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ざわつき
愉快なお弁当
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……ガラガラゴロゴロと5台ほどの手押し車の音が聞こえる、そういえば皇子様が何度も馬を準備しましょうかと気を遣ってくれたけど、異世界特典で怖いもの無しになった肉体派職業の人達が軒並み断ったんだっけな。コグダム都を目指し始めて一体何時間歩いたのだろう。途中で魔法や文化系の職業のやつらは俺を含めて根を上げ、そのたびに食料やその他配給物の隙間を探して手押し車に乗り休んでいた。手押し車は失速することなく進む。アイツらの体力は宇宙か、こういう時ばかりは本当に近接タイプの人達が羨ましいな。
荷台に乗ってるせいで遅れたが、ものすごい急斜面だ。車だとエンジンが悲鳴を上げ、自転車だと絶対無理なほどの長くて険しい坂道。てか俺どんだけ休んでんだ。
「ん? ……あ、わるい、ちょっと休みすぎた」
「別にいいぜ。そうだ、小川がもうちょっと歩いた先の高台で休憩するんだっていってた」
「皇子様から貰ったお弁当楽しみだね、タコさんウインナーあるかな?」
「異世界だぞここ」
「1つはあるぜ、そんなかの1つだけは俺が作ったからな。タコさんと魚さんが入ってる」
俺が乗っている手押し車は仁と健吾、そんでふじやんの3人が押している。謝ってみたものの全くと言っていいほど気にしていない。よく考えればそういう事をくどくど言うのが嫌いそうな人達ではある。あとふじやんの作ったタコさんと魚さんのウインナーはちょっと興味ある、是非とも縁があって欲しいものだ。どうせなら高台に着くまで休んでいろと促される。まあ3人がいいならとその善意を受け取る事にして、再び書物に目を通した。
「その読み物はどんな感じだ、やっぱ難しそうか?」
「うーん……ゆっくり確実に読んでるけどまだ全然だ」
「まあもし取得出来なくてもオレが守ってやるからな」
「草書だからやっぱわかりにくいんだよこれが」
「そっちの意味か……」
休んでいる間、皇子様から授けていただいた欲を抑えて周りの欲情も制御する巻物を読み耽っていた。簡単な精神を落ち着かせる習慣や心構えなどはもちろんのこと、いざ大変な事になった時の少ない力でできる護身術なんかも載っていてかなり読み応えがある。
あともう1つ、これは流石にどうかと思ったものの、一応書いてあるから言うぞ。欲を抑えるのは解放させる奥義を知るとより深く習得できるというよくある理論のもと、最後らへんに男の誘惑の仕方なんかも事細かに書いている。恐らくそういう意図でも書かれ読まれている代物なんだろう。こんな物を寄越してきた皇子様の気は知れないが、まあそれも修行のうちだと認識されているのか……真偽は定かではない。なにより個人的に悔しいのが今のステータスを考えると欲を抑えたり止める技能より、解放させる方ができるかもと思ってしまうこの現状だ。
「ほら高台に着いたぞ飯の時間だ、今度は目を休ませろ」
しばらくして荷台の動きが止まる、煮詰めるばかりだった俺を仁が少し強引だけど外に連れ出した。流石高台というだけあってかなり標高が高くなった気がする、空は青く白と緑の山脈が美しい。全員の服には防寒魔法が施されているから全く寒さは感じない、だから多分本当は寒い。この後また上がり下がりを繰り返すらしいから、車を引く奴らはめいいっぱい休むべきだろう。
「仁も一杯ご飯食べろよ、こんな高いところまで人とか飯とか乗った荷台運んだんだ、疲れてるだろ?」
「いや全然。俺だけじゃなくて全員まだピンピンしてると思う」
まさかと思い周囲を見たが、確かに総司やトメタツを始めとした車を引いていた肉体要因は汗ひとつかかずに涼しい顔しながら弁当を受け取っている。マジに宇宙かよ体力。……コグダム都まで道のりは険しい、それぐらい元気な方が頼りになるかも。巻物を懐にしまって弁当を受け取りに行った、ふじやんのタコさんと魚さんのウインナーが入ってたらいいなとか考えながら。
「柿原、どうかしたのか?」
「……タコさんと魚さんがどれに入ってるか考えてるの」
「え? 弁当に入ってるのはみんなだし巻きに猪肉で作った和風ウインナー、塩鮭と白米だから……タコさんはいないぞ」
「小川って天然なんだな」
喜助か不思議そうにしているのを見守りながら俺も弁当を受け取った。健吾はそのあと少しだったらよしこれだ! っと大きな声を上げながら1つを掴み取った。蓋も含めて木の箱だから中を見るまで全貌がわからない。2人で食べようと仁の隣に座って、弁当箱を開けた。……残念ながらタコさんと魚さんはおめにかかれなかったが、きっと誰かの元に入ってるはずだ。
「な、ない……」
健吾のにもなかったようで、すっかり意気消沈していた。絶対にこの41人の誰かに行き渡ってるはずなのだが……中々名乗りが上がらないな、もしかしてそういうのに頓着のない人間にあたってさっさと食べてしまったのかも知れない。
「お、あったぞ! 8本の腕を持って海を抱くビーストやヒトと相反する未知なる虚数を故郷とする異界のものでさえ、我が闇の力に平伏すのだ!」
訳:ありました! タコさんと魚さんのウインナーを手に入れた僕は運がいいです。
「本当だ、流石だね咎目くん! やっぱり闇の力? は凄いんだね!」
なんか休憩中なのに疲れてきた、よりにもよって咎目雄星かよ。
荷台に乗ってるせいで遅れたが、ものすごい急斜面だ。車だとエンジンが悲鳴を上げ、自転車だと絶対無理なほどの長くて険しい坂道。てか俺どんだけ休んでんだ。
「ん? ……あ、わるい、ちょっと休みすぎた」
「別にいいぜ。そうだ、小川がもうちょっと歩いた先の高台で休憩するんだっていってた」
「皇子様から貰ったお弁当楽しみだね、タコさんウインナーあるかな?」
「異世界だぞここ」
「1つはあるぜ、そんなかの1つだけは俺が作ったからな。タコさんと魚さんが入ってる」
俺が乗っている手押し車は仁と健吾、そんでふじやんの3人が押している。謝ってみたものの全くと言っていいほど気にしていない。よく考えればそういう事をくどくど言うのが嫌いそうな人達ではある。あとふじやんの作ったタコさんと魚さんのウインナーはちょっと興味ある、是非とも縁があって欲しいものだ。どうせなら高台に着くまで休んでいろと促される。まあ3人がいいならとその善意を受け取る事にして、再び書物に目を通した。
「その読み物はどんな感じだ、やっぱ難しそうか?」
「うーん……ゆっくり確実に読んでるけどまだ全然だ」
「まあもし取得出来なくてもオレが守ってやるからな」
「草書だからやっぱわかりにくいんだよこれが」
「そっちの意味か……」
休んでいる間、皇子様から授けていただいた欲を抑えて周りの欲情も制御する巻物を読み耽っていた。簡単な精神を落ち着かせる習慣や心構えなどはもちろんのこと、いざ大変な事になった時の少ない力でできる護身術なんかも載っていてかなり読み応えがある。
あともう1つ、これは流石にどうかと思ったものの、一応書いてあるから言うぞ。欲を抑えるのは解放させる奥義を知るとより深く習得できるというよくある理論のもと、最後らへんに男の誘惑の仕方なんかも事細かに書いている。恐らくそういう意図でも書かれ読まれている代物なんだろう。こんな物を寄越してきた皇子様の気は知れないが、まあそれも修行のうちだと認識されているのか……真偽は定かではない。なにより個人的に悔しいのが今のステータスを考えると欲を抑えたり止める技能より、解放させる方ができるかもと思ってしまうこの現状だ。
「ほら高台に着いたぞ飯の時間だ、今度は目を休ませろ」
しばらくして荷台の動きが止まる、煮詰めるばかりだった俺を仁が少し強引だけど外に連れ出した。流石高台というだけあってかなり標高が高くなった気がする、空は青く白と緑の山脈が美しい。全員の服には防寒魔法が施されているから全く寒さは感じない、だから多分本当は寒い。この後また上がり下がりを繰り返すらしいから、車を引く奴らはめいいっぱい休むべきだろう。
「仁も一杯ご飯食べろよ、こんな高いところまで人とか飯とか乗った荷台運んだんだ、疲れてるだろ?」
「いや全然。俺だけじゃなくて全員まだピンピンしてると思う」
まさかと思い周囲を見たが、確かに総司やトメタツを始めとした車を引いていた肉体要因は汗ひとつかかずに涼しい顔しながら弁当を受け取っている。マジに宇宙かよ体力。……コグダム都まで道のりは険しい、それぐらい元気な方が頼りになるかも。巻物を懐にしまって弁当を受け取りに行った、ふじやんのタコさんと魚さんのウインナーが入ってたらいいなとか考えながら。
「柿原、どうかしたのか?」
「……タコさんと魚さんがどれに入ってるか考えてるの」
「え? 弁当に入ってるのはみんなだし巻きに猪肉で作った和風ウインナー、塩鮭と白米だから……タコさんはいないぞ」
「小川って天然なんだな」
喜助か不思議そうにしているのを見守りながら俺も弁当を受け取った。健吾はそのあと少しだったらよしこれだ! っと大きな声を上げながら1つを掴み取った。蓋も含めて木の箱だから中を見るまで全貌がわからない。2人で食べようと仁の隣に座って、弁当箱を開けた。……残念ながらタコさんと魚さんはおめにかかれなかったが、きっと誰かの元に入ってるはずだ。
「な、ない……」
健吾のにもなかったようで、すっかり意気消沈していた。絶対にこの41人の誰かに行き渡ってるはずなのだが……中々名乗りが上がらないな、もしかしてそういうのに頓着のない人間にあたってさっさと食べてしまったのかも知れない。
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