すことで一人でも多くの人が救われるのなら。 両親を亡くして邪魔者扱いされながらも親戚中をタライ回しに合っていた自分を、住みなれた田舎から出てきて引き取り育ててくれた祖父祖母のように。 優しく手を差し伸べられる存在になりたい。 変わらない生き方をして二十六歳を迎えた誕生日。 目の前で車に撥ねられそうな子供を庇い優はこの世を去った。 そのはずだった。 不思議なことに目が覚めると、埃まみれの床に倒れる幼女に転生していて……? 人や魔物。みんなに愛される幼女ライフが今、幕を開ける。

【完結】私は聖女の代用品だったらしい

雨雲レーダー
恋愛
異世界に聖女として召喚された紗月。 元の世界に帰る方法を探してくれるというリュミナス王国の王であるアレクの言葉を信じて、聖女として頑張ろうと決意するが、ある日大学の後輩でもあった天音が真の聖女として召喚されてから全てが変わりはじめ、ついには身に覚えのない罪で荒野に置き去りにされてしまう。 絶望の中で手を差し伸べたのは、隣国グランツ帝国の冷酷な皇帝マティアスだった。 「俺のものになれ」 突然の言葉に唖然とするものの、行く場所も帰る場所もない紗月はしぶしぶ着いて行くことに。 だけど帝国での生活は意外と楽しくて、マティアスもそんなにイヤなやつじゃないのかも? 捨てられた聖女と孤高の皇帝が絆を深めていく一方で、リュミナス王国では次々と異変がおこっていた。 ・完結まで予約投稿済みです。 ・1日3回更新(7時・12時・18時)

処理中です...