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心の底から
敗北感
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「おい」
地響きがするんじゃないかと思うほどの、ドスの効いた低い声と共に、俺の肩に手の平が触れた。向かいにいるリーさんもそのあまりの迫力に恐れをなしているようだった。俺も死を覚悟してゆっくりと後ろを振り返った。
「随分と仲がいいみたいだなァ~」
不良からヤクザに進化したように見える仁が、そこに居た。いっていることは平和なのに、顔とオーラが全然平和じゃない。こんなアンバランスなことがあっていいのだろうか。
「は、話を……」
「リーと何してたんかはあえて触れねえ。だが彼氏がいるのに別の男んとこ行くとはいい度胸だな」
「いや、俺たち別に付き合ってるわけじゃあないぞ……ちょっと待て、仁ってリーさん知ってんの?」
なんともない顔で知っていると言われた。お互いの話が、いたるところで結びついていない。冷静さを取り戻したのか、みかねたリーさんが俺たちの間に入ってきた。
「あずささんはあの時席を外していたのでしたね。みなさんが異世界からこちらへ来られたすぐ後、我々王族のものは元王である弟も含めて、顔合わせしているのですよ」
なかなか驚きのある事実だった。確かに俺はこの世界に来てからというもの、割と何回も気絶してたもんな。たしか転移して初めての気絶は……そうそう、初めて踊り子になって、んで俺の発情体質がクラスメイト全員にお披露目された時だ。我ながら恥ずかしいだといったらいいのか、浅ましいといったらいいのか。
「……なあさ仁」
「ん?どうした」
ひとつだけ。とてもつまらないが、不安がよぎってしまった。綺麗な顔、サラサラな髪、真っ白な肌を持ったリーさんをチラリとみた後、思い切って聞いてみた。
「リーさんの方が綺麗だし、良い人だし、大人なのに、どうして俺に恋をしたんだ? 俺の魅了スキルのせいか?」
仁はさっきの黒いオーラを纏っているのとはまた少し違う、シンプルに話の意味がよくわかっていない顔をしていた。授業中仁や奏なんかがよくしてた顔だ。
「はっきりいってリーさんも、男同士でセックスする時はネコだと思う。そして、はっきり言って俺はどうやってもリーさんには勝てないと思う」
隣でリーさんが心外ですみたいな顔しているのを知らんぷりして、話を続けた。
「ひょっとしたら仁達は、魅了で無理矢理好きになってるんじゃないのかって思って……」
話していくにつれ、自分の声がどんどん声が小さくなっていくのがわかる。でも確かに俺は、リーさんに対して敗北感を感じていた。なんで仁たちがリーさんより俺の方が魅力があると感じたのか、本気でわからなかった。結構本気で俺の魅了のせいで捻じ曲げられているのでは……と考えてしまう。
気がついたら体育座りみたいな体勢になっていた俺を、リーさんが心配している。それで更に悔しくなって、思わず弾みで俺より魅力的な人間なんて万にいると言ってしまうと、仁が少し不機嫌になった。なんで機嫌が悪くなったのかは分からないが、なったものはなったのだ。すると、俺たちの丁度ちょうど後ろ、縦長のロッカーからバンと音を出した。
「そんな事ないよ!おれ達、梓が大好きだ!」
音の元凶は健吾だ、いつからロッカーの中に隠れていたんだ。仁は恐らく正攻法でドアから来たんだろう、でも健吾は意味がわからなかった。それはギャグ漫画の住人でしか許されない行為だぞ。お前の職業《クラス》闘拳士だろ、ギャグ要素何処だよ。
なすがままに背後からハグされた。しかも健吾のやつ床から足を外して全体重かけてくる。俺がたまたま体育座りだからまだよかった、もし直立していたらと考えたくもない。
「柿原くん、出ていっちゃダメだって」
隣のロッカーから静かにカチッと音を鳴らして出てきたのは百田蓮舫だ。身長は健吾と同じぐらい、いやむしろ若干小さいような気がするのに、健吾の方が小さく負けるのは多分精神年齢の差だろう。蓮舫は健吾のいかにも格闘家のような服の襟を持ち上げた。
「真田くん。このままだとみんな我慢出来ずに脱衣所に乗り込んじゃうよ、今にも床下に8人、天井裏に12人、窓から7人、トイレから6人、廊下から3人くるよ」
意味がわからない。みんながスタンバイしてるってか?ってかなんだよ窓からって。天井裏と床下はこの際あり得る。だか窓、てめえは駄目だ。ここ普通に7階とか6階ぐらいの高さあるけど。そして一番普通な廊下の人数が一番少ないのはなんなんだ。
「バレちゃあしょうがねえな……」
声を引き金に、クラスメイトがわらわらとやってきた。どうなってんだよ、そして本当に蓮舫が言っていた人数と同じだった。真面目な蓮舫は柿原を抱えたまま戦果に巻き込ませないように隠れている。
混乱するリーさん、呆れている仁、床下に8人、天井裏に12人、窓から7人、トイレから6人、廊下から3人といった具合に来た奴らが揃ってしまった。
地響きがするんじゃないかと思うほどの、ドスの効いた低い声と共に、俺の肩に手の平が触れた。向かいにいるリーさんもそのあまりの迫力に恐れをなしているようだった。俺も死を覚悟してゆっくりと後ろを振り返った。
「随分と仲がいいみたいだなァ~」
不良からヤクザに進化したように見える仁が、そこに居た。いっていることは平和なのに、顔とオーラが全然平和じゃない。こんなアンバランスなことがあっていいのだろうか。
「は、話を……」
「リーと何してたんかはあえて触れねえ。だが彼氏がいるのに別の男んとこ行くとはいい度胸だな」
「いや、俺たち別に付き合ってるわけじゃあないぞ……ちょっと待て、仁ってリーさん知ってんの?」
なんともない顔で知っていると言われた。お互いの話が、いたるところで結びついていない。冷静さを取り戻したのか、みかねたリーさんが俺たちの間に入ってきた。
「あずささんはあの時席を外していたのでしたね。みなさんが異世界からこちらへ来られたすぐ後、我々王族のものは元王である弟も含めて、顔合わせしているのですよ」
なかなか驚きのある事実だった。確かに俺はこの世界に来てからというもの、割と何回も気絶してたもんな。たしか転移して初めての気絶は……そうそう、初めて踊り子になって、んで俺の発情体質がクラスメイト全員にお披露目された時だ。我ながら恥ずかしいだといったらいいのか、浅ましいといったらいいのか。
「……なあさ仁」
「ん?どうした」
ひとつだけ。とてもつまらないが、不安がよぎってしまった。綺麗な顔、サラサラな髪、真っ白な肌を持ったリーさんをチラリとみた後、思い切って聞いてみた。
「リーさんの方が綺麗だし、良い人だし、大人なのに、どうして俺に恋をしたんだ? 俺の魅了スキルのせいか?」
仁はさっきの黒いオーラを纏っているのとはまた少し違う、シンプルに話の意味がよくわかっていない顔をしていた。授業中仁や奏なんかがよくしてた顔だ。
「はっきりいってリーさんも、男同士でセックスする時はネコだと思う。そして、はっきり言って俺はどうやってもリーさんには勝てないと思う」
隣でリーさんが心外ですみたいな顔しているのを知らんぷりして、話を続けた。
「ひょっとしたら仁達は、魅了で無理矢理好きになってるんじゃないのかって思って……」
話していくにつれ、自分の声がどんどん声が小さくなっていくのがわかる。でも確かに俺は、リーさんに対して敗北感を感じていた。なんで仁たちがリーさんより俺の方が魅力があると感じたのか、本気でわからなかった。結構本気で俺の魅了のせいで捻じ曲げられているのでは……と考えてしまう。
気がついたら体育座りみたいな体勢になっていた俺を、リーさんが心配している。それで更に悔しくなって、思わず弾みで俺より魅力的な人間なんて万にいると言ってしまうと、仁が少し不機嫌になった。なんで機嫌が悪くなったのかは分からないが、なったものはなったのだ。すると、俺たちの丁度ちょうど後ろ、縦長のロッカーからバンと音を出した。
「そんな事ないよ!おれ達、梓が大好きだ!」
音の元凶は健吾だ、いつからロッカーの中に隠れていたんだ。仁は恐らく正攻法でドアから来たんだろう、でも健吾は意味がわからなかった。それはギャグ漫画の住人でしか許されない行為だぞ。お前の職業《クラス》闘拳士だろ、ギャグ要素何処だよ。
なすがままに背後からハグされた。しかも健吾のやつ床から足を外して全体重かけてくる。俺がたまたま体育座りだからまだよかった、もし直立していたらと考えたくもない。
「柿原くん、出ていっちゃダメだって」
隣のロッカーから静かにカチッと音を鳴らして出てきたのは百田蓮舫だ。身長は健吾と同じぐらい、いやむしろ若干小さいような気がするのに、健吾の方が小さく負けるのは多分精神年齢の差だろう。蓮舫は健吾のいかにも格闘家のような服の襟を持ち上げた。
「真田くん。このままだとみんな我慢出来ずに脱衣所に乗り込んじゃうよ、今にも床下に8人、天井裏に12人、窓から7人、トイレから6人、廊下から3人くるよ」
意味がわからない。みんながスタンバイしてるってか?ってかなんだよ窓からって。天井裏と床下はこの際あり得る。だか窓、てめえは駄目だ。ここ普通に7階とか6階ぐらいの高さあるけど。そして一番普通な廊下の人数が一番少ないのはなんなんだ。
「バレちゃあしょうがねえな……」
声を引き金に、クラスメイトがわらわらとやってきた。どうなってんだよ、そして本当に蓮舫が言っていた人数と同じだった。真面目な蓮舫は柿原を抱えたまま戦果に巻き込ませないように隠れている。
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