クラスで異世界に転移するまではいい、でも175㎝の俺が踊り子って誰得だよ!

荒瀬竜巻

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これはきっと伏線

王道の皇子

クラーケン達が退散していくとともに雨や落雷、風も無くなって、快晴と呼ぶにふさわしい清々しい天気となった。悪天候もクラーケンが原因だったのか。海を統べてんのに天気も任意に操れるとは恐れ入った。

ヒノマルの船らしいそれも、閃光弾を撃たなくなり、ゆっくりと俺たちの船に近寄ってくる。漁船にしてはやけに派手な気がする。何故だか船に付いている鳥居も、ここまで豪勢な作りだと神聖な気がして、心の中でお供物を置いてくわばらくわばらと唱えてしまった。自分で言うのもなんだけど、おじいちゃんみたいだな。

「勇者様方、お怪我はありませんか?」

俺たちのほどではないがそれなりに大きな、少なくともどう考えても漁船ではないそれが近くに止まると、木で出来た橋がさっさと出来て、俺たちの船と繋がった。真っ先に俺たちのところへ来て、無事を確認するその男はなかなかの美丈夫。いや顔はこの際どうだも良いんだ。

上半身がはだけている海の男といった和服はなかなかかっこいい、俺も筋肉それなりにあるし船酔いとかも一切ないから似合うかもしれない、勇気はないけれど。それに似合うか否かを決めるのはそこじゃあないな。俺みたいな全身室内育ちの筋肉じゃあダメだ、ちゃんと太陽の光浴びて大海原と戦ってきたからこそ似合うと言ったものだ。

「あのキング・クラーケンが出て来るなんて、こちらの行動が遅く申し訳ありません。特にそこの踊り子様、遠目から見た限り拘束されて、更に持ち上げやれているように見えましたが……」

「そ、そうだ。梓は平気だったのか? 真っ先にあいつらに連れてからて……助けに行った仁も全然帰ってこないし……」

やばいと心の中で信号がかかったものの、どうやら俺たちのことは見えていなかったようだ。何かが死角になったと考えるのが自然だが、俺にとっては何が死角となったかなんてこの際どうだって良いのだ。あんなの見られたら恥ずかしくて仕方がない、バレずに済んだだけでも万々歳だ。

心配して近寄ってくれているその男の人は、近くで見れば見るほど良い筋肉を持っている。ここまでバランスよく鍛えるのはさぞ大変だっただろうな、それとも自然と出来たのか、顔もいいし筋肉もイケメンにしやがりそうだ。って顔はいいんだって、この世界の住人がみんな顔面偏差値65以上なんてことはそろそろ察しがついているからな。

「大丈夫です、仲間の仁が助けに来てくれました。それに、和の国の皆さんの閃光弾にも助けていただきました」

「いえいえ、キング・クラーケンは海の王を名乗る通り、強力な存在です。何かおかしなことはされませんでしたか?」

「えっと、大丈夫です」

これ以上余計なことを言ったら墓穴を掘りそうだから黙っておこう。仁も俺が目で合図を送っている事に気がついたようで、あくまでただ拘束されましたと言った感じで話を進めさせてもらった。

「そ、そうですか。いざという時のため、予定していた漁船ではなく戦闘船で来てみたのですが……流石は勇者の皆様、キング・クラーケンに拘束されても平気だなんてお強いですね」

「はい、ありがとうございます……」

「失礼、申し遅れました。私は和の国ヒノマルの皇子にて海軍の総指揮を取っております。名を日丸慶喜と申すものでございます。勇者様方、お会いできて光栄です」

想像の五割り増しぐらい性格の良いその人はまさかの皇子様。しかも海軍指揮って凄いな、俺が思うに自ら前線に立つ王族が無能だった試しがないから、間違いなくいい皇子様だと思う。実際俺を見てもなんとも思っていないのか、怪我がないか探すと言いながら平気な顔してペタペタと触ってくる。これはもう信頼できると勝手ながら思ってしまった。

それにしても慶喜ってやけに日本人臭い名前だな。いや全然いいと思うけど、今まで異世界は西洋風だと思っていただけに驚きが隠しきれない。兄弟世界ゆえなのかそれともどこの異世界でも同じなのか、やっぱり大陸ごとに文化が違うのはよくあることのようだ。

「皇子様! おひとりで行動しては危のう御座います!」

「ゆ、許せ。一刻も早く勇者様方を助けに行かねばと思い、お前達にも無茶なことをさせてしまったな」

「いえいえ、そんな。皇子様の御命令とあれば花火弾など何発でも撃ちましょうぞ!」

花火弾……ああ、あの閃光弾の事を言っているのだろう。確かに花火だった。魔物の目眩しに使うなんて異世界ならではの工夫だ。

「まずは勇者様方を我が国へ連れて帰るぞ、皆のもの! 勇者様御一行の船を囲むように陣を取れ!」

船が俺たちを囲んでいく。まるで軍隊のように整った陣形……いや、海軍だから軍隊か。しかしこの素早い動き、更には見栄えの良い船を見てテンションが上がらないわけがない。結果として全員が周りの船に釘付けとなり、そのまま流氷を避けながら前進していった。
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