11 / 97
<第一巻:冷酷無慈悲の奴隷商人>
第七話:奴隷商人の息子は奴隷を炎天下に立たせる
しおりを挟むアルノルトは獣人族十名、エルフ六名、人間十名の奴隷が揃っていることを確認すると、ニートからの命令を伝えた。
「ニート様からの伝令! 今から全員中庭に集合すること! 着ているものは脱いで裸になれ!」
ざわつく奴隷たち。お互いに顔を見合わせているが、奴隷の部屋が閉鎖されていたことと何か関係があるのだと誰もが理解した。
きっとニート様の虐待が始まるのだわ、と口々に話している。
「ねぇ、ねえ、アーヴィア。あんた何か聞いてない?」
「え? 私は何も……」
奴隷たちは、水浴びを許してもらえたのは彼女の功績だと思う者も多く、何か知っているのではと視線が集まっていた。
アーヴィアは、ブンブンと顔を振って何も知らないと答えると、落胆のため息が聞こえる。
これから何が起きるのかわからない不安感が、奴隷たちを包み込む。
「つべこべ言わず、すぐに行動だ!」
アルノルトの言葉に、奴隷たちは渋々と服を脱ぐとぞろぞろと中庭に移動した。
◆
デルトが水桶を各部屋に置いて周り、雑巾を人数分揃えたのを確認した俺は、部屋を見て回りながら奴隷の部屋割りを考えていた。
空き部屋は八室。奴隷は常時三十名はいるらしいので、とりあえず今の半分の五人部屋がいいだろう。エルフは売れ筋だから回転も早い。六人部屋にして様子を見て、増えてきたら他の空き部屋を使うとするか。
空き部屋は元領主が、来賓の家族を泊まらせる為に作らせたため広さも十分にあり、各部屋にベッドが備え付けられていた。
今までのように床に雑魚寝するより、ベッドで寝た方がぐっすりと眠れる。きっと奴隷たちも喜んでくれるだろう。嬉しくて抱きつかれたらどうしようか。
下心は別にして、奴隷が少しでも元気になってくれたら俺は嬉しい。
部屋の件はこれでいいとして、後は奴隷たちのトイレをどうするかだ。
えっと、トイレは俺たちと同じではマズイだろう。かといって、今までのように部屋に便壺を置くのは不衛生だから、どうしようか。この屋敷に共同トイレらしいものも見当たらないし。
「デルト。奴隷たちの便所をどうする?」
名前を呼ばれてギョッとしたデルトは土下座すると、お部屋でどうでしょうと答えた。
相部屋なのにそれでは、たとえ女同士でもイヤじゃないかな。仮にこの世界ではそれが普通でも、俺としては便所は別にあってほしい。
「この屋敷で、水が流せる空き部屋はあるか?」
「はい、一階に土間になっている空き部屋がございます」
一階なら、二階の部屋からも外からでも行きやすいか。そこを共同トイレにするかな。
「では、そこをトイレとする。便器を運び込んでおけ!」
「はっ! かしこまりました! ……あのー、申し訳ありません。私は学がないもので……そのトイレとか、便器というは?」
「トイレは、便所! 便器は用を足す壺だ。壷を運ぶのが大変なら奴隷たちと一緒に運ぶといい。掃除が終わったら、みんなに手伝わせろ!」
デルトは、承知しましたと返事をすると、どこかに走っていった。
こらこら廊下は走っちゃいけません!
入れ違いにアルノルトが姿を現した。
「お待たせしました。奴隷たちを中庭に集めました。これからどうしましょうか?」
「わかった。俺も行く。奴隷たちにはここの空き部屋を掃除させろ。それぞれ一部屋に五人ずつ振り分けてくれ。それと、エルフは六人で一部屋を掃除するように!」
アルノルトは、かしこまりましたと片膝をついて礼をすると、足早に立ち去る。
ちょっ、待って! おーい、置いていくなよ。俺も行くって言いましたよね?
◆
中庭に出るドアの前で、俺は立ち止まった。外の様子が怖い。
奴隷たちが集まっていると思うと心臓バクバクだ。緊張して喉が渇いてきた。
まあ、俺が喋るわけではないからいいか。
黒光りする木製のドアを開けて外に出る。眩しいくらいの日差しが目に入る。
逆光でよく見えなかったが、奴隷たちが集まっているのはわかった。
「ニート様、何かお話しされますか?」
「いや、俺はいい……」
アルノルトにそう答えると、奴隷たちのほうを改めて見た。
「ぬあっ! な、なんで全員スッポンポンなんだよ!」
思わず素っ頓狂な声を出してしまった俺は、目のやり場に困り、思わず後ずさった。
目の前に、全裸の女性が集団で立っている光景は壮観。
「ア、アルノルトさん……なぜみんな裸なのかな?……」
「あっ、申し訳ありません! な、何か問題でも……たしかニート様が服を脱いで集まるようにと……」
「ば、馬鹿か! あれは、風呂に入って綺麗になった体に汚い服を着たらまた汚れるだろう、だから着替えてから来いという意味だろ!」
アルノルトは、勘違いを土下座で詫びた。いちいち土下座はいいから。
「恐れながら、あの者たちは着替えの服を持っておりません」
「へ? そうなの?」
チラッと奴隷の娘たちに目をやると、みんな下を向いている。おっぱい丸見えなんですけど……
下はかろうじて手で隠してあるから、まだいいとして、おっぱい丸見えは実に壮観な眺めだ。
よく実った大きなものから、まだ発展途上のちっぱいまで、ざっと見回しても千差万別、十人十色だ。
こ、このままでいいかも……いやいや、待て待て。これでは虐待と言われてもおかしくない。
「貫頭衣の予備はないのか?」
「ございますが、あれは売れた奴隷に着せる為のもので使ってはならないと……以前ニート様が……」
ま、また俺?
「とにかく、掃除させろ。その間に服を人数分用意しておけ」
「はっ!」
俺たちの会話は奴隷たちに聞こえていなかったようで、みんな下を向いて立っていた。暑いのに、いつまでも立たせておくわけにはいかない。
よく見ていると、みんな直立している中に、一人だけしゃがんでいる女の子がいる。猫耳? ショートヘアの可愛い娘が、しゃがんで頬杖を付いている。
「アルノルト、あそこの娘は?」
「も、申し訳ありません!すぐに立たせます」
「いや、いい。気分でも悪いのかもしれん。連れて来い」
アルノルトが、走って猫耳娘のところへ行くと手を引っ張り強引に連れてきた。
「痛えな!引っ張んなよ!」
あらあら、元気がいい娘さんだ。気分が悪いのではなく、態度が悪いだけだったんだね。
「な、なんだよ。こんな所にいつまでも裸で立たせやがって、座ったっていいじゃねぇか!」
「このっ! 黙らんかっ!」
アルノルトは、猫耳少女の頬を殴りつけると、突然殴られた少女はもんどり打って倒れた。大きなおっぱいも、一緒に揺れている。
「「な、何も殴らなくても!」」
俺と少女は同時にアルノルトに抗議する。
少女と目が合い、お互いにギョッと目を見開くと目を伏せた。なんだ、これ。猫耳の娘とシンクロしたぞ!
「大丈夫か、猫耳娘」
俺がそう声をかけると、猫耳娘が立ち上がってムスッとした顔で言った。
「ウチは猫とちゃうわ! 獅子人族や!」
「同じネコ属だから似たようなもんだろ?」
「一緒にせんといて!」
奴隷はみんなビクビクしてるもんだと思っていたが、こんなじゃじゃ馬がいることに驚いた反面、妙に萌えた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる