自分の好奇心が原因で魔法学校に来たんだから卒業ぐらいしてから帰れ

荒瀬竜巻

文字の大きさ
12 / 13
天国のような地獄の始まり

いろんな家の子

しおりを挟む
1クラスおおよそ20人、それがこの学校らしい。多いか少ないかは人によりけりだと思うけど、少なくとも俺は少なく感じた。前いた小学校は本当にぎゅうぎゅうで、何というか気持ち悪かった。もともと人間が多いところが好きじゃないのもあるけど、人間好きが見ても多過ぎたと感じるほどだと思う、あれは。

「さあ扉を開けよう、ここにまだ見ぬ学友が私たちを待っているのだ!」

「なんか火神山くんって宝塚劇団みたい」

「ほほう? 財宝の塚とな、中々富が高そうな名前を持つ団体なのだね」

「いやその、かっこいいってこと」

「やめとけ慎太郎、角乃と話すと眩し過ぎて脳が溶けるぞ」

何な理由で会話を拒否してたのか。気の毒に思えるけど確かに俺としても眩しいとは思ってる。不登校してた身分として余りにも光の世界を生きる住人すぎて気安く肉眼で見ることができない、それは認めよう。

「そういうな、同じ学園の未来を担う選ばれし家ではないか。もっと互いに……」

「もういい、さっさと入るぞ」

周りの珍獣を見るような目についに耐えきれなくなったのか、ガラガラとドアを開けて1人で入って行ってしまった。……しかしそれでも魔境すぎだろと言われた1組は凄いらしく、2秒後に碓氷峠くんのゲッという嫌そうな声が聞こえた。何があったんだといった風に堂々と教室に入る火神山くんの背中についていくように、そっと踏み込んだ。

「アレぇ!? 碓氷峠ちゃんだ、大きくなったね、ちょっと前はこんな感じだったのに」

「……それだと俺妖精になっちまう」

早速碓氷峠くんに絡む俺より小柄で男の子としては髪の長い(腰ぐらいまである)、……ローブじゃないやけにハイカラな服を着ているな。チーターかトラか、どれかはわからないけど豹柄の耳と尻尾が可愛い。尻尾と耳に関してこの際つっこむのは野暮だけど、服に関しては許されるのだろうか、その校則的な話で。

「やあやあ沙羽瑠! 雷帝海の魔法使いとも出会えるなんてなんたる奇縁!」

ああこの子も同じ系譜か、今思うコレばっかりは魔境呼ばわりされても致し方ないと。男を可愛いっていう気怠げな猫と、セルフ男版宝塚劇場をしている山羊、そして多分一度見たら2度と忘れない風貌ランキング不動のNo. 1なサーバルキャット。うん俺が部外者だったら知らんぷりするレベルの珍獣達だ。しかし俺は碓氷峠くんのお友達、きっと仲良くなれると思うんだ。

「えっと……初めまして、関根慎太郎です」

「ホォ!? 君だあれ?」

「関根慎太郎です」

口から発する擬音が独特だな。碓氷峠くん曰く昔からこんなんらしい、なるほどコレも個性か。

「彼は碓氷峠の魔法使いそして火神山の魔法使いの友達第一号だ! 沙羽瑠も僕ら以外の友達はいないだろう? さあ彼に挨拶を!」

「なるなるー! 初めまして慎太郎ちゃん、ボク雷帝海沙羽瑠《らいていかいさばる》! 雷帝海の魔法使いだよ!」

「は、はぁ?」

「にゃっと! 雷帝海っていうのは、代々この学園の庭師さんの家柄なんだ!」

パワーがすごい、火神山くんとはまた違ったベクトルでのパワフルさだ。碓氷峠くんと同じネコ科なのに。相手にするとどっと疲れるタイプ、つまり割と苦手。しかし流石にこれ以上変なのはいないだろう……

「ねえねえねえ、どうせなら鷹斗っちにも挨拶してあげてよー!」

ごめんさっき自らフラグを立てたのかもしれない。風流丘ってかっこいい名前というよりここいらにいる奴らはみんなこんな感じの苗字なんか? いいや違うな多分こいつらが特別過ぎなんだ。

雷帝海くんにあれよあれよと引っ張られて現れたのは眼鏡をかけた男の子。よかった今回はちゃんとローブだし髪の毛も長すぎず短すぎない普通だ。強いて言うならやっぱし背中に生えている鳥の羽が気になるけれど。何で左右で大きさが違うんだ? 左は立派だけど右はとても小さい、それで空を飛ぶことができるんだろうか。

「慎太郎よ紹介しよう、彼が鷹斗くんだ。鷹斗くん彼が慎太郎だ。さあ挨拶を!」

洋画みたいな挨拶だな。宝塚、洋画とくれば次は……オペラ? 鷹斗くんは大きな本をもって顔を隠しているけど、それでも眼鏡をしている事はわかる。だけど何だろう、火神山くんと雷帝海くんを怖がっている? 碓氷峠くんとはまた違う感じで2人のことを煙たがっているのかもしれないな。

「……風龍丘鷹斗《ふうりゅうおかたかと》です、よろしくお願いします。家は代々この学園の寮を管理している者でございます」

……ん? このよそよそしい感じ、読書好きな眼鏡、そして明るい2人を何としてでも避けたいこの感じ。それでいて碓氷峠くんのような無気力な気配もしない……まさか、この男の子は!

「初めまして、風龍丘くん! 俺関根慎太郎、風龍丘くんって呼んでいいよね?」

「は、はぁ……」

「何の本読んでるの? 君も本好きなの?」

「一応は……」

この子俺と同系列の子だ、間違いない、初めてだよこんな感じに同世代相手に俺主導で話すのは。ちょっと引き気味の風龍丘くんを圧倒しながら先生が来るまで話していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

悪役令息に転生したので、死亡フラグから逃れます!

伊月乃鏡
BL
超覇権BLゲームに転生したのは──ゲーム本編のシナリオライター!? その場のテンションで酷い死に方をさせていた悪役令息に転生したので、かつての自分を恨みつつ死亡フラグをへし折ることにした主人公。 創造者知識を総動員してどうにか人生を乗り切っていくが、なんだかこれ、ゲーム本編とはズレていってる……? ヤンデレ攻略対象に成長する弟(兄のことがとても嫌い)を健全に、大切に育てることを目下の目標にして見るも、あれ? 様子がおかしいような……? 女好きの第二王子まで構ってくるようになって、どうしろっていうんだよただの悪役に! ──とにかく、死亡フラグを回避して脱・公爵求む追放! 家から出て自由に旅するんだ! ※ 一日三話更新を目指して頑張ります 忙しい時は一話更新になります。ご容赦を……

処理中です...