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第二章
漫才修行の日々
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こうして島田紫織に弟子入り志願をしてから一週間後光彦は再度ミルソーレに来ていた。一週間前にここで講談師の弟子入りに失敗しているだけに何処か居心地の悪さを感じたが、今は隣の座席に一馬がいるので逃げ出す訳にもいかず、かと言って堂々としている自信もなかった。それで何となく焦った気持ちになった光彦は一馬に対して「秋風こうた・ふくた師匠はどんな事を聞いてくるんだよ」と迫ったが、一馬は「大した事聞かれないよ」と白を切り話にならなかった。とするうち160cmもないような小柄で赤のジャケットに黒のシャツを着て金色のネクタイを締めている男達がミルソーレに入って来た。一見ヤクザの親分のようだったが、どうやら彼らが秋風こうた・ふくたのようである。両者共背は160cmに満たない小男ながらこうたの方は髪をオールバックにさせた上で薄い色のサングラスを掛けており、なお且つ顎が尖がっている事から何やら鮫を連想させる顔付であった。対してふくたの方は役者の渥美清のような四角形の顔であったが、渥美清の様に目つきは鋭くなくたれ目で好々爺然としている。恐らく互いに七十歳前後であったろう。この雰囲気に少しビビった光彦は「オイ立て」と小声で囁いた一馬と共に立ち上がって両者を迎えたのだった。
その二人は「まぁ座れ」と光彦達に指図し、四人は四人用のテーブルを囲んで椅子に腰かけたのだった。最初に光彦に対して声を掛けたのは秋風こうただった。
「兄ちゃん、取り合えず何か飲み物でも頼めよ。ただし税込み八百円以内でな」
「はい」薄い色のサングラスだったが故に、秋風こうたの目付きがこちらを睨んでいるような気がして光彦は「はい」と小声で返事をする事が精一杯であった。故に光彦はすぐさま引っ手繰ったメニューから税込み六百三十円のバナナジュースを頼むのだった。次に声を掛けて来たのは秋風ふくたで
「兄ちゃん名前はなんて言うんだ?」と尋ねてくる。
「川野光彦と申します」
「で年齢は?」やや荒っぽい口調で秋風こうたが迫った。
「今年で二十歳になります」
「悪くねえな、でどうして一太と漫才コンビを組みたいんだよ」
「いや・・・・僕自身漫才が好きで漫才をやりたかったものですから。それに相方が幼馴染で親友の一太だったらやりやすいと思ったので」
「フーン、何お前ら幼馴染なの?」
「はい、俺達住んでた団地が一緒で小学校中学校と一緒の学校に通っていたんです」一馬がすかさず付け足した。
これにやや間があって後頼んだバナナジュースが光彦の前に運ばれてきた。しかし余りの緊張故にか光彦はバナナジュースに手をつける事が出来ずに視線は秋風こうたから離さずにいる事に精一杯である。そこですかさず秋風ふくたの方が「兄ちゃん遠慮せずに飲めよ」と勧めてきたので漸くバナナジュースを口に付けた光彦なのであった。緊張感で喉が渇いていたが故にそのバナナジュースは甘くて美味かったが、やはり秋風こうた・ふくたの視線が気になる光彦はさっと飲み干してしまおうとズーズーと吸引する余裕のなさなのであった。やがて光彦がバナナジュースを飲み干した頃合いに秋風こうたが光彦に対して
「アンタ、歌は上手いのか?カラオケに行く事は好きか?」と聞いてきた。これに光彦は実際これまでの人生の中でカラオケに行った事など指で数えられる程度しかなかったのだったが、
「はい上手い方だと思います。カラオケに行く事も好きです」などとへつらったつもりで言うと秋風こうたが
「本当か!なら合格だ。明日から一太と一緒に西洋館の楽屋に来るように」と告げて来たから光彦はこの展開にやや仰天したものであった。何でも秋風こうた曰く「歌が上手い奴は漫才も上手い」との事で光彦が歌が上手いと知るや弟子入りについて文句なしに採用したようなのであった。これに嘘を付いてしまった形となった光彦は咄嗟に何事かを言って言いつくろおうとしたが、秋風こうたも秋風ふくたも「今日からお前の芸名は秋風光太(みつた)だ」と言って光彦の話をこれ以上取り合おうとしないのだった。
この寸劇とも言える展開に呆気に取られてしまった光彦だったが、「ありがとうございます」と答えるだけで精一杯であり二の句を告げる余裕はなかった。対して秋風こうた・ふくたは一馬と光彦が飲んだジュース代を机に置くと、「用があるから」とか言ってミルソーレをさっと出て行ってしまう。それは粗製濫造とも言っていい程の余りにも場当たり的な漫才師の見習いである秋風一太・光太の誕生であったが、光彦は喜びよりも明日からの不安感の方が強かった。講談師と漫才師ではこんなにも入門におけるハードルの高さに差があるのか?と驚いたし、歌が上手いと言ってしまった以上今日からカラオケへ行って一日も早く美声を持てるように努力しなければならないとも思った。片や能天気なのは一馬の方で「やったァ、これで当分漫才協会に居残る事が出来た。ありがとうな、光彦」とまぁ大船に乗った気持ちでいろとでも言いたいような安堵感をも見せている。光彦はそんな一馬を見て早くも秋風こうた・ふくたに弟子入りをした事を後悔し始めたのだった。
翌日、浅草寺で一馬と待ち合わせた光彦は生まれて初めて浅草唯一の演芸場である西洋館に入り、しかも楽屋へと入り込んだのだった。幼い頃祖父と六区に通っていたと言ってもそれは六区の通りにある馬券場へと連れて行かれただけであり、西洋館に連れて行ってもらった事はなかったのである。それで昨日ミルソーレで秋風こうた・ふくたに言いつけられていた時刻に楽屋を訪れると楽屋は様々な漫才師達でごった返していた。良く見てみれば最近言い間違え漫才で売れ始めている「タイツ」がいたし、埼玉県あるある漫才で注目を浴びているS字カミソリがいる。何れもテレビなどで観た事があるだけに光彦は一視聴者気分に戻ってサインなどを貰いかけそうだった。そんな中楽屋の左奥には我が師匠である秋風こうた・ふくたがおり、手招きしてこちらに来るように指示する二人に光彦と一馬は近付いていったのである。
二人の前へ光彦は正座をして待機すると、早速秋風こうたから西洋館専用の法被を渡され、それを着て楽屋の掃除や先輩漫才師に対してお茶汲みをする事などを命じられた。一方で一馬はと云えば同じく法被を着込みエレベーターボーイと受付を兼務する事を命じられている。この西洋館に初めて来て早々、右も左も分からないのにも拘わらず一馬と切り離されて一人で実務をこなさなければならない事態に光彦は一応抗議めいた事を二人に口にしてみたものの、秋風こうたにしろ、秋風ふくたにしろ、それに取り合う様子は全くなくむしろ「こいつが今日の楽屋の作業では一緒で先輩だから、何か分からない事があったら、俺達ではなくてこいつに聞け」と二十代半ばの痩せ型の気障男を紹介してきたのだった。その男は前髪を過度にいじくった鬱陶しい髪型をしており、面相も童顔であったので光彦が嫌いなジャ〇―ズにでもいそうな雰囲気を身に纏っている。それがこれから一馬や光彦と深い関係性になるところの新井浩次と云う手品師であった。何でも新井は漫才師ではないらしかったが、手品が得意でネギー一郎なんかがやっている手品漫談を西洋館で披露している手品師であるらしかった。
その新井から光彦は雑巾で楽屋の柱を拭くように命じられたり、お茶の出し方などを教わったりしたのだった。特にお茶の出し方などは各漫才師ごとにタイミングと云うやつが違って下手な間合いでお茶を出そうものなら、こっぴどく怒られてしまう為に注意が必要であった。また舞台を終えた漫才師が着用していたスーツなども綺麗に皺を付けないようにハンガーに掛ける事なども神経を使う作業であった。しかしそんな気遣いをして丁寧に仕事をしても、どの漫才師達も光彦の存在を気に掛ける様子はまるでなく光彦が入れたお茶を飲みながらプロ野球の話か博打の話か風俗の話で盛り上がっているのだった。そうした漫才師達を見て光彦はややうんざりした気持ちにもなったが、新井が次々に漫才師の衣装を光彦に手渡してくる為にそんな感情に浸っている余裕はなかった。
この日の西洋館での興行ではニ十組の漫才師達が出演していたが、先頭から十五組の漫才師達が舞台を終えたタイミングで光彦は楽屋仕事から解放され、新井の案内で舞台袖へと誘導された。来てみると光彦と同じく受付仕事を途中で外されたらしい一馬も来ていてどうやらここで「先輩漫才師の漫才を観察して芸を盗め」と云う事らしい。二人が「あー、めんどくせえぇな」と思う間もなく、次は我が師匠秋風こうた・ふくたの出番だと云うので襟を正してその漫才を拝聴するのだった。その漫才は凡そ十分間に及んで披露されたのだったが、ボケのふくたがツッコミのこうたに対して一方的にボケ続けたり、こうたにツッコまれるとこうたのスーツの肩口に噛みついたりすると云うスタイルで進んでいった。中でも特に笑いを誘ったのが
「我々の世界はサラリーマンとは違いますからねぇ」
「そうですねぇ、こうたさん」
「何しろ芸能界は浮き沈みがあるでしょう」
「確かにそうですねぇ、でも我々には余り関係ないでしょう」
「何で?」
「そもそも浮いた事がないから」
「何を言い出すんだ、馬鹿」
「ずっと世に出ず50年、だから我々は人呼んで潜水艦コンビって呼ばれているんですよ」
「呼ばれちゃいねぇよ」と云った自虐ネタの下りで客席からは大量の笑い声が響いてきたものだった。
正直言ってM―1なんかでしか漫才を知らなかった光彦にとっては新鮮な漫才だったし、面白いか面白くないかと云えば面白くなかったかもしれなかったが、秋風こうた・ふくた師匠が約十分間にも渡って漫才を続けていた事実には驚きが隠せなかった。光彦は未だ漫才などやってはいなかったが、舞台に立てば三分間も話せれば良い方だろうとしか思えず、秋風こうた・ふくた師匠がともかくも客席の空気や視線を飽きさせずに十分間も自身の漫才で支配した事実は称賛するに値するものだった。故に光彦は舞台を終えた秋風こうた・ふくた師匠が舞台袖に帰って来るなり「お疲れ様でございます」と馬鹿に丁寧な言葉を言い、「楽屋でお茶を用意しましょうか?」とも聞いたが、秋風こうたが「いい、自分達でお茶は汲むから。それよりもお前達はここでトリまでの漫才を見て漫才を勉強してろ」と告げてきたのが意外であったし格好良く映ったものであった。
これに光彦は一馬に対して「何か、師匠の漫才って意外と面白かったな」とわざと「面白かった」などと云い水を向けてみると一馬は「そうだろ」などと零し満更でもない様子だった。これに光彦が「でもよ、師匠の漫才だけじゃなくて、ここに出ている漫才師達は皆十分間も漫才をしているけど、それだけしゃべれるってすげぇよな」と言えば一馬は「そんなもん慣れだよ」と答えてくる。
「慣れでそんなにしゃべれるもんなのかよ?しかも人前に出てさ。俺いきなり明日舞台に立てって言われても二分間も話せないぜ」
「大丈夫だよ。今日から俺達二人で漫才の特訓をするんだし、それにいきなり明日から舞台に立つなんて事にはならないから安心しろよ」
「そうか、でも十分間も人前で話せてしかも観客を笑わせられたとしたらすごく格好良いよな」
「まぁ確かにな」
「一方でテレビなんかでやる漫才は五分も話さねぇしな」
「テレビでやってる漫才なんて漫才じゃねぇよ。あんなもんは単なるバラエティだ」
「そうか。でも一馬だってテレビで漫才をやりたいんじゃないのか?」
「いや、全然やりたくないな」
「えッそれは何で?」
「テレビで漫才をするにはスポンサーの意向とかを汲まなきゃなんないしな。テレビなんて所詮CMで成り立っているんだし、あんなものに拘る事はねぇんだよ」
「そうか」ふと目の前に視線を向けてみれば、今テレビで売り出し中の「タイツ」が漫才をしていた。
「タイツ師匠も言ってたよ、テレビではコンプライアンスとかBPOとかがあって、漫才のネタが自由に出来ないって」
「そうなんだ。確かに今タイツ師匠の漫才を見てもテレビでやっているネタとは違うし、面白いもんな。結構西洋館では毒舌ネタをやっているんだな」
「そうだろ、これからはこのスマートフォンが普及して一気にネット社会が進むから、テレビに頼らずとも知名度を上げていく方法はあると思うんだよ、YOUTUBEなりTwitterなりさ」
「なるほど」
「劇場で自由にネタをやってインターネットで知名度を上げれば、地方の営業でも結構いいギャラで呼んでもらえるようになるからさ。漫才師って結構夢のある仕事だと思うぜ」一馬はスマートフォンを片手に自信に満ちた表情でそう言うのだった。光彦も相方のその言葉を聞いてあながちそれも嘘でもあるまいな、と感じて黙って頷くのみであった。
そのうちトリも終わって閉幕になると二人はまた楽屋に戻って掃除をしたり、ベテラン漫才師達の肩たたきをしたりしなければならなかった。そこでも少し力の加減を間違えて強めに肩を叩いたりすると怒鳴られて叱られる為、息を抜く暇もないと云った状態である。しかし余りにも度が過ぎる形で光彦を叱ったベテラン漫才師Aに対しては秋風こうたが「光太はお前の弟子じゃなくて俺達の弟子だ、馬鹿野郎、勝手にこき使うんじゃねぇ。分かったか」と言ってくれ庇ってくれたものだった。そして最終的に自転車でここまで通っている秋風こうた・ふくたの二人を西洋館の玄関で見送った光彦と一馬はそのまま西洋館を運営する西洋興業が経営するアパートである第一梅倉荘へと移ったのであった。そこは一馬がこれまで一人で住んでいたのだったが、ここの一階の風呂なし角部屋六畳一間が今日から光彦と一馬の二人の根城となる訳である。今まで三DKのマンションに住んでいた光彦としては正直言ってかなりの転落とも言えたが、何よりも嫌だったのは一馬と同居しなけらばならない事であった。そもそも光彦は恋愛には興味がないものの、一方でホモでもゲイでもなかったので、普通に結婚願望もあり子供も欲しかったし、所謂恋愛結婚ではなくお見合い結婚で身を固めたい意志を彼は持っていたのだが、そんな彼がいくら漫才コンビを組んだからと言って一馬と男同士の同居生活を送る事はやはり不本意なのであった。しかし一馬はそんな光彦を全く気にする事なく、これからは近くのコインランドリーで日替わりでお互いの洗濯物を洗濯する事や共用のガスコンロの使い方などを説明してくる。そのマイペース振りに光彦は腹を立てる余裕など持てずにその日は煎餅布団を引いて渋々寝てしまったのだった。
さて翌日から本格的に漫才師の見習い修行の日々が始まったが、来る日も来る日も楽屋でのお茶酌みや衣装整理や受付の事務作業に没頭する日々であった。毎回興行のトリ近くになると一馬と共に舞台袖に待機させられ、先輩漫才師達の芸を観察する時間を与えられたが、それは飽くまでも予備的なものであり、やはり雑用仕事が見習い修行のメインであった。また普段は秋風こうた・ふくた師匠の両者共舞台がなくても西洋館にいる事が多かったが、時たま都内で行われる結婚式などに余興として漫才を披露する事があった為自動車の免許を持っていない一馬の代わりに光彦が付け人として自動車を運転して師匠を結婚式場まで送り届けたものだった。そしてその車中でも光彦は毎日舞台袖で録音した「タイツ」師匠の漫才を片耳だけイヤホンをして聞いたものだった。光彦にとってそれは師匠と狭い車中に押し込められる為に非常に気詰まりもする面倒な仕事だったものの、その気苦労を忖度してくれた師匠が光彦に五千円のお小遣いを一馬には内緒でくれたのは何ともありがたいものだった。
そんな形で始まった見習い修行生活は朝は七時に起きて八時半までに朝食と洗濯を済ませてから十時まで浅草寺の境内で一馬と漫才の稽古をした後に十時半までに西洋館の楽屋に入り雑用や受付仕事を十八時までこなすと云うルーティンだったが、何とも気が滅入りそうになったのは、第一梅倉荘でレトルトのカレーやカップラーメンを夕食として食べてから一馬と一緒に再度漫才の特訓をさせられる事だった。その特訓は午前中に浅草寺の境内で行っているネタ合わせとは違い、売れっ子のタイツ師匠がラジオで行っているフリートークをタイツのツッコミである大島役を光彦がやり、ボケの田所役を一馬がやって演じて見せると云うものであった。正直言ってそれはタイツ師匠のフリートークの猿真似以外の何物でもなく、こんな事で漫才の技術が向上するとは思えなかったが、一馬曰く「売れてる漫才師のフリートークを演じて見せる事で漫才の間合いを察知する判断力や言葉選びの感性が磨かれるのだ」と云う。光彦も一馬にそう言われてみればそう思えないこともなかったので、唯々諾々として毎日その練習に付き合うのだった。
また一風変わった漫才の稽古としてナンパの練習と云うものがあったが、これが光彦にとってはちょっと取っつきにくくてハードルが高いものであった。そもそもナンパを推奨してきたのは我が師匠達で「女にモテない漫才師なんてのは一生売れない漫才師だ」とか言い、秋風こうたに至っては「漫才のネタ合わせなんてやらなくていいから、とにかくお前らはナンパしてろ」と言い出す始末でさえあった。女を楽しませられない漫才師が面白い漫才なんて出来る訳がないと云うのである。これに初っ端光彦はナンパをして初体験を済ませて童貞を捨てたい思いに駆られたものの根っからの恥ずかしがり屋であったし、万が一ナンパが成功して恋愛にまで発展したら面倒だな、と思い閉口した。一馬も光彦程ではなかったが、事女に関しては不器用で奥手であったので当てには出来なかった。だがここで二人の前に強力な助っ人、と云うよりもナンパの指南者が現れたのだった。それは手品師の新井浩次だった。新井は優男であったし、得意の手品を武器にホストとしても活動しているようで女の扱い方にはかなり手慣れていたのである。
何でも彼に言わせると浅草でナンパをする場合には雷門や仲見世通りで行うのではなく、飽くまでも六区の通りで行え、との事であった。自分達が西洋館に所属している漫才師の卵である事を最大限生かしてナンパをする必要がある、と云うのである。また必ず一人で歩いている女を狙うのではなく、二人組で歩いている女を狙え、とも言われた。その二人組のうちのブスな方の女に声を掛けて、片方の可愛い方の嫉妬を芽生えさせ注意を引き、最終的には可愛い方の女を口説いて持ち帰れ、と云うのであった。当初はこんな方法で女が引っかかるのか、光彦は疑問であったがぐずぐずしている光彦を尻目に一馬はホイホイとその方法で女をナンパして成功させていった。そのうちナンパで知り合った女の家を泊まり歩くようにもなり第一梅倉荘には光彦一人が取り残される形となってしまったのだった。そうなると六畳一間の部屋を自分一人で使えて快適であったが、そのうちナンパを成功させていない光彦を気遣って新井が頻繁に第一梅倉荘を訪問するようになっていった。大抵新井はそこで、一日の見習い修行を終えた光彦を迎えた後に共にインスタントラーメンか若しくはレトルトのカレーライスを食べてから、上野やら銀座まで出張ってナンパの訓練を施してくれるのであった。
それでその日も光彦は第一梅倉荘で新井と二人でセブンイレブンのおでんとインスタントラーメンを食べてから、上野公園へと赴いたのだった。目的は勿論ナンパである。既に時刻は十九時半を過ぎており電灯がちらほらと照っていたが、公園全体は暗闇に包まれていた。余りナンパをするには適さない場所と時刻だったが、新井曰くこの時間帯に上野公園にうろついている女はヤリマンが多い、それに鶯谷も近いからお持ち帰りするにも好都合だ、などと言うのであった。そしてその日は取り合えず西郷隆盛像の近くを通り過ぎる女をナンパする事に決め、新井と光彦は西郷像の傍にスタンバイするとするうち女子大生と思しき二人組がその西郷像の近くを通り過ぎようとした。新井は光彦に対して透かさず行け、と言う。故に光彦は新井の命令通りその二人組の女子大生に声を掛けたのだった。取り敢えず光彦は視界に入った片方のガマガエルの如く太った、たれ目のあまり可愛くない方の女に声を掛けた。「ねぇねぇ、どこ行くの?ちょっと話さない?」これは新井から植え付けられたナンパの手始めに女に声を掛ける時の常套句であった。しかし太った女は「・・・・」と押し黙ったままである。これに光彦は尚「ちょっとちょっと、無視しないでよ」と飽くまでも引き下がらなかったところ、そのうち太った女は「ねぇ、コイツが鬱陶しいから早く駅へ行こうよ」と隣の女に声を掛けたその時、その隣の女が「か、川野君!」と光彦の事を呼び止めたのだった。何とその女は進藤瞳だった。太った女はその進藤瞳の反応を意外に思ったのだろう、「えッ何知り合いなの?」と零したのだった。
桜通りを直進して大噴水がある広場のベンチに光彦と進藤瞳は座っていた。先程進藤瞳の友人である例の太った女は何かを察した様子でJRの駅の方へ向かって帰り、新井にも光彦から事情を話して先に浅草へと帰ってもらった。辺りはカップルが散策しており、傍から見れば光彦と瞳も恋人同士と思われても不自然ではなかっただろう。口火を切ったのは瞳だった。
「一体何でこんなところでナンパなんてしているの?」
「うん・・・・」
「いきなり大学からいなくなっちゃって私は心配したんだから」
「うん・・・・」
「うん、だけじゃ分からないでしょ、何とか言ってよ」
「実は今俺は漫才師の修行をしていてさ・・・・」
「漫才師?」
「うん、小学校の時の幼馴染の奴と漫才コンビを組んでいるんだ」
「そうなの、でもそれで一体何故ナンパなんてしているの?」
「女を口説けなきゃ面白い漫才は出来ないって云う師匠の教えでさ。ナンパが推奨されているんだよね」
「何それ?呆れたわ」
「うん」
「そもそも川野君は和服が好きだからそれで呉服屋に就職したいって言ってたじゃない?」
「そうだね。だから俺も一度は呉服屋じゃなかったけど、講談師になりたいと思って講談師の島田紫織師匠の下へ行って弟子入りさせてもらおうと思ったんだよ」
「島田紫織師匠・・・・そう、それで?」
「でも見事に断られちゃってさ。偶々浅草をうろついていた時にその幼馴染に声を掛けられて・・・・深く考えもせずに漫才コンビを組んじゃったんだよね」
「何それ?全然ちぐはぐじゃないのよ?」
「うん・・・・」
「川野君ってもっと考え方がしっかりしている人だと思ったのに・・・・。何かがっかりだわ」
「えッ」
「もう二度と会う事もないだろうけど、漫才の練習、頑張りなさいね。じゃあね」
「進藤さん・・・・」進藤瞳は光彦の事を振り向きもせずベンチから離れていったのだった。
これに光彦は甚だ複雑な心境に陥ってしまった。特に瞳が最後に光彦の事を振り返りもせずに置いていくようにして去った事は、いつかの日に光彦が鶯谷のラブホテルの前から瞳の事を置いていき、そのまま去っていた事を想起させた。何だかその時の復讐をされているような気がしたのである。それに瞳の事は好きでも嫌いでもなかったが、年頃の女から「もう二度と会うこともないだろうけど」などと言われた事はなかなかにショッキングな出来事ではあった。それ故に光彦も「なんでぇ、説教くせぇ事まで言いやがって、あいつなんかこっちから願い下げだわ」と大声で独りごちたが、それに反応した噴水広場周辺のカップル達の視線がこちらに集まった為、光彦は赤面しながら、瞳が走り去った方角とは反対方向へ駆け出していったのだった。しかしそんな傷心をいつまでも抱えている暇はなく、とうとう弟子入りから三か月後に行うと約束されていた初舞台が迫って来た。それは六月の上席(一日から十日)で行う事となっていた。
さていよいよ六月へと入り初舞台の日程が五日と定められると、これまでナンパ三昧で女の家を遊び歩いていた一馬も例の六畳一間の第一梅倉荘に戻って来、夜遅くまでネタ合わせに没頭したものであった。時には漫才の特訓中に殴り合いの喧嘩に発展しかける程の白熱振りを示していたが、そうやってお互いが力むごとに漫才の技術が上がっているような気がして不思議であった。そして何と初舞台当日、秋風光太・一太の出番はトップバッターとなっていた。当然出囃子などは簡潔な太鼓の音で締めくくらてい、同時にそれは漫才コンビ秋風光太・一太の誕生を祝う音でもあった。二人はその音に合わせて照明で光り輝く舞台へと走り出していったのである。漫才の最中はとにかく舞台の照明が眩しくて堪らなく、またネタを間違えずに言い終える事で精一杯であり、半ば頭は白熱化した。それで十分後初舞台を終えて控室へ戻った光彦と一馬に師匠がポカリスエットを渡してくれ、何でもそれで今しがた酷使してきた喉を潤せ、との事であるらしく、やがて一通りポカリスエットを飲み干した後に秋風こうたが、「初舞台だったけど、緊張せずによくやれたと思うぞ。ただこれからが勝負だぞ」と告げてくる。それを聞いて光彦は「緊張も何も客が二人しかいないんだから緊張する訳ないだろ」と思ってしまったが、黙っていた。とにかく師匠から教わったネタを十分間演じ切った安堵感で頭は一杯であり、二の句が継げる余裕はなかったのである。それは当然横にいる相方の一馬も同様であるようであった。
遂に誕生した漫才コンビ秋風光太・一太だったが、来る日も来る日も客が一人から三人ぐらいの舞台で漫才を行う日々であり、順風満帆とはいかなかった。それでも二人が必死に演じて見せる漫才で少ない客席から僅かでも笑い声が零れた時は本当に嬉しかったものだった。それは漫才師として冥利に尽きる瞬間でもあった。またそれなりに舞台の経験を積むと弟子入りの際に秋風こうたが「歌は上手いか?」と聞いてきた理由が分かった気がした。漫才は言わば楽器を使わない笑いの音楽だと光彦も一馬も認識し出したからである。例えばツッコミの光彦がボケの一馬に「馬鹿野郎」と突っ込むとする。同じ馬鹿野郎と突っ込むのでも馬鹿の部分にイントネーションを置くか、野郎の部分にイントネーションを置くかで、全く客席の反応が違うのである。最もこれは当然「馬鹿野郎」だけではなく、漫才の中ではありとあらゆる言葉がどの部分にイントネーションを置くか、どう云った間合いでその言葉を使うかによって客の受けが違うのであった。この発見は光彦にとって大きいもので漫才とはネタの内容が面白い事は当然として、リズム感や発声方法が大きく面白さに作用する話芸だったのである。しかもその難しい会話の作業をテレビでやる漫才と違って演芸場の漫才師は十分間もやる必要があるのである。テレビの漫才でも演芸場の漫才でもいつも爆笑を取る「タイツ」師匠が周りから話芸の達人と呼ばれている理由が光彦が漫才師として何度も舞台に立つにつれ、自然と良く分かるようになっていった。と同時に最初は一年だけやろうと云う事であった漫才師の仕事も光彦がその醍醐味を知るにつけ、早々に反故となってしまい、時間が過ぎていくのだった。
その二人は「まぁ座れ」と光彦達に指図し、四人は四人用のテーブルを囲んで椅子に腰かけたのだった。最初に光彦に対して声を掛けたのは秋風こうただった。
「兄ちゃん、取り合えず何か飲み物でも頼めよ。ただし税込み八百円以内でな」
「はい」薄い色のサングラスだったが故に、秋風こうたの目付きがこちらを睨んでいるような気がして光彦は「はい」と小声で返事をする事が精一杯であった。故に光彦はすぐさま引っ手繰ったメニューから税込み六百三十円のバナナジュースを頼むのだった。次に声を掛けて来たのは秋風ふくたで
「兄ちゃん名前はなんて言うんだ?」と尋ねてくる。
「川野光彦と申します」
「で年齢は?」やや荒っぽい口調で秋風こうたが迫った。
「今年で二十歳になります」
「悪くねえな、でどうして一太と漫才コンビを組みたいんだよ」
「いや・・・・僕自身漫才が好きで漫才をやりたかったものですから。それに相方が幼馴染で親友の一太だったらやりやすいと思ったので」
「フーン、何お前ら幼馴染なの?」
「はい、俺達住んでた団地が一緒で小学校中学校と一緒の学校に通っていたんです」一馬がすかさず付け足した。
これにやや間があって後頼んだバナナジュースが光彦の前に運ばれてきた。しかし余りの緊張故にか光彦はバナナジュースに手をつける事が出来ずに視線は秋風こうたから離さずにいる事に精一杯である。そこですかさず秋風ふくたの方が「兄ちゃん遠慮せずに飲めよ」と勧めてきたので漸くバナナジュースを口に付けた光彦なのであった。緊張感で喉が渇いていたが故にそのバナナジュースは甘くて美味かったが、やはり秋風こうた・ふくたの視線が気になる光彦はさっと飲み干してしまおうとズーズーと吸引する余裕のなさなのであった。やがて光彦がバナナジュースを飲み干した頃合いに秋風こうたが光彦に対して
「アンタ、歌は上手いのか?カラオケに行く事は好きか?」と聞いてきた。これに光彦は実際これまでの人生の中でカラオケに行った事など指で数えられる程度しかなかったのだったが、
「はい上手い方だと思います。カラオケに行く事も好きです」などとへつらったつもりで言うと秋風こうたが
「本当か!なら合格だ。明日から一太と一緒に西洋館の楽屋に来るように」と告げて来たから光彦はこの展開にやや仰天したものであった。何でも秋風こうた曰く「歌が上手い奴は漫才も上手い」との事で光彦が歌が上手いと知るや弟子入りについて文句なしに採用したようなのであった。これに嘘を付いてしまった形となった光彦は咄嗟に何事かを言って言いつくろおうとしたが、秋風こうたも秋風ふくたも「今日からお前の芸名は秋風光太(みつた)だ」と言って光彦の話をこれ以上取り合おうとしないのだった。
この寸劇とも言える展開に呆気に取られてしまった光彦だったが、「ありがとうございます」と答えるだけで精一杯であり二の句を告げる余裕はなかった。対して秋風こうた・ふくたは一馬と光彦が飲んだジュース代を机に置くと、「用があるから」とか言ってミルソーレをさっと出て行ってしまう。それは粗製濫造とも言っていい程の余りにも場当たり的な漫才師の見習いである秋風一太・光太の誕生であったが、光彦は喜びよりも明日からの不安感の方が強かった。講談師と漫才師ではこんなにも入門におけるハードルの高さに差があるのか?と驚いたし、歌が上手いと言ってしまった以上今日からカラオケへ行って一日も早く美声を持てるように努力しなければならないとも思った。片や能天気なのは一馬の方で「やったァ、これで当分漫才協会に居残る事が出来た。ありがとうな、光彦」とまぁ大船に乗った気持ちでいろとでも言いたいような安堵感をも見せている。光彦はそんな一馬を見て早くも秋風こうた・ふくたに弟子入りをした事を後悔し始めたのだった。
翌日、浅草寺で一馬と待ち合わせた光彦は生まれて初めて浅草唯一の演芸場である西洋館に入り、しかも楽屋へと入り込んだのだった。幼い頃祖父と六区に通っていたと言ってもそれは六区の通りにある馬券場へと連れて行かれただけであり、西洋館に連れて行ってもらった事はなかったのである。それで昨日ミルソーレで秋風こうた・ふくたに言いつけられていた時刻に楽屋を訪れると楽屋は様々な漫才師達でごった返していた。良く見てみれば最近言い間違え漫才で売れ始めている「タイツ」がいたし、埼玉県あるある漫才で注目を浴びているS字カミソリがいる。何れもテレビなどで観た事があるだけに光彦は一視聴者気分に戻ってサインなどを貰いかけそうだった。そんな中楽屋の左奥には我が師匠である秋風こうた・ふくたがおり、手招きしてこちらに来るように指示する二人に光彦と一馬は近付いていったのである。
二人の前へ光彦は正座をして待機すると、早速秋風こうたから西洋館専用の法被を渡され、それを着て楽屋の掃除や先輩漫才師に対してお茶汲みをする事などを命じられた。一方で一馬はと云えば同じく法被を着込みエレベーターボーイと受付を兼務する事を命じられている。この西洋館に初めて来て早々、右も左も分からないのにも拘わらず一馬と切り離されて一人で実務をこなさなければならない事態に光彦は一応抗議めいた事を二人に口にしてみたものの、秋風こうたにしろ、秋風ふくたにしろ、それに取り合う様子は全くなくむしろ「こいつが今日の楽屋の作業では一緒で先輩だから、何か分からない事があったら、俺達ではなくてこいつに聞け」と二十代半ばの痩せ型の気障男を紹介してきたのだった。その男は前髪を過度にいじくった鬱陶しい髪型をしており、面相も童顔であったので光彦が嫌いなジャ〇―ズにでもいそうな雰囲気を身に纏っている。それがこれから一馬や光彦と深い関係性になるところの新井浩次と云う手品師であった。何でも新井は漫才師ではないらしかったが、手品が得意でネギー一郎なんかがやっている手品漫談を西洋館で披露している手品師であるらしかった。
その新井から光彦は雑巾で楽屋の柱を拭くように命じられたり、お茶の出し方などを教わったりしたのだった。特にお茶の出し方などは各漫才師ごとにタイミングと云うやつが違って下手な間合いでお茶を出そうものなら、こっぴどく怒られてしまう為に注意が必要であった。また舞台を終えた漫才師が着用していたスーツなども綺麗に皺を付けないようにハンガーに掛ける事なども神経を使う作業であった。しかしそんな気遣いをして丁寧に仕事をしても、どの漫才師達も光彦の存在を気に掛ける様子はまるでなく光彦が入れたお茶を飲みながらプロ野球の話か博打の話か風俗の話で盛り上がっているのだった。そうした漫才師達を見て光彦はややうんざりした気持ちにもなったが、新井が次々に漫才師の衣装を光彦に手渡してくる為にそんな感情に浸っている余裕はなかった。
この日の西洋館での興行ではニ十組の漫才師達が出演していたが、先頭から十五組の漫才師達が舞台を終えたタイミングで光彦は楽屋仕事から解放され、新井の案内で舞台袖へと誘導された。来てみると光彦と同じく受付仕事を途中で外されたらしい一馬も来ていてどうやらここで「先輩漫才師の漫才を観察して芸を盗め」と云う事らしい。二人が「あー、めんどくせえぇな」と思う間もなく、次は我が師匠秋風こうた・ふくたの出番だと云うので襟を正してその漫才を拝聴するのだった。その漫才は凡そ十分間に及んで披露されたのだったが、ボケのふくたがツッコミのこうたに対して一方的にボケ続けたり、こうたにツッコまれるとこうたのスーツの肩口に噛みついたりすると云うスタイルで進んでいった。中でも特に笑いを誘ったのが
「我々の世界はサラリーマンとは違いますからねぇ」
「そうですねぇ、こうたさん」
「何しろ芸能界は浮き沈みがあるでしょう」
「確かにそうですねぇ、でも我々には余り関係ないでしょう」
「何で?」
「そもそも浮いた事がないから」
「何を言い出すんだ、馬鹿」
「ずっと世に出ず50年、だから我々は人呼んで潜水艦コンビって呼ばれているんですよ」
「呼ばれちゃいねぇよ」と云った自虐ネタの下りで客席からは大量の笑い声が響いてきたものだった。
正直言ってM―1なんかでしか漫才を知らなかった光彦にとっては新鮮な漫才だったし、面白いか面白くないかと云えば面白くなかったかもしれなかったが、秋風こうた・ふくた師匠が約十分間にも渡って漫才を続けていた事実には驚きが隠せなかった。光彦は未だ漫才などやってはいなかったが、舞台に立てば三分間も話せれば良い方だろうとしか思えず、秋風こうた・ふくた師匠がともかくも客席の空気や視線を飽きさせずに十分間も自身の漫才で支配した事実は称賛するに値するものだった。故に光彦は舞台を終えた秋風こうた・ふくた師匠が舞台袖に帰って来るなり「お疲れ様でございます」と馬鹿に丁寧な言葉を言い、「楽屋でお茶を用意しましょうか?」とも聞いたが、秋風こうたが「いい、自分達でお茶は汲むから。それよりもお前達はここでトリまでの漫才を見て漫才を勉強してろ」と告げてきたのが意外であったし格好良く映ったものであった。
これに光彦は一馬に対して「何か、師匠の漫才って意外と面白かったな」とわざと「面白かった」などと云い水を向けてみると一馬は「そうだろ」などと零し満更でもない様子だった。これに光彦が「でもよ、師匠の漫才だけじゃなくて、ここに出ている漫才師達は皆十分間も漫才をしているけど、それだけしゃべれるってすげぇよな」と言えば一馬は「そんなもん慣れだよ」と答えてくる。
「慣れでそんなにしゃべれるもんなのかよ?しかも人前に出てさ。俺いきなり明日舞台に立てって言われても二分間も話せないぜ」
「大丈夫だよ。今日から俺達二人で漫才の特訓をするんだし、それにいきなり明日から舞台に立つなんて事にはならないから安心しろよ」
「そうか、でも十分間も人前で話せてしかも観客を笑わせられたとしたらすごく格好良いよな」
「まぁ確かにな」
「一方でテレビなんかでやる漫才は五分も話さねぇしな」
「テレビでやってる漫才なんて漫才じゃねぇよ。あんなもんは単なるバラエティだ」
「そうか。でも一馬だってテレビで漫才をやりたいんじゃないのか?」
「いや、全然やりたくないな」
「えッそれは何で?」
「テレビで漫才をするにはスポンサーの意向とかを汲まなきゃなんないしな。テレビなんて所詮CMで成り立っているんだし、あんなものに拘る事はねぇんだよ」
「そうか」ふと目の前に視線を向けてみれば、今テレビで売り出し中の「タイツ」が漫才をしていた。
「タイツ師匠も言ってたよ、テレビではコンプライアンスとかBPOとかがあって、漫才のネタが自由に出来ないって」
「そうなんだ。確かに今タイツ師匠の漫才を見てもテレビでやっているネタとは違うし、面白いもんな。結構西洋館では毒舌ネタをやっているんだな」
「そうだろ、これからはこのスマートフォンが普及して一気にネット社会が進むから、テレビに頼らずとも知名度を上げていく方法はあると思うんだよ、YOUTUBEなりTwitterなりさ」
「なるほど」
「劇場で自由にネタをやってインターネットで知名度を上げれば、地方の営業でも結構いいギャラで呼んでもらえるようになるからさ。漫才師って結構夢のある仕事だと思うぜ」一馬はスマートフォンを片手に自信に満ちた表情でそう言うのだった。光彦も相方のその言葉を聞いてあながちそれも嘘でもあるまいな、と感じて黙って頷くのみであった。
そのうちトリも終わって閉幕になると二人はまた楽屋に戻って掃除をしたり、ベテラン漫才師達の肩たたきをしたりしなければならなかった。そこでも少し力の加減を間違えて強めに肩を叩いたりすると怒鳴られて叱られる為、息を抜く暇もないと云った状態である。しかし余りにも度が過ぎる形で光彦を叱ったベテラン漫才師Aに対しては秋風こうたが「光太はお前の弟子じゃなくて俺達の弟子だ、馬鹿野郎、勝手にこき使うんじゃねぇ。分かったか」と言ってくれ庇ってくれたものだった。そして最終的に自転車でここまで通っている秋風こうた・ふくたの二人を西洋館の玄関で見送った光彦と一馬はそのまま西洋館を運営する西洋興業が経営するアパートである第一梅倉荘へと移ったのであった。そこは一馬がこれまで一人で住んでいたのだったが、ここの一階の風呂なし角部屋六畳一間が今日から光彦と一馬の二人の根城となる訳である。今まで三DKのマンションに住んでいた光彦としては正直言ってかなりの転落とも言えたが、何よりも嫌だったのは一馬と同居しなけらばならない事であった。そもそも光彦は恋愛には興味がないものの、一方でホモでもゲイでもなかったので、普通に結婚願望もあり子供も欲しかったし、所謂恋愛結婚ではなくお見合い結婚で身を固めたい意志を彼は持っていたのだが、そんな彼がいくら漫才コンビを組んだからと言って一馬と男同士の同居生活を送る事はやはり不本意なのであった。しかし一馬はそんな光彦を全く気にする事なく、これからは近くのコインランドリーで日替わりでお互いの洗濯物を洗濯する事や共用のガスコンロの使い方などを説明してくる。そのマイペース振りに光彦は腹を立てる余裕など持てずにその日は煎餅布団を引いて渋々寝てしまったのだった。
さて翌日から本格的に漫才師の見習い修行の日々が始まったが、来る日も来る日も楽屋でのお茶酌みや衣装整理や受付の事務作業に没頭する日々であった。毎回興行のトリ近くになると一馬と共に舞台袖に待機させられ、先輩漫才師達の芸を観察する時間を与えられたが、それは飽くまでも予備的なものであり、やはり雑用仕事が見習い修行のメインであった。また普段は秋風こうた・ふくた師匠の両者共舞台がなくても西洋館にいる事が多かったが、時たま都内で行われる結婚式などに余興として漫才を披露する事があった為自動車の免許を持っていない一馬の代わりに光彦が付け人として自動車を運転して師匠を結婚式場まで送り届けたものだった。そしてその車中でも光彦は毎日舞台袖で録音した「タイツ」師匠の漫才を片耳だけイヤホンをして聞いたものだった。光彦にとってそれは師匠と狭い車中に押し込められる為に非常に気詰まりもする面倒な仕事だったものの、その気苦労を忖度してくれた師匠が光彦に五千円のお小遣いを一馬には内緒でくれたのは何ともありがたいものだった。
そんな形で始まった見習い修行生活は朝は七時に起きて八時半までに朝食と洗濯を済ませてから十時まで浅草寺の境内で一馬と漫才の稽古をした後に十時半までに西洋館の楽屋に入り雑用や受付仕事を十八時までこなすと云うルーティンだったが、何とも気が滅入りそうになったのは、第一梅倉荘でレトルトのカレーやカップラーメンを夕食として食べてから一馬と一緒に再度漫才の特訓をさせられる事だった。その特訓は午前中に浅草寺の境内で行っているネタ合わせとは違い、売れっ子のタイツ師匠がラジオで行っているフリートークをタイツのツッコミである大島役を光彦がやり、ボケの田所役を一馬がやって演じて見せると云うものであった。正直言ってそれはタイツ師匠のフリートークの猿真似以外の何物でもなく、こんな事で漫才の技術が向上するとは思えなかったが、一馬曰く「売れてる漫才師のフリートークを演じて見せる事で漫才の間合いを察知する判断力や言葉選びの感性が磨かれるのだ」と云う。光彦も一馬にそう言われてみればそう思えないこともなかったので、唯々諾々として毎日その練習に付き合うのだった。
また一風変わった漫才の稽古としてナンパの練習と云うものがあったが、これが光彦にとってはちょっと取っつきにくくてハードルが高いものであった。そもそもナンパを推奨してきたのは我が師匠達で「女にモテない漫才師なんてのは一生売れない漫才師だ」とか言い、秋風こうたに至っては「漫才のネタ合わせなんてやらなくていいから、とにかくお前らはナンパしてろ」と言い出す始末でさえあった。女を楽しませられない漫才師が面白い漫才なんて出来る訳がないと云うのである。これに初っ端光彦はナンパをして初体験を済ませて童貞を捨てたい思いに駆られたものの根っからの恥ずかしがり屋であったし、万が一ナンパが成功して恋愛にまで発展したら面倒だな、と思い閉口した。一馬も光彦程ではなかったが、事女に関しては不器用で奥手であったので当てには出来なかった。だがここで二人の前に強力な助っ人、と云うよりもナンパの指南者が現れたのだった。それは手品師の新井浩次だった。新井は優男であったし、得意の手品を武器にホストとしても活動しているようで女の扱い方にはかなり手慣れていたのである。
何でも彼に言わせると浅草でナンパをする場合には雷門や仲見世通りで行うのではなく、飽くまでも六区の通りで行え、との事であった。自分達が西洋館に所属している漫才師の卵である事を最大限生かしてナンパをする必要がある、と云うのである。また必ず一人で歩いている女を狙うのではなく、二人組で歩いている女を狙え、とも言われた。その二人組のうちのブスな方の女に声を掛けて、片方の可愛い方の嫉妬を芽生えさせ注意を引き、最終的には可愛い方の女を口説いて持ち帰れ、と云うのであった。当初はこんな方法で女が引っかかるのか、光彦は疑問であったがぐずぐずしている光彦を尻目に一馬はホイホイとその方法で女をナンパして成功させていった。そのうちナンパで知り合った女の家を泊まり歩くようにもなり第一梅倉荘には光彦一人が取り残される形となってしまったのだった。そうなると六畳一間の部屋を自分一人で使えて快適であったが、そのうちナンパを成功させていない光彦を気遣って新井が頻繁に第一梅倉荘を訪問するようになっていった。大抵新井はそこで、一日の見習い修行を終えた光彦を迎えた後に共にインスタントラーメンか若しくはレトルトのカレーライスを食べてから、上野やら銀座まで出張ってナンパの訓練を施してくれるのであった。
それでその日も光彦は第一梅倉荘で新井と二人でセブンイレブンのおでんとインスタントラーメンを食べてから、上野公園へと赴いたのだった。目的は勿論ナンパである。既に時刻は十九時半を過ぎており電灯がちらほらと照っていたが、公園全体は暗闇に包まれていた。余りナンパをするには適さない場所と時刻だったが、新井曰くこの時間帯に上野公園にうろついている女はヤリマンが多い、それに鶯谷も近いからお持ち帰りするにも好都合だ、などと言うのであった。そしてその日は取り合えず西郷隆盛像の近くを通り過ぎる女をナンパする事に決め、新井と光彦は西郷像の傍にスタンバイするとするうち女子大生と思しき二人組がその西郷像の近くを通り過ぎようとした。新井は光彦に対して透かさず行け、と言う。故に光彦は新井の命令通りその二人組の女子大生に声を掛けたのだった。取り敢えず光彦は視界に入った片方のガマガエルの如く太った、たれ目のあまり可愛くない方の女に声を掛けた。「ねぇねぇ、どこ行くの?ちょっと話さない?」これは新井から植え付けられたナンパの手始めに女に声を掛ける時の常套句であった。しかし太った女は「・・・・」と押し黙ったままである。これに光彦は尚「ちょっとちょっと、無視しないでよ」と飽くまでも引き下がらなかったところ、そのうち太った女は「ねぇ、コイツが鬱陶しいから早く駅へ行こうよ」と隣の女に声を掛けたその時、その隣の女が「か、川野君!」と光彦の事を呼び止めたのだった。何とその女は進藤瞳だった。太った女はその進藤瞳の反応を意外に思ったのだろう、「えッ何知り合いなの?」と零したのだった。
桜通りを直進して大噴水がある広場のベンチに光彦と進藤瞳は座っていた。先程進藤瞳の友人である例の太った女は何かを察した様子でJRの駅の方へ向かって帰り、新井にも光彦から事情を話して先に浅草へと帰ってもらった。辺りはカップルが散策しており、傍から見れば光彦と瞳も恋人同士と思われても不自然ではなかっただろう。口火を切ったのは瞳だった。
「一体何でこんなところでナンパなんてしているの?」
「うん・・・・」
「いきなり大学からいなくなっちゃって私は心配したんだから」
「うん・・・・」
「うん、だけじゃ分からないでしょ、何とか言ってよ」
「実は今俺は漫才師の修行をしていてさ・・・・」
「漫才師?」
「うん、小学校の時の幼馴染の奴と漫才コンビを組んでいるんだ」
「そうなの、でもそれで一体何故ナンパなんてしているの?」
「女を口説けなきゃ面白い漫才は出来ないって云う師匠の教えでさ。ナンパが推奨されているんだよね」
「何それ?呆れたわ」
「うん」
「そもそも川野君は和服が好きだからそれで呉服屋に就職したいって言ってたじゃない?」
「そうだね。だから俺も一度は呉服屋じゃなかったけど、講談師になりたいと思って講談師の島田紫織師匠の下へ行って弟子入りさせてもらおうと思ったんだよ」
「島田紫織師匠・・・・そう、それで?」
「でも見事に断られちゃってさ。偶々浅草をうろついていた時にその幼馴染に声を掛けられて・・・・深く考えもせずに漫才コンビを組んじゃったんだよね」
「何それ?全然ちぐはぐじゃないのよ?」
「うん・・・・」
「川野君ってもっと考え方がしっかりしている人だと思ったのに・・・・。何かがっかりだわ」
「えッ」
「もう二度と会う事もないだろうけど、漫才の練習、頑張りなさいね。じゃあね」
「進藤さん・・・・」進藤瞳は光彦の事を振り向きもせずベンチから離れていったのだった。
これに光彦は甚だ複雑な心境に陥ってしまった。特に瞳が最後に光彦の事を振り返りもせずに置いていくようにして去った事は、いつかの日に光彦が鶯谷のラブホテルの前から瞳の事を置いていき、そのまま去っていた事を想起させた。何だかその時の復讐をされているような気がしたのである。それに瞳の事は好きでも嫌いでもなかったが、年頃の女から「もう二度と会うこともないだろうけど」などと言われた事はなかなかにショッキングな出来事ではあった。それ故に光彦も「なんでぇ、説教くせぇ事まで言いやがって、あいつなんかこっちから願い下げだわ」と大声で独りごちたが、それに反応した噴水広場周辺のカップル達の視線がこちらに集まった為、光彦は赤面しながら、瞳が走り去った方角とは反対方向へ駆け出していったのだった。しかしそんな傷心をいつまでも抱えている暇はなく、とうとう弟子入りから三か月後に行うと約束されていた初舞台が迫って来た。それは六月の上席(一日から十日)で行う事となっていた。
さていよいよ六月へと入り初舞台の日程が五日と定められると、これまでナンパ三昧で女の家を遊び歩いていた一馬も例の六畳一間の第一梅倉荘に戻って来、夜遅くまでネタ合わせに没頭したものであった。時には漫才の特訓中に殴り合いの喧嘩に発展しかける程の白熱振りを示していたが、そうやってお互いが力むごとに漫才の技術が上がっているような気がして不思議であった。そして何と初舞台当日、秋風光太・一太の出番はトップバッターとなっていた。当然出囃子などは簡潔な太鼓の音で締めくくらてい、同時にそれは漫才コンビ秋風光太・一太の誕生を祝う音でもあった。二人はその音に合わせて照明で光り輝く舞台へと走り出していったのである。漫才の最中はとにかく舞台の照明が眩しくて堪らなく、またネタを間違えずに言い終える事で精一杯であり、半ば頭は白熱化した。それで十分後初舞台を終えて控室へ戻った光彦と一馬に師匠がポカリスエットを渡してくれ、何でもそれで今しがた酷使してきた喉を潤せ、との事であるらしく、やがて一通りポカリスエットを飲み干した後に秋風こうたが、「初舞台だったけど、緊張せずによくやれたと思うぞ。ただこれからが勝負だぞ」と告げてくる。それを聞いて光彦は「緊張も何も客が二人しかいないんだから緊張する訳ないだろ」と思ってしまったが、黙っていた。とにかく師匠から教わったネタを十分間演じ切った安堵感で頭は一杯であり、二の句が継げる余裕はなかったのである。それは当然横にいる相方の一馬も同様であるようであった。
遂に誕生した漫才コンビ秋風光太・一太だったが、来る日も来る日も客が一人から三人ぐらいの舞台で漫才を行う日々であり、順風満帆とはいかなかった。それでも二人が必死に演じて見せる漫才で少ない客席から僅かでも笑い声が零れた時は本当に嬉しかったものだった。それは漫才師として冥利に尽きる瞬間でもあった。またそれなりに舞台の経験を積むと弟子入りの際に秋風こうたが「歌は上手いか?」と聞いてきた理由が分かった気がした。漫才は言わば楽器を使わない笑いの音楽だと光彦も一馬も認識し出したからである。例えばツッコミの光彦がボケの一馬に「馬鹿野郎」と突っ込むとする。同じ馬鹿野郎と突っ込むのでも馬鹿の部分にイントネーションを置くか、野郎の部分にイントネーションを置くかで、全く客席の反応が違うのである。最もこれは当然「馬鹿野郎」だけではなく、漫才の中ではありとあらゆる言葉がどの部分にイントネーションを置くか、どう云った間合いでその言葉を使うかによって客の受けが違うのであった。この発見は光彦にとって大きいもので漫才とはネタの内容が面白い事は当然として、リズム感や発声方法が大きく面白さに作用する話芸だったのである。しかもその難しい会話の作業をテレビでやる漫才と違って演芸場の漫才師は十分間もやる必要があるのである。テレビの漫才でも演芸場の漫才でもいつも爆笑を取る「タイツ」師匠が周りから話芸の達人と呼ばれている理由が光彦が漫才師として何度も舞台に立つにつれ、自然と良く分かるようになっていった。と同時に最初は一年だけやろうと云う事であった漫才師の仕事も光彦がその醍醐味を知るにつけ、早々に反故となってしまい、時間が過ぎていくのだった。
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