ミリアお嬢様の最初の冒険

さんごく

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その14.

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 ミリアがそれを見つけられたのは本当に偶然だった。
 鍛冶屋の隅を鉄のかけらでも落ちていないかと探していたら、なんとほこりを被った針金の束を見つけたのだ。
 ミリアはリリィの手をとって、本気で踊りだした、それぐらいこの戦いを左右し兼ねない発見だった。
 ミリアとリリィ、そして力仕事の出来ない女性達が、短く切った針金をロープに刺していった、言ってしまえば鉄条網を作ったのだ。
 たかが鉄条網と侮ってはいけない、戦闘ではこういう地味なものが大活躍することがある。
 サンダーライオンがもがけばもがくほど、ロープに刺した針金は皮膚に食い込んでいく、しかもその針金は鉄!魔物はその名の通り下手な魔術師より魔術に長けている、そのからだには常に魔力がみなぎっている、そして鉄は魔力を霧散させる、魔物にとって鉄の針は毒針並みに恐ろしいものだった。
 グアアアア!!だが所詮はロープ、サンダーライオンはその前脚で、その大きな顎であっさりロープを引きちぎる、苦しめることは出来ても仕留められるものではない。
「いくよーミリアちゃん!」「うん!」二人は槍を突き出す、まだ身動きの取れないサンダーライオンは攻撃を回避出来ない。
 ミリアの槍は左前脚に刺さり、リリアンの槍は右目をえぐった、リリアンの攻撃が右目をつぶしたのは大戦果だった、どのような生き物でも感覚器官を潰されるのは二重に痛い。
 グワオオオッ!!サンダーライオンがでたらめに暴れだす、二番目の防衛網はすぐに使えなくなるとふんだミリアは、
「リリィ三番目に入って!」と指示を出すと、自分も移動しようとしたときにゾクリッとする。
 ミリアはサンダーライオンを見る、大けがを負って怒り狂っていたサンダーライオンが、静かにリリアンの後を左目で追っていた。
「しまった!」ミリアは大声を出すも、そんなことには気にも留めずサンダーライオンはゆっくりとリリアンの後を追っていく。
 この防衛網はサンダーライオンが電撃での攻撃、もしくは突撃してきた時を前提としてミリアが作らせた、八重もの、農工具とロープとを結んで編んだ防衛用の網だった。
 それだけにどうしても、最低七か所ロープの張られていない場所ができる。
 それが無いとミリアとリリアンが移動することが出来ないという、構造上どうしても覆い隠す事の出来ない欠点だった。
 時間が有れば迷路にでもして、何とかごまかせただろうが、その時間が無いためにじっくりと観察すればおのずとばれてしまう。
 リリィの無防備な後ろ姿にミリアは叫ぶ! 
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