クラスで異世界に転移するまではいい、でも175㎝の俺が踊り子って誰得だよ!

荒瀬竜巻

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前を向いて歩こう

こうなってしまうからな

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楽しみだったはずのうどんが俺抜きで準備が進められて、ふつふつとお湯で茹でられて、盛り付けられる様を上の空で見ていた。他人事のようなその景色は幸せそのもので、クラス転移といえばこれだよなと思うばかり。

「「「いただきます!!!」」」

全員で言ういただきますと、いつもより大きな声に聞こえた。出汁を取ったいいつゆが麺に絡まってとても美味しい、歯応えがあり満足感も満点だ。海老の天ぷらも絶品で、文句なしのざるうどん……だけど、この疎外感はいったいなんなのだろうか。

「真田、うどん2本あげるからえびの天ぷらちょうだい」

「等価交換になってねえ」

仁はなんだかんだ周りと打ち解けて、楽しげに食事をしている。一番近いところにいるはずなのにやけに遠くに思えた。結局このモヤモヤは解けることを知らずに、少し急ぎ足で食べ終え、たった1人で抱えたまま部屋にとぼとぼ帰ってしまった。

変なやつだと思われたかな……みんなが楽しんでるのに馴染めない。今ままでなかったわけではないけど、これほどまでの孤独感を味わったのは久しぶりだ。1人で寝て仕舞おう、そう思って自分の部屋に繋がる曲がり角に差し掛かった時、手を掴まれた。何も音沙汰どころか気配すらもなかったもんで、盛大に飛び上がった。

「わ、悪い。少し俺に付き合ってくれないか? 俺の部屋に来てくれ」

声と手の主は明だった。忍者の気配遮断はちと優秀すぎないか? 俺も下を向いてたから警戒心がなかったといえばそれまでだが、抜き足差し足忍び足が完璧すぎる明も明だと思う。それにしても、こんな神妙な顔は初めて見た。明は俺より小さい、はっきり言って健吾よりも少し大きい程度の身長なのだが、顔は大人びて手もしっかり男の手をしている。

本来なら、レイプしてきた人間についていくことはあってはならないが、今回は特別だった。なんというか一瞬だけ魔が刺したというか、自暴自棄になってしまったと言ったら理解していただけるだろうか。自分がいない方が平和になる、このクラスのためになる。そんなふうに思い詰めてたら、自分が被害者であったことすら信じられなくなるような。むしろ全部自分が悪いことだと思う気持ちがぶり返してくる。それを隠すために、見て見ぬ振りをするために、俺は明の手を取った。

「……わかった、ついてくよ」

「ありがとう梓。ちょうど俺の部屋に客人もいる、盛り上がると思うぜ」

言っていることの意味がわからない、もっというと客人がどうのとか、そんなふうに遠い目ならぬ遠い耳で聞くだけだった。ただ手の引かれるままに歩いているだけ、そんな自分をなんとも思おうことはなく、無抵抗のまま明の部屋に入ってしまった。



「ただいま、連れてきたぜ」

「ん、おかえりって……梓か」

明の部屋にいたのはなんと仁。さっきまでのぼやっとしてた頭ん中が一気に快晴になるような、とにかく覚醒した。別にそこまで仲が悪くない、薫の辰巳ほど互いを目の敵にはしていない関係だから、まあ部屋に呼んでもおかしな話ではない。問題なのは、俺がそこにいることだ。

「お、俺帰るよ……」

「おい待て主役が帰るな」

「梅雨に言いたいことがあるって呼ばれたんじゃなかったのか」

2人係で引き止められたらもう打つてが見当たらない。確かに明の話も聞いていないのに部屋を出るのは早計だったかもだ。せめて、要が何かを聞いてからにしよう。仁もいるから安全だし、この前のような惨事にはならないと思う。

俺が2人に向き直ると、すかさず明に右手を掴まれた。しかも俺の目の前で首を垂れるように膝立ち座りになった、仁の前で。俺の手を握りながら首を垂れている、仁の前で。自分がお嬢様にもなったような気分になってしまう、その体でいくと明は王子様になるけども。何を言われるもんかとビクビクしていたら、覚悟を決めた明に押し流される。

「梓、俺はお前が好きだ。俺ならば梓を幸せに出来る、結婚を前提に俺と付き合ってください!」

……ん? 身体が固まった。仁も目を丸くして俺を見ている。俺今プロポーズされた、仁の目の前で。結婚を申し込まれてしまった、仁の目の前で。俺と付き合ってください。明の口からこんな正統派なセリフがくるなんて思っても見なかった、ベタだけどグッとくるな。しかしそんな申し込みは許されないのだ、俺が許さんのじゃなくて隣にいる現彼氏が許してくれないのだ。

「おいテメェふざけてんのか、人の恋人に手を出してんじゃあねえよ」

「じゃあ聞くが、お前はうどん作ってる時も食ってる時も、梓のこと気にかけてたか? うどんをふみふみしたいって飯田橋と揉めてたじゃねえか」

「うどんのふみふみがやりたいのは誰だって同じだろうが! お前はしたくなかったのかよ」

「俺だってうどんのふみふみは大好きだ、でもその前に梓の方が大好きだ!」

「お、俺のために争うのはやめてくれ!」

急に2人とも喧嘩するやん。あともう一つ、俺は言いたいことがあるんだ。これは俺のためじゃなくてうどんふみふみのためなのではないのか……?
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