彷徨うペンギン

歩き始めたペンギン

　ペンギンは夢を見ていた。
　仲間と共に遊び、仲間と共に狩りをし、仲間と共に楽しく過ごすとても幸せな夢を見ていた。
　しかし、ひとたび目を覚ませば、そこは以前居た氷の上ではなく、餌も水も無い砂漠の上だった。

　何故ここに居るのか？
　どうして周りに誰も居ないのか？

　ペンギンは最初こそ戸惑ったものの、考えても分からないので、とにかくまっすぐ歩くことにした。

　歩いても、歩いても、歩いても、景色は変わらず、他に生き物も居ない。
　ただ一匹で歩き続けた。

　進んでいた足はすぐに動くのを辞めてしまった。
　このまま前に進んだって、どこにもたどり着ける気がしなかったからだ。
　誰も居ない、何もない不安に気持ちがすくんでしまったからだ。

　それでも、周りには何も居ない。
　頼れるものも、信頼できる仲間も、食料も、水も。

　ペンギンは止まることを辞めた。
　不安で押しつぶさそうでも、それでも歩き続ける事を決めた。

　砂が舞う砂漠の上で、ペンギンは再び足を進めた。