思い出に花を、君に唄を

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火事の原因

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「どうして呼び出されたかは、分かるよな?」
 俺と部下は上司の座る机の前に呼び出され、机の前に並ばされた。
 やっぱりと言うべきか、上司の顔は今にもはち切れんばかりにしかめている。
「どうして呼ばれたんですか?」
 部下は、本当にどうして呼び出されたのか分からないといった表情で上司に聞き返す。
 聞き返された上司の顔は、さらに赤さを増し、梅干しのようになってしまった。
 面白い光景ではあるが、流石に俺の部下の命知らずが過ぎる。自分が引き起こした火事の後、怒っている上司に対して「どうして怒っているのですか?」等と言い出されれば、誰だって怒るだろう。それが、自分の責任として関わってくるのであれば誰でも。
 その言葉に対する怒りはこの鈍い部下に届くことはないだろう。そうして行き場を無くした怒りは矛先を変え、会社に従順であると証明されている俺の方に向かってくることだろう。
「おい。どうしてこんな事態になったのか、説明してくれないか?火事が起きたのも、その現場にお前が居たところまでは分かるが、そうなるに至った経緯が分からなければ話を進めることが出来ない」
 上司の怒りが飛び火する前に、俺は例の火事に至った経緯を部下に訪ねた。
「はい。説明します」
 火事に至った経緯を聞けば、頭でっかちな上司も少しは怒りを納めてくれるかもしれない。
「まず僕は、先輩に書類の整理を任されました。正直、どの書類をどのように分ければいいのか、新人の僕には分かりませんでした」
「それで?」
「その部屋にあったパソコンを付けたんです。パソコンの中に何かヒントになるようなものが無いか、探そうと思って……」
「それで……?」
 部下の言っていることは何1つ間違ってはいない。間違ってはいないのだが、どこか違和感の残る。というか、いい予感がしない。
「そしたら、パソコンのコンセントから火花が散って……。気付けば、辺り一面が火の海でした……」
 俺も、上司も言葉を失なっていた。
 確かに事務仕事が出来ない部下ではあるが、そんな珍事件を引き起こすほど出来ないとは思ってもいなかった。
「そんな言い訳が通用するか!!」
 上司は更に顔を赤くして、部下を怒鳴り付けた。それはそうだ。こんなことが、事実である筈がない。誰もがそう考える。
 現に俺も過去の事例がなければ、信じていなかっただろう。
「言い訳ではありませんよ!全て本当のことなんですから」
「どうだっていい!!全てお前のせいだぞ。どうやって責任を取るつもりなんだ!?早くこの会社をやめた方が身のためなんじゃないか?」
 事件の経緯さえ分かれば丸く収まるだろうという俺の淡い期待も虚しく、結局上司の怒りの矛先は俺に向かった。
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