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第一章:再起
淑女教育(4)
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「ねえ、クラリス。気分転換に散歩がしたいんだけど」
「散歩、ですか」
もともとこの部屋に実質軟禁されている状態でまともに体を動かせていないのに、加えてここ数日は机にかじりついていて体が凝り固まっている。
外気を浴びて気分転換がしたい。
「殿下かセルジュ卿に確認してまいります。少々お待ちくださいませ」
「ええ、よろしくね」
私の依頼にしたがって部屋を出たクラリスは、しばらくして戻ってきた。
「殿下に確認しまして、夜の短時間に皇太子宮の庭園であれば問題ないとのことでした。私も同行しますが問題ありませんか?」
「もちろん構わないわ」
久しぶりに外に出られる喜びを胸に、私はその日も集中して学習に取り組んだ。
---
そして、夜。
「風が涼しくて気持ちがいいわね」
クラリスに先導されて、私は夜の皇太子宮庭園を歩く。
夜に見られることを想定していないのか明かりは整備されていないようで、クラリスと私は簡易のランプを手に持っている。
「あと少し……ようやく終わりが見えてきたわね」
「そうですね、ここ一週間ほどのお嬢様の努力は目覚ましいものがありました」
今日の進捗もかなり手ごたえのあるものだった。まだ油断はできないけれど、ゴールは確実に見えている。
「……正直、お嬢様が本当にあの貴族名鑑を一か月で覚えきれるとは思っていませんでした」
「え、そうなの?」
衝撃の告白に私は驚きの声を上げた。
「分量が分量でしたので。当初の進捗でも優れている方だと認識しておりました。しかし、殿下から発破をかけられてからのお嬢様の学習速度は私の想像をはるかに上回っておりました。改めてお嬢様を尊敬いたします」
「そうね。命がかかっているとはいえ、私もここまでできるとは思わなかったわ……」
そう言ってふと皇太子宮を見上げ、私は足を止める。
そこには、一室だけ煌々と明かりが灯った部屋があった。
「ねえ、クラリス。あの部屋ってなにかしら?」
「ああ、あれはレイジ殿下の執務室ですね。いつもこの時間までは執務されていらっしゃいます」
「そうなの?」
「はい。殿下は午前中に騎士団に顔を出して鍛錬を行い、午後から執務をおこなっています。帝国貴族の仕事に不満があるため、多くの事柄の最終責任者を担っており、日々多くの事案を目にしては指摘を入れているそうです」
「そういうこと……」
皇太子は強い意志で自らの成したいことを成している。
私を帝国に迎え、婚約者役に据えたのもそのためだろう。
誰よりも自分に厳しいからこそ、私が努力すれば貴族名鑑を習得できると信じていた。
皇太子が私にかけている期待もまた、非常に重いものだとわかる。だけど、それに応えられることにやりがいを見出していることもまた事実だ。
仇敵であった皇太子に対して、はじめて敬意を抱いた。
そして、その期待に応えてみたい、そう思えた。
「散歩、ですか」
もともとこの部屋に実質軟禁されている状態でまともに体を動かせていないのに、加えてここ数日は机にかじりついていて体が凝り固まっている。
外気を浴びて気分転換がしたい。
「殿下かセルジュ卿に確認してまいります。少々お待ちくださいませ」
「ええ、よろしくね」
私の依頼にしたがって部屋を出たクラリスは、しばらくして戻ってきた。
「殿下に確認しまして、夜の短時間に皇太子宮の庭園であれば問題ないとのことでした。私も同行しますが問題ありませんか?」
「もちろん構わないわ」
久しぶりに外に出られる喜びを胸に、私はその日も集中して学習に取り組んだ。
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そして、夜。
「風が涼しくて気持ちがいいわね」
クラリスに先導されて、私は夜の皇太子宮庭園を歩く。
夜に見られることを想定していないのか明かりは整備されていないようで、クラリスと私は簡易のランプを手に持っている。
「あと少し……ようやく終わりが見えてきたわね」
「そうですね、ここ一週間ほどのお嬢様の努力は目覚ましいものがありました」
今日の進捗もかなり手ごたえのあるものだった。まだ油断はできないけれど、ゴールは確実に見えている。
「……正直、お嬢様が本当にあの貴族名鑑を一か月で覚えきれるとは思っていませんでした」
「え、そうなの?」
衝撃の告白に私は驚きの声を上げた。
「分量が分量でしたので。当初の進捗でも優れている方だと認識しておりました。しかし、殿下から発破をかけられてからのお嬢様の学習速度は私の想像をはるかに上回っておりました。改めてお嬢様を尊敬いたします」
「そうね。命がかかっているとはいえ、私もここまでできるとは思わなかったわ……」
そう言ってふと皇太子宮を見上げ、私は足を止める。
そこには、一室だけ煌々と明かりが灯った部屋があった。
「ねえ、クラリス。あの部屋ってなにかしら?」
「ああ、あれはレイジ殿下の執務室ですね。いつもこの時間までは執務されていらっしゃいます」
「そうなの?」
「はい。殿下は午前中に騎士団に顔を出して鍛錬を行い、午後から執務をおこなっています。帝国貴族の仕事に不満があるため、多くの事柄の最終責任者を担っており、日々多くの事案を目にしては指摘を入れているそうです」
「そういうこと……」
皇太子は強い意志で自らの成したいことを成している。
私を帝国に迎え、婚約者役に据えたのもそのためだろう。
誰よりも自分に厳しいからこそ、私が努力すれば貴族名鑑を習得できると信じていた。
皇太子が私にかけている期待もまた、非常に重いものだとわかる。だけど、それに応えられることにやりがいを見出していることもまた事実だ。
仇敵であった皇太子に対して、はじめて敬意を抱いた。
そして、その期待に応えてみたい、そう思えた。
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