カナリアボックス〜あなたに会えてよかった〜

本田すみれ

文字の大きさ
13 / 37

僕らだけの未来

しおりを挟む
白いエレクトリックギターを構えた笑可がクリーンサウンドで弾いて、ララララーとか豚野菜炒めは売り切れーとかテキトーな仮歌を口ずさむ。

歌詞が浮かばないと言う彼女に子供の頃の思い出を聞いてみる。
「花の蜜を吸っておいしいと思ってたら、どんどん止まらなくなってきたこととか?」
「それいいじゃん」

G
花の蜜をー
C         D
吸っていたらー
Em 
止められない
Am
いつのまにか
Dsus4    D
8本くらい
Gmaj4
吸い終わってる

笑可の歌はしっかり歌になってた。
彼女のギターと歌をスマホのボイスレコーダーアプリで録音しきる。

「曲作るって楽しいね。余計なこと考えなくてすむ。次にどんなコードを鳴らすか考えてギターを弾くの楽しい」

山沢さんいわく、20曲以上から曲のバリエーションが浮かばない壁にぶち当たるらしい。
思えば山沢さんのボカロP時代の曲もまともに作れていたのは50曲中20曲くらいだった。

他はサッカーで言う守備崩壊みたいなもので歌詞やメロディが明らかにテキトーだったりで世の中のミュージシャンが天才なんだとしみじみ思わされた。

笑可はギターを弾くのをやめて、山沢さんにLINE通話をしているようだ。
「山沢さん?    dimって何?」
「ディミニッシュ。KANA-BOONとかが時々使うね。押さえるのめんどいコード多いだろうし、何となく代替コードで変えてもいいんじゃない?何7(セブンス)だったかな。
昔フジファブリックのミラクルレボリューションNo.9のサビをパクった歌作る時に代用コードでごまかしたんだよね」

「山沢さん、ディミニッシュの代用コードについてのサイト送ってくれてありがとう。参考にするね」

そして笑可は丸サ進行を使いつつ、「麻布十番の雨しぐれ」という暗い歌も完成させた。
「さユりさんみたいなアコギで弾き語る女の子に憧れるけど、1年前に伯父のアコギ触らせてもらった時弦が硬すぎてエレキの方がいいってなったんだよね」
「そうなのか」
「アコギはエグい指タコできるよ。クラスメイトで音楽やってる子の手触らせてもらったことあるけどめっちゃ固かった」

「あれ?  なんだろ。山沢さんからYouTubeのリンク送られてきた」
そこには超飛行少年(スーパーフライングボーイ)の銀色ラプソディという曲のURL。
そしてジャパハリネットの哀愁交差点という曲のURLも送られてくる。

どちらも切なかったり悲しい雰囲気で、でもエモい曲だ。
山沢さんと子供時代ぶりに関わると、とにかく彼の青春時代に流行ってたバンドに詳しくなれる。

高卒で仕事を探すことになったら『最終学歴を書いて封筒に入れる。最近そんな毎日が当たり前になってきた』という銀色~の歌詞に共感できるんだろうか。

スポーツもロックシーンも移り変わりが激しい世界だ。
10年経って一人の選手や1つのバンドが現役を続けている保証はない。
生きてはいるけど、表舞台から姿を消してしまう。

もし、笑可が音楽の道をしっかり突き進むなら長く細く続けて欲しいと思った。

彼女の鳴らすクリーントーンのギターが響いていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

処理中です...