カナリアボックス〜あなたに会えてよかった〜

本田すみれ

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はじまりのうた

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「それじゃ聞いて下さい、家族の詩」
広い会議室。
レコード会社のスタッフの前でボクらは家族の詩を披露した。
考え込む人、歌詞に思わず泣く人の2つに分かれた。

「笑可さん。うちで歌ってください。早く君の歌を出したい」
「あ、ありがとうございます」
「契約の仕方とかは置いといて、もうとにかく長く色んなミュージシャンを見てきたけれど笑可さんほどリスナーを考えて歌を作っている子はなかなか見たことがない。
あなた、この歌を書く時吉田拓郎を聞きまくったでしょう」
「何でわかったんですか?」

「君がバンドメンバーの鳴らす流れを切って、Cメロを演奏し始め歌った歌詞と歌メロに吉田節の影響が出まくってたよ」
「コード進行もあえて似せました」

「僕羽佐間隼一としては1つ提案が。今ミュージシャンが生き残るには映像が重要だ。
動画を撮ったり編集するのが趣味な映画監督を夢にしている女性の知り合いを紹介しよう。
彼女と一緒にMVを作っていくといい。
戦略的には神聖かまってちゃんのMVをパクるつもりだ」

「あと1stシングルはどうなるんですか?」
「今日までに送ってくれてた何曲かの中の『音の鳴るほうへ』をB面にしよう。もちろんA面は今の歌だ」

レコード会社をあとにして、居酒屋で4人乾杯をした。ボクと笑可はお酒抜きだけれど。
みんなで祝いあった。
こんなにすんなりデビューできてよかったのかと思う。
おそらく、笑可のフォロワー数は1万人を超えているから数字になると判断したんじゃないか。
ボクは穿った目で見ている。

宴が終わり、お互いそれぞれの恋人と時間を過ごしたい思惑で山沢カップルと別れて、ボクと笑可は駅前で話していた。

「笑可がどんな歌作っても足でまといにならないようベース練習するよ」
「それなんだけど、演奏にこだわるのも大切だけど彩風さんにシンセベース弾いてもらうのもアリとは思ってる。
豹馬は歌は下手では無いから、コーラスしてもらうなりピエール瀧よろしくステージでテキトーに踊ったりしてていいよ」

「そうか」
「元々はマネージャーだけしてもらうつもりだったのに、私の無茶で色々やってもらってごめんね」
「笑可が謝ることは何もない」
「こんな私についてきてくれてありがとう。まだ約束はできないけど、結婚するなら豹馬くんみたいな人がいい」

「もう一度言ってくれないか」
「ふふ、いやだ」

カバンから取り出したサイダーからは青春の味がした。
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