海岸でタコ助けたらスーパーヒーローになっていた。 ~正義の味方活動日記~

はらくろ

文字の大きさ
10 / 56
第一章

第十話 夏休みの出会い

しおりを挟む



「すっごいきれいだねー」

 潮だまりを覗くと、そこには規模は違えど水族館があった。小さな魚やカニ、貝類や海藻。サンゴも綺麗でキラキラしている。幅は十メートル以上あるのでかなり大きい。あちら側へ行くには、ぐるっと迂回しなければならないほどだ。

 深さも一八の腰くらいまである。もしかしたら、リーフの切れ目リーフエッジはただただ危険。それこそ一寸先は闇。どれほど深い場所があるかもわからないのである。だから入ってはいけない、そう言いつけられている。一八はそれを守っている良い子なのであった。

 一八の足には釣り具メーカーで作られている、磯で滑りにくい靴を履かせてある。日焼けと熱中症対策の長袖のスイムウェアラッシュガードと帽子。ジュニア用の救命胴衣も着せてあるから、何かあったときにすぐ隆二だけで対応できる状態にしてある。だから潮だまりにひとりで行かせても、慌てるようなことはないというわけだ。

 一八はゆっくりと潮だまりのまわりを歩きながら、水族館の水槽のように綺麗で小さな世界を見て回った。彼は何かを見つけたのか、幅の小さなところに座った。

「がんばれっ。あ、おしい。そこだ、いけっ。あぁ、諦めちゃ駄目だってば」

 一八は何かを応援しているようだ。彼の視線の先にいるのは、光の反射で見えづらいがおそらくはタコだと思われる。それも一匹だけでなく、二匹いるようだ。片方は黒っぽい、片方は白い。だから二匹いるのがわかる。

 潮だまりで小さな魚を追っているように見えるが、思ったよりもタコの動きはどんくさい。触手を一本長くのばすが、どうしても空振りしてしまう。

「どうしたの? 具合悪いのかな? でもお腹すいてるから魚追いかけてるんだと思うんだよね、……あ、そうだちょっと待ってて」

 一八は立ち上がり、滑りやすそうなサンゴ礁の地磯リーフの上を走って隆二の元へ。隣りに置いてあるバケツをみると、五センチほどの体長があるミジュン――沖縄では食卓に並ぶことがよくあり、名前もよく知られているイワシの仲間でニシン科の海水魚――が何匹も釣れていた。

「どうだ? 一八くん。お父さんもなかなかやるだろう?」

 隆二は一八のことを『一八くん』、千鶴のことを『千鶴ちゃん』、日登美のことを『日登美さん』と呼ぶ。

 ふふん、と自慢げな表情。そんな隆二をスルーしつつ、一八は自らの要望を伝える。

「お父さんこれ少し、もらってもいい?」

 隆二をめることなく、一八は意思表示。

「あ、あぁ、構わないけど?」
「ありがとっ」

(猫でもいたのかな? まぁ、怪我をしなければ構わないけどね)

 隆二は嬉しそうに戻っていく一八を見ながらそう思っていた。

 沖縄本島には海岸沿いでは、比較的多く野良猫を見かける。釣り人の隣でじっと待っている猫を見かけることも少なくはない。もちろん、この八重寺島も例外ではないのである。

 一八は自分用にあったビニールバケツに、両手で掬ってミジュンを四尾ほど移す。そのあとそのままさっきの場所へ小走りに急いだ。

「転ぶなよー?」
「うんっ」

(あ、よかった、まだいるいる。でもなんかやっぱり、駄目みたいだね……)

 相変わらず二匹のタコは、触手を伸ばしては諦めるような仕草に見えてしまう。回りの小魚はすばしっこく、なかなか捕獲に至らないのだろう。

 タコのいる傍にしゃがみこんで、一八はビニールバケツに手を突っ込み、ミジュンを掴もうとしたのだが、

「――ぁっ」

 手をすぐにひっこめて右手の人差し指を見る。すると、ぷっくり血が滲んでいるのがわかる。それに思ったよりも傷は小さくない。反射的に指先を口に含んで舐めてしまう。

「いふぁふぁふぁ。あーそっか。気をつけないと駄目って、お父さん言ってたっけ」

 魚のヒレはときに鋭く、子供の皮膚くらいは簡単に傷をつけてしまう場合がある。そのため、釣り具店には魚を挟むためのハサミ、フィッシュグリップなるものが売られていたりするのである。

 簡単に傷が塞がるわけはなく、ぽたりとひとつふたつ、一八の血がバケツの中にしたる。まぁ、これくらいの切り傷や擦り傷程度では、元気な一八はへこたれない。それこそ、舐めておいたら治ると思っているくらいだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

処理中です...