クラスで異世界に転移するまではいい、でも175㎝の俺が踊り子って誰得だよ!

荒瀬竜巻

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こういう事もあるだろう

暴力の理由

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俺以外の3人が主体の話を聞きながら笑っていると、ガラガラと木製の引き戸が開く音がした。俺の知ってるそれの2、3倍大きな、おそらくだが救急箱をもって大河が入ってくる。

「あ、大河。もう俺大丈夫」

「動くな! 容体を見るから両手をあげて大人しくしていろ。それとぶっ倒れてた奴がいきなり外に出るな!」

「す、すみません……」

俺が目が覚めたという情報を奏から聞き受けたらしい大河が、押し入り強盗顔負けの形相と音を立てて入ってきた。無理矢理診察を受けながらも、何だ医務室って大きい音出していいんかと考えていた。なにかされたのかは不明だけど3人が大河の言うことに素直に従ってんのはまあ面白かったけど。

酷い腰痛が気付かれたようで、魔術で治してもらうことになった。ちょっとワクワクするな。今まで清志が作る薬の治療は受けた事があったが、白魔法は初めてだ。聖なる光とか使うのかなやっぱり。俺の予想は当たって、大河の手が温かい光で包まれた時はそれはそれはテンションが高まった、俺もこんな魔法使ってみたいと憧れた。だが、ここにきて予想外の事が。

「せいや!」

「ん? 痛!」

バチン! めちゃくちゃいい音が立つ。気持ちがいいぐらいの音だったもんで、これの音源が俺の腰だと知るのが遅れてしまった。これはあれだ、跡こそは残らないけどじわじわ残るタイプの痛みだ。ヒリヒリだと言えば理解してもらえると思う。そうだ思い出したぜこいつすぐ患者を殴るんだ、自ら患者作ってどうするんだ仕事が増えるだけだぞ。

しかし俺のそんな考えと相反するように、腰痛はどんどん引っ込んでいく。また新しくヒリヒリが誕生したとは言え、痛みの大部分を占めていた腰痛がなくなってのは大きい。これが大河の回復魔法なのか。なぜ叩く。

「……魔術が効いてるようだ。腰の痛みも治っただろ?」

「うん……何で腰を叩いた?」

「回復魔法を押し込むためだ」

「お、押し込む」

話を聞けば、どうやら思った上に深いわけがあるようだ。俺たちはもれなく全員チートを持ってるわけなのだが、この世界は摂理というか、基本的に平均値の能力保持者が最も生きやすいように出来ているもんで、弊害もある。俺で言えば魅力ステータスと魅了スキルのコンボが凶悪すぎて、無差別に魅了してしまうとかだ。

大河は俺と同じくその摂理の影響を悪い意味でダイレクトに受けている。簡単に言うと大河の回復魔法は強すぎる、どんな大病も難病も外傷も治らないものはない。強すぎて細胞が活性化してかえって体に悪影響なぐらい。普通に魔法を使おうものなら細胞の活性化のせいで様々な問題が起きて、最悪使われた方が壊死してしまうと生きた時は震え上がった。

それを防ぐには患部に直接魔力を送り込む必要がある。そうすればむやみやたらに回復や活性化するのを抑えられる。そしてそれに一番有効な策が、叩く事、殴る事、以上だ。その衝撃で魔力が患部に集中する……らしい。ベルトルトさんに教えてもらって原理は知らないようだけど。

「まあお前らを傷つけるためにしてるんじゃ無いから、そこは安心して欲しい」

「結構大変なんだな……」

一方的ながら親近感を覚えた。まさか行き過ぎたチートで迷惑している人が俺以外にもいたなんて、本人には失礼かもだけどちょっと嬉しい。そんで持って何で殴るのかがわかったのも大きい。恐れ多くて聞かなかったけど、思ったよりもさっくりやすやすと教えてくれる。強がって平気な顔してるけど、俺たち以外も困ってる人が居るのかもしれない。

「その、ありがとうな。お前のおかげで腰痛なんとかなったぜ」

「どういたしまして、クラス中が心配してたからな。安静にしとけよ? 傷や痛みはこれでいい、後は……」

「後は?」

「ん? いやいや、腹すいてないかなーなんて」

「それは大丈夫だけど……」

なんだかボソボソと声が小さくなっていった。これは独り言なのだろうか? もしそうなら申し訳ないが、聞き返してみた。のらりくらりとかわされたけど、まだ何か言いたい事があったのかもしれないとは思ってみた。だがそんな遠慮をするような奴じゃないなと思って、無意味な詮索はやめにした。



「後は……メンタルだな」



今日は1日休んどくといって、1人で部屋に戻る。何をするつもりは特にない、ただ部屋で1人ゆっくりして……泣いた。今まで我慢してたモヤモヤが悲しみに変換されたみたいに、ボロボロと涙を流した。今でも嘘だと思いたい、間違いだと言って欲しい。でも現実ってのは俺が思ってる以上に残酷で、無力さで涙が出るのは時間の問題だった

「うぅう……ごめんなさい仁……」

これは誰にも見せられないな。悲しむのも後悔するのも一人で十分だ、そう思ってたけど、俺は生憎褒められた警戒心とかそんなのは持ち合わせていない。よって、

「おい、梓……」

こうして仁みたいに尾行してくる人に気づかないんだ。
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