7 / 56
第一章:仇討ち
第四話:二人の少女
しおりを挟む当時悪華組は西地区を牛耳っていた。
一大勢力の悪党集団と言われていたが、それをたった一晩で俺が叩き潰した。
そのことは翌日には街中に知れ渡ったが、俺はニブルの街に来たばかりで名前を知られていなかったため噂に尾ひれがつきまくって極悪非道人のように伝わっていた。
もちろん、俺の姿や名前を知っているのは西地区の者でも一部の人だけだろう。
この東地区では、ほとんど噂も忘れらているはずだ。
さて、6人の男たちは肩を落とし、これから自分がどうなるのか不安でたまらないらしい。
『おい、俺たちどうなるんだろう?』
『しらねぇよ。殺されるか、ひどい目に合わされるのかも……』
『ヒェッ!やっぱやめといたほうがよかったんじゃね?』
『仕方ねぇだろ、やれって言われたんだから』
男たちはすくみあがって、小さくなっている。
俺は、ヒソヒソと話をしているのを黙って聞いていたが、最後の言葉に引っかかった。
「おい、やれって言われたって? 誰にだ?」
「あっ、いえ。なんでもないです」
「そうか、言わないんなら言いたくなるようにしてやろうか」
俺はズボンのポケットから鋏を取り出した。
「これは何か知ってるか?」
「いや、知らない。それでに何しようてんだよ!」
「これは鍛冶屋が熱した刃を掴む道具なんだが、これで舌を引きちぎることができる」
「ヒェ! や、やめてくれよ。わかったよ、わかったから」
まさか本当にそんなことはしないが、いい脅しになった。
俺のズボンのポケットには数々の道具や、書物、食べものも入れてある。
「じゃぁ、ひとつ教えてくれ。お前たちは誰かに命じらえて俺を襲ったのか?」
男たちの話を要約するとこういうことだ。
自分の女が金を持ち逃げしたのを助けた俺にぶちのめされ、逃げた男が東地区に戻って来たところ男に声をかけられた。
お前の女を助けた男を叩きのめして欲しいと言われ、前金で10ガメル金貨を6枚くれた。
俺に恨みを持っていたので、二つ返事で請け負って知り合いの男たちを集め、俺を追って来たらしい。
「その男というのは、誰だ?」
「しらねぇ。帽子をまぶかにかぶっていたので顔も良く見えなかった。見たことないやつだ」
「お前たちはどうだ?」
「俺たちは、こいつから誘われただけで依頼主がいたことさえ知らなかった」
「そうか。だがお前たちもこいつと同罪だ。この場で頭を胴体から切り離してやろう」
「わあああ、堪忍してくれ!!お願いだ!」
「何も知らないんじゃ、役立たずもいいところだ。死んで詫びろ」
「やめてくれ、わかった、わかったから」
「何がわかったんだ?」
「本当は知ってるんだ。そいつのことを」
「じゃぁ話すんだな」
「でも、俺から聞いたって言わないでくれよ。その人もおっかない人なんだ」
「わかった。お前から聞いたとは言わないでおこう」
「そ、そいつはジョーってやつだ」
「ジョーだと!そいつはどんなやつだ」
男はジョーが悪党で、女を騙しては奴隷商人に売り飛ばしたり娼婦にして金を巻き上げていること、この国ではなく他国から流れ着いた者だということを話した。
「ジョーは今どこにいるんだ?」
「ジョーは、いつもビズリーの潰れた農園の家にいる」
ビズリーとは、この場所スラッツ(だらしない女)の北側にある一帯の集落のことだ。
東地区の中は北と南に分かれていて、北側ビズリー、南がスラッツとなっている。
「ビズリーの潰れた農園だな」
「ああ」
「今度、俺の前に姿を見せるな。それと女を大切にしろ、女をいたぶるやつは容赦しない」
「や、約束する。本当だ」
「今日のところは、お前たちのやったことは見逃してやる」
「すまない。本当に悪かった。もう二度とあなたには逆らわない。誓う」
俺は、ポケットから10ガメル金貨を1枚ずつ男たちに手渡した。
「こ、これは? ……もらえるのか?」
「ああ、お前たちの服を切ったからな。それで新しい服を買え。それで上等な服が1着買えるだろう」
「いいのか? …… 俺たちはあなたを襲ったのに」
「襲われたうちには入らない。お前たちは弱すぎる。いいんだ、持っていけ」
男たちは、金貨を受け取ると俺に会釈をして、そして逃げるようにして走っていった。
もう明け方近くになっていた。これからビズリーに行ってもジョーがいるかわからない。
とりあえず今日は帰って、明日ナミに聞いてみるか。
◇◆◇◆◇
翌朝、俺は自分の事務所にきていた。
事務所と言っても、机と椅子がある程度だ。
看板も出していないので、事務仕事をするだけの場所だ。
この街では店という言い方が一般的だ。
ここかなぁ、と女の声がドアの外から聞こえてきた。
サリーだろう。
俺は、ドアを開けてやった。
「あっ、セイヤさん!おはよう。ここで合ってた、よかった」
サリーは、俺の事務所に無事にたどり着いてホッとしたようだ。
サリーの後ろで、背の高い女がぺこりと頭を下げる。昨日の女だ。
「どうだ、昨日はよく眠れたか?」
「いやー、それが二人で意気投合しちゃってさ。話していたら朝が来たって感じで......」
えへへ、と頭をぽりぽり書きながらサリーが言った。女も微笑んでいる。
どうやら落ち着いたようだな。やはり、サリーと一緒にいさせたのがよかった。
「あのー、申し遅れました。わたしはララ」
「俺はセイヤだ。二人とも、とりあえず入れ」
「はーい、おじゃましまーす!」
サリーは事務所に入るなり、何もないねーって驚きの声をあげた。
悪かったな、ここは契約書を交わしたり、借用書を交わすための机があればそれでいい。
とりあえず、サリーの借家と店の契約をすることにした。家賃は一般的な金額だ。
サリーなら払えない額ではないだろう。ただ、店がうまく行くかどうかだ。
「サリー、店のほうはいつから開店だ?」
「道具はほぼ揃っているんだけど、鉄を溶かす炉が欲しいのとその他諸々の材料を仕入れなきゃ」
「当てはあるのか?」
「当てはある。あたいがこの街で修行していた頃からの知り合いがいるんだ」
「そうか。何か困ったことがあったら、いつでも言え」
「ありがとう、セイヤさん」
「ところで、ララ。昨日蹴られた腹はどうだ、痛むか?」
「いえ、もう大丈夫です。心配かけてごめんなさい」
「ララはこれからどうするのだ?娼婦を続けるのか?」
「いえ、仕事も身体を売るのはもうやめます。好きでやっていたわけじゃなかったので。それに、住む家もあの男と一緒にいた部屋には戻りたくありません」
そうだろうな、男に無理やり娼婦をさせられていたんだ。何か良い仕事先を紹介してやってもいい。
「仕事も家も何もないのか。ララは何か得意なことはあるのか?」
俺は、ララは本来はいいところの家庭に生まれてきた子ではないかと思っている。だから人当たりも悪くないと思っていた。
「えっとー、これといって得意なことがなくってぇ」
「そうか。じゃぁ質問を変える。ララの好きなことは…… 」
「あたいは武器作りだ!」
サリーが話の途中で割り込んできた。
「お前には聞いてない!」
「ごめーん、つい会話に入りたくなっちゃって」
ペロリと舌を出したサリーは、ララの方を見やるとララは言った。
「えっと、好きなのはおしゃべりかな。人と話をするのが好きです」
「そうか、酒は飲めるか?」
「お酒は、あまり得意なほうじゃなくて、すぐ酔ってしまって」
「どれくらい飲めるんだ?」
「エールなら大ジョッキで30杯くらいしか......」
おいおい、それは飲めないんじゃないだろうって俺はツッコミを入れたくなったが我慢した。
「俺の知り合いに酒の強い女がいる。リーファというダークエルフだ」
「えっ、リーファさんってあの?」
「知ってるのか?」
「はい、お酒の飲み比べをしたことがあります。あの時は互角で、勝負がつきませんでした」
それはかなり酒に強いぞ。リーファは俺の知る限り酒がめちゃくちゃ強い。
それと互角とは、胃袋がドラゴン並みだぞ。
その時、扉が勢いよくバーンと開いてナミが姿を現した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。
絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。
辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。
一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」
これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる