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超巨大組織、[楽園]

5–Boss—

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「どうやら、ご自慢の焔は消えてしまった様だぜ。どうする?お前では俺には届かない。」
「それはどうかな?【第五級完全魔法・八大地獄“煉獄”】。」

 俺は、先ほど消されたものと同じ魔法を使った。だが、この解き放った炎は明らかに先程とは違う、圧倒的な火力と、濃密な「嫌な感じ」を纏っていた。

 俺がもらった力、それは【無限大ノ器】である。これは、元々の力を何倍にも増幅させる効果がある、永続発動のスキルだ。だが、これの取得にはデメリットもあったが。

「けっ、火力が大きくなっただけかよ。【聖水】…何っ⁉︎」

 まだ上空にいる男、ランドルは、先ほどと同じ力を使い消火を試みたが、消えるどころか火力が上がる。これも【無限大ノ器】の効果の一つで、短所を長所に変えたのだ。この場合、「地獄」の弱点、「聖」と「煉獄」の弱点である水が長所になった結果、どちらの性質も持つ【聖水】によって火力が上がったのだ。

 火力が上がったのだ【煉獄】は、ターゲットであるランドルに向かい、その身を燃やし始めた。

「ギャァぁああああああ‼︎アヅイぃぃぃぃぃぃぃぃぃい‼︎」


 【煉獄】がランドルを完全に燃やしたのを確かめると、ルーのところに行き、助け出す。……これ、こいつがヒロインだな。鳥なのに。…まぁ、俺が今持っているたった一人の家族でもあるけど。

〈ありがとう、レン。助かった。…それにしても、日本にも【楽園】の手が伸び始めていたとはな。知らなかった。〉

「なぁ、その【楽園】ってなんだったっけな?」

〈…前、説明した気がするんだが…まぁ、もう一度説明しよう。【楽園】とは、大規模なテロ集団だ。かなりの人数が属している…………と言うのは間違いだな。実は、【楽園】のリーダーである法王ホーク・レガースが持つ力によって、ほぼ全ての構成員が魅了されていると言うのが事実だ。枢機卿あたりより下の位の人は全てその餌食となっている。枢機卿共は、ホーク・レガースの友人と言われている。奴らは、妙な力を持っていてな。下っ端の奴らは陰陽師だったら一人でも十分な力しか持たないんだが…上の位の奴ほど圧倒的な力を持っていて、一人二人じゃとても倒せないんだな。唯一の救いとしてそれ程の実力者はかなり少ないと言うことぐらいだな。…奴らの目的は、“神”を引き摺り下ろすらしい。それによって人類が助かると本気で思っているのだ。我の様な神獣で、世の真理に限りなく近い者ならば、その様なことをすればことがわかるのだがなぁ…。〉

 …やはり、ルーはそれほどあの“管理者”と近い存在なのか。あの部屋についてもわかっているのか?…どちらにせよ、【楽園】と言う組織は俺のは合わなそうだ。と言うか、あの管理者を引き摺り下ろしたら、かなりやばいと思うんだが…まぁ、俺のできる限りで阻止していこうか。じゃ無いと、万が一成功したら俺がまた死ぬことになる。流石にそれは勘弁だ。

「まぁ、理解した。…とりあえず、家に帰ろうか。……あっ、そうだ。この小屋の壁を貰って行こうかな。この壁、俺の攻撃でびくともしないんだから、おそらく何か面白そうなものが原料だろうしな。何かに加工したら使えそうだしな。」

〈ぬ、この壁の原料、ヒヒイロカネが使われていないか?…どうやらその様だな。ヒヒイロカネはかなり見つけにくい鉱物だから、持って行ったほうがいいと思うぞ。〉

 ほう、あの伝説の金属か。それは是非欲しいな。…おそらく、あまり使い道はないと思うがな。

「【次元の袋】。」

 神様のくれたスキルの一つ、【次元の袋】を起動し、その中から【暴食剣】を取り出す。これは、ヘルに鑑定してもらった結果、かなり凄い効果を持っている様だ。

 とりあえず、暴食剣を構えて、薙ぐ。

〈おっと。…お前、剣の方も規格外か。と言うか、剣できる必要、あったか?〉

 まぁ、ないんだが。ちょっとやってみたかっただけだ。…そんなことを考えながら、今切った壁を回収する。

「よし、帰ろうか。」

〈…色々突っ込みたいところはあるのだが…今はそうしよう。我も少し休みたいしな。〉

 よし、ルー誘拐事件、解決かな。【楽園】と言う不安要素はできたけど、今はさっさと帰る事にしようかな。
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